自爆テロ犯射殺、実は無関係なブラジル青年

イギリスで、21日、ブラジル出身の青年が自爆テロ犯と間違えられ、警察に射殺された事件について。

イギリス警察が、事件については謝罪したものの、「射殺する」との立場を変えていない。ブラジルでは無防備な青年を「野原の兎を試し打ちするように」背後から射殺したとして、抗議が広がっている。

ブラジル青年誤射で英外相が謝罪 銃弾は8発(CNN.co.jp)
故郷ブラジルで抗議デモ、英テロで誤射、死亡の青年(CNN.co.jp)
「世界は9/11後、眠ってしまった」 ブレア英首相(CNN.jp)
英警察、伯人労働者を射殺=職務質問もなく=伯外相、国際問題扱い要求=射撃正当化におののく出稼ぎ(ニッケイ新聞) 

ブラジル青年誤射で英外相が謝罪 銃弾は8発
2005.07.26 Web posted at: 10:55 JST- CNN

 ロンドン(CNN) ロンドン21日に起きた同時テロの容疑者と間違われてブラジル人電気技師、ジャン・チャールズ・デ・メネゼスさん (27)が警官に射殺された事件で、ストロー英外相は25日、訪英中のアモリン・ブラジル外相に「実に、実に申し訳ない」と謝罪した。一方、事件を扱う検死法廷は同日、デ・メネゼスさんが8回にわたり撃たれていたと明らかにした。
 ストロー外相はアモリン外相と会談後の共同記者会見で、「この会談をこのような状況で開かなくてはならなかったことを、深く遺憾に思う。メネゼスさんの家族や友人、ブラジル政府とブラジル国民に私自身の弔意をお伝えしたい」と述べた。外相は、遺族への補償を「同情的かつ速やかに」実現したいと述べ、また現在、司法解剖を受けている遺体も速やかに遺族に返還すると約束した。
 アモリン外相は、英国政府から事実関係について「徹底的な」内部調査を実施すると約束されたと説明。またデ・メネゼスさんは二度と帰ってこないが、「慎ましい」遺族は正当な補償を受けるべきだと強調。「それで衝撃や不安がやわらぐものではないが、謝罪の言葉のほかに何か確かなものを受け取ることになる」と述べた。
 アモリン外相はさらに、テロとの戦いは「人権を十分に尊重した形で行われなくてはならない。今回のような形が続けば、テロリストを利することになる」と指摘した。
 英国政府やロンドン警視庁は、自爆テロ犯の摘発には今後も、殺害を意図した発砲もやむを得ないという立場を堅持し、国民の理解を求めている。
 一方、デ・メネゼスさん射殺について審問を開始したサウスワーク検死法廷は、遺体は8回被弾していると明らかにした。誤射事件についての調査は、「警察への苦情に関する独立委員会(IPCC)」が所管している。
 ロンドン警視庁はIPCCに対してすでに目撃者100人以上の証言や、200種類以上の証拠資料を提出したと説明している。

自爆テロ犯にはその場で射殺もやむを得ないとしても、自爆テロ犯「かも知れない」というだけで射殺するというのは、人身保護律いらいのイギリスの伝統をくつがえすもの。ブラジルでは、当然のように、抗議デモが行われている。

故郷ブラジルで抗議デモ、英テロで誤射、死亡の青年
2005.07.26 Web posted at: 18:18 JST – CNN/AP

 ブラジル・ゴンザガ──ロンドンで起きた同時テロの容疑者と間違えられ、地下鉄駅内で射殺された、電気技師ジャン・チャールズ・デ・メネゼスさん (27)の故郷ブラジル南東部ゴンザガで25日、デ・メネゼスさんの親族や友人数百人が、ロンドン警視庁を非難するデモを行った。誤射した警官の逮捕を求めている。
 デモの参加者たちは、「英警察こそテロリスト」といった垂れ幕を持ち、「謝罪は無意味。公正を求める」と口にしながら、ブレア首相の謝罪はまったく不十分だと訴えた。
 ゴンザガ市長は、デ・メネゼスさんが頭部に7発、肩に1発の銃弾を受けたことに憤り、誤射は「暗殺」だとして、「ブレア首相が謝るのは簡単だが、意味がない。警官が武装していない英国に、一体何が起こったんだ」と、怒りをあらわにした。
 また、22日に射殺されたデ・メネゼスさんの遺体を、いつブラジルへ移送するのかを英国が明らかにしないことにも怒りの声を挙げ、ブレア首相に対し、デ・メネゼスさんの遺体を早く帰国させるよう求めている。
 ブラジルではこのほか、国内各地で遊休地の実力占拠などの運動を進めている土地なし農民運動(MST)も、26日にブラジルの英国大使館前とサンパウロの英領事館前で、デモを実施する予定。

ブレア首相は、↓こんなふうに言っているけれど、自分たちが、目を覚ましたはいいけれど、寝ぼけたまま銃をぶっぱなしている、とは考えないのだろうか?

