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西崎文子『アメリカ外交とは何か』

本カバー

西崎文子さんの『アメリカ外交とは何か――歴史の中の自画像』(岩波新書、2004年7月刊、本体780円)を読み終えました。アメリカという国の、独立以来の、とくに第5代ジェイムス・モンロー大統領がとなえた「モンロー・ドクトリン」いらいの外交のあり方がコンパクトにまとめられています。アメリカの孤立主義と理解されている「モンロー・ドクトリン」が、実は「西半球」(南北アメリカ大陸)はアメリカの勢力範囲だとして、ヨーロッパの干渉を拒絶するイデオロギーだったということがよく分かります。

また、「自由」の理想を世界中に広めるという“使命感”に燃えて、結局、武力をもちいて「自由」を押しつけるというアメリカ外交の逆説――。著者は、モンロー主義に始まり、第1次世界大戦のときのウィルソン大統領の外交政策、第2次世界大戦後の「トルーマン・ドクトリン」、さらにベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争という歴史をたどりながら、アメリカ外交の分裂・矛盾を明かしてゆきます。

しかし、アメリカの対中国政策が、ほとんど取り上げられていないのがちょい残念。そのため、第2次世界大戦については、中国をめぐる日米対立も出てこず、もっぱら対独、対ヨーロッパの問題として取り上げられるだけになっています。ベトナム戦争の問題は取り上げられていても、米中接近、ニクソン訪中問題はちらっと登場するだけで分析はされていない、などなど。そのこともあって、アメリカの外交政策問題は論じながら、日米同盟、安保条約の問題も出てこない。こういうと、「アメリカの自画像」と重ねてアメリカ外交の問題点を論じるという著者には酷な注文でしょうが、チャルマーズ・ジョンソンの『帝国アメリカと日本』を読んだばかりだったので、ちょっと不満が残ります。

本書では、ベトナム戦争に関連して、マクナマラの『回想録』が取り上げられています。僕は、この『回想録』は読んでなかったのですが、国防長官だった人物がベトナム戦争は間違いだったと指摘した本だということで評価できるんだろうと思っていました。しかし西崎さんのコメントは、同書にはベトナムへの謝罪の言葉は登場しないと、相当厳しいもの。なるほど、そういう面もあるかと思いました。

しかし、結末近くになって、ベトナム戦争の拡大に抗議した人物として、ジョン・ケリー(今の民主党の大統領候補)が登場(もちろん、ジョン・ケリーが「反戦ベトナム帰還兵死の会」の代表だったことは事実だが)したり、「ブッシュ政権への批判は大統領選挙で」みたいな叙述が登場したりして、話の落とし所が見えてしまった感じです。その民主党は、大統領選の選挙綱領で、ブッシュ政権を批判しても、イラク戦争そのものを批判せず、イラク占領の継続を明確に謳っています。この選挙綱領の採択そのものは、本書執筆後の出来事とはいえ、保守政党としての民主党のそうした面にきちんと批判の目を向けることが、アメリカの政治過程を見る上では大切なことだとあらためて感じました。

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