メディアはなぜ共産党・市田忠義質問を取り上げないのか?

昨日の参議院予算委員会での、共産党の市田忠義書記局長の質問。被災地の医療機関の再建支援の問題に絞って取り上げ、たとえば「医療施設等災害復旧補助金」について、被災したその場所での復旧が条件となっていて、少しでも離れた場所に新たに病院・診療所を建て直すような場合には対象にならない問題を追及し、「柔軟に対応して使えるようにする」(小宮山厚労相)、「単なる原状復帰でなく柔軟な対応をする」(野田首相)と、これまでより一歩踏み込んだ回答を引き出すなど、大事な質疑となった。

ところが、今朝の新聞各紙を見てみると、この市田質問がまったく取り上げられていないのだ。「朝日」「読売」「毎日」ともに、予算委員会の質疑を取り上げた記事や質疑の概要を載せているのだが、被災地のお医者さんにとってはこんな大事な問題、なぜ載せないのだろうか。

被災全医療機関に支援を/“病院つぶし”転換せよ/参院予算委 市田書記局長が質問:しんぶん赤旗
生き永らえた命救えるのか/参院予算委 市田書記局長が追及:しんぶん赤旗

一番ひどいのは「朝日」。4面「焦点採録 予算委員会・参院29日」では、取り上げられているのは、植松恵美子氏(民主)、風間直樹氏(民主)、白浜一良氏(公明)、松あきら氏(公明)、小野次郎氏(みんな)、福島瑞穂氏(社民)のだけ。共産党の市田氏は名前すら登場しない。「朝日」の共産党嫌いは徹底しているが、質問者の名前にあげもしないというのは報道の公平さを欠くといわざるを得ない。

それに比べれば、「読売」は、質問者として市田氏の名前をあげているだけまだマシ(4面「参院予算委の詳報29日」)。といっても、実際に「主な質疑と答弁」として採録したのは、小野次郎氏、白浜一良氏、植松恵美子氏の3氏だけ。最後にとりあげたのは、小野氏の「ぶら下がり取材」についての質問なのだから、「ぶら下がり取材」のほうが被災地の医療機関の再建支援の問題より大事な問題だというのが「読売」の立場なのだろう。

「毎日」は、質疑の要旨などもなく、「首相答弁守りに終始/与野党議論深まらず」という記事のみ(5面)。そこで取り上げられているのは、福島瑞穂氏や自民党の質問のみ(ほかに、カコミで片山寅之助氏の質問)。記事の最後では「東日本大震災の復興増税のあり方など国会が本来なすべき議論は……総じて低調」と書いるが、それならば、震災復興の問題を取り上げた市田質問を取り上げるのがメディアの「本来なすべき」仕事ではないだろうか。

「東京」は「参院予算委の詳報」で、市田氏の質問も紹介しているが、取り上げたのは東日本大震災被災者の医療費の窓口負担免除措置の延長問題だけ。医療機関再建への支援問題は一行も取り上げられていない。

そういうなかで「日本経済新聞」は、5面「参院予算委 主なやりとり」で、市田氏の質問について、見出しは「被災者の医療費無料延長を」となっているものの、「医療機関への補助金は公的機関には出るのに民間にはほとんど出ない」と糾した点を取り上げ、厚労相が「地域の実情に応じられるように(補助金を)どのように使えるかを考えたい」と答えたことを紹介している。さすが、開業医も読者にもつ「日経」だけのことはあるというところだろうか。

市田氏の引き出した答弁は、満額回答ではないけれど、被災地でなんとか地域住民の願いに答えて診療所を再建しようとしているお医者さんたちには、大きな力になるものだ。そういう大事な問題を報道しようとしない大手メディアの姿勢こそが、いま問われていると思うのだが。

