米政府の対中政策

アメリカが、対中政策を転換させていることについて、共産党の「しんぶん赤旗」が精力的に紹介しています。なぜ共産党が?と思われるかも知れませんが、日本の商業メディアは、こういうニュースをなかなか取り上げようとしません。いまのアメリカが、対日関係と対中関係とどちらに力を入れているか、考えてみればすぐ分かりそうなものなのですが…。

中国をパートナーと認識/「封じ込め」は誤り/米国務省副報道官(「しんぶん赤旗」)
米中関係「建設的に」/両首脳 高レベル交流維持(「しんぶん赤旗」)
米国の対中政策/経済関係強まるもと/けん制しつつ関与促進へ(「しんぶん赤旗」)

中国をパートナーと認識/「封じ込め」は誤り/米国務省副報道官

 【ワシントン=鎌塚由美】米国務省のエレリ副報道官は二十一日、外国プレスセンターで会見し、対中政策について、冷戦型ではなく「(中国を)国際社会に組み込み、積極的、建設的な役割を果たすよう求めていく」と語りました。同副報道官の発言は、十九日付のニューヨーク・タイムズ紙が「冷戦の中国政策」と題した社説を掲げたことを受けたものです。
 同副報道官は、同社説が主張したブッシュ政権の「封じ込め」対中政策を「間違った特徴づけだ」と指摘しました。
 米政権の対中観は、ブッシュ大統領の十六日の日本での演説と、ゼーリック国務副長官の九月の対中政策演説に明らかだとし、「われわれは中国を、ライバルではなくパートナーと認識している」と強調しました。
 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議については、「協議する以外の経路はない」と述べ、この問題が国連安保理に付託される可能性を否定。先の協議は「ある規則性を示した点で特筆すべきだ」と評価し、「次回も各自にとって適当な時期に開催されることを期待する」と述べました。ニューヨーク・タイムズ紙社説はブッシュ大統領の訪中直前に掲載され、ブッシュ政権の対中政策を、中国にとっては「冷戦期の反ソ連戦略を復活させ、今日の複雑な米中関係というかなり違う状況下で採用しようとしている」と解釈できるものだ、と指摘していました。
 同社説は、中国の近隣諸国であるインドとの核エネルギー協力や日本との軍事同盟強化に言及。日米関係について、「すでに厄介な国粋主義の日本政府に、戦後の軍事抑制から脱皮させ、さらに野心的な地域安全保障目標を抱くように積極的に励ましている」と指摘。
 さらに、ブッシュ政権の対中政策を「新封じ込め政策」と特徴づけ、「アジアの偉大な挑戦は、過去の破壊的軍事的対抗に陥ることなく、経済的により強い中国の道を探すことである。それを米国、日本、インドの現在の中心的関心事にすべきで、新たなバージョンの封じ込めではない」と主張していました。[しんぶん赤旗 2005年11月23日11時36分]

米中関係「建設的に」/両首脳 高レベル交流維持

 【北京=菊池敏也】中国の胡錦濤国家主席は二十日午前、北京の人民大会堂でブッシュ米大統領と会談し、二十一世紀における両国の「建設的協力関係」を全面的に推進することで一致しました。ブッシュ大統領は、胡錦濤主席の訪米を招請し、胡主席は快諾。胡氏は来年初めにも訪米する見通しです。
 新華社の報道によると、会談で胡錦濤主席は、両国の「建設的協力関係」をさらに発展させるために、(1)ハイレベル交流の維持(2)対話・協議による貿易摩擦問題の処理(3)エネルギー分野での互恵協力(4)反テロリズム、大量破壊兵器の拡散防止、鳥インフルエンザ対策での協力強化(5)文化交流の拡大―の五提案を行いました。
 ブッシュ大統領は「中国は重要な国」と指摘しつつ、今回の訪中が「重要な影響力を持つ二国間関係」に発展する機会となるよう希望しました。また、市場開放と知的財産権の保護で中国政府が措置を講じることは「非常に重要だ」と強調しました。
 会談後、両首脳が記者会見し、胡主席は「鳥インフルエンザのまん延と人への感染は各国が直面する共通の脅威だ」と指摘。両国が鳥インフルエンザ対策で協力に合意したことを明らかにしました。また、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議では、六カ国協議のプロセス推進に努力し、早期に朝鮮半島の核問題を平和解決することで一致したと述べました。
 米国が問題視してきた知的財産権侵害について、胡主席は、知的財産権保護を強化し、これを侵害する犯罪に対する取り締まりを強めると表明。人民元為替レートの改革も進める意向を示しました。
 一方、ブッシュ大統領は、六カ国協議での中国の「主導的役割」に感謝を表明し、北朝鮮がすべての核兵器と核計画を放棄する約束を履行するよう改めて求めました。
 ブッシュ氏はまた、中国が政治・社会・宗教の自由をさらに拡大するよう促しました。
 胡主席は、中国の「平和的発展」および人権の発展状況について米大統領に紹介したと述べ、中国では法にもとづき「民主的選挙、民主的政策決定、民主的管理、民主的監督」が行われていると強調。中国の実情を踏まえ、国民が享受する人権の水準を向上させると述べました。
 台湾問題について、胡主席はブッシュ大統領が「一つの中国」政策を堅持し、台湾独立に反対していることを評価しました。
 ブッシュ大統領は同日朝、北京市内のプロテスタント系教会で礼拝に参加。ブッシュ氏は「健全な社会は、すべての信仰を受け入れる社会だ」と述べ、中国での宗教の自由拡大を求めました。
            ◇
 現地からの報道によると、会談のなかでブッシュ大統領は、歴史問題などで冷却化している日中関係に関して十分な議論を尽くすことが重要だと指摘し、日中関係の改善を促しました。[しんぶん赤旗 2005年11月21日11時13分]

