高校教科書検定にかんする記事

29日、文部科学省が2007年度から使用される高校教科書の検定結果を発表。相変わらず、政府の立場を「書かせる」検定がおこなわれています。

教科書検定、文部省が難色 靖国訴訟の記述巡り(朝日新聞)
高校教科書検定:「日本の領土」明確化 首相参拝も修正(毎日新聞)
高校教科書検定:麻生外相の発言を削除(毎日新聞)
高校教科書検定:父子・母子家庭に意見相次ぐ(毎日新聞)
「日本の竹島、韓国占拠」 高校教科書検定(産経新聞)

教科書検定、文部省が難色 靖国訴訟の記述巡り
[asahi.com 2006年03月30日06時25分]

 「政府の立場に沿わない書きぶりは絶対に認めないという姿勢だった」。今回の高校教科書の検定での文部科学省の「こだわり」に、社会科の教科書編集者らは戸惑いを隠さない。検定意見が集中したのは、小泉首相の靖国神社参拝に対する司法判断、イラク戦争と自衛隊派遣、領土問題の3項目。成人になろうとする高校生向けの教材への徹底したチェックに、「教室での議論が生まれない」という心配もある。

■靖国参拝

 「裁判での違憲判断は傍論として述べられた。判決主文は国が勝訴しているのに、それが理解できない取り上げ方はどんなものか」
 小泉首相の靖国神社参拝に違憲判断を示した04年の福岡地裁判決を取り上げた大手教科書会社に、文科省の教科書調査官はこう指摘したという。
 一連の訴訟で初の違憲判断だったために、多くの社が取り上げたが、「下級審の一判決にすぎない」と文科省から難色を示されたという。
 別の教科書会社も、年表に「04年4月 小泉首相の靖国神社参拝に福岡地裁が違憲判断」と事実を端的に書いたが同じ理由で認められず、結局「参拝について福岡地裁判決」と直して「違憲」部分を削除した。
 福岡地裁判決の記述をあきらめ、東京高裁が合憲、大阪高裁が違憲と判断したという両方を書いて合格した社もある。
 文科省は、こうした検定の方針について、「事前に首相官邸サイドに相談した事実はない」と説明している。

■イラク戦争

 米国のイラク攻撃を「先制攻撃」とした記述や自衛隊の多国籍軍参加に関する記述にことごとく検定意見がついた。
 文科省は「『先制攻撃』は国際法上禁止されている侵略攻撃という意味だ」と説明。そのうえで「(対イラク軍事行動は)先制攻撃や予防攻撃には当たらない」とした小泉首相の国会答弁を検定意見の根拠に挙げた。
 「非戦闘地域での後方支援」や「多国籍軍への参加」という書きぶりもすべて「誤解される」とはねられ、「人道復興支援活動」だと明記することを求められた。文科省は、政府見解に基づき、「自衛隊は復興支援という目的に限って多国籍軍に参加したことが明確でないと、誤解を生む」と説明する。

■領土問題

 外交上の焦点となるなか、竹島と尖閣諸島の問題を取り上げる教科書が増えた。文科省によると、今回申請された教科書のうち、地理と現代社会、政治・経済では9点が新たに盛り込み、大半の教科書に掲載されることになった。
 目立つのは、「日本固有の領土」の明示を徹底したこと。いま使われている教科書と同じ記述でも検定意見がついて修正するケースも。例えば、数研出版の現代社会は、竹島と尖閣諸島について、それぞれ韓国、中国などと「交渉中」と書いて認められていたが、「我が国の領土だと理解しがたい」と修正を求められた。

高校教科書検定:「日本の領土」明確化 首相参拝も修正
[毎日新聞 2006年3月30日3時00分]

 「北方領土、竹島、尖閣諸島は日本の領土」。29日に公表された高校教科書の検定で、領土の記述を明確にするよう修正が相次いだ。前回の01年度検定では意見がつかなかった個所でも「より正確に、誤解の余地のない記述にすべきだ」(文部科学省)として意見がついた。北方領土と竹島は、日本の領土ながら、ロシア、韓国が占拠し、それぞれ領有権を主張する「領土問題」になっているとした。一方、尖閣諸島は「日本が実効支配する領土。中国が領有権を主張しているが、領土問題ではない」(文科省)との見解から、検定意見に伴う修正で「係争地区」からも外れた。

