アラ還のオッサンがマルクスの勉強やらコンサートの感想やらを書き込んでいます

「大統領の理髪師」

2005年3月25日 at 00:33:58

大統領の理髪師(チラシ)

今日もまた、渋谷Bunkamuraル・シネマで映画を見てきました。韓国映画「大統領の理髪師」です。(今年9本目…8本目が飛んでいるのは投稿し忘れ。あとで書き込みます)

青瓦台(韓国大統領府)のすぐ隣りにある孝子洞で理髪店をひらいているソン・ハンモ(ソン・ガンホ)は、ある日突然、朴正熙大統領の専属理髪師になってしまう。大統領主催の昼食会に招かれて、商売も順調にゆき、万事うまくいくかに見えたとき、北朝鮮ゲリラの青瓦台襲撃事件が起こる…。しかし、「フィクション」であるこの映画では、このゲリラたちはマヌケ揃いで、みんな下痢をして、しゃがみ込んでいるところを捕まってしまいます。しかし、そこから市民の間に下痢(流行性腸炎)が広がり始めます。「下痢をしている者は、スパイに接触したに違いない」と言われ、下痢をした者は“マルクス病”と呼ばれ、次々と情報部に逮捕され、拷問をされる。そんなとき、ハンモの息子ナガンも下痢になり、情報部に送られてしまう。ハンモは必死になってナガンの行方を捜すが、どこに連れて行かれたか分からない。やがて“マルクス病”騒動は収まり、ようやくナガンも戻ってくる。しかし、ナガンは歩けなくなっていた…。

笑わせ、泣かせ、松竹新喜劇のような荒唐無稽なストーリーが展開します。しかし、折り目折り目に…

1960年代から70年代の韓国の重要な政治的事件が描かれています。最初が、李承晩大統領が不正選挙で4選を決めた1960年3月15日。そして、ナガンが生まれるのは、この李承晩政権が学生たちによって倒された4.19革命の日(1960年)。そして、ナガンがやっと歩けるようになった頃には、軍事クーデターが起こり、朴正熙が大統領に(1961年5.19事件)。そして、青瓦台襲撃事件(1968年)があり、ハンモが青瓦台に通うようになって12年たったとき、朴大統領が宴席で中央情報部長に射殺される事件が起こる…、などなど。

さらに、ホンモノよりちょっと格好良すぎるチョ・ヨンジンが演じる朴正熙大統領が、「四捨五入」は日本が持ち込んだ者だから一掃したいと言っておきながら、突然日本語で「今日も元気にいきましょう」(←記憶モードなので適当)と喋ってみたり、「満洲に行った頃…」などと語って、植民地時代に日本軍の士官だったことを自慢してみたりとか(朴正熙は、しばしば政権延命のために「反日」を利用したけれども、実は「親日」だった)、その朴が殺された後には、しっかり全斗煥のそっくりさんまで登場。そして、ハンモはもういっぺん大統領の理髪師になれと言われますが、全斗煥の頭をみて、ハンモは、「閣下の髪が伸びた頃にまた来ます」(全斗煥は禿げていた)と言ってしまう…、などなど、キツ〜〜〜イ諷刺が織り込まれています。

ところで、“マルクス病”で捕まったナガンが情報部の職員に「尋問」される場面で、なぜか、「チョウチョ?、チョウチョ?♪」の音楽が流れます。これって、もちろん日本の童謡ですよね? なぜそれが…? 韓国の人も、この曲は気に入ってくれたのでしょうか? それとも「日本」を思い起こさせるものとして挿入されたのでしょうか? う〜ん、知りたい…。(^^;)
 ↑
チョウチョチョウチョは、ドイツ民謡らしいです。(04/03追記)

という訳で、金大中事件で初めて「韓国」という国に関心を持ち、高校生の頃には、朴正熙「維新体制」下の息の詰まるような様子を『韓国からの通信』(岩波新書)で読み、学生時代に朴正熙暗殺事件があり、その直後に、軍事政権に反対して立ち上がった光州市民が軍隊にふみにじられていく様子を中継するテレビを呆然と眺めた経験を持つ世代にとって、この映画は、笑いつつも、いま民主主義と繁栄を謳歌しているように見える隣国の、そこに至るまでの苦しい歴史を思い浮かべずにはいられない作品でした。