米国の対中政策/経済関係強まるもと/けん制しつつ関与促進へ

 18?20日のラムズフェルド国防長官の訪中に続き、11月にはブッシュ大統領が中国を公式訪問します。中国との経済関係が強まるもとで米国は、中国をけん制しつつ、協力関係を前進させようとしています。最近の政府高官の発言から、米国の対中政策を見てみました。(ワシントン=鎌塚由美)
 米国防長官の訪中は、2001年発足のブッシュ政権のもとで今回が初めて。01年4月には、中国海南島付近で米国の偵察機と中国軍機の衝突事故が起こり、両国関係の緊張が高まりました。ラムズフェルド氏は訪中が遅れた理由について17日、「軍用機事故がなければ、もっと早くに訪問していただろう。世界で他に一連の問題があったので」と述べました。

■両国関係は「良好」

 胡錦濤国家主席は19日の長官との会談で、両国関係は「良好に発展」と発言。両国国防相会談では、「互いに共有する利益のなかで、率直で、協力的で建設的な軍事関係を打ち立てることで合意」(中国の曹剛川・国防部長)しました。
 ラムズフェルド長官は、中国の戦略核ミサイルを担う第二砲兵部隊司令部を外国要人として初めて視察しました。
 ブッシュ政権のもとで、米中関係は曲折を経てきました。とはいえ軍用機衝突事故以来、米駆逐艦の中国寄港(02年)、中国の曹部長の訪米(03年)、マイヤーズ米統合参謀本部議長の訪中(04年)、中国の梁光烈・総参謀の訪米(04年)があり、05年1月には米中国防担当実務者の「特別政策対話」が北京で始まっています。
 訪中時の一連の行事でラムズフェルド長官は、中国の「早急で、われわれの見方では不透明な軍事力強化、さらに地域機構などからの米国の除外に各国が懸念を表明している」と述べたと報じられています。
 19日の共同記者会見で曹部長は、現在の中国の軍事予算は302億米ドルであり、3000万人以上の貧困者を抱える国として「防衛能力構築への巨額の投資は不可能だ」と発言。ラムズフェルド氏は、両軍間の教育交流などで双方の「神秘性を取り除く」ことは可能だと述べました。
 同長官は、六月にシンガポールで開かれた民間シンクタンク主催の国防相会合で、「どの国も中国に脅威を与えることはないのだから、なぜ軍事投資を増額し、武器購入を拡大し、強固な配備を行うのか疑わざるをえない」と演説。「9・11以来の米高官の対中関係での公式発言で最も好戦的」(ニューハンプシャー大学のマイケル・クレア教授)との評価も出ていました。

