菅直人首相が組閣を終えて記者会見

菅直人首相が組閣を終えて記者会見。途中からテレビで聴いていたけれど、まあ、鳩山さんよりはだいぶ骨がありそう。

菅首相会見:「政治の役割は最小不幸の社会を作ること」:毎日jp

会見の柱の1つは、「強い経済と強い財政と強い社会保障を一体として実現する」というもの。社会保障は「経済を成長させる分野でもある」とも言っている。

2つめは、普天間基地の辺野古沖移設について「それに基づいて進めなければならない」と明言したこと。「最低でも県外移設」という昨年の総選挙の公約の実現をめざして努力するのではなく、沖縄に新たな基地負担を押しつける日米合意の推進を宣言したのが、この記者会見の特徴だ。

1つめの、社会保障をきちんと充実させてこそ経済は上向く、というのは、私も、このブログでも言ってきたこと。国民の暮らしの底が抜けた状態では、日本経済は成長できるはずがない。だから、まず政治は、国民の暮らしの底上げにこそ力を注ぐべきだ。

問題は、それが「強い経済と強い財政と強い社会保障」という菅さんの「成長戦略」で実現できるかどうか。詳細は、今のところ不明だが、記者会見をよく読むと、「強い経済」や「強い社会保障」を実現するには「強い財政」が必要だ、という構造になっているようで、消費税増税がホンネのような気もする。

しかし、「強い社会保障」を実現できるほどの財源を消費税でまかなおうとしたら、消費税率は10数%にもなることは必至。これだけ国民の暮らしが落ち込んでいるときに、消費税率をそんなに引き上げたら、いったいどうなるか? 「強い経済」や「強い社会保障」を実現する前に、日本はますます疲弊して、どうしようもない底なし沼にはまり込んでしまうだろう。

菅首相会見:「政治の役割は最小不幸の社会を作ること」

[毎日JP 2010年6月8日]