→公式ホームページ:大統領の理髪師

→第2次世界大戦後の韓国の歴史を年表にしてみました。韓国の歴史

【映画情報】監督・脚本:イム・チャンサン/出演:ソン・ガンホ(ソン・ハンモ)、ムン・ソリ(ソン・ハンモの妻)、イ・ジェウン(ナガン=ソン・ハンモの息子)、チョ・ヨンジン(朴大統領)、ソン・ビョンホ(大統領警護室長)、パク・ヨンス(中央情報部長)/2004年 韓国

Similar Articles:

Tags:

Print This Post Print This Post

人気ブログランキングに参加しています。よかったらクリックしてください。

26 Responses to “「大統領の理髪師」”

  1. 大統領の理髪師

    ソンガンホ主演の映画。最近みている韓国映画は重たいものがおおいのでソンガンホの映画に期待した。
    期待通り。庶民の映画って感じ。寅さんぽいかな。はじめから笑いまく…

  2. 大統領の理髪師(孝子洞理髪師)

    この映画は面白い。
    私の笑いツボにハマル。ハマル。
    面白すぎて、のた打ち回ってしまった。

  3. トラックバックありがとうございます。

    GAKUさんのとても詳しい記事に感心するばかりです。韓国の現代史を勉強するとより深い映画の見方ができますね。

    わたしは74年生まれ。小学校に上がる前後に「金大中氏に死刑判決」というニュースを見たことをおぼろげながら覚えています。

  4. 大統領の理髪師

    監督:イム・チャンサン  出演:ソン・ガンホ ムン・ソリ  
    9.5点 ガンホワールド全開です。  
     と・に・か・く、ソン・ガンホの演技に笑わされて…

  5. 『大統領の理髪師』韓国の年代記にして心に沁みる人情劇。

     ソン・ガンホ演じるソン・ハンモという理髪師は、平凡すぎるくらい平凡な純朴で正直な男。ところがどんな運命のイタズラか、たまたま大統領官邸に近い街に住んでいたが為…

  6. コメント&トラバありがとうございました!ほんまや〜、“松竹新喜劇のような”って書いてある〜!
    大阪では東京に遅れること半月での公開でしたが、韓国のサイトで見つけてから待ち遠しかった作品です。
    『殺人の追憶』でもそうでしたが、容疑者への拷問シーンなどは面白可笑しく描けば描くほど哀しいですね。
    イデオロギーなんて今の日本では死語みたいな気がしますが、けして無縁ではないということもあらためて教えてくれるのが韓国の歴史映画ですね。これからもよろしくお願いします。

  7. こんにちわ。トラックバック、ありがとうございます。
    ソン・ガンホの出ている「殺人の追憶」冒頭に「これは軍事政権下に起こった事件をもとにしている」とクレジットが出ますが、それを見ながら、「そういやいつ、どうやって軍事政権って終わったっけ?」と思ったりします。ここ数年韓国映画を見る機会が増え、「ペパーミント・キャンディ」や「二重スパイ」などその歴史を関係さる作品も見ているのですが…。歴史を知ると、作品をもっと味わえると思いつつも、なかなか学ぶ機会を得られません。まぁ、歴史がわからなくても、十分面白かったんですけど。
    「大統領の理髪師」はすごくファンタジックで、よかったです。「そして一家は、いつまでも仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」って感じで。でもそんなに昔のことではないんですよね(^^;。

  8. 「大統領の理髪師」を見ました

    今週末で終映と聞き、渋谷のBUNKAMURAル・シネマで「大統領の理髪師」を見てきました。先月見た「復讐者に憐れみを」の口直しに…「復讐者〜」もいい出来の作品だ…

  9. これは楽しみ♪ 大統領の理髪師

    関東方面では早くも上映されている様子・・・。大統領の理髪師です
    この映画、個人的にメッチャ楽しみで、というのも自身の職業であるから

    で紹介したその時その…

  10. はじめまして、TBありがとうございました。
    たくさん笑って泣きました。そして、辛い時代を乗り越えてきた韓国の人たちの思いが胸に刺さる映画でした。
    朴大統領暗殺事件は高校生のときです。隣国が辿ってきた現実を映画を通じて知る機会が増えました。

