N響×ネルロ・サンティ×アイーダ

NHK交響楽団10月定期公演Aプログラム(2010年10月15日)

11月のイベントの準備でテンテコ舞いで、連日、ノー味噌がツンツルテンになりそうな状況のなか、終業時刻になるとともに職場を抜け出し、NHKホールへ。6時開演ぎりぎりに、なんとか滑り込みました。

 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」(全曲、演奏会形式)

指揮はイタリア出身の大御所ネルロ・サンティ。「アイーダ」全曲を暗譜で振るのだからたいしたもんです。

演奏のほうはというと、NHKホールの音響の悪さや3階席ということもあって、前半(第1幕、第2幕)は、サンティがあれこれ細かい指示を飛ばしているのは見えたものの、まとまりがなくさっぱり。そのうえ、アイーダ役のアドリアーナ・マルフィージ(サンティの娘さんらしい)が声が出てなくて艶もなく、アムネリス役のセレーナ・パスクアリーニもいまひとつで、なかなか盛り上がってくれませんでした。そんななかでも、ラダメス役のサンドロ・パークの突き抜けた感じ(好みが分かれるだろうけど)と、エチオピア王アモナズロ役のパオロ・ルメッツ、祭司長ランフィス役のグレゴル・ルジツキが渋い声をたっぷりと響かせてくれたことが救い。しかし、一番の見せ場である第2幕のファンファーレで、肝心のアイーダ・トランペットの音程が不安定で、そのためか思い切りも悪く、大こけ。やっぱり今日はこんなものか…と、半ばあきらめていました。

ところが、休憩を挟んだ後半(第3幕、第4幕)が始まると、N響の音が見違える(聞き違える?)ほどよくなっているではありませんか! 弦のトゲトゲしさ散漫な印象がなくなって、サンティらしいしっとりとした音を響かせていました。パスクアリーニもかなり盛り返し、嫉妬に苦しむアムネリスを熱演。それに比べると、マルフィージは最後までいまいちでしたが。(カーテンはないけど)カーテンコールで一番喝采を浴びていたのはサンドロ・パークとグレゴル・ルジツキでした。

ネルロ・サンティはかなりご満悦のご様子。カーテンコールでは、後半舞台袖から歌っていた女声パートを、わざわざ袖裏まで出向いてステージに迎え入れたほど。最後はN響コンマスの篠崎さんまで引き連れてご退場となりました。(^_^)

それにしても、ヴェルディの歌劇は、話は単純なんですが、そこに登場する人と人との愛憎関係が複雑に入り組んでいて、おもしろいですねぇ。エチオピア王女であることを隠した女奴隷・アイーダとエジプトの将軍ラダメスの愛を軸に、ラダメスをめぐるアイーダとアムネリスの駆け引き、エジプトとエチオピアの確執、そして捕虜となって登場するアイーダの父・エチオピア王のアモナズロ。これら複数の軸が入り乱れて複雑に展開します。

第1幕、第2幕ではアムネリスは非常に嫌な女性なんですが、それが第3幕では激しい葛藤をみせ、第4幕になると嫉妬のあまり愛するラダメスを死に追いやることになって悲嘆にくれる哀れな女性へ。敗軍の将アモナズロは、捕虜となっても臆することなくわれわれも祖国のためにたたかったのだと胸を張り、さらに、今日はわれわれが敗れたが、明日はエジプトが敗者となるかも知れないと言って、悪びれることもなく慈悲を請うあたり、実に堂々としたもの。それなのに、捕虜が解放されると、とっととエジプトへの復讐をたくらみ、娘を利用しようとする。

結局、一番ちゃらんぽらんなのはラダメスなんでしょうか。アイーダがエチオピア王女だということを知らなかったという事情はあるにしても、一国を代表する将軍が女奴隷との愛をつらぬけると思っているところからして、かなりノー天気。第3幕で、アイーダから「逃げましょう」と迫られると、あっさりと二人で愛の森への逃避行を夢見るあたりも、かなりテキトー。アイーダやアムネリスがあれこれと思い悩むタイプなのに比べると、ラダメスは悩まなさすぎ。結局、こいつが原因なんじゃないか、なんて思いながら見ておりました。(^_^;)

ところで、「アイーダ」は、第1幕第2場の巫女たちの踊りや、第2場第1幕の子ども奴隷のダンスなどなど、要所要所で踊りを見せる場面があります。だから、演奏会形式となるとちょっとつらいものがあります。そういうことも含みつつ、まあ3,000円ちょいで「アイーダ」を楽しめたのだから、よしとすべきなのでしょう。

それにしても、今日は客がひどかった。時計のアラームは鳴るわ、携帯は鳴るわ、絶えず誰かが咳をするわ、傘をたおす奴はいるわ。後ろの席に座った学生(音大生?)は演奏が始まってからカバンのファスナーを開け閉めするし、座席の背もたれを後ろから何度も小突くし、プログラムをぱさぱさ音を立ててめくるし…。困ったもんです。

【演奏会情報】 NHK交響楽団第1682回定期演奏会(10月Aプログラム)
指揮:ネルロ・サンティ/ソロ:フラノ・ルーフィ(エジプト王)、セレーナ・パスクアリーニ(アムネリス)、アドリアーナ・マルフィージ(アイーダ)、サンドロ・パーク(ラダメス)、グレゴル・ルジツキ(ランフィス)、パオロ・ルメッツ(アモナズロ)、松村英行(エジプト王の使者)、大隅智佳子(女司祭長)/合唱:二期会合唱団/合唱指揮:河原哲也/コンサートマスター:篠崎史紀/会場:NHKホール/開演:2010年10月15日 午後6時

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

1件のコメント

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