中国の「三農問題」

中国政府が、引き続きいわゆる「三農問題」の解決に努力し、今年から「新農村建設」計画に取り組む方針を明らかに。

中国/「新農村建設」計画 6つの基本政策推進 三農問題解決(FujiSankei Business i.)

「新農村建設」計画 6つの基本政策推進 三農問題解決
[FujiSankei Business i. 2006/2/25]

■内需拡大のカギにも

 中国では社会資本の整備などを通じて、8億人ともいわれる人口が住む新しい農村を築く「新農村建設」計画がスタートし、支援政策が相次いで打ち出されている。21日には、中国共産党が今年の最優先課題として年初に通達する「中央1号文件(文書)」で新農村建設を正式に取り上げ、農業問題を重視する姿勢を明確にした。(上原隆)

≪3年連続「農業」≫

 中国経済は驚異的なスピードで高度成長が進む一方、内陸部の農村は発展が遅れ、2億人近い余剰労働力が沿海地域をはじめとする都市部に流出。出稼ぎ労働者(民工)として最底辺の暮らしを強いられている。
 農業、農村、農民の貧困は「三農問題」と呼ばれ、中国共産党、中央、地方政府が早急に解決を迫られる政策課題となっている。
 胡錦濤総書記、温家宝首相が率いる指導部は、自らが掲げる「親民路線」(社会的弱者への取り組み)にもとづいて、三農問題を最重要視してきたが、ここにきて、農村の社会基盤の拡充などを図り、「社会主義の新しい農村建設」という政策方針を明確にし、農業の活性化、農村の近代化、農民の生活向上を加速する勢いが増している。共産党の1号文件も04年以来、3年連続で農業問題に関するものとなった。
 新農村建設は、(1)農業の総合的な生産力の向上と社会資本整備によって農業の成長モデルを転換する(2)農民の所得増加を重点課題とし、収益の拡大を図り、広大な農村の余剰労働力が就労する環境を整え、所得増加メカニズムを構築する(3)地方の党、行政幹部が権力を握っている農村の民主化を進め、村民の権利を保護し、自治を拡大することで、農民が農村の主人公となるように改める(4)教育文化事業を推進し、現代社会で活躍できる新しい農民を育成する(5)農民が抱える切実な問題を解決し、生活が困難な農民を支援、保健衛生事業を充実し、新農村建設を強化する(6)農村経済を市場経済改革の方向に一致させ、農業生産の安定的発展を図り、農民の意欲を引き出すことで、農村を活性化する――の6つの基本政策から構成される。

≪雇用創出が課題≫

 胡総書記は14日、北京で開かれた共産党の新農村建設をテーマにした会議で、「新農村の建設は党と国家の発展にとって重要な歴史的任務だ」と述べ、「全党員が一致団結して着実に取り組み、農民が成果を享受できるようにしなければならない」と強調した。
 温家宝首相も20日の中央幹部会議の席上、「新農村の建設は経済建設を中心にして、農村の生活環境を向上させることだ」と指摘。農村と地方の小都市が調和して発展できるよう長期的に取り組むとともに、改革の速度を絶えず加速していく方針を明らかにした。
 中国経済の成長モデルをこれまでの投資主導から国内需要牽引(けんいん)型に転換するためには、人口の大部分を占める農民の所得向上が不可欠となる。
 道路、水道、通信など基本的な社会資本を整備し、農業の発展を促進するとともに、農村や付近の小都市で第2次、第3次産業の雇用を創出。余剰労働力を吸収し、所得も増やしていくのが目標となる。
 農村から都市に出稼ぎに行ったままの若年労働力が故郷に回帰できるだけの雇用創出ができるかが重要な課題となる。共産党が革命闘争の拠点とした農村地域を再生、新たな姿に変貌(へんぼう)させることが求められている。

中国は、経済成長にともなって食糧需要が急激に増えつつあります。他方で、農村への社会資本投下が遅れ、農業生産力は低く、潜在的な過剰労働力を大量に抱え込んでいます。また、「文革」時代には山の頂上まで開墾したことが賞賛されていましたが、現在は、自然環境保護のために農地を山林に返す取り組みも始めています。
こうした現況では、中国政府には、単位耕地面積当たりの農業生産力を高め食糧増産を図ること、そのために農村部への社会資本投下を増やすこと、そしてそうなれば当然顕在化する過剰な労働力人口を吸収するだけの産業を農村部につくること、が求められていると言えます。農村部から都市部への出稼ぎ労働者の問題も、都市部での賃金未払いや都市戸籍がないための様々な差別的扱いなど問題は山積していますが、他方で、彼ら労働者の得た資金が農村部に還流し、農村部での産業拡大に結びつけたい、という狙いがあって、単純に、出稼ぎ労働者の都市定住を認めれば、問題解決という訳にはいかないというのが、率直なところでしょう(都市部も、それだけの人口流入をただちに受け入れるだけの条件がないということもあります)。

つまり、単位耕地面積当たり、および、農民1人当たりの農業生産力を高める(土地集約化および労働集約化)を同時に図って、農業生産を増大させつつ、過剰人口を農村部の産業育成によって解決する――という実にむずかしい課題に取り組まなければならない、という訳です。だからこそ、「農業・農村・農民」問題、つまり「三農問題」と言われる理由があります。そこに、地方幹部の腐敗問題と農村部の民主化問題がからむため、一朝一夕に解決するという訳にはなかなかいかないのだろうと思います。しかし、もしこの解決に失敗すれば、中国は、将来的には“巨大な食糧輸入国”となり、食糧自給率40%の日本の食糧事情も左右されかねません。その点からも、中国が「三農問題」の解決に成功するかどうかは大きな問題だと思います。

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