アメリカ産牛肉輸入再開問題

アメリカ産牛肉輸入再開問題について、これまでの動きをあれこれ。とても全部は調べきれないけれども、とりあえずライス国務長官来日前まで。

しかし、他方で、アメリカ上院は、カナダ産の若い牛の輸入再開に反対する法案を可決しています。

米上院、カナダ産牛の禁輸継続法案を可決(NIKKEI NET、3月4日)

米上院、カナダ産牛の禁輸継続法案を可決

 【ワシントン=吉田透】米上院は3日の本会議で、今月7日に解禁となる予定だったカナダ産の生きている若い牛の輸入を凍結する法案を可決した。米モンタナ連邦地裁も2日、輸入を再開しないよう米政府に差し止め命令を出していた。
 米政府は一昨年5月にカナダでBSE(牛海綿状脳症)の牛が見つかったのを理由に、同国からの生きている牛の輸入を全面禁止していた。しかし昨年暮れ、米農務省はカナダのBSE対策が進んだとして、生後30カ月未満の牛については3月7日に輸入再開する方針を示していた。
 上院で可決された法案は、この農務省の決定を覆すことを狙った内容。農務省が輸入再開を決めた後、カナダでは新たなBSEが見つかっており、法案を作成したコンラッド議員は「米消費者の安全のため輸入禁止を続けるべきだ」と主張している。
 ホワイトハウスは3日、下院でも同じ法案が可決された場合、「大統領は拒否権を発動する」と警告した。米政府は「米国の牛は安全だ」と主張し、日本に輸入再開を求めている。[NIKKEI NET 2005/03/04 11:00]

問題は、仮に20カ月以内の牛は「安全」(正確には、危険かも知れないが、危険性を知る方法がない)だということを認めたとしても、はたして、目で見て月齢を判断するという判別法が「科学的か?」ということに尽きますね。また、危険部位除去についても、アメリカ政府の食品検査官が加盟する労働組合は、「特定危険部位が食肉中に混ざる恐れがある」と指摘しています(→危険部位混ざる恐れ 米の検査官労組が告発 米BSE対策/高橋議員、文書示す)。
もう1つ、これは月齢判別法ばかりに注目が集まっているので、あまりメディアでは取り上げられてませんが、アメリカではいまだに肉骨粉が禁止されていないという問題。

いずれにしても、アメリカ産牛肉の安全管理は相当にずさんみたいです。

早期解除せねば対日報復も 米産牛禁輸で上院議員ら(東奥日報、2月25日)

 【ワシントン24日共同】牛海綿状脳症(BSE)発生で日本が米国産牛肉の輸入を禁止している問題で、米議会上院の超党派の議員20人が、禁輸措置が速やかに解除されない場合、対日報復法案を提出する可能性を示唆した書簡を加藤良三駐米大使に連名で送っていたことが24日分かった。
 関係者によると、ジョハンズ米農務長官は23日、農務省で加藤大使と会談し、書簡に触れながら早急な貿易再開をあらためて要請した。
 日本は2003年12月から禁輸措置を続けている。米議会が直ちに報復法案提出へ動く可能性は低いとみられるが、書簡は、禁輸長期化による米国内のいらだちを表していると言えそうだ。(共同通信社)
[2005年2月25日 東奥日報]

米産牛禁輸 対日制裁、政府に要求(東京新聞、3月4日夕刊)

 【ワシントン=久留信一】米下院の一部議員は3日、日本が米国産牛肉の輸入を早急に再開しない場合、米政府に経済制裁の発動を求める決議案を議会に提出した。牛海綿状脳症(BSE)発生で日本が輸入を禁止してから約1年2カ月が過ぎたが、議会への決議案提出は初めて。国内の畜産業界らの根強い不満を背景に、日米牛肉問題は新たな局面を迎えた。  
 決議案を提出したのは肉牛産地カンザス州選出のモラン議員(共和党)ら約40人。決議案が可決されても、政府に対する法的拘束力はないが、先月下旬には上院議員20人が加藤良三駐米大使に経済報復も辞さないとの内容の書簡を送ったばかり。交渉を進めるブッシュ政権にとって上下院の動きは大きな圧力となりそうだ。
 同日記者会見したモラン議員らは、日米両政府が昨年10月、牛肉貿易再開の枠組みで合意したにもかかわらず、日本の禁輸措置が続いていることを強く批判。制裁の具体的内容については、日本製品に対する関税の引き上げなどを指摘した。
 決議案提出を受けて米通商代表部(USTR)は「日本との交渉に、米政府は最大限の努力を続けている。日本は速やかに輸入を再開すべきだ」とのコメントを発表した。
[東京新聞 2005年3月4日夕刊]

米国産牛肉:米大統領の輸入再開言及 制裁論背景に直談判(毎日新聞、3月10日)

