日給3000円で飛び込み営業のノルマ 違法インターンシップ

本日の「日本経済新聞」に載っていた記事。「就業体験」と言いながら、日給3000円で飛び込みの営業をさせるなど、違法なインターンシップが横行しているという。

就活生狙う違法インターン

社員のようなノルマ、バイトより低い賃金 「会社に利益」本来なら労働

[日本経済新聞 2011/12/11]

 就業体験を通じて学生の職業観を養うインターンシップ。就活生には役立つことも多いはずだが、就職難で焦る学生の心理につけ込んだ違法なインターンシップが横行している。「就業体験」を前面に出しながら、学生に営業ノルマを課したり、アルバイトよりも安い賃金で長時間働かせたり……。違法インターンシップの実態を報告する。
 「ノルマを達成しないといけないので、休みはとりづらい」
 都内の大学に通う木下優希さん(仮名)は、ある広告代理店のインターンを始めて半年以上になる。だが、インターンとは名ばかりで、社員と同様に新規顧客を開拓する営業のノルマを課せられている。現在は毎月20件の顧客獲得に追われる。
 最初に営業の方法をひと通り教えてもらった後は、基本的に1人で仕事をこなす。電話で見込み客のアポイントをとり、提案書を自分で作り、1人で営業に出かける。
 朝9時半には出社、定時では午後6時が終業だが、7時から営業進ちょく会議が定例化。結局、退社できる時間は夜9時ごろが多い。

条件記した「契約書」

 これはインターンと言えるのか。
 1997年9月の労働省通知によると、インターンシップにおける実習は「見学や体験的なもの」であり会社に利益や効果が発生したり、会社と学生の間に指揮命令の関係があったりする場合はインターンシップではなく、その学生は「労働者に該当する」としている。
 木下さんがインターンとなる際に会社に求められてサインしたという資料を見せてもらうと、そこには「アルバイト契約書」の文字が。労働条件も書いてある。
 「1日8時間半勤務」「日給8000円」「日給には2時間の『みなし残業』代を含む」
 会社側は「インターン」と説明しているが、これは完全に「労働」。しかし、日給を「定時の8時間半+みなし残業2時間」で割ると時給は約762円。最低賃金法が定めた東京都内の最低賃金837円を大幅に下回る。インターンシップと偽った違法な低賃金アルバイトと言える。
 もっと極端なケースもある。
 都内にある営業代行会社Aにインターンとして通う田中太(仮名)さんの日給は3000円だ。

「業務請負」装う?

 田中さんは朝9時前に出社。社員と一緒に朝礼に参加すると、社員から訪問販売に出かける地域を指定され、営業に飛び出す。自宅から会社まで往復で3000円以上かかるため、すでに日給を上回って「持ち出し」となっている。さらに、会社から営業先までの交通費も自腹だ。
 会社から指定された商材を売り込むため、1日に100件以上のオフィスに1人で飛び込み営業する。「ビルの中にあるすべてのオフィスを上から下までアポなしで訪問していく」。仕事がすべて終わるのは夜の9時から10時になることが多い。
 1日の営業ノルマは新規で2件の顧客獲得。1件も獲得できなかった日には、翌日の朝7時半から街頭に立って、募金集めの「研修」をしたり、道行く人に会社から指定された商材を販売したりするのだという。
 会社にはインターンが合計7人いる。みな同じ仕事内容で、田中さんが飛び込み営業で販売する商材を扱っているが、この商材に関わっている社員は「トレーナー」と呼ばれるインターンの教育係1人しかいない。事業はインターンの営業によって成り立っているのだ。
 この会社も田中さんとある契約を結んでいる。「業務の請負契約」。社員やアルバイトのような直接の雇用ではなく、業務委託とすることで、最低賃金法をくぐり抜けようとしていると見られる。
 しかし、ロア・ユナイテッド法律事務所の竹花元弁護士は「指揮命令関係があれば労働契約にあたる。今回のケースは請負を装っている可能性が高い」と指摘する。
 やはり違法なインターンシップと言わざるをえないようだ。
 景気の先行きが不透明で、就職活動も厳しさを増している。学生を狙った「違法なインターンシップはこれからも増える可能性がある」(竹花氏)。くれぐれも注意が必要だ。

作成者: GAKU

年齢:50代 性別:男 都道府県:東京都(元関西人) 趣味:映画、クラシック音楽、あとはひたすら読書

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