■46%に意見

 申請本では、北方領土、竹島、尖閣諸島を「領土問題」と記述する例が目立った。しかし、文科省は尖閣諸島について「日本が実効支配する領土。中国が領有権を主張しているが、領土問題ではない」との見解を示し、検定意見で北方領土、竹島と区別するように指摘。尖閣諸島に関しては領土問題と位置づけた記述が修正されたり、係争地区を示した地図から外れたりした。 地理歴史、公民(地図を含む)の両教科で領土をめぐる記述のうち46%に当たる、北方領土16カ所▽竹島20カ所▽尖閣諸島24カ所の計60カ所に「我が国の領土であることが理解しがたい表現」などの検定意見がついた。

■自治体の働きかけ

 竹島が記述された20点のうち8点、尖閣諸島の記述のある21点中9点は今回新たに盛り込まれた。
 「領土問題の項目では、具体的に竹島の記述をしてほしい」。昨年、「竹島の日」(2月22日)を定める条例を制定した島根県は、社会の教科書を発行している出版社に対し、04年度から記述を求める働きかけを続けている。同県教委は「全国の小中高校生に『竹島は日本固有の領土』と理解してもらうため。(記述の有無は)県内での採択には関係ない」と説明している。04年度から05年度にかけて知事名の文書を送付したり、県総務部や県教委の職員が上京の折に出版社を訪れて要請した。
 しかし働きかけを受けたある出版社は「4年間の社会情勢で竹島、尖閣諸島が注目されたこともあり記述したが、採択にも影響するのは分かっていた。『竹島のくだりを入れたら採択する』と受け止めた」と話す。

■南京事件の記述

 旧日本軍が多数の捕虜や市民を殺害した南京事件。「教科書記述をより公正でバランスのとれたものにする」として前回検定後の02年度に設けられた検定のバランス基準が適用され、犠牲者数については20万人程度のほか、30万人以上という中国の主張に加え、「日本国内では十数万人などの説もある」との記述が追加される修正も行われた。
 中韓両国から激しい反発を呼んだ小泉純一郎首相の靖国参拝。清水書院の現代社会では、年表の04年4月に「小泉首相の靖国神社参拝に福岡地裁が違憲判断」と記述した。しかし「下級審に過ぎず、請求も棄却された」(文科省)ことから「誤解の恐れのある表現」と意見がつき、「小泉首相の靖国神社参拝について福岡地裁判決」と判決内容が全く分からない表現に修正された。【長尾真輔、種市房子】

高校教科書検定:麻生外相の発言を削除
[毎日新聞 2006年3月29日 19時28分]

 05年度の教科書検定で、麻生太郎外相が03年の自民党政調会長時代に「創氏改名は朝鮮人が望んだ」という趣旨の発言をしたという記述が修正で削除された。
 記述があったのは、実教出版「日本史A」の「現代の日本と韓国」と題した欄。1953年の日韓会談で当時の久保田貫一郎日本政府主席代表が支配を正当化する発言を行い問題化したことなどを挙げ、さらに麻生氏の発言に触れたうえで、「歴史的事実に反する趣旨の発言をして問題になった」と記述した。
 これに対し「発言は事実だが、一政治家で閣僚とは違う」(文科省)として検定意見がついた。この結果、「その後も一部政治家が、日本の朝鮮に対する支配を正当化する発言をおこない、批判を受けて謝罪した」と修正された。【長尾真輔】

高校教科書検定:父子・母子家庭に意見相次ぐ
[毎日新聞 2006年3月29日19時06分(最終更新時間 3月29日19時09分)]

 05年度の高校1年用家庭科教科書の検定で、父子・母子家庭に触れたり、ペットを家族とする記述に、意見が相次いだ。これらの記述をした複数の現行教科書に対し、一部の国会議員が「これでは“家庭崩壊科”」と非難する動きがあり、01年度の前回検定から一転して「逆風」にさらされた形だ。編集者からは「現実にさまざまな家族形態があり、選択肢を示しているだけなのに」と戸惑いの声が上がっている。
 教育図書「家庭基礎」の申請本には「自分の家族観」の項目で、ロックバンドGLAYのリーダー、TAKUROさんのコラムが掲載された。父親が亡くなり母、姉と生きてきた中、「父親がいないことを、不満に思ったりした形跡はまったくない」とのくだりがある。このコラムに対し「さまざまな家族形態を考えるページの中で、親が1人の家庭の記述が目立つ」との理由で検定意見が付いた。修正でこのコラムはなくなり、「CMの家族像」と題した父子・母子家庭には触れない内容に差し替えられた。
 ペットを家族とみなす記述にも意見が付いた。開隆堂の「家庭基礎」「家庭総合」の申請本に掲載した「次にあげる関係を家族と考える?」の例示のうち、修正後は「愛情を込めて育てているペットと自分」との記述が削除された。この記述は前回検定で意見が付かなかったが、文部科学省は「家族は通常人間と考えるべきだ」と説明している。
 家庭科では、前々回の96年度検定で、家族からの自立に焦点を絞ったり同性愛カップルに触れたりした申請本4点が不合格になったが、前回の01年度検定からは一転してこれらの記述が認められ、不合格はなかった。
 一方、昨年、参院議員が国会で「浮気をする権利を教えている」「祖母は家族ではないのに、ペットは家族と考える人もいるとの記述がある」と特定の教科書を非難するなど、家庭科を取り巻く状況は変化している。
 96年度検定で不合格となった東京都内の出版社の編集者は「前々回に比べ前回は全般に基準が緩かった。しかし今回はまた厳しくなり、改訂していない記述にも意見が付いた。これも社会情勢の変化なのか」と話す。別の出版社の編集者は「今回、調査官は離婚や一人親の記述に敏感だったと感じた」と話している。【長尾真輔、種市房子】

