有効求人倍率1倍の内容は

有効求人倍率が13年ぶりに1.0倍になったというニュース。景気が回復しつつあることは確かですが、しかし、素直に良かったねと言ってられない現実があります。

毎日新聞が書いているとおり、13年前は失業率2.2%だったのがいまは4.4%。有効求人倍率が1.0に戻っても失業率はなかなか下がらない。そんな状態が定着しつつあります。
また、実際には非正社員の求人が1.58倍と多くて、正社員の求人倍率は0.65しかありません。新規求人数のうち、55%が非正規社員だといいます。これでは求人倍率が上がったからと言って、喜んではいられません。

さらに地方格差。愛知(1.61倍)、東京(1.54倍)にたいし、沖縄(0.41倍)、青森(0.44倍)など。東京を見ていただけでは実態は分かりません。NHKのニュースが、渋谷のハローワークを映しながら「かつては職探しをする人でパソコンは埋まっていたが、いまはまばら」みたいなコメントを流していましたが、あまりの手抜き、ジャーナリズム失格です。

有効求人倍率:13年ぶり1倍台に回復 正社員なお低調(毎日新聞)

有効求人倍率:13年ぶり1倍台に回復 正社員なお低調
[毎日新聞 2006年1月31日 22時28分(最終更新時間2月1日 2時17分)]

 05年12月の有効求人倍率が1.00倍になり、92年9月以来13年ぶりに1倍台に回復した。ただ、雇用調整をしやすいパート、派遣ら非正社員の求人の伸びに支えられており、正社員になれる人とそうでない人の格差の広がりをうかがわせる。地域間格差の拡大傾向も顕著なうえ、92年には2.2%だった完全失業率は2倍の4.4%で、労働市場の需給のズレも示した。政府は「雇用環境の改善が裏づけられた」と評価するが、同時に「影」の部分も浮き彫りにする結果と言えそうだ。

◇地域間格差は拡大

 「きめ細かな改革と同時に、きめ細かな政策をしてきた結果だ」
 安倍晋三官房長官は31日、厚生労働省が有効求人倍率を発表した直後の記者会見で、「1倍回復」をめぐって政府の政策を自画自賛した。
 しかし、1.00の内訳を見ると、胸を張ってばかりはいられない。非正社員が1.58倍に対し、正社員0.65倍。つまり正社員は、求職者1人につき0.65社分の採用枠しかない。
 パートを除く有効求人数は150万人で92年9月の1.2倍なのに対し、パートの求人数は71万人と3倍。新規求人数(70万6294人)のうち正社員の割合は44.9%で、1年前と比べても0.6ポイント下がっているのが実態だ。
 一方、小泉純一郎首相は31日の閣議後の閣僚懇談会で、失業率の改善が遅れている点に言及し、「まだまだ。そこは雇用の『ミスマッチ』だろうな」と指摘した。「ミスマッチ」とは、求人が増えても求職者が望む仕事とは限らない点を指す。
 実際、新規求人に対する就職件数割合である「充足率」は正社員が21.6%に対し、非正社員は17.2%で1年前より2.8ポイント低下。厚労省は「正社員を望んでも非正社員の求人しかないことも考えられる」と分析しており、企業に正社員採用を求める方針だが、採用時の非正社員化の流れを止めることができるかどうかは未知数だ。
 地域間格差もますます広がっている。都道府県別でトップの愛知県(1.61倍)は92年9月の数値を0.07ポイント下回ったものの、東京都(1.54倍)が0.62ポイント改善するなど、有効求人倍率が上位の都道府県の多くは92年9月時点を上回っている。
 これに対し、下位県は最下位の沖縄県(0.41倍)が0.11ポイント増だったの を除けば、青森県(0.44倍)が0.06ポイント減、高知県(0.48倍)が0.18ポイント減、長崎県(0.55倍)に至っては0.55ポイント減と半減しており、大半が92年9月の水準に戻ってはいない。
 川崎二郎厚労相は31日、トヨタ自動車のおひざ元である愛知県などを例に挙げながら「モノ作りで頑張った県がいい数字になっている」と指摘し、今後も回復傾向が続くとの見通しを示す一方、下位7道県には雇用関連予算を集中配分することで格差是正を図る方針を公表した。【吉田啓志】