■「冷戦」思考に距離

 米外交を取り仕切る国務省のゼーリック副長官は9月21日、中国の改革開放フォーラムの理事長で中央党学校元副校長の鄭必堅氏が出席するもと、ニューヨークで対中政策について包括的な演説をしました。
 同副長官は、今日の対中政策では「冷戦からの類推」も「19世紀の欧州での勢力均衡政策」も適用できないとし、中国との「協調関係」を追求すべきだと表明。鄭氏が打ち出した中国の「平和台頭」論を引き合いに出しました。
 鄭氏の提唱した「平和台頭」論とは、「中国の平和台頭、中国経済の持続的で急速かつ調和の保たれた健全な発展がアジア太平洋地域にもたらすものは、大きな歴史的好機であり、脅威ではない」というもの。
 ゼーリック副長官は、「国際社会は(平和台頭への)行動の証しに期待を寄せる」と言明。米国は「平和と安全保障を脅かさないすべての国と建設的関係を追求する」と表明しました。
 その上で同副長官は、北朝鮮問題、大量破壊兵器不拡散、テロとのたたかいでの米国との協力を評価する一方、対スーダン関係や「不透明な急速な軍事近代化」に懸念を表明。中国がアジアで「力の優位の確保」をめざすのでなく、米国も加わる東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)で協力するよう求めました。
 中国を世界に統合しようとする従来の「統合政策」を変革し、国際システムのなかで「利益を有した当事者」として中国側の積極的な関与を促すのが米国の立場だと強調しました。
 東アジア戦略の再検討が進むなか、米国の対中政策をめぐっては米政権内で今年の夏に激論があり、対中「説得」政策の採用に落ち着いたことが報じられています。
 ▼米中経済関係 米中両国の経済関係は近年、急速に深まっています。米国からみれば、中国は第3位の輸入先で第7位の輸出先。米国の輸出入総額では、カナダ、メキシコ、日本に次ぐ第4位です。中国からみれば、米国は第1位の輸出先、第3位の輸入先です(いずれも2002年の数字)。[しんぶん赤旗 2005年10月26日11時36分]

中国を訪問したブッシュ大統領自身、「米中関係は重要かつ良好」と発言しています。「良好」という評価が与えられていることに注目する必要があるでしょう。

ブッシュ大統領「米中関係は重要かつ良好」(人民網日文版)

ブッシュ大統領「米中関係は重要かつ良好」

 ブッシュ米大統領は8日、米中関係について「重要かつ良好」と述べ、訪中への期待を表明した。ブッシュ大統領は11月中旬に日本、韓国、中国、モンゴルを訪問し、韓国・釜山で開かれるアジア太平洋経済協力機構(APEC)非公式首脳会議などに出席する。これに先立ちブッシュ大統領は8日、ホワイトハウスで新華社など中日韓3カ国のメディアから取材を受けた。ブッシュ大統領は新華社の取材で次のように語った。

▽中国との首脳会談について
 米中両国の貿易は発展し、対話や協力は強化されている。一方で、知的財産権の保護や人民元為替制度、市場参入許可などでは、すべきことが少なくない。このため、両国の関係は、重要でもあり複雑でもある。胡錦濤国家主席と再び会見し、これらの非常に重要な問題を話し合うことに期待している。

▽9月にニューヨークで行われた胡国家主席との会談について
 知的財産権保護の強化に関する胡国家主席の談話や、人民元為替制度の改革における中国政府の立場を称賛する。中国は市場に基づく為替制度の方向に、しっかりとした一歩を踏み出したと思う。訪中期間中、知的財産権の保護と人民元為替制度のほか、両国間の貿易均衡の問題についても話し合うつもりだ。

▽台湾問題について
 米国の政策は一貫している。すなわち「1つの中国」「3つの共同コミュニケ」「『台湾独立』の不支持」だ。(台湾)海峡両岸間の対話開始は、積極的な進展だと思う。この対話を引き続き励ましていく。

▽米中協力について
 両国間には確かに良好な協力関係がある。将来的にはドーハ・ラウンド多国間貿易交渉、鳥インフルエンザ対策、テロ対策、エネルギーの効果的利用などの分野で両国が協力できるだろう。(編集NA)
[「人民網日本語版」2005年11月10日]

ほいで、これがゼーリック国務副長官の講演を詳しく紹介した北京週報の論説。

米国の対中政策に新たな動き(北京週報)

米国の対中政策に新たな動き

 ――米国では、ますます多くの政府高官が中米関係を注視するようになってきた。ゼーリック国務副長官は、中国は国際問題で主要な参画者になるべきだと指摘する。

張利軍(中国国際問題研究所研究員)