◇多様な家族が実在

 若桑みどり・千葉大名誉教授(ジェンダー文化論)の話 文科省は「家族とは両親がいて子どもがいるのが“正常”」との観念に立っているのではないか。実在する多様な家族形態の中に生きる父子・母子家庭の子どもの存在を消し去ることには納得がいかない。

◇選択肢提示が役割

 山田昌弘・東京学芸大教授(家族社会学)の話 「家族はこうあらねばならない」と示しても教育効果はない。ペットを家族だと思う人が多いことは数々の調査で判明しているし、小泉純一郎首相も離婚している。現実を示して、実社会で幸せになるための選択肢を示すことが教科書の役割ではないか。

◇安楽死・尊厳死 検定意見が付く

 高校教科書では、公民を中心に安楽死・尊厳死問題が掲載されている。いずれも重要な認定要件である「患者の意思表示」が欠けた記述に対しては、「不正確な説明」との検定意見が付いた。
 「安楽死・尊厳死」は現代社会、政治経済、倫理を中心に登場。このうち実教出版の現代社会の申請本では「投薬などによって、患者の死期そのものを早めてしまう安楽死」とした。この記述は改訂していなかったが、今回は検定意見が付き、「患者本人の意思に基づき、投薬などによって死期そのものを早める安楽死」に修正された。同様に、山川出版社、教育出版、第一学習社が修正で「患者の意思表示」を記述に入れた。【種市房子】

「日本の竹島、韓国占拠」 高校教科書検定
≪領土、正確な記述求める≫
[SankeiWeb 03/29 20:21]

 文部科学省は29日、来春から使用される高校教科書の検定結果を発表した。領土問題や北朝鮮による拉致事件、「ジェンダー」用語などでより正確な記述を求める検定意見が付けられ、出版社側が修正した。一方で、南京事件の犠牲者数について20万人以上説が最有力とするなど近現代史を中心に不適切な記述が数多く残った。
 竹島(島根県隠岐の島町)の記述は前回検定(平成13年度)より増え、政治経済で全6種類、現代社会で12種類中8種類で取り上げるなど30種類が記述。日本固有の領土であることを明確に記述するよう求める検定意見が相次いだ。
 尖閣諸島(沖縄県石垣市)については「北方領土、竹島と違い日本が実効支配しており『領土問題』ではない」との立場から意見を付け、「日本の領土である北方領土と竹島は、それぞれロシアと韓国に占拠され、領土問題となっている。尖閣諸島も日本の領土だが中国などが領有を主張している」などと、北方領土、竹島と尖閣諸島を区別する記述に改められた。
 北朝鮮による拉致事件では、解決していないことを強調するよう求める検定意見が目立った。「北朝鮮から帰国した拉致被害者たち」との写真説明に「解決済みであるかのように誤解する恐れのある表現だ」との意見が付き、「しかし、まだ拉致被害者全員の帰国は実現していません」と追加された。
 「ジェンダー」(社会的・文化的な性差)については現代社会や家庭科など38種類が記述。「男らしさ・女らしさ」の否定ととられる記述などに検定意見が付いた。「ジェンダーフリー」(性差否定)は、現代社会の2種類にあったが、検定によって消えた。
 検定をパスした不適切記述も相次いだ。南京事件の犠牲者は20万人以上説が最有力とする記述が登場するなど誇大な数字が記述されている。
 慰安婦については「日本軍により慰安婦にされた女性」が「日本軍の慰安婦にされた女性」に修正されるなど、軍による強制連行に検定意見が付いたが、主語のない強制連行記述はフリーパスとなっている。

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