自民党がNHKに圧力

NHKが2001年1月に放送した特集番組で、日本軍の従軍慰安婦問題で昭和天皇の責任を追及した民衆法廷を取材しながら、昭和天皇を有罪とした判決を放送しないなど、事前の説明と異なる放送を行った問題で、当時、安倍晋三・官房副長官(当時、現・自民党幹事長代理)と中川昭一・「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」代表(当時、現・経済産業相)がNHK幹部(総局長ら)にたいして、「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするように」「それができないならやめてしまえ」などと発言し、圧力をかけていたことが明らかになりました。

NHK番組に中川昭・安倍氏「内容偏り」 幹部呼び指摘(朝日新聞)

NHK番組に中川昭・安倍氏「内容偏り」 幹部呼び指摘

 01年1月、旧日本軍慰安婦制度の責任者を裁く民衆法廷を扱ったNHKの特集番組で、中川昭一・現経産相、安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで「偏った内容だ」などと指摘していたことが分かった。NHKはその後、番組内容を変えて放送していた。番組制作にあたった現場責任者が昨年末、NHKの内部告発窓口である「コンプライアンス(法令順守)推進委員会」に「政治介入を許した」と訴え、調査を求めている。
 今回の事態は、番組編集についての外部からの干渉を排した放送法上、問題となる可能性がある。
 この番組は「戦争をどう裁くか」4回シリーズの第2回として、01年1月30日夜に教育テレビで放送された「問われる戦時性暴力」。00年12月に東京で市民団体が開いた「女性国際戦犯法廷」を素材に企画された。
 ところが01年1月半ば以降、番組内容の一部を知った右翼団体などがNHKに放送中止を求め始めた。番組関係者によると、局内では「より客観的な内容にする作業」が進められた。放送2日前の1月28日夜には44分の番組が完成、教養番組部長が承認したという。
 翌29日午後、当時の松尾武・放送総局長(現NHK出版社長)、国会対策担当の野島直樹・担当局長(現理事)らNHK幹部が、中川、安倍両氏に呼ばれ、議員会館などでそれぞれ面会した。
 中川氏は当時、慰安婦問題などの教科書記述を調べる研究会「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」代表、官房副長官でもあった安倍氏は同会元事務局長だった。
 関係者によると、番組内容の一部を事前に知った両議員は「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組にするように」と求め、中川氏はやりとりの中で「それができないならやめてしまえ」などと放送中止を求める発言もしたという。NHK幹部の一人は「教養番組で事前に呼び出されたのは初めて。圧力と感じた」と話す。
 同日夕、NHKの番組制作局長(当時)が「(国会でNHK予算が審議される)この時期に政治とは闘えない。番組が短くなったらミニ番組で埋めるように」などと伝えて番組内容の変更を指示したと関係者は証言。松尾、野島両氏も参加して「異例の局長試写」が行われた。
 試写後、松尾氏らは(1)民衆法廷に批判的立場の専門家のインタビュー部分を増やす(2)「日本兵による強姦や慰安婦制度は『人道に対する罪』にあたり、天皇に責任がある」とした民衆法廷の結論部分などを大幅にカットすることを求めた。さらに放送当日夕には中国人元慰安婦の証言などのカットを指示。番組は40分の短縮版が放送された。
 このいきさつを巡り、NHKで内部告発をしたのは、当時、同番組の担当デスクだった番組制作局のチーフ・プロデューサー。番組改変指示は、中川、安倍両議員の意向を受けたものだったと当時の上司から聞き、「放送内容への政治介入だ」と訴えている。
 一方、中川氏は朝日新聞社の取材に対し、NHK幹部と面談したことを認めた上で「疑似裁判をやるのは勝手だが、それを公共放送がやるのは放送法上公正ではなく、当然のことを言った」と説明。「やめてしまえ」という言葉も「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやるというから『だめだ』と言った。まあそういう(放送中止の)意味だ」と語った。
 安倍氏は「偏った報道と知り、NHKから話を聞いた。中立的な立場で報道されねばならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った。国会議員として言うべき意見を言った。政治的圧力をかけたこととは違う」としている。
 番組内容を事前に知った経緯について両議員は「仲間から伝わってきた」などとし、具体的には明らかにしていない。
 NHK広報局は「(内部告発に関しては)守秘義務がありコメントできない。番組は、NHKの編集責任者が自主的な判断に基づいて編集したものだ」としている。
 〈憲法21条〉 (1)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。(2)検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
 〈放送法3条〉 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない。 (asahi.com 01/12 08:52)

<NHK特番>自民・安倍幹事長代理らが放送直前に介入?(毎日新聞)

<NHK特番>自民・安倍幹事長代理らが放送直前に介入?

