「読売」は“消費増税「必要」63%”というが、政府案賛成はわずか16%

消費税増税についての「読売新聞」の世論調査。見出しでは、消費増税「必要」が63%となっているが、内実をみると、そう単純ではない。

消費税率を2014年4月に8%に引き上げ、その後2015年10月に10%まで引き上げる政府方針について、「財政がさらに悪化しないように、政府の方針通りに引き上げるべきだ」と答えたのはわずか16%。「8%に引き上げるのはよいが、10%への引き上げは経済状況を見て判断すべきだ」29%、「経済状況が好転しない場合は、8%に引き上げる時期を遅らせるべきだ」31%、「引き上げは必要ない」17%と、77%が政府方針に注文をつけている。

消費増税は「必要」63%…読売世論調査:読売新聞
「社会保障」2012年1月面接全国世論調査:読売新聞

消費増税は「必要」63%…読売世論調査

[2012年1月29日01時15分 読売新聞]

 読売新聞社が21〜22日に実施した全国世論調査(面接方式)で、社会保障制度を維持するために消費税率の引き上げが「必要だ」と答えた人は63%に上った。
 ただ、消費税率を政府・与党案通りに「2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げるべきだ」と答えた人は16%にとどまった。多くの人は引き上げの必要性は認めながらも、近い将来の増税については慎重に考えているようだ。
 少子・高齢化によって、今の社会保障制度を維持できなくなるという不安を感じる人は93%に達した。
 制度の水準を維持するために「税金や保険料が今より高くなっても構わない」との答えは37%で、「今より高くならないようにすべきだ」の31%をやや上回った。負担増を容認する人が多数なのは、制度の将来に強い危機感があるためとみられる。

「社会保障」 2012年1月面接全国世論調査

[読売新聞 2012/01/29]

▽調査日:2012年1月21-22日
 対象者:全国有権者3000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
 方法:個別訪問面接聴取法、回収:1638人(回収率55%)

