大企業の労働分配率は50%未満!!

先ほどの政府税調の資料の続き。[企画16-2]資料(法人課税関係)分割版PDFの03(495KB)を開いてみたら、こんな興味深いグラフがでていました(PDFの9ページ目、資料のページ付で32ページ)。

労働分配率の推移(政府税調資料)

日本の企業の労働分配率 ((労働分配率とは、企業の付加価値に占める人件費の割合のこと。)) の推移のグラフです ((注によれば、このグラフは、<1>労働分配率=人件費/(人件費+営業利益+減価償却費)×100、<2>4期後方移動平均値、<3>データは財務省「法人企業統計(四半期別調査)」、となっています。))。

一般的にいって、労働分配率は景気の後退局面で高くなり、上昇局面では低下する傾向にあります。つまり、景気が後退するときは、企業業績がまず低下し、賃金水準の低下は少し遅れるため、計算上、労働分配率が高くなる。景気が回復するときは、まず企業業績が上向き、賃上げは遅れるので、全体として労働分配率は低下する、ということです。2002年の第1四半期にピークを迎えた労働分配率が全体として下がっているのは、そのためだと見ることも可能です。もちろん、景気とは関係なく、賃金水準が上がれば労働分配率も高くなり、賃金水準が下がっていけば分配率も低くなります。

しかし、このグラフの面白いのは、日本全体の労働分配率だけでなく、企業規模別の推移も出していることです。で、それを見ると、全規模の合計では、労働分配率約65%ですが、大企業(資本金10億円以上)の労働分配率は50%を割って、47?48%にまで低下しています。

しかも、全規模合計の労働分配率が2005年あたりから下げ止まっているのにたいして、大企業の労働分配率は、引き続き低下し続けています。これは、大企業の企業業績が引き続きよくなっているのに、中小企業の業績はなかなかよくならないことの反映かもしれません。また、景気回復がすすむ中で、労働需要が逼迫し始めて、賃金の低下傾向に歯止めがかかりつつある(実際、世間のアルバイト募集の時給をみると、以前よりは多少上がっているようです)ことを表わしている、と考えることもできます。

それにくらべると、大企業の労働分配率が下がり続けているのは、異常です。このままいったら、数年後には労働分配率40%になりかねません。これは、大企業が業績が回復しているにもかかわらず、その恩恵を従業員に回していないこと、引き続き人件費抑制策を続けていることを物語っています。

大企業のみなさん、もっと従業員に賃金を!! せめて、業績回復分ぐらいは賃上げしようではありませんか!!

【追記】
元データから、数値入りのグラフを作ってみました。↓PDFファイルが開きます。
労働分配率グラフ

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

2件のコメント

  1. このデータ面白いですね。学習会などで使わせていただきます。

  2. 洋さん
    ぜひご活用ください。元データから数値入りのグラフをPDFでつくってみましたので。

    ただし、「労働分配率」については、計算方法が何通りかあって、それによって数字が違ったりします。また、本文にも書いたように、「労働分配率が下がった」として「なぜ下がったのか」という議論はいろいろです。だから、ここで示した数値はあくまで1つの目安。また、「なぜ下がったか」というのも、あくまで“こういうことがあるのではないか”というレベルの話で受け止めてください。

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