横浜事件、再審始まる

横浜事件の再審が始まりました。

横浜事件というのは、戦時下の弾圧事件です。永原慶二監修『岩波 日本史辞典』では、次のように説明されています。

 横浜事件 戦時下の言論思想弾圧事件。総合雑誌「改造」1942年8・9月号に掲載された「世界史の動向と日本」が共産主義に基づく敗北主義であるとして、執筆者の細川嘉六が検挙され、また、世界経済調査会の川田寿はアメリカ共産党と関係があるとして検挙された。これらに端を発し、神奈川県特高警察は、富山県泊町での細川の出版記念会を、日本共産党再建のための懐疑とでっち上げ、編集者・文化人ら総勢60数名を検挙し拷問を加え、4名が獄中で死亡。また、中央公論社と改造社には、情報局から解散命令が出され、言論が強圧的に封殺された。(『岩波 日本史辞典』1999年から)

しかも驚くべきことに、横浜事件で、治安維持法違反で有罪の判決は、敗戦直後の1945年8月から9月にかけて下されたのです。

「横浜事件」再審始まる 弁護側は無罪主張(東京新聞)

「横浜事件」再審始まる 弁護側は無罪主張

 戦時中最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の再審初公判が十七日午前、横浜地裁(松尾昭一裁判長)で始まった。雑誌編集者らが神奈川県警察部特別高等課(当時)に治安維持法違反容疑で逮捕され、終戦直後の混乱期に非公開の即決裁判で有罪判決を受けてから六十年。事実上初となる今回の公開法廷で、既に他界した再審被告五人の名誉回復や拷問捜査の実態解明がどこまで進むのか、注目される。
 旧刑訴法下で有罪が確定し、死亡した元被告の再審が開始されるのは初めて。再審被告の弁護側は、拷問で自白が強要された経緯などを公判で立証し、あくまで無罪判決の言い渡しを求めた。一方の検察側は、「治安維持法は刑が廃止されたほか当時の罪の大赦も済んでいる」として裁判手続きを打ち切る「免訴判決」を主張した。
 初公判の冒頭、松尾裁判長は、当時の裁判記録が現存しないため、弁護団が復元した判決文の内容を審理対象とみなすことについて確認した。検察側は異議を申し立てなかった。
 弁護側は森川金寿弁護団長(92)が冒頭意見を陳述。「(再審請求開始から)約二十年の長期間を経て再審公判が開かれる段階になった。貴重な再審公判で特高警察の暴力の犠牲になった元被告の汚名を晴らし、その名誉を回復するために全力を尽くしたい」と述べた。午後の公判では、元被告らの証言記録など約四十点を新証拠として提出する。弁護側は「公開法廷で司法の戦争責任も問いたい」としている。
 検察側が「免訴判決」を求めても、松尾裁判長は、訴訟を打ち切らない考えを既に弁護側、検察側双方に伝えている。判決は年明けにも言い渡しが見込まれる。
 再審公判が始まった元被告は次の通り=かっこ内は当時の所属。
 木村亨氏(中央公論社)▽小林英三郎氏(改造社)▽由田浩氏(古河電工)▽高木健次郎氏(日本製鉄)▽平館利雄氏(満鉄調査部)
 横浜事件 神奈川県警特高課による戦時中の大規模な言論弾圧事件の総称。雑誌編集者ら60人以上が「共産主義を宣伝した」として治安維持法違反容疑で逮捕され、過酷な取り調べで4人が獄死。30人余りが起訴され、多くは終戦直後から同法廃止まで2カ月ほどの間に執行猶予付き有罪判決を受けた。
 戦後、拷問を加えた元特高幹部3人が特別公務員暴行傷害罪で有罪となる。再審請求は4次にわたり、横浜地裁は2003年4月、第3次請求で再審開始を決定。東京高裁も05年3月にこれを支持し、再審開始が確定した。

日本では、こうした戦前の国家による弾圧の犠牲となった人びとにたいして、謝罪も補償も救済も行なわれていません。それどころか、治安維持法違反の判決はいまでも有効だなどということが公然といわれたりしています。横浜事件の再審によって、こうした国家の誤りが明確にされることを願わずにはられません。

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  1. >日本では、こうした戦前の国家による弾圧の犠牲となった人
    >びとにたいして、謝罪も補償も救済も行なわれていません。

    私の大学の先生は、「戦前唯一戦争に反対して投獄された共産党」に対して「アレルギー」をもたされているのが問題なのだと抗議録でいわれていました。そのおおもとは、日本の戦後国家権力自身が、謝罪も救済もしてこなかったからだといえるでしょう。私は戦後革命の挫折をそこにみます。

    >それどころか、治安維持法違反の判決はいまでも有効だなど
    >ということが公然といわれたりしています。

    それは、戦前の軍国主義者たちが、復権して統治者になったからです。国家権力にふたたび復権させることでアメリカは反共の防波堤に日本を置いたといえます。

    >横浜事件の再審によって、こうした国家の誤りが明確にされ
    >ることを願わずにはられません。

    もっともです。
    さらに、戦前の特別高等警察の継承ともいえる公安は、はっきりいって憲法とは矛盾するものだといえるかもしれません。破防法にその根拠はありますが、この法案も憲法にはあいいれないものだといえるかもしれません。

    日本国憲法擁護連合
    日本の宝、日本国憲法を守ろう。
    平和憲法が世の中を悪くしたのではなく、憲法改正が世相を悪くするのである。

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