2月のコンサートあれこれ

五十肩&腰痛で調子が悪いにもかかわらず、今月は4つコンサートを聴いてきました。これまでブログに書き込めなかったので、一気に4つとも書いてしまいます。

【都響第623回定期演奏会 2月7日・サントリーホール】

  • リスト:交響詩「レ・プレリュード」
  • バルトーク:ヴィオラ協奏曲 op.posth
    (ピーター・バルトーク、ネルソン・デラマジョーレによる1995年新校訂版)
  • バルトーク:オーケストラのための協奏曲

指揮:ヤン=パスカル・トルトゥリエ/ヴィオラ:ブルーノ・パスキエ/ソロ・コンサートマスター:矢部達哉

痛み止めの薬のため、前半2曲は爆睡…。(^_^;) で、2曲目のヴィオラ協奏曲が終わった拍手で目を覚ますと、アンコールでブルーノ・パスキエがアンコールでヒンデミット:ヴィオラ・ソナタ op.25-1最終楽章を演奏。最終楽章だけといっても5分はある曲です。アンコールというにはもったいないような見事な演奏で、すっかり目が覚めてしまいました。(^_^;)
最後の「オーケストラのための協奏曲」は、ヨーロッパからの亡命を余儀なくされたバルトーク最晩年の曲。これまでバルトーク=民族派という先入観で敬遠していたのですが、まったく印象が違っていました。やっぱり選り好みせず、何でも聴いてみないとダメですねぇ…。

【新日フィル第396回定期演奏会 2月9日 すみだトリフォニーホール】

  • オネゲル:劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」

指揮:クリスティアン・アルミンク/ジャンヌ・ダルク:アンヌ・ベネント/修道士ドミニク:フランク・ホフマン/合唱:栗友会合唱団、東京少年少女合唱団/子役:阿嘉真理乃/野獣:原 純/演出:三浦安浩/舞台監督:幸泉浩司

すでに新聞にも音楽評が出ていますが、演奏会形式とは言いつつも、舞台中央には船の舳先に似せた舞台と大きな十字架が組まれています。合唱団の前には柵が組まれ、柵越しに刑場のジャンヌ・ダルクを見つめる、というかっこうになっています。そうして、舞台手前の左右に演台がおかれ、下手にはジャンヌ・ダルク役のアンヌ・ベネントがたたずみます。しかし、上手の演台は空白で、客席の中から「ジャンヌ、ジャンヌ」の呼び声が響きます。フランク・ホフマン演ずるところの修道士ドミニクが、客席の間の通路を歩いて演台に登場します。こうやって、演奏会の観客も、ジャンヌ・ダルクの処刑に同席する参加者とされてゆきます。

で、ストーリーは、すでに捕まり火焙りの刑を目前にしたジャンヌ・ダルクが、修道士ドミニクの問いかけに答えながら、みずからのおこないを回想する形ですすんでゆきます。中央に組まれた舞台には子役の女の子が登場し、回想の中のジャンヌ・ダルクを演じることで、「聖処女」ジャンヌ・ダルクが強調されます。

1935年に作られ、1944年に非占領地域である南仏40都市で上演されたというこの作品。冒頭の「フランスにジャンヌという名の少女がいた」「神の子よ、進め」という呼びかけが、オネゲルのレジスタンスの呼びかけであったことは容易に理解がつきます。また、子役の女の子が次々と箱を開け、中からさらに小さな箱をとりだすと、やっぱりそれも空で、ただ箱が入っているだけという演出は、ジャンヌへの告発が中身のない偽りの告発であったことを象徴していると思いました。

プログラム・ノーツでは、合唱が「ところでジャンヌって何者?」と歌うところから、国家そのものの問い、「近代を相対化する」と解説されていますが、僕には、むしろ、誰もがジャンヌ・ダルクだ、という呼びかけのように聞こえました。最後、中央舞台の子役の女の子が黄色い安全帽をかぶり赤いランドセルを背負って登場したのは、ちょっと…。「ジャンヌとは何者か?」という問いかけの現代性を表わすのに、黄色い安全帽と赤いランドセルという「物」を持ってくるという発想自体がステロタイプというか、余りに古いという感じがしました。せっかくの、これからまさに処刑されんとするジャンヌの内面の葛藤というきわめて抽象的な作品には、ちょっとそぐわないように思われました。

個々には展開が分かりにくいところがあったり(日本語字幕が遠くてよく読めなかったこともあります。できればプログラムに対訳がほしかった)、声量不足が気になったところもありましたが、これだけの作品を狭い舞台の上に押し込めながら、見事にオラトリオとして成功していたと思えました。

【大フィル 第43回東京定期演奏会 2月14日 サントリー・ホール】

  • 武満徹:ノスタルジア――アンドレイ・タルコフスキーの追憶に
  • ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調

指揮:大植英次/ヴァイオリン:長原幸太

大フィルの演奏を生で聴くのは初めて。で、大フィル&ブルックナーといえば、較べるなと言われても、やっぱり朝比奈隆氏と比較してしまうのはやむをえまないでしょう。そして大植氏の指揮は、そんな期待をわざと無視するかのように、朝比奈隆とは違うブルックナーを聴かせてくれました。そこが、今回の演奏会の評価の分かれるところで、演奏が終わった瞬間、大きな拍手がわき起こるなかで、物足りない顔をしたままそそくさと席を立つお客さんも目立ちました。

僕自身、ブルックナーを知ったのは朝比奈隆氏のCDからなので、演奏が始まった瞬間からちょっとした違和感があって、いまいち演奏を楽しみきれなかったのが正直なところ。でも、朝比奈氏の真似をするのではなく、大胆・率直にみずからのブルックナーを振って見せた大植氏はさすがだと思います。これからも、東京定期演奏会を楽しみにしたいです。