 NHKが01年1月に放送した旧日本軍の慰安婦問題を裁く民衆法廷を扱った特集番組の直前に、当時、官房副長官だった安倍晋三・自民党幹事長代理と、中川昭一経済産業相がNHK幹部に対して、「公正中立な立場で放送すべきだ」などと指摘していたことが分かった。NHK関係者によると、一連の不祥事を機に昨秋設置された内部告発窓口の「コンプライアンス推進委員会」(委員長・海老沢勝二会長)に「放送内容に政治介入があった」などの訴えが昨年末、番組担当者からあったという。
 経営広報部は「(コンプライアンス推進委に提出されたものは)守秘義務があるのでコメントできない。番組は、NHKの編集責任者が自主的な判断に基づいて編集した」と話している。
 番組は「戦争をどう裁くか」4回シリーズの第2回「問われる戦時性暴力」(01年1月30日教育テレビで放送)。旧日本軍の慰安婦問題を市民団体「VAWW―NETジャパン」(西野瑠美子共同代表ら)が主催した民衆法廷で裁く様子を扱ったもので、「判決」は昭和天皇らの戦争責任を認め「有罪」としたが、この部分などは放送されなかった。
 同団体は同年7月、「約束通りの番組を放送する法的義務を怠った」としてNHKと制作会社2社を相手取り、東京地裁に損害賠償を求め提訴。東京地裁は昨年3月、取材交渉を行った制作会社に100万円の支払いを命じたが、同団体と制作会社はこれを不服として東京高裁に控訴している。
 NHKや安倍氏らにあてた抗議声明を発表後、会見した西野共同代表は「NHKは裁判で政治介入はないと主張し、偽証を続けていた。怒りとともに報道機関としてのNHKに大きな危機感を覚える」と話した。また、東京高裁から17日に予定されていた控訴審の結審の延期も検討しているとの連絡を受けたことを明らかにした。【NHK問題取材班】
 ▼安倍氏のコメント この模擬裁判は、主催者側の意図通りの報道をしようとしているとの関係者からの情報が寄せられたため、事実関係を聴いた。その結果、明確に偏った内容であることが分かり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した。
 ▼中川氏のコメント 公正中立の立場で放送すべきであることを指摘したものであり、政治的圧力をかけて中止を強制したものではない。また、(NHKによる)説明の前後における番組制作の経緯については関知していない。[毎日新聞 1月12日21時55分更新]

<NHK特番>民衆法廷の主催者が抗議声明 NHKを批判(毎日新聞)

<NHK特番>民衆法廷の主催者が抗議声明 NHKを批判

 旧日本軍の慰安婦問題を裁く民衆法廷を扱った特集番組をNHKが01年1月に放送する直前に、当時、官房副長官だった安倍晋三・自民党幹事長代理が「公正中立な立場で放送すべきだ」などとNHK幹部に指摘していた問題で、中川昭一・経済産業相もほぼ同内容の指摘をNHK幹部にしていたことが分かった。
 民衆法廷を主催した市民団体「VAWW―NETジャパン」の西野瑠美子共同代表らは12日、NHKや安倍氏らにあてた抗議声明を発表後に会見し、「NHKは裁判で政治介入はないと主張し、偽証を続けていた。怒りとともに報道機関としてのNHKに大きな危機感を覚える」と話した。また、東京高裁から17日に予定されていた控訴審の結審の延期も検討しているとの連絡を受けたことを明らかにした。【NHK問題取材班】

■「NHKは襟をただせ」田中早苗弁護士
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送番組委員会副委員長を務める田中早苗弁護士の話 民衆法廷の判決が放送されなかったのはいかにも不自然だと思っていた。NHKは「編集権」を掲げているが、問題なのは政治的な圧力があって屈したのではないかと視聴者に疑われてしまうことだ。この点は、政府と対立した場合、対決姿勢を鮮明にする英国放送協会(BBC)と大きく異なる。公共放送だからといって、政府や政治と緊張関係を持ってこなかった責任は大きい。NHKは襟をただすべきだ。[毎日新聞 1月12日21時33分更新]

同事件の経過

2000年8月
NHKエンタープライズ21のプロデューサーが製作会社ドキュメンタリージャパン(DJ)を訪ね、制作依頼
10月
DJが「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)に取材依頼
12月8日
女性国際戦犯法廷開始
12月中旬
NHK「ニュース7」で法廷のニュースが放送され、右翼がNHKに抗議
2001年1月19日
NHKの教養部長による異例の試写。編集方針を変更し再編集にとりかかる。松井やより代表のインタビュー削除と法廷の『天皇有罪」判決シーンをナレーションで処理するよう指示される。
24日
部長試写会。加害兵士の発言削除、関連する高橋哲也氏(当時、東大助教授)のスタジオ部分を撮り直すことに。
27日
右翼約50人がNHK放送センターに乱入
28日
右翼が再び押しかけ、番組の放送中止を求める要望書を手渡す。夜、DJ抜きでNHK上層部による局内試写。
29日
安倍晋三、中川昭一両衆院議員がNHK幹部を呼び、番組を「偏った番組」と指摘。幹部らが内容の一部削除を指示。
30日
NHK幹部が番組内容のカットをさらに指示。40分に短縮して午後10時から放送。
2月
VAWW-NETがNHKに公開質問状。
7月
VAWW-NETがNHKと同エンタープライズ、DJを相手取り、提訴。
8月
コメントをずたずたにカットされた米山リサ・米カリフォルニア大学準教授が「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)に救済申し立て。
2003年3月
BRCが「NHKの編集は行き過ぎ」「放送倫理に違反する結果を招いた」とする見解を発表。
2004年3月24日
一審、NHKについては責任を不問、DJについてのみ100万円の賠償命令を下す判決。
4月1日
原告が控訴。

※「しんぶん赤旗」2005年1月13日付を参考に、記事などから補強。

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  1. よく考えるぎょるいのひとver.3.09 - trackback on 2005/01/14 at 00:06:38

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