 今年9月21日、ロバート・ゼーリック国務副長官は米中関係全国委員会で「中国はどこへ—-正式加盟国から責任ある加盟国へ」と題して講演した。講演が終わった直後に米国務省はその全文を公表した。
 ゼーリック氏は米通商代表部(USTR)の代表を務め、過去十数年にわたって中国のWTO加盟交渉に関わったことがあり、中国については深くかつ全面的に理解していることから、二期目のブッシュ政権で屈指の「知中派」と見られている。
 今年初め、ゼーリック氏は東アジア問題担当の国務副長官に指名され、対中政策決定の舵取り役を果たすようになった。ブッシュ政権の対中関係の総合戦略についての構想や考え方は、その講演から多少なりとも窺うことができる。

中国の発展は挑戦ではない

 ゼーリック国務副長官は講演で次のように述べている。

 中国は経済の持続的発展と総合力の絶えざる増強に伴い急成長し、国際的な影響力がますます大きくなってきたことから、国際政治経済の舞台で発展途上国の中の大国としての役割を果たすようになった。これが米国の超大国としての地位を脅かすのは必至だが、米国は過度に懸念する必要もなければ、ましてや旧ソ連を封じ込めたような新たな「冷戦」を引き起こす必要もなく、冷静に観察すべきだと考える。
 今後かなり長い期間において、中国が米国の超大国としての地位を脅かすことはありえないだろう。なぜなら、米中両国が冷戦時代の米ソのように、国際秩序の再構築やイデオロギーをめぐって対立するようなことはないからだ。中国のイデオロギーや総合戦略は旧ソ連とは本質的に異なっている。まず、中国は急進的な反米思想を宣伝しているのではなく、文明の多様性や包容性、調和のとれた世界の構築を提唱し、米国との平和共存を目指していることだ。
 次に、米国からすると、中国はまだ民主国家とは言えないが、いわゆる「世界の民主制度」と最後まで闘うというのではなく、西側の「民主国家」との往来を緊密にし、国際的メカニズムや秩序の確立に積極的に参与するなど、重大な国際問題で積極的な役割を果たそうとしていることだ。また、中国はまだ米国からは「完全な市場経済国」と認められてはいないが、死に物狂いになって資本主義と闘うというのではなく、改革・開放政策を遂行し、資本主義がすでに有する科学技術の成果や資本を導入して自国の経済を発展させている。
 中国は自国の前途は現行の国際システムにおける基本秩序が解体されることで決まる、とは考えていないが、実際的な状況はその逆であり、中国の成功は現世界の発展の主流に融け込めるかどうかにかかっている。これについてライス国務長官は「米国は、自信があり、平和で繁栄した中国の出現を歓迎する」と述べている。米国は確かに中国との協力が強化されることを望むとともに、中国が前世紀から徐々に形成されてきた国際ルールに適応するだけでなく、米国や他の国とともに今世紀の試練に対処していくよう望んでいるのだ。
 中国の繁栄と富強はアジア太平洋地域の安定の促進にとって重要な役割を果たすものであり、中国の強大さがアジアの安定の基礎となっている。中国の多分野にわたる協力がなければ、米国は開放された国際政治経済システムをサポートすることはできないだろう。
 中国は国内の発展がアンバランスであるため、力を集中して国内問題を処理せざるを得ない。いま中国政府が直面している最も重要な課題は、国内の全面的な発展と近代化を実現することだ。広大な農村地域に住む9億近くの人々はいまも貧しい生活を送っており、政治や社会の変革がもたらす挑戦に直面している。従って、中国は経済成長の成果を、米国に対する挑戦にではなく、主に国内問題の解決に当てることになる。
 米国は、中国が責任ある大国、国際問題の主要な参画者として、できるだけ早く国際社会に融け込むよう「支援」するつもりだ。そのためには、米国政府は今後も引き続き、中国政府が米国の基準に合致した政策調整を行うよう促していく必要がある。例えば、国防費と国防政策の透明度を高める、市場を一段と開放する、知的財産権を保護し、海賊版や模倣品製造の取締りを強化する、外交政策を調整する、東南アジア地域や他の地域に中国をリーダーとし、米国を除外する地域同盟を結成しないことなどだ。

