7月の完全失業率4.4%に悪化

7月の完全失業率(季節調整値)は4.4%で、6月より0.2ポイント悪化。5カ月ぶりに失業率がアップしました。多分日経新聞が指摘するように、多少とも景気が良くなったということで転職する人や新しく職探しをする人が増えたことが要因なのでしょう。

そもそも完全失業率という統計は奇妙なもので、「完全失業者」になるためには、職探しをしていることが条件です。だから、景気がよくなって新しく職探しを始める人が増えると、見かけ上失業率は上がることがあります。

逆もあって、不況・失業がひどくなって、「どうせ探したって仕事はない」と求職活動をあきらめる人が増えれば、統計上は失業率が下がってしまうという奇妙なことも起こります。だから、失業率が上がった下がったというだけではなく、雇用状況全体をみる必要があります。

その点でむしろ問題になるは、就業人口が全体として減っていることです。ちょうど「朝日」8/29付で、慶応大学の樋口美雄氏が次のように指摘していました。

 高齢化・人口減少社会の雇用政策は、失業率を下げるより、実際に働く人の比率(就業率)をひきあげることが大切だ。女性や高齢者をいっそう活用し、税や社会保障制度も含めて就業意欲を高めないといけない。[朝日新聞 2005年8月29日付朝刊]

で実際に、就業率はどうなっているかというと、この10年間に61.8%(94年)から57.6%(04年)へと4.2ポイントも低下しています(総務省統計局「労働力調査」)。実数で124万人も減っているのです。

就?状態別15?以上人口と就?率

就業状態別15歳以上人口(単位:万人、%)
15歳以上人口
〔A=B+
C+D〕
就業者
〔B〕
完全
失業者
〔C〕
非労働力
人口
〔D〕
失業率
〔C÷
(B+C)〕
就業率
〔B÷A〕
94年 10,444 6,453 192 3,791 3.0% 61.8%
95年 10,510 6,457 210 3,836 3.2% 61.4%
96年 10,571 6,486 225 3,852 3.3% 61.4%
97年 10,661 6,557 230 3,863 3.4% 61.5%
98年 10,728 6,514 279 3,924 4.0% 60.7%
99年 10,783 6,462 317 3,989 4.5% 59.9%
00年 10,836 6,446 320 4,057 4.5% 59.5%
01年 10,886 6,412 340 4,125 4.7% 58.9%
02年 10,927 6,330 359 4,229 5.1% 57.9%
03年 10,962 6,316 350 4,285 4.9% 57.6%
04年 10,990 6,329 313 4,336 4.4% 57.6%

高齢化が進んでいるから就業人口が減って当然だと思うかも知れませんが、統計的には、この間の人口トレンドとしては、団塊ジュニア世代(30?34歳層)が増えて、むしろ就業人口を押し上げる方向に作用しているそうです(詳しくは原田泰・阿部一知「なぜ就業率が低下したのか」、『経済セミナー』2005年8月号を参照。これについては、私自身、以前に紹介記事を書きました)。

年金や社会保障の将来を考えても、働く人を増やして、年金や社会保障の「支え手」をどうやって大きくするかが大事です。その意味でも、就業率の低下、就業人口の減少をどうするのかということをもっと真剣に議論すべきです。

この点でも、樋口氏の指摘には耳を傾けるべきものがあります。たとえば、この間、労働者派遣法の改正がおこなわれ、派遣の対象職種が拡大されてきました。政府や財界は、それによって雇用のチャンスが拡大し、それぞれの働き方にふさわしい仕事につけると言ってきました。しかし、本当にそれでよかったのか? という問題です。

樋口氏は、非正規雇用の拡大で社会の格差が拡大している、使い勝手のいい非正規雇用を増やす「規制緩和」だけでよいのかと指摘します。

 派遣法改正は……雇用機会を増やす意味でミスマッチ(すれ違い)の解消には一定の成果があった。しかし本来、派遣労働者は悪まで一時的な雇用者。いつまでも直接雇用されない不安定雇用を増やした弊害もある。社会の階層化につながる危険性が残っている。
 ……
 実際は格差は拡大し固定化する傾向が強まった。将来に希望を持てない人が増え、正社員の長時間労働も増えている。労働関係の規制緩和が使い勝手の良い非正規雇用者を中心に進み、平行して取り組むべき正規雇用者との均等処遇や、採用弾力化が進んでいない。[朝日新聞 2005年8月29日付朝刊]

そして、最後に小泉内閣の構造改革路線全体について、「社会が活力をとりもどすため構造改革は必要だ」という立場からではあるけれども、次のように批判しています。

 しかしすべてを民間に任せれば解決するわけではない。何が政府の果たすべき役割で、何を民で進めるのか再検討も必要だ。誰もがいつからでも挑戦できるセーフティーネット(安全網)を用意し、公正に競争できる土俵を整える役割を政権は一層進めてほしい。[同前]

7月の完全失業率、4.4%に上昇・雇用好転で職探し増える(日経新聞)

7月の完全失業率、4.4%に上昇・雇用好転で職探し増える(日経新聞)

 総務省が30日発表した7月の完全失業率(季節調整値)は4.4%と、5カ月ぶりに前月比で0.2ポイント上昇した。条件のよい仕事を求めて仕事をやめたり、新たに職探しを始める人が増えたことが響いた。就業者数は6410万人と前年同月比で3カ月連続で増え、7月の有効求人倍率(季節調整値)も前月比0.01ポイント高い0.97倍と、12年9カ月ぶりの水準を回復。景気回復を受けた雇用情勢は改善している。
 完全失業者数は前年同月比で29万人減の289万人。会社の倒産やリストラ、定年など「非自発的失業」が27万人減の98万人となり、24カ月連続で減った。
 男女別の完全失業率は男性が4.5%と前月比で0.1ポイント上昇。女性も4.3%と0.4ポイント上昇した。雇用改善をにらみ、25?44歳の女性を中心に、条件のよい仕事への転職を目指すなど自己都合の離職が男女計で5万人増えたほか、主婦などが新たに職探しを始めて完全失業者に回ったことが失業率を押し上げた。[NIKKEI NET 2005/08/30 10:40]

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