実質賃金率の決定メカニズム 置塩信雄『蓄積論(第2版)』(2)

実質賃金率決定メカニズムについて(続き)。

  • 蓄積過程研究のためには、実質賃金率の変動過程に立ち入らなくてはならない。実質賃金率の変動について正しい理解を欠いていることが、蓄積過程、景気循環を論じる上での誤りを生み出している。(p.69)

実質賃金の下限。実質賃金の水準は、次のようなものによって規定される。(p.71)

  • 実質賃金は、労働者が生活してゆくために必要な最小限を下回ってはならない。
  • 実質賃金は、超零細経営によって得られる所得を下回ってはならない。

実質賃金の上限。実質賃金の上限は、次のような要因によって規定されている。(p.72)

  • 実質賃金は、労働者の生活費を大幅に上回ってはならない。そのために資本家はどうするか。
    1. 実質賃金を押し下げる。
    2. 実質賃金が上昇する場合には、宣伝や教育などの社会的手段を通じて、労働者に支出水準を上昇させるように強制し、労働者の貯蓄の可能性を低める。
    3. 独立した経営をもつために必要な最低資金量を増大させることによって、労働者が生産手段所有者に転化することを阻止する。
  • 実質賃金は、搾取率を標準的水準以下に低めるほど高くてはならない。

ところで、資本家は利潤がありさえすれば、どのようなわずかな利潤でも労働力を購入するだろうか?(p.71)

マルクスは、『資本論』で次のように述べている。

他のいっさいの事情が不変ならば、不払労働がそれに比例して減少する。しかし、この減少が、資本を養う剰余労働がもはや標準的な量で提供されなくなる点に接触するやいなや、一つの反作用が生じる。(『資本論』新日本新書版<4>1069ページ)

では、実質賃金率が、この上限と下限の範囲内のどこで決定されるか、それはどのように運動するか、また、この実質賃金率が上限あるいは下限に衝突したときに、どのようにして反転して、ふたたび許容範囲内に引き戻されるのか。その機構を明らかにすること。(p.75)

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