 菅直人新首相は8日夕、就任にあたっての記者会見を行った。会見の内容は次の通り。
 ◇

 今夕、天皇陛下の親任をいただいたのち、正式に内閣総理大臣に就任することになりました菅直人でございます。国民のみなさんに就任にあたって私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。
 私は政治の役割というのは国民が不幸になる要素、あるいは世界の人々が不幸になる要素をいかに少なくしていくのか、最小不幸の社会を作ることにあると考えております。もちろん大きな幸福を求めることは重要でありますが、それは例えば恋愛とか、あるいは自分の好きな絵を描くとか、そういうところにはあんまり政治が関与すべきではなくて、逆に貧困、あるいは戦争、そういったことをなくすることにこそ、政治が深く力を尽くすべきだとこのように考えているからであります。
 そして、今、この日本という国の置かれた状況はどうでしょうか。私が育った昭和20年代、30年代は、ものはなかったけれども、新しいいろいろなものが生まれてきて、まさに希望に燃えた時代であります。しかし、バブルが崩壊してからのこの20年間というのは経済的にも低迷し、3万人を超える自殺者が毎年続くという社会の閉塞(へいそく)感も強まって、そのことがいま日本の置かれた大きな何かこう全体に押しつぶされるような、そういう時代を迎えているのではないでしょうか。
 私はこのような日本を根本から立て直して、もっと元気のいい国にしていきたい。世界に対しても、もっと多くの若者が羽ばたいていくような、そういう国にしていきたいと考えております。その一つは、まさに日本の経済の立て直し、財政の立て直し、社会保障の立て直し、つまりは強い経済と強い財政と強い社会保障を一体として実現することであります。今、成長戦略の最終的なとりまとめを行っておりますけど、日本という国は大きなチャンスを目の前にして、それにきちっとした対応ができなかった。このように、思っております。
 例えば鳩山前総理が提議された地球温暖化防止のための25パーセントという目標は、まさに日本がこうした省エネ技術によって世界の中に新しい技術や商品を提供して、大きな成長のチャンスであるにもかかわらず、立ち遅れてきております。また、アジアの中で、歴史の中で最も大きな成長の時期を迎えているにもかかわらず、先日も中国に行きましたら、いろんな仕事があるけれども、日本の企業はヨーロッパの企業の下請けしかなかなか仕事が取れない。いったいどんなことになる。つまりは、この20年間の政治のリーダーシップのなさがこういったことを生み出したとこのように思っております。成長戦略の中で、グリーンイノベーション、そしてライフイノベーション、そしてアジアの成長というものを、私たち、それに技術やあるいは資本やいろいろな形で関与することで我が国の成長にも伝えていく、こういったことを柱にした新成長戦略、これに基づいて財政配分を行いたいと考えております。
 また、日本の財政状況がこれまで悪くなった原因は、端的に言えば、この20年間、税金が上げられないから借金で賄おうとして、大きな借金を繰り返して、効果の薄い公共事業、たとえば100に近い飛行場を作りながら、まともなハブ空港がひとつもない、これに象徴されるような効果の薄い公共事業にお金をつぎ込み、また一方で、社会保障の費用がだんだんと高まってきた、これが今の大きな財政赤字の蓄積の構造的な大きな原因である。
 私は、財政が弱いということは思い切った活動ができないわけでありますから、この財政の立て直しも、まさに経済を成長させるうえの必須の要件だと考えております。
 そして社会保障についても、従来は社会保障というと何か、負担、負担という形で経済の成長の足を引っ張るのではないか、こういう考え方が主流でありました。しかしそうでしょうか。スウェーデンなどの多くの国では、社会保障を充実させることの中に、雇用を生み出し、そして若い人たちも安心して勉強や研究に励むことができる、まさに社会保障の多くの分野は、経済を成長させる分野でもある。こういう観点に立てば、この三つの、経済成長と、財政と、そして社会保障を一体として強くしていくという道は、必ず開けるものと考えております。
 国際的な問題についても触れたいと思います。日本は戦後60年間、日米同盟を基軸として外交を進めてまいりました。その原則は今も原則としてしっかりとそうした姿勢を続けていく必要があると考えております。それと同時に、アジアにある日本として、アジアの諸国との関係をより深め、さらにヨーロッパや、あるいはアフリカや、あるいは南米といった世界の国々とも連携を深めていく、このことが必要だと思っております。
 普天間の問題で日米関係を含めていろいろと国内の問題も含めて国民の皆さんにご心配をおかけいたしました。日米の間の合意はでき、それに基づいて進めなければならないと思っておりますが、同時に、閣議決定においても述べられました、沖縄の負担の軽減ということも真摯(しんし)に全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えております。たいへん困難な課題でありますけれども、私もしっかりとひとつの方向性をもってこの問題に取り組んでまいりたい、このように思っているところであります。
 そして、わたし、総理大臣としての仕事は何なのか。この間、テレビなど見ますと私が任命した閣僚や党の新しい役員が、それぞれマスコミの皆さんの取材を受けていろいろな発言をしているわけです。どうですか皆さん。私よりも10歳も20歳も若い民主党の閣僚や党役員の顔を見て、声を聞いてこんな若手が民主にいてなかなかしっかりしたこと言うじゃないか、なかなかこれならやってくれそうではないか、そういうふうに思っていただけたのではないでしょうか。
 私は鳩山さんと共に1996年に旧民主党をつくり、98年に新たな民主党、初代の代表となりました。その後、小沢前幹事長の率いる自由党と合併して、今の民主党になったわけですが、そこにそうした人材が集まってきたことがうれしいとともに、自信を持って今申し上げたような日本の改革を推し進めることができると思っています。
 民主党に集ってきた皆さんは、私も普通のサラリーマンの息子でありますけれど、多くはサラリーマンやあるいは自営業者の息子で、まさにそうした普通の家庭に育った若者が志を持ち、そして努力をし、そうすれば政治の世界でもしっかり活躍できる、これこそが本来の民主主義のありかたではないでしょうか。
 そのみなさんとともに、このような課題に取り組んでいくうえで私の仕事は一つの方向性をきっちりと明示し、そして内閣、あるいは党をその方向で議論するところは徹底的に議論をして、みんなが納得したうえでその方向にすべての人の力を結集していく、そのことが私の仕事だと考えている。
 総理になったからには、もうあまり個人的な時間はとれない。本当なら53番札所まできているお遍路も続けたいところだが、今しばらくはそれを後に延ばしても、ある意味では官邸を中心に、これこそが修行の場だという覚悟で、日本という国のため、さらには世界のために私のあらん限りの力を尽くして良い日本を、良い世界をつくるために全力をあげることを国民の皆さんにお約束して、私からの国民の皆さんへのメッセージとさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

最後の「私は1996年に民主党をつくり」云々以下は、まったくどうでもいい話。

しかし、消費税率の問題については、菅首相も民主党も、参院選では公約にはしない可能性が大きい。それにたいして、自民党は「消費税率10%への引き上げ」を公約にかかげるとしている。そうなると、参院選では、自民党が「民主党は消費税増税をやるのか、やらないか」と批判して、アホなマスコミが「民主党は、なぜ消費税増税を明言しないのか」などというトンチンカンな論評をして、それが参院選の争点、などと言うことになりかねない。しかし、それでは、どっちにどう転んでも、消費税増税しかないということになる。こんなばかげた争点は願い下げだ。

菅首相は、参院選までに、「強い経済、強い財政、強い社会保障」とは何なのか、その「成長戦略」を明らかにすべきだ。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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