被災全医療機関に支援を/“病院つぶし”転換せよ 参院予算委 市田書記局長が質問

2011年9月30日(金)「しんぶん赤旗」

 日本共産党の市田忠義書記局長は29日の参院予算委員会で、東日本大震災により壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の医療機関の復旧について国が差を設け、住民の命が脅かされている問題を取り上げ、すべての医療機関を支援すべきだと主張しました。野田佳彦首相は、全壊した病院の復旧について「柔軟に対応する」などと答え、従来の枠を超えた支援を表明しました。 (関連記事)

厚労相 「知恵使い応援する」

 市田氏は、被災地で救われた住民が安心して住み続けられるためには、地域医療の復旧が不可欠だと強調。ところが、医療機関の復旧に補助金を出す「医療施設等災害復旧補助金」について、全壊した病院から一つも申請が出ていないことを告発しました。
 「なぜ全壊は申請がないのか」と市田氏がただすと、小宮山洋子厚労相は「その場で復旧することが条件」として、病院を新築する場合は対象外にしていることを表明。市田氏は、復旧が遅れ、入院機能がないために重症患者が亡くなるケースもあると迫ると小宮山厚労相は、「柔軟に対応して使えるようにする」、野田首相も「単なる原状復帰でなく柔軟な対応をする」と答えました。
 市田氏は、同補助金が公的医療機関のみが対象で、圧倒的多数の民間にはほとんど出ていない事実を示し、「公的病院と民間で差をつける必要があるのか。こういうのを血も涙もないというのだ」と追及。「国の政策医療(救急など)を担っているところには支援する」と開き直っていた小宮山厚労相も、「地元の人が困らないようあらゆる知恵を使って考える」「組み合わせなり新しい仕組みを考えるなりしっかり応援する」と言明しました。
 市田氏は、「選択と集約化」の名による医療構造改革で公立病院がつぶされ、大震災で壊滅的な打撃を受けたのに、復旧でも放置し差別されてきたと指摘し、「医療政策を転換することを強くもとめる」と強調しました。

患者負担無料の延長 市田氏要求に厚労相、「困らないよう判断」

 市田氏は被災者の患者負担無料化が来年2月に期限切れとなる問題をとりあげ、延長するよう求めました。
 市田氏は「仕事や収入の確保の道が見えないままで期限が切れれば大量の医療中断が発生して、命と健康が脅かされかねない」と主張。小宮山洋子厚労相は「被災地の状況などを踏まえて、困ることがないようにしっかり判断していきたい」と答えました。

生き永らえた命救えるのか 参院予算委 市田書記局長が追及

[2011年9月30日(金)「しんぶん赤旗」]