「世界は9/11後、眠ってしまった」 ブレア英首相
2005.07.27 Web posted at:11:50 JST – CNN

ロンドン(CNN) ブレア英首相は26日、01年9月11月の同時多発テロで世界は瞬間的にテロの脅威に気づいたが、その後はまた「眠りに戻ってしまった」と述べた。ロンドン同時多発テロを受けた対テロ法強化案を説明するため、野党幹部と会合した後、報道陣に語った。
 保守党のハワード党首と自由民主党のケネディー党首と会談した後、官邸で定例の記者会見に臨んだブレア首相は「私にとって9/11は目覚ましの合図だった。とすると問題は何なのか。世界の大部分が、9/11でパッと目を覚ましはしたが、それは一瞬のことで、すぐまた横になって眠りに戻ってしまったのが問題だ」
 「これほど根の深い問題だけに、テロリストたちとありとあらゆるレベルで対峙(たいじ)しなければ、解決のしようがない。対峙するというのは、彼らの手法だけでなく、考え方もだ」とブレア首相は強調した。
 イラク戦争に参加したことがロンドンのテロの原因だと一部で批判されていることについて、首相は反論し、「テロリストはイラクやアフガニスタンを理由に使って参加者を集めている。しかし問題の根はもっと深いところにあると、ほとんどの人は分かっているはずだ。イラクの状態に心を痛めるからこそテロ行為に走るのだなどと、とんでもないことを主張する連中がいかに卑劣か、あからさまにするべきだ。イラクを心配しているというなら、なぜたくさんの子供たちの中に自動車爆弾でつっこんでいくのか」と批判。
 「理由は探せばいくらでもある。(イラク戦争のような)ことが、彼らの歪んだ理屈や論理に影響しないと言っているのではない。しかし、私たちがそれに妥協してはならない。(テロリストが)どのような理屈で自分たちの行為を正当化しようとしても、私たちはその理屈に、ほんのわずかでも譲歩するべきではない」と首相は力説した。
 今月7日と21日の同時多発テロ後のロンドン市民の対応については、「心配しなくていいなどと、そんな馬鹿げたことを言うつもりはない。もちろん気がかりだろうし心配なはずだ。しかしロンドン市民の反応は素晴らしいと思う。日々の生活を続けようという意志の方が、心配よりも強い。それが一番いい姿勢だと思う」と評価した。
 首相は、対テロ法を強化した改正案は9月中に野党に提出したいと述べた。

↓これは、ニッケイ新聞でも、日経新聞にあらず。ブラジルの日系新聞の記事。同じブラジルの新聞記事を日本語に翻訳したもの。「野原の兎を試し打ちするように」背後から射殺したという書きっぷりに、ブラジル国民の受け止め方が端的に示されている。
※ちなみに伯はブラジルのこと。

英警察、伯人労働者を射殺=職務質問もなく=伯外相、国際問題扱い要求=射撃正当化におののく出稼ぎ

 【エスタード・デ・サンパウロ紙25日】伯国人労働者に対する無差別射撃を正当化する英スコットランドヤード警察の見解にブラジル政府は24日、遺憾の意を表明した。英政府は犠牲者に対する哀悼の意を示し、射殺事件を特別に捜査すると約束したものの射殺は妥当とみなした、テロ対策は人権擁護を伴うべきなのに無差別射撃を禁じた部分を無視したとする声明をブラジル政府が発表した。訪英中のアモリン伯外相は25日、ストロウ英外相と会い、ジェアン・C・メネゼス氏の射殺事件について説明を受ける予定となっている。
 同警察は、職務質問も停止命令もなく、野原の兎を試し打ちするように背後から無防備の一市民であるブラジル人電気工を射殺したという。英国ではアングロ・サクソンか白人でなければ、テロリストの嫌疑を掛けられ、英政府が公式見解として無差別射撃を正当化したことがパニックを引き起こしている。
 ブラジル人出稼ぎは英政府の公式見解におののき、ブラジル政府の外交折衝を待っている。スコットランドヤードM15やM16(警察)は、確かな根拠に基づく行動をして欲しいと訴えた。今回の事件を見る限り職務質問の余地はあり、闇雲な発砲は軽率で英警察の信用を失墜したとした。
 英国就労に赴いたブラジル人出稼ぎの生活環境は、益々窮屈になっている。ブラジル人子弟に対する医療補助や学校教育は、特に深刻である。それでも米国への不法入国による出稼ぎよりは、まだ魅力らしい。EUに東欧十カ国が加盟して以来、ブラジル人不法入国者が急増し、どこの国でもトップを占めている。
 英政府は2004年以降、空港へ降り立つブラジル人の増加に目を光らせている。英国は、ブラジル人に限り査証前身元調査を在外公館に要求したが中止になった。英政府のブラジル人処遇は、人種偏見として国際法で訴える動きもあった。
 しかし、在英ブラジル人は増える一方で、ロンドンだけで15万人と推定される。在伯英大使館に毎日、350人のブラジル人が入国許可申請のため訪れている。英国の不法入国は、短期ビザで入国し、期限終了後も居座るケースが多い。期限後は偽パスポートを入手して永住する。
 ブラジル人労働者の射殺は、英国民の間でも賛否両論が拮抗している。英国のマスコミは、一斉に警察の越権行為をテーマに挙げた。世界の一流紙オブザーバーやサンディ・テレグラフ、サンディ・ミラー、伊紙カリエ・デル・セラ、西紙エル・パイス、米紙ニューヨーク・タイムズが、テロ対策という名の一般市民無差別射撃を取り上げた。
 ブラジル政府は、英政府の対応が伯英外交関係を軽視したものとして不信感を表明した。英外務省と英警視総監の声明は、以前からブラジル政府が表明していた無差別殺りくを禁じたテロ対策の見解を歪め、非戦闘市民を射殺した英警察を正当化したと、伯外務省をさらに刺激した。
 ブラジル政府はテロ撲滅には協力するものの、一人歩きを始めたテロ対策の真意がどこにあるのか、テロの真相を重視している。国連改革案の協議で日本やドイツ、インドなどのG4会議参加のため訪英中の伯外相は、ブラジル人の射殺事件を国際問題として扱うよう要求した。[ニッケイ新聞 2005年7月26日(火)]

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