  11. 「大統領の理髪師」

    初めの方のひどい選挙違反に始まり、最近これくらい笑った映画はない。ただ笑わせるだけでなく、子供が拷問を受けて足腰が立たなくなるあたり、リアルに描かれたら見ていら…

  12. 『大統領の理髪師』

    『大統領の理髪師』公式サイト

    監督:イム・チャンサン

    出演:ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン
    2004年/韓国映画/116分

  13. ソン・ガンホ新作『南極日記』5月19日韓国公開決定!!

     韓国の新作オカルト映画ぢゃないっすよ。ポスターかなりコウェ〜(by 真鍋かを

  14. 花の終わり

     咲く花に〓安江さんの思い出〓

     金沢に横安江町というところがある。私がいた頃は、アーケードになっていたが、江戸時代から続く古い商店街だ。真宗の盛んな土地…

  15. 朴正熙(パク・チョンヒ ぼく・せいき)韓国大統領

    北朝鮮問題が世間を騒がしています。史上最悪の部類に属する圧制のもと、
    北朝鮮はどうなっていくのでしょう?
    ところで、私(40代)が小学生の頃に聞かされた話では、…

  16. 「大統領の理髪師」劇場にて

    日曜日にファボーレ東宝で『大統領の理髪師』を観てきました。

    主演は『殺人の追憶』『シュリ』『JSA』の「ソン・ガンホ」、共演に『オアシス』『ペパーミント・キャ…

  17. 試写会「大統領の理髪師」

    試写会「大統領の理髪師」開映19:00@ガスホール

    「大統領の理髪師」The President’s Barber
    配給=アルバトロス・フィルム
    監督 イム・…

  18. 大統領の理髪師 韓国もヒドイ国だったんだな?。。

    ●大統領の理髪師を鑑賞。 1960年代の韓国。大統領官邸“青瓦台”のある町、孝子

  19. TBさせていただきました。
    韓国が軍事政権下だったことは、つい最近のことなんですよね。
    ソウル五輪が民主化韓国をアピールする場だ、というのを当時新聞か何かで読んだ記憶があります。
    イム・チャンサンは若い監督ですので、ナガンの視点で描かれたこの映画は監督の視線でもあったのかな?と、思ったりします。
    映画の中で子供たちが「花いちもんめ」とそっくりの遊びをしているのも気になりました。あれは日本から来たものなのでしょうかね?

  20. 乙酉年葉月四ノ壱 大統領の理髪師

    大統領の理髪師@早稲田松竹
    2004/韓国/イム・チャンサン/孝子洞理髪師

     大統領官邸がある孝子洞の町では人々は盲目的に与党支持者になっている。現職大統領を…

  21. 「大統領の理髪師」(韓国 2004年)

    理髪店の主人が、政争に巻き込まれてしまう悲劇&喜劇。 権力者と庶民の対比、滑稽さと辛辣さ・・・。

  22. 映画「大統領の理髪師」

    ?中村 祐介, イム チャンサン大統領の理髪師

    ビデオメーカー大統領の理髪師

     

     この映画は、1960年代から70年代。…

  23. 「大統領の理髪師」

    極々一般庶民の理髪師のお父さんとお母さんと息子の3人の生きた、60年代から70年代の韓国現代史を描いた人間ドラマ。

    事実ではないフィクションを描いて…

  24. 大統領の理髪師

    「これ面白いから観た方がいいよ!」と聞き、DVDで観ました。

    1960年代から1970年代末までの20年間
    韓国の独裁者として君臨した朴正煕。

  25. <大統領の理髪師> 

    2004年 韓国 117分
    原題 The President’s Barber
    監督 イム・チャンサン
    脚本 イム・チャンサン
    撮影 チョ・ヨンギ…

  26. 大統領の理髪師

    大統領の理髪師(2004/韓国)
    原題: 孝子洞理髪師、THE PRESIDENT’S BARBER
    評価(お奨め度)★★★☆☆
    監督: イム・チ…

Trackback This Post

http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2005/03/25003358/trackback/

Leave a Reply