 「血も涙もない」政治なのか――。29日の参院予算委員会で日本共産党の市田忠義書記局長は、東日本大震災で被災したすべての医療機関の再建を支援せよと迫りました。

市田氏 全壊病院を災害復旧の対象にせよ
首相 「単なる原状復旧でなく柔軟に対応」

 岩手、宮城、福島3県では300の病院が被災し、いまだ20病院で入院機能が回復していません。医科診療所は1159施設が被災し、79施設が受け入れ不可の状態です。
 市田氏は、もともと医療過疎だった東北沿岸部で被災者が安心して住み続けるためには医療の復旧・復興が欠かせず、「すべての医療機関を国が応援するという立場が当然だ」と質問。野田佳彦首相は「医療全般がきちっと復旧・復興できるように国として責任を果たしていきたい」と答えました。
 その上で市田氏は、全壊した医療機関が国の補助対象から事実上外されているという重大問題を追及しました。
 国は2011年度第1次補正予算に医療機関への「災害復旧費補助金」を盛り込み、病院125件、医科診療所165件の申請が出されました。しかし全壊した医療機関は一つも含まれていません。
 市田 全壊した医療機関の申請が1件もないのはなぜか。
 小宮山洋子厚労相 (被災した)その場で再建することが条件になっている。
 高台などに移転する場合を対象外とする答弁。市田氏は「橋が洪水で流された場合には災害復旧の対象になるのではないか」と厚労相答弁の不合理をただしました。前田武志国交相は、被害にあったもとの橋の場所を移す場合でも、木の橋を被災後にコンクリートの橋に強化する場合でも「対象になる」と答えました。
 市田氏は「橋は対象なのに病院は事実上対象外だ」と批判。小宮山厚労相は「柔軟に使えるようにしていきたい」と答えざるをえなくなりました。野田首相も「単なる原状復旧でなく柔軟な対応、適切な対応をする」と述べました。
 さらに市田氏は、全壊した医療機関が仮設の施設で再開する場合に国が仮設診療所しか支援していない問題を追及しました。
 岩手県立高田病院(陸前高田市)の仮設診療所では入院機能がなく、毎日200人もの外来患者があるのに命を救えるのかと悲鳴が上がっています。
 市田 重症化した患者は車で1時間半もかかる内陸部の病院に搬送しなければならない。二つ三つの病院を転々として亡くなったお年寄りもいる。(入院機能をもつ)仮設病院を認めて助成すべきだ。
 厚労相 (災害復旧費補助金とはまったく別の)地域医療再生基金を、被災県が策定する医療の復興計画に(仮設病院が)盛り込まれる場合に使えるようにしたい。
 市田氏は「復興計画を待っていられない。全然スピード感がない」と政府の対応を批判しました。

市田氏 公的病院と民間で差をつけるな
厚労相「(補助金)使えるように考える。なければ新しい制度つくる」

 公的医療機関には補助金が出るのに、圧倒的多数をしめる民間医療機関にはほとんど補助が出ない――。市田氏は「医療施設等災害復旧費補助金」について、もう一つの重大な問題を告発しました。
 市田氏は「公立か民間か、病院か個人の診療所か、医科か歯科か産科かを問わず、みんな公共的、社会的役割を果たしてきた」と述べました。
 市田 公的病院と民間とで差をつける必要がどこにあるのか。
 厚労相 これまで中核的役割を担う公的病院、政策医療(救急など)を担う民間病院を(補助)対象としてきたが、地域の実情に応じてどのように使えるか考えていく。
 「補助を検討するということか」と確認する市田氏。小宮山厚労相は「組み合わせなり、うまくいかなければ、新しい仕組みを考えるなりして応援していきたい」と同意しました。さらに「お住まいの方が困らないようにあらゆる知恵を使う」と答え、災害復旧費補助金を適用する方針を言明しました。
 市田氏は、2億円も借金をして再建した宮城県気仙沼市の外科診療所長の話を紹介。「自己資金で再建したところも支援するのか」と確認すると、小宮山氏は「さかのぼって(補助を)出せるようにする」と表明しました。
 市田氏は「『選択と集中・集約化』の名による医療構造改革のもと、東北3県は医療過疎が深刻化し、地震と津波の直撃で壊滅的打撃を受けた。それを事実上、放置してきた医療政策を転換することを強く求める」と質問を締めくくりました。
 ところが、厚労省の官僚から耳打ちされた小宮山厚労相は慌てて、「先ほど申し上げたのは政策医療に関わる病院について、さかのぼってするということです」などと、前言を覆す答弁。市田氏は「さっきはそういっていない」と抗議し、「予算委員会の公式の答弁で、大臣が事前に通告していた質問に政策医療以外も助成すると言明したのだから、それを確認する」と述べました。

まだ議事録は出来上がっていないが、市田氏の質疑はインターネット中継の動画で見ることができる。(画質が超悪いので、見るというより聞くという感じだが)

2011年9月29日予算委員会 市田忠義(日本共産党):参議院インターネット審議中継

You Tubeにもっと見やすい動画がありました。
http://youtu.be/V2_eo4wW9Mw

【追記】
市田さんの質問が「しんぶん赤旗」に掲載されました。
被災した全医療機関へ国は支援を/参院予算委 市田書記局長の質問:しんぶん赤旗

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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