Q 現在の社会保障制度は、お年寄りの年金や医療、介護などの費用を、若い世代が負担する仕組みです。あなたは、少子化と高齢化が急速に進むことで、こうした社会保障制度を維持できなくなるという不安を感じますか、感じませんか。
大いに感じる 67
多少は感じる 26
あまり感じない 5
全く感じない 1
答えない 1
Q 今後の社会保障制度と、個人が負担する税金や保険料との関係について、回答リストの2つの意見のうち、あなたの考えに近い方をあげて下さい。
今の社会保障の水準を維持するためには、税金や保険料が今より高くなっても構わない 37
社会保障の水準が低下しても、税金や保険料が今より高くならないようにすべきだ 31
どちらとも言えない 31
答えない 1
Q あなたは、今後も増え続けていく社会保障に関する費用を、高齢世代と現役世代とで、どのように負担していくことが望ましいと思いますか。回答リストの中から、1つだけあげて下さい。
高齢世代の負担を増やす 8
現役世代の負担を増やす 17
高齢世代、現役世代ともに負担を増やす 62
その他 4
答えない 9
Q あなたは、今後、社会保障制度を維持するために、消費税率の引き上げが必要だと思いますか、そうは思いませんか。
必要だ 63
そうは思わない 33
答えない 4
Q 政府は、社会保障制度の財源として、消費税率を2014年4月に8%に引き上げ、その後2015年10月に10%まで引き上げる方針です。この方針について、回答リストの中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。
財政がさらに悪化しないように、政府の方針通りに引き上げるべきだ 16
8%に引き上げるのはよいが、10%への引き上げは経済状況を見て判断すべきだ 29
経済状況が好転しない場合は、8%に引き上げる時期を遅らせるべきだ 31
引き上げは必要ない 17
その他 4
答えない 3
Q 消費税率を引き上げると、所得の低い人ほど、負担が重くなるとされています。あなたは、この負担をやわらげるためには、どのような対策が必要だと思いますか。回答リストの中から、1つだけあげて下さい。
所得の低い人に対して、税金の一部を返還する 20
食料品など生活必需品の税率を低くする 68
対策は必要ない 7
その他 1
答えない 3
Q 政府は、社会保障制度を維持するのに必要な財源を確保するため、国の予算の無駄遣いを減らす努力をしていると思いますか、していないと思いますか。
十分にしている 3
多少はしている 16
あまりしていない 39
全くしていない 41
答えない 2
Q 国民年金や厚生年金、共済年金など、国の年金についてお聞きします。あなたは、国の年金制度を、全体として、信頼していますか、信頼していませんか。
信頼している 11
どちらかといえば信頼している 24
どちらかといえば信頼していない 32
信頼していない 31
答えない 2
Q 国の年金制度について、あなたが不満に思っていることがあれば、回答リストの中から、いくつでもあげて下さい。
将来どれくらいの年金をもらえるのかがわからない 50
世代によって納める保険料や支給される年金額に差がある 27
積立金の使い道や運用方法が不透明だ 50
国民年金の保険料を納めない人がいる 40
制度が複雑でわかりにくい 37
共働き、単身世帯、非正規雇用者の増加など社会の変化に対応していない 23
記録漏れや改ざんなどの問題がある 36
その他 2
とくにない 4
答えない 1
Q あなたは、現在、どの年金に加入していますか。回答リストの中から、該当するものを、1つだけあげて下さい。2つ以上の年金から支給を受けている場合は、加入期間が最も長いものをお答え下さい。
国民年金(自営業者、サラリーマンの妻、20歳以上の学生など) 41
厚生年金(民間の給与所得者) 48
共済年金(公務員、教員、団体職員など) 8
加入していない 2
答えない 1
SQ【前問の答えが「1」「2」「3」の人だけ】あなたは、現在、年金の支給を受けていますか、受けていませんか。
受けている 37
受けていない 63
答えない 0
Q 政府は、公務員などが加入する「共済年金」が、会社員などが加入する「厚生年金」よりも優遇されている状態を解消するため、2つの制度を厚生年金の水準に合わせて一元化することを検討しています。あなたは、この一元化に、賛成ですか、反対ですか。
賛成 74
反対 14
答えない 12
Q 政府は、年金が支給される年齢を、将来、68歳以降へ段階的に引き上げることを検討しています。あなたは、この引き上げに、賛成ですか、反対ですか。
賛成 20
反対 73
答えない 7
Q 政府は、企業に対して、希望する従業員全員を65歳まで再び雇用するように、法律で義務づけることを検討しています。これについて、回答リストの2つの意見のうち、あなたの考えに近い方をあげて下さい。
定年退職した後も一定期間、収入が得られるので、好ましい 61
企業の負担が増え、新たな雇用が減る可能性があるので、好ましくない 29
その他 2
答えない 8
Q 政府は、増え続ける医療費を抑制するために、高齢者が入院する期間を短くし、代わりに、自宅で医療を受けられる態勢を充実させる方針です。あなたは、この方針に、賛成ですか、反対ですか。
賛成 46
反対 45
答えない 10
Q 「病院などで患者が支払う診療費に、一律に100円程度の金額を上乗せして、がんなどの専門的で高額な医療費の財源とすべきだ」という意見があります。あなたは、この意見に、賛成ですか、反対ですか。
賛成 65
反対 28
答えない 8
Q 介護保険制度のために必要な費用は、利用者の増加によって増え続けています。あなたは、今後、どのような対策が必要だと思いますか。回答リストの中から、最も優先すべきだと思うものを、1つだけあげて下さい。
40歳以上の人が負担している介護保険料を引き上げる 11
39歳以下の人にも介護保険料を負担してもらう 34
介護サービスの利用者の自己負担を現在の1割から引き上げる 22
要介護度が軽い人を介護サービスの対象からはずす 22
その他 2
答えない 10
Q 少子化対策や子育て支援策について、回答リストの2つの方法のうち、あなたがより重点を置くべきだと思う方を、1つだけあげて下さい。
それぞれの家庭に直接、給付金を支給する方法 23
保育所の増設や育児休業制度の拡充など子育て環境を整備する方法 73
答えない 4
Q 「生活保護」を受けている人が増え続けています。生活保護に必要な費用を抑えるため、回答リストの2つの方法のうち、あなたがより重点を置くべきだと思う方を、1つだけあげて下さい。
審査を厳しくしたり、給付の水準を抑えたりする 39
働ける年代の受給者の就職を支援する仕組みを充実させる 57
その他 1
答えない 3
Q 年金や医療、介護などの社会保障に関する記録を、国が一元的に管理する「社会保障番号制度」の導入について、回答リストの2つの意見のうち、あなたの考えに近い方をあげて下さい。
年金、医療などの記録や情報を自分で確認しやすくなるので、好ましい 54
個人の情報が国に一元的に管理され、情報の流出も不安なので、好ましくない 36
その他 1
答えない 10

注目される数字はほかにもいつくかあります。

まず第一に、高齢化で社会保障が維持できなくなる不安を「大いに感じる」という人だけで67%、「多少は感じる」26%を合わせると、93%が「不安」を感じている。

年金制度を信頼しているかどうかの問には、「信頼している」35%(「信頼している」「どちらかといえば信頼している」合わせて)にたいして、「信頼していない」は63%(「どちらかといえば信頼していない」「信頼していない」合わせて)にものぼっている。

で、その「不安」や「信頼していない」の中身はというと、一番は「将来どれくらいの年金をもらえるのかがわからない」「積立金の使い道や運用方法が不透明だ」のそれぞれ50%。3位が「国民年金の保険料を納めない人がいる」40%、4位「制度が複雑でわかりにくい」37%、5位「記録漏れや改ざんなどの問題がある」36%と並び、「世代によって納める保険料や支給される年金額に差がある」は6位(27%)にすぎない。

結局、もらえる年金額をはっきりさせて、国民年金の納入率を上げること(ここに「制度が複雑でわかりにくい」というのも含まれるだろう)、運用を明確にして、記録漏れ・改竄問題の早期解決をはかるというのが、国民の求めるところだということだろう。

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