置塩信雄『蓄積論』(7)

第1章 資本制経済の基礎理論

4、実質賃金率と資本蓄積

b、実質賃金率の一時的決定

iii)需給の一時的均衡点

両部門の需給の一致点が成立したとして、生産量、雇用量、実質賃金率は、(1)生産財に対する新規投資需要、(2)消費財に対する資本家需要、(3)両部門の資本家の生産決定態度にどのように依存しているか。(86ページ)

●資本家の生産財に対する蓄積需要

  • いずれかの部門で蓄積需要が増大すると、生産財部門で需給が一致するには、生産財生産量が増加するか、消費財生産量が減少するかしなくてはならない。
  • そのためには、生産財価格ではかった実質賃金率が低下しなくてはならない。
  • 生産財価格で測った実質賃金率が低下したときには、生産財部門の利潤率は上昇し、生産財部門の生産量は増加するし、他の事情が等しい限り、消費財部門の利潤率は低下し、消費財部門の生産量は減少する。

●消費財部門では

  • 生産財生産量の増加は、生産財部門の雇用労働の増大を引き起こし、他の事情一定ならば、消費財需要を増大させる。
  • 需給が一致するには、消費財生産が増大するか、消費財価格で測った実質賃金率が下落して、消費財需要の増大を押さえるしかない。
  • いずれの場合も、消費財で測った実質賃金率は下落する。なぜならば、生産財で測った実質賃金率が下落しているにもかかわらず、消費財生産部門の利潤率が増大し、消費財部門の生産量が増大するには、消費財価格が貨幣賃金率より上昇する外はないからである。

かくして、蓄積需要の増大は、生産財、消費財の価格を、いずれも貨幣賃金率以上に上昇させ、実質賃金率を低下させる。生産財の生産量は増加させるが、消費財の生産量は減少させる場合もありうる。したがって、両部門の雇用量総計は減少することもありうる。蓄積需要が増大したとき、消費財の生産量、したがって、消費財に対する需要が減少することがあるという結論は、のちに恐慌の問題を考える際に重要な役割を果たす(第3章第2節、a項参照)。この場合の消費財需要の減少は、実質賃金率の下落や、雇用量の減少による労働者の消費需要の減少によるのである。このとき、消費財部門の利潤率は、生産財価格の上昇のため下落している。蓄積需要の減少の場合はこの逆。(87ページ)

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