【東フィル 第718回定期演奏会 2月17日 サントリー・ホール】

  • マーラー:交響曲第9番 ニ長調

指揮:チョン・ミョンフン

1回券発売日の昼休みに電話したら、すでにS席とA席しかなくて諦めていたのですが、友人が仕事の都合で行けなくなったということで、譲ってもらったチケットで聴いてきました。毎度のこととはいえ、ありがとうございました。m(_’_)m

さてそれで演奏の方ですが、チョン・ミョンフン&東フィルで、正直言って、僕はこれまであまりいい演奏にあたったことがありませんでした(だから、残り席がSとAだけだといわれたときに躊躇したのですが)。しかし、今日は、日本一大所帯の東フィルの本領発揮(?)、舞台いっぱいの大編成に、弦の美しさを楽しませていただきました。

ところで、プログラム・ノーツでは、マーラー交響曲第9番の解説として、これでもかというぐらいに「死」のイメージが強調されていて、それは曲の解釈として間違いではないのでしょうが、チョン・ミョンフンの指揮は、そんな陰々滅々とした「死」のイメージというより、マーラーらしい音のユニークさを純粋に楽しむという感じで、とても聴きやすいものでした。希望をいえば、出だして金管の音がすこし大きすぎた感じで、弦とのバランスがやや悪く感じられましたが、それも第2楽章以下は気にならなくなりました。

それに、さすが東フィル・サントリー定期のお客さんは、良く分かっているというか、演奏が終わった直後にフライングで拍手、ブラボーの声をあげる人はなく、余韻を十分楽しむことができました。当たり前といえば当たり前のことなんですが、それがなかなかできないことが多いだけに、気分良く帰ってきました。

さて問題は3月。今のところ、演奏会の予定は1つだけ。しかも、その日は夜仕事が入りそう。困った…。

【関連ブログ】
「火刑台上のジャンヌ・ダルク」は、ブログでもかなり話題になってるようです。大植&大フィルのブル7については賛否両論。僕自身は、ちょっと違うかなと感じたところもありましたが、賛否両論でこそ大成功と思います。

◎トルトゥリエ&都響定期/リスト&バルトーク
天浪堂日乗 : 忙しい・・
竜の調べにのって:快速バルトーク
山下幸一のバイオ通信: 都響でバルトークを聴く
後ろ向きなとろんぼーん: バルトークとヒンデミット
おお西の日記
Thunder’s音楽的日常: JAZZみたいなバルトーク
Diary: トゥルトリエ&東京都交響楽団

◎クリスティアン・アルミンク&新日本フィル/オネゲル:火刑台上のジャンヌ・ダルク
えすどぅあ | A.ベネント/C.アルミンク/新日本フィル トリフォニー定期 オネゲル:火刑台上のジャンヌ・ダルク
熟年の文化徒然雑記帳:新日本フィルのオネゲル「火刑台上のジャンヌ・ダルク」と都響のスメタナ「我が祖国」ほか
日頃の何氣ない風景 写真・音楽鑑賞・株投資、感じた事を:新日本フィル 火刑台上のジャンヌ・ダルク
庭は夏の日ざかり : アルミンク/新日フィル 《火刑台上のジャンヌ・ダルク》
LINDEN日記:新日本フィル定期「火刑台上のジャンヌ・ダルク」
fromhiroshi-blog: トリフォニー定期「ジャンヌ・ダルク」
La Nuit Op醇Pratique deux:新日本フィル「火刑台上のジャンヌ・ダルク☆☆☆☆☆
Thunder’s音楽的日常: ジャンヌ・ダルクを聴く
musikhalle:新日本フィル定期@2月
不壊の槍は折られましたが、何か?
ナノ日記 – 誰も寝てはならぬ
nobi22nobiの日記 – 「火刑台上のジャンヌ・ダルク」

◎大植&大フィル/ブルックナー:交響曲第7番
あれぐろ・こん・ぶりお – 大植英次のブルックナー第7番?大阪フィルハーモニー交響楽団第43回定期演奏会
大阪フィル、東京フィル 「Chezかせっち」別荘/ウェブリブログ
SISTER SARAH★Blog 大フィル
commondays | 大植英次指揮『ブルックナー交響曲第7番』
おっさんサラリーマン日記:大阪フィル東京定期 – livedoor Blog(ブログ)
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ブルックナーの7番 ?もう少しバランスが? エレガントにいこう/ウェブリブログ
Takuya in Tokyo:大植/大フィル ブルックナー7番ほか

◎チョン・ミョンフン&東フィル/マーラー:交響曲第9番
えすどぅあ | チョン・ミョンフン/東京フィル サントリー定期 マーラー:交響曲第9番
mozart@の日記 – マーラー9番♪#p1
フーゾクDXの仕事の合間に小一時間 【コンサート】チョン先生のマラ9【2日目】
AYECARUMBA!!!:永遠主題、主題労作、「ファ↑ラ↑シ↓ラ」(笑)
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作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

5件のコメント

  1. ピンバック: えすどぅあ
  2. ピンバック: Takuya in Tokyo
  3. ピンバック: SISTER SARAH★Blog
  4. TBありがとうございました。
    以前は新日フィルの定期会員でした、最近はオペラを観に行く事が多くなりました・・
    7月には下記の演奏会へ行く予定です。

    お薦め、7月に大野指揮で 東フィル・都響の演奏会があります・・大野氏の追っかけしてますので

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