「中国の脅威」を薄める

 米国は「対テロ戦争」を宣言して以来、戦略の重点を中東地域へと移し、東アジア地域を顧みる余裕がなくなったことから、中米関係は意外なほどに改善され、「史上最も友好的な状態にある」とまで形容されるようになった。しかしながら、米国の一部の政治家や政策決定者は、急成長中の中国は米国にとって潜在的脅威になりつつあり、現在の関係緩和は短期的なものに過ぎず、中国の発展を封じ込めることこそが米国の長期戦略のターゲットだと考えている。
 昨年末以降、米国のタカ派は「中国脅威論」を再び吹聴するようになった。その源泉はほかでもなく、中央情報局(CIA)と国防総省だ。新任のゴスCIA長官は上院情報特別委員会の公聴会で、中国の台頭が米国への脅威となり、中国の軍事力の近代化は台湾海峡の力の均衡を崩しつつある、と証言した。国防省情報局長もその証言でかなりの時間を割いて中国の軍事力の近代化に言及し、さらには米国の国家安全への脅威として、中国を名指しでいわゆる「ならずもの国家」と同列視した。
 ラムズフェルド米国防長官も上院軍事委員会の公聴会で、中国の軍事力の近代化について重点的に言及した。中国は「独裁体制」にあり、「文明世界に入っていない」と断言し、ペンタゴンは中国の軍事力の近代化に非常に関心を寄せていると強調した。報道によれば、米国防総省は4年に1回提出する米国防計画の見直しに当たり、かなりのスペースを割いていわゆる中国の軍事的脅威を強調するという。
 ゼーリック国務副長官を代表とする良識ある対中実務派は政界、特に第2期ブッシュ政権内の少数派として、一部の米国人が中国の平和と発展に抱いている疑念には前向きな姿勢で臨もうとしている。例えば、ゼーリック国務副長官は講演ではやはり人権や民主などの問題を強調したものの、最後に言及している。その言わんとするところは、これらの問題は決して中米関係の重点ではないということだ。タカ派が勢力を強める厳しい状況の中、こうした姿勢を取るのは容易ではなかったはずだ。ゼーリック国務副長官らが努力したからこそ、米国内に、ブッシュ政権の対中政策は「実務的」「接触」という基調を保持し続けることから、中米関係は今後3年から5年間は安定傾向にある、との見方が広まったのである。

今後の方向性

 構造的に見れば、米政界には中国に対する戦略的信頼感に欠けた者がかなりいる。米国内では「中国脅威論」が言いはやされ、その影響力も大きい。また、中国は米国がイラク戦争の泥沼に足をすくわれているのに乗じて自らの力を拡張しようとしているため、米国は中国に警戒心を持たなければならず、中国に「戦略的な隙」を突かせてはならないと考えるタカ派もいるほどだ。
 いま1つの構造的矛盾は、中米間の政治制度や価値観が大きく異なっていることだ。ブッシュ大統領が就任演説で語った「自由」というテーマや、「暴政を終結させよう」というスローガンは理想主義的な性格を帯びたものではあるが、こうした理念はワシントンが実施している「実務的」対中政策とはかなり大きな矛盾がある。政府の対中政策に不満を感じている者はこの点を利用してブッシュ政権を非難し、中国に対して強硬姿勢をとるよう政府に迫ると予想される。
 現在に目を向ければ、米国はなんとか台湾問題を利用して事を運ぼうとするだろうが、この問題で行き過ぎるようなことはできない。米国も、台湾問題がいったん抑制が利かなくなって、中米間に軍事衝突が起きることにでもなれば、米国の国益に合致しなくなることをよく知っているからだ。中国の対米輸出額が年間1600億ドルの大台を突破したことから、米国内では対中貿易制裁の発動を求める声が強まってきている。ブッシュ政権は国内の不満を払拭する行動を取らざるを得なくなるだろうが、中米間の新たな「貿易戦争」の導火線にもなりかねない。

米中が「建設的関係」で合意したことは、フランスのメディアも注目しています(北京放送の紹介記事)。

外国メディア、ブッシュ米大統領の訪中に注目(China radio international)

外国メディア、ブッシュ米大統領の訪中に注目
[2005-11-22 20:06:35 cri ]

 アメリカのブッシュ大統領はこの前中国を訪問しました。これについて、フランスや日本、スペインのメディアはここ数日記事や社説を掲載し、ブッシュ大統領の中国訪問を高く評価しています。
 フランスの「欧州日報」は21日社説を掲げ、「ブッシュ大統領の今回の中国訪問によって、中米双方が『建設的な協力関係』の確立で合意したことは、歴史的な意義を持っている。原則を堅持し、共通点を求め、相違点を残すならば、両国の関係は健全に発展していくだろう。これは、両国人民の根本的な利益に符合するだけでなく、世界の枠組みにも大きな影響を与え、世界の平和に大きく貢献することができる」と述べています。
 21日付けの日本経済新聞は、論評を発表し、「ブッシュ大統領と胡錦涛国家主席が20日に行った首脳会談から、米中関係が更に成熟に向かっていることを伺うことができる」と評価しています。

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