 ブッシュ米大統領が9日の小泉純一郎首相との電話協議で、米国産牛肉の早期輸入再開を迫ったのは、輸入禁止の長期化にいら立つ米国で対日制裁論が強まっていることが背景にある。大統領がこの問題に言及したのは、昨年9月の日米首脳会談以来で、事態打開に向け再び直談判に及んだ。小泉首相は早期再開を加速させる考えだが、政府内の手続きを段階的に踏む必要があるうえ、安易な解禁は消費者から猛反発を受けるのは必至で、ジレンマに陥っている。
 米国では、先月下旬に超党派の上院議員20人が「早期輸入再開に応じなければ、対日制裁も検討する」との書簡を加藤良三駐米大使に送ったのに続き、下院議員が今月3日、輸入再開を受け入れないと米政府に対日制裁の発動を求める決議案を下院に提出した。議員の背後にいる畜産業界は、昨年の大統領選でブッシュ大統領を支持した有力なロビー団体。米政府は現時点では対日制裁に同調する意向はないが、日本側が具体的な解決のめどを示せないと、圧力は一段と強まりかねない。
 現在はBSE(牛海綿状脳症)国内検査の基準緩和問題を内閣府の食品安全委員会が検討している段階。緩和が認められた後は、日米政府が輸入再開の条件を協議し、その結論を再び同委が承認する必要があり、再開は夏以降の予定だ。
 今年になってBSEが原因とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の国内患者が初確認された影響もあって、消費者団体などは全頭検査継続を求める声を一段と強めており、安易な政治判断で再開時期が早まれば、反発が出るのは確実だ。【望月靖祥、ワシントン木村旬】
[毎日新聞 2005年3月10日 1時19分]

「牛肉輸入再開の時期明示を」 米議員が駐米大使に迫る(中日新聞、3月12日)

 【ワシントン=久留信一】米国のアラード上院議員(コロラド州、共和党)やモラン下院議員(カンザス州、共和党)ら上下院議員13人が11日、ワシントンの議会内で加藤良三駐米大使と会談し、牛海綿状脳症(BSE)発生で停止している米国産牛肉の輸入再開時期の明示を強く迫った。
 上院の超党派グループは先月、対日報復措置に言及した書簡を加藤大使あてに送付。下院では今月3日にモラン議員らが対日経済制裁決議案を提出するなど、禁輸措置への米側の不満が膨らんでいる。
 議員らは米国での畜産業の重要性や米国産牛肉の安全性を強調。昨年10月、日米が牛肉貿易再開で合意したにもかかわらず、禁輸措置が長期化していることに不満を表明し「(BSE対策の見直しを審議している)食品安全委員会の結論はいつ出るのか」などと述べ、輸入再開時期を明示するよう求めた。
 加藤大使は「禁輸措置は国内産業の保護ではなく、食品安全の確保が目的。消費者の信頼を確保することが重要だ」と強調。その上で、日本政府が問題の早期解決に努力していることを強調したが、輸入再開時期については明言を避けた。
 アラード議員は会談後、加藤大使に小泉純一郎首相あての書簡を手渡し、首相の訪米と現地視察を要請した。
[中日新聞 2005年3月12日]

時期明示で一層の圧力 牛肉解禁で米上院議員(徳島新聞、3月15日)

 【ワシントン14日共同】米国が牛肉の対日輸出再開を強く求めている問題で、米上院のグラスリー財政委員長(共和党)とボーカス同委員会民主党筆頭委員ら、畜産州選出の有力議員7人が14日、加藤良三駐米大使を呼び、禁輸解除時期を明示するよう重ねて要請。ライス国務長官の18日からの訪日を前に、牛肉問題前進に向け日本側に一層の圧力をかけた。
 グラスリー議員らは会談後の記者会見で、長官の訪日に関連し「もし日本がこの問題で前向きの発表ができたら適切だ」と強調するとともに「(日本側は)われわれが結果を求めていることを知るのが大事だ」として、禁輸解除が遅れた場合、議会などで対日報復を求める声が高まりかねないとの見方を示した。
[徳島新聞、03月15日 10時13分]

米国産牛肉、輸入再開しないと制裁 上院にも対日決議案(朝日新聞、3月18日)

 牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が見つかってから停止されている米国産牛肉の輸入再開問題で、米上院議員9人は17日、日本が牛肉の輸入を再開しなければ米通商代表部(USTR)が日本に対して報復の経済制裁措置をとるよう求める決議案を議会に提出した。すでに下院にも今月3日に同趣旨の決議案が出されており、日本政府に対する政治的圧力はさらに強まりそうだ。
 代表して記者会見したスーン議員(共和党)は加藤良三駐米大使と11日に会談した際、いつ輸入を再開するのか今後の日程について説明がなかったことを指摘。「見通しが立たないことに非常にがっかりした。畜産業が盛んな州を代表する我々は堪忍袋の緒が切れた」と決議案提出の理由を説明した。
 さらに「米国の消費者と牧場主は米国産牛肉が安全なことをよく知っている。日本が輸入を再開しない科学的な根拠は何もなく、輸入禁止は不公正な貿易障壁であり、米国の強い反応を招くことになる」と警告した。
 米議会は21日から復活祭の休会に入るため、決議案の審議は4月以降になる。たとえ採択されても米政府に対する法的な拘束力はない。しかし、米議会対策に苦慮しているブッシュ政権にとっては重圧になっており、18日から訪日するライス国務長官は日本政府により積極的な対応を強く求めることになりそうだ。
[asahi.com 2005年03月18日10時43分]

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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