う〜む、分からん… 「キムチを売る女」

「キムチを売る女」チラシ

全国的に大荒れの天気、東京でもところによって激しい雨が…といわれる中、久々の渋谷シアター・イメージフォーラムで、韓国・中国合作映画「キムチを売る女」を見てきました。(今年4本目)

主人公のチェ・スンヒは朝鮮族の女性で、中国のさびれた町でキムチの露天販売で生計を立てている。彼女は32歳、夫は殺人犯で、母と一人息子で吉林省から移り住んできたらしい。住んでいるのは、鉄道の引き込み線近くのボロ屋。よく見ると、どうやら鉄道の敷地のなかにあるようだ。2軒で1棟の隣家には、若い女性が4人で生活している。綺麗におしゃれした彼女たちは、毎晩のように道端に立ち、みずからを売っている。あるときは、地回りのヤクザ?に殴られ、またあるときは警察に捕まるけれども、スンヒや彼女の息子の前では、素直そうな普通の女の子でもある。

スンヒの生活も平穏ではなかった。同じ朝鮮族だといってキムチを買っていく男が現われたり、「私は教習所の食堂を任されている。キムチを届けてほしい」といって言い寄ってくる男が現われたり…。許可証がないために、警察に、キムチ売りにつかっていた自転車を没収されたかと思うと、その自転車が中古自転車で売られている。わずかなコネ、小さな暴力…そんなものに小突き回されるような生活。知り合いの警官の紹介で、念願の許可証が手にはいるが、結局、その警官も…。彼女の回りに現われる男性は、みんな彼女のからだが目的。

しかし、スンヒもそれに怒るわけでなく、拒絶する訳でもなく(食堂の主任だという男は一撃を食らって拒絶されているが)、男に身を任せて世渡りをしている。世の中をあきらめてしまったというか、自分自身さえ突き放してしまったというか、ともかく彼女には感情の起伏がない。だから、普通の映画なら事件になるような出来事も、すこしも事件にならず、淡々とすすんでいく。本当に妙に間延びしたテンポで、だらだらだら??っとすすんでいく映画は、ある意味、非常にリアルなのかも知れないけれど、ホントにこんなのでいいの? と思ってしまうぐらい。

まあ一応、最後にある事件があって、彼女が「悲劇的な暴挙」(チラシの解説)に出るのだけれども、そのときも、スンヒの描かれ方は実に淡々としたもの。チラシには、「暗い過去を引きずりながらも平凡な毎日をつつましく暮らしている朝鮮族親子の日常を透明感のある詩情豊かな映像で描いた」「絶望的な状況・絶望的な孤独のなかで人はどのようにして己の魂を解放させるかを描いた傑作」とありますが、はたしてあれが「詩情豊かな映像」なのかは大いに疑問。彼女がなぜそんなに「絶望」してしまったのかもよく分からないし、ラストが「己の魂を解放」したものなのかどうかも分かりません。

あと、ともかく町の活気のなさというか、どんより停滞した感じは、何なのでしょう。そして、そんな町で唯一の近代的組織が警察なのだけれども、上にも書いたように、没収した自転車を横流ししていたり、許可証がないといって露天を摘発するかと思えば、自分が口をきけば簡単に許可証が手に入ったりという世界。どうしようもない、だら??とした、粘るような重たさに、見ていて疲れを感じるほどです。

ということで、ストーリーもよく分からないし、意味も理解不能な、だけれども確かに引き込まれる不思議な作品でした。

ちなみに天候の方は、ちょっと雨が降って、少し風が吹いた程度。映画が終わったときには、雨も上がっておりました。(^_^;)

公式サイト→キムチを売る女 <GRAIN IN EAR > | KAFS

【映画情報】
監督・脚本:チャン・リュル/出演:リュ・ヒョンヒ(チェ・スンヒ)、キム・パク(息子)、ジュ・グァンヒョン(自動車工場の技術者キム)、ワン・トンフィ(ワン警官)/制作:2005年、韓国・中国合作

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

1件のコメント

  1. GAKUさん、こんばんは。
    今日「あなたになら言える秘密のこと」観てきました。storyの感想は人それぞれだと思いますが、私は、シェフ・サイモンが作る料理(日本料理作ってくれたらな!)を食べながら、波の音を聞いていたくなる映画で、とても良かったです。

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