9条改憲こそ、アメリカの“押しつけ”

自民党新憲法起草委員会の「前文に関する小委員会」(委員長・中曽根康弘元首相)が28日までにとりまとめた中間集約では、「現行憲法は米国からの押し付け」という立場を前文に盛り込もうという話らしい。

しかし、「押しつけ」というなら、9条改憲こそ、1947年いらい一貫してアメリカが日本に押しつけようとしてきたもの。アメリカとの世界的な軍事共同作戦を展開するために、「アメリカの押しつけ憲法だ」といって憲法9条を改悪しようというこの不条理。

船曳建夫・東大教授の談話は、このねじれを的確に指摘しています。

憲法改正案・前文 「方向づけ」急ぐ自民(毎日新聞)

憲法改正案・前文 「方向づけ」急ぐ自民

◇“押し付け”脱却狙い

 自民党新憲法起草委員会の「前文に関する小委員会」(委員長・中曽根康弘元首相)が28日まとめた中間集約は、日本の国民性や歴史・伝統・文化などを明示し「本来の保守」の姿を鮮明にしたのが特徴だ。「現行憲法は米国からの押し付け」という立党以来の改憲志向を背景に、新憲法を契機に「真の独立国家」としての存在感や「日本らしさ」を内外にアピールしたいとの強い思いがにじむ。作業を加速度的に進める自民党には今回の中間集約を4月に迫った衆参憲法調査会の最終報告書に反映させたいとの思惑ものぞく。(5面に中間集約要旨)【宮下正己、松尾良、木村健二】

 「前文の表現を決めたことで、他の小委の議論を妨げてはいけない」。28日の前文小委。自民党憲法起草委の舛添要一・事務局長は注文を付けた。
 小委員長の中曽根元首相の意向で、前文小委は当初先月14日に予定されていた初会合を11日も前倒ししてスタート。包括的な前文の議論が先行し、他の小委での条項の議論を引っ張る形になっているためだ。
 しかし、同小委では28日、少人数の作業部会で条文化の作業に入ることが了承された。自民党は「悲願」の憲法改正に向けて今年1月、新憲法起草委員会を設置。その後、首相経験者らを取り込んだ小委員会を連日のように開いている。
 自民党が見据えるのは衆参両院の憲法調査会が4月中にまとめる最終報告書。衆院調査会が「多数意見を報告書に反映させる」との方針を決めており、これに先駆けて結論を見せることで、改憲の「方向づけ」をリードしたいとの思惑が議論を加速させている要因だ。ただ、改憲には他党との協調も欠かせない。党内でも「過度の自己主張」に陥らない現実路線を志向する動きもある。

◆自民案

◇「独立われらの手で保持」/「国家社会に義務果たす」
 中間集約は自民党が11月の立党50周年で公表する新憲法草案に盛り込むべき11項目でまとめられている。内容は「家族の尊重」から安全保障まで多岐にわたるが、一貫しているのは「自らの手で自らの価値を守る」との精神だ。現行憲法が「普遍性の高い価値を盛り込む一方で、無国籍的になっている」(幹部)との党内世論が色濃く反映されている。
 中間集約は、守るべき価値として、自然とそれにはぐくまれた国民性など「日本らしさ」を提起。ただ、具体的に何を盛り込むかは線引きが難しい。参考例では、天皇制以前を念頭に「縄文の昔から生きとし生けるものに畏敬(いけい)の念を抱いてきた」との文案と、「和をもって貴しとなし、すぐれた文化を築いてきた」との聖徳太子以降の価値観が並立された。
 安全保障については「現行憲法は人類の普遍的な願いを強調するあまり、国と国民の生存に対して無責任」(幹部)との考えから「自ら守る」姿勢を鮮明にした。
 中間集約は国民に新たな義務を課すことを容認、権利重視の戦後社会が「行き過ぎた個人主義」につながったとの考えを示した。また、「米国の押しつけ憲法」との抑圧感を解消すべく、「自主憲法」の明示も盛り込まれたが「かえって卑屈にみえる」(中堅)との意見もある。

◇変える理由不明――船曳建夫・東京大大学院教授の話

 自民党の中間集約を読む限り、どうして現行憲法の前文を変えなければいけないのか分からない。根拠のない歴史やロマンを付け加え、前文の書き換え自体が目的化している。
 自主憲法明確化の部分には、現行憲法を「押しつけ憲法」とする自民党の自意識が表れている。本当に自立している人が自分から自立するとは言わない。国家像や政体はまともな記述になっているが、現行憲法の前文でも全部言っていることだ。
[毎日新聞 2005年3月1日 東京朝刊]

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憲法改正:自民改憲草案中間集約要旨

<憲法前文に盛り込むべき事項>
 ◇わが国の自然と国民性=参考例・わが国は太平洋、日本海の波洗う美しい島々からなる▽和をもって貴しとなし、この美しい国土にすぐれた文化を築いてきた
 ◇わが国の歴史、伝統、文化等=参考例・天皇を文化、国民統合の象徴として国家を形づくった
 ◇目指すべき国家像=参考例・国家、社会及び家族の健全で有為な形成者となるための教育を重視する▽古きよき伝統と文化に支えられた精神と民主平和の原理が融合した道義的国家を目指す
 ◇政体、統治の基本原則=略
 ◇国民主権及び議会制民主主義の原則=略
 ◇平和主義及び国際協調主義の原則=参考例・永久に他国を侵略しない。圧政と暴力、恐怖と欠乏に直面する諸国民が自由にかつ健やかに生存する権利を有することを認め、その権利の実現のためには力を惜しまない
 ◇国の独立及び国民の安全確保=参考例・わが国の独立及びわれらの安全と生存は、われらの手で永久に保持する
 ◇国民の権利及び義務の根本原理=参考例・日本国民は、基本的人権を常に公共の利益のために行使する責任を負う
 ◇家族の尊重=参考例・家族がわが国の伝統と文化の担い手であり、教育の場であり、真の心の安らぎが得られるところであると確信し、その価値を尊重し保護する
 ◇地方自治の原則=略
 ◇自主憲法=参考例・大日本帝国憲法及び日本国憲法の果たした歴史的意義を想起、主権者として自らの意思により、何者にも強いられることなくこの憲法を制定する
 <前文の文体及び分量について>=略
[毎日新聞 2005年3月1日 東京朝刊]

「毎日」の中間集約の報道記事を読むと、多少表現は変わっても、先日「東京」が紹介していた中曽根試案と基本は同じ。学校の校歌じゃあるまいし、「太平洋の波洗う美しい国」などと、憲法前文で宣言されてもねえ…。
「家族の尊重」という項目を取り上げていますが、そこまで家族を大切にするのなら、お父ちゃんが残業、残業で子どもが起きてる時間に家に帰れない、という現状をまず改めましょう。夕方5時になったら、お父ちゃんは家庭へ。これでこそ、家族の尊重でしょう。

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