花見の前に…

佐藤俊樹著『桜が創った「日本」』

そろそろ東京でも桜が咲き始めましたが、今年のお花見の前に、ぜひ読んでおきたいお薦めの本があります。佐藤俊樹著『桜が創った「日本」』(岩波新書)です。

いま「桜が咲き始めた」と書きましたが、その桜は何か?といえば、気象庁の開花宣言でも基準にされているソメイヨシノです。葉が出る前にいっせいに花を咲かせ、公園や並木通りでは、文字どおり、煙るように一面の花となるソメイヨシノ。「桜」といわれれば、誰もが、こうした満開のソメイヨシノを思い浮かべるに違いありません。
また、60年前までは、「同期の桜」などといわれ、パッと咲き、さっと散る、散り際の良さが「日本人らしさ」といわれました。

しかし、こうした桜の景色は、実は、ごく最近(著者は、大正以降だといっています)のことなのです。

そもそも、ソメイヨシノという品種自体が、実は、幕末から明治の初めにつくられたもの。従って、それ以前の日本の桜の景色は、ソメイヨシノが一面に咲き誇る、今どきの景色とは全く違っていたのです。

だいたい、そもそも何でソメイヨシノがいっせいに同じ時期に咲くかといえば、ソメイヨシノは接ぎ木で増やすもの、分かりやすくいえばみなクローンだから、同じように咲き、同じように散るわけです。世の中の桜の大部分がソメイヨシノになる以前には、桜といっても、ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどいろいろな種類があって、それぞれ咲く時期も違い、同じ種類でも木によって時期がずれるため、人々は1カ月ほどにわたって、桜の花を楽しんだそうです。

いまも、上野公園にも靖国神社にも、ソメイヨシノ以外の桜はたくさんあります。漠然と桜を見上げるのでなく、これは何の桜かな?と思って眺めてみるのも、面白いかも知れませんよ。

ちなみに、本書は、桜についての植物学的研究ではなく、「桜=ソメイヨシノ=日本らしさ」という独特の言説(ディスクール)を分析したものです。お間違いのないように。(^^;)

【書誌情報】著者:佐藤俊樹/書名:桜が創った「日本」―ソメイヨシノ起源への旅/岩波新書 新赤936/出版社:岩波書店/刊行年:2005年2月18日/定価:本体740円+税/ISBN4-00-430936-0

それから、桜の品種が気になる人は――

東京の桜の名所・新宿御苑の桜の種類は、こちらのサイトから。

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  1. はじめまして。
    トラックバックとコメントありがとうございました。
    リンク先の新宿御苑のサクラはとても参考になりました。

    今週は晴れの日が続くみたいなので、ソメイヨシノも一気に開花するのではと思っています。
    御苑の近くに会社があるとは本当にうらやましいですね。
    僕なら、毎日昼休みに行ってしまいそうです。

    それでは、これからもよろしくお願いします。

  2. 仕事をしていた頃は季節の移り変わりを楽しむ余裕がなかったのですが、無職になってから(主婦になったのですが)、散策をしながら、季節の移り変わりを楽しんでいます。
    私の中では桜=ソメイヨシノだったのですが、ゆっくり世の中を歩いてみると、ソメイヨシノ以外の桜って色々あることに気づきます。河津桜とかしだれ桜とか…これらは少し早めに咲く桜ですね。前は気づきませんでした。先日銀座を歩いていたら、京橋のところにきれいな大島桜が咲いていました。「あら、こんなところに」と写真をパチリ。
    でも「桜だ!」と思っていたら、その実杏の花だったということもあったり(笑)<遠目に似てませんか?

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