◇参院選控え、自民が危機感…低倍率地域=昨年衆院選の苦戦地域

 有効求人倍率の地域格差拡大が自民党に対し、来年の参院選に絡んだ深刻な懸念をもたらしている。求人倍率が全国平均を下回った地域(ブロック単位)と、昨年9月の衆院選で同党が苦戦した地域が重なるからだ。格差拡大が党の支持基盤を弱体化させつつあるとも言え、青木幹雄参院議員会長ら参院幹部は苦戦が予想される参院選に危機感を強めている。
 衆院選で自民党が最も苦しい戦いを強いられたのが、求人倍率が全地域最低の0.63倍にとどまった北海道。「小泉ブーム」で全国的には圧勝したが、北海道の小選挙区は民主党の8人に対し、4人しか当選できなかった。倍率が2番目に低い九州、3番目に低い東北も東京などと比べると振るわなかった。
 旧来、自民党は地方に支えられてきた。ところが、地方での同党支持は先細りしつつあるのが実情で、全国を回る民主党幹部は「農村、漁村での自民党離れはすごい。小泉改革に怨嗟(えんさ)の声を上げている」と語る。
 こうした実情に、青木氏は1月24日の参院代表質問で「国内が『光と影』に二極分化し、格差が広がってきている」と首相に対応を迫った。参院自民党は参院選の1次公認を従来より前倒しし、5月の大型連休明けにも決定する方針だが、「弱体化した地方組織の立て直しが急務」というのが共通認識になりつつある。【宮田哲】

◇かなわぬUターン…ワースト2位の青森県

 有効求人倍率が0.44倍で下から2番目の青森県。全国最下位を脱したが、全国平均の半分にも満たない。
 求職者でごった返すハローワーク青森(青森市中央2)で31日、求人情報を検索していた女性(19)は約3カ月前、「地元に帰りたい」と群馬県の会社勤めからUターン。ハローワークに通い続け、事務の仕事を中心に5社を受けたが、すべて落ちた。今は「また県外に出なければ駄目かな」と考えている。
 県労政能力開発課によると、県内の求人が少ないのは(1)零細企業が多く、大口の求人がない(2)雪の影響で季節的な失業者が出る??などが理由。ハローワークの窓口で相談を受ける森恭二・統括職業指導官によると、毎日200人以上が相談に訪れる。「求人は多少増えてきてはいるが、派遣や下請けの求人ばかり。素直に喜べない」と森さん。政府が強調する「雇用環境の改善」が北国にはむなしく響く。【喜浦遊】

 【ことば】有効求人倍率 求職者1人に対し、何社の就職先があるかを示す数値。公共職業安定所(ハローワーク)に申し込まれている企業の有効求人数で集計する。倍率が1.00なら求職者と求人数が同数で、理論上は求職者全員が仕事に就ける。求人数が求職者を上回れば有効求人倍率は1を超えて就職が易しくなるのに対し、1を割り込めば就職が難しくなる。

だいたい、こういう事態になると、失業の原因は「ミスマッチ」だと言われます。つまり、求人があるのに、求職する側が選り好みをするから悪いんだ、というもの。しかし、「30歳未満」とかの年齢制限の付いた求人にたいして、「ミスマッチだ」と言われても、中高年はどうしようもありません。また、即戦力、経験者を求める企業に対し、フリーターを続けてきたような人は、必要なスキルアップができていないから、やっぱり枠から締め出されているわけです。そんな状態をそのままにして、「ミスマッチが原因だ」といって片付けるのは、一方的で、「負け組」切り捨ての議論に他なりません。

有効求人倍率1倍の内容は」への2件のフィードバック

  1.  NHKの報道は私も見ていましたが、全く同感です。しかし、「ジャーナリズム失格」というのではなく(それは妥当な評価と思いますが)、意図的なものだと私は思います。

  2. ピンバック: 東方見聞人

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