3兆円負担 社説あれこれ

米軍再編で3兆円の日本負担について、社説をピックアップしてみました。

3兆円負担 政府は説明責任果たせ(中国新聞 4/29)
[米軍再編日本負担]何かおかしくはないか(沖縄タイムス 4/29)
日本負担3兆円 数字を独り歩きさせるな(毎日新聞 4/28)
米軍再編 日本負担 3兆円とは途方もない(徳島新聞 4/28)
在日米軍再編/負担経費があまりにも巨額(河北新報 4/27)

なお、日経は、あらためて3月時点で日本政府関係者が「3兆円程度」という数字を出していたと報道しています。

再編負担、与野党に不満・あいまい「3兆円」表面化で混乱(日経新聞)

もともと、グアムへの移転経費60億ドルの負担だけでも「納得できない」「根拠が分からない」という社説がいっぱい出されていたのですが。

米海兵隊移転/「応分の負担」といえるか(神戸新聞 4/26)
【米軍移転経費】こんなに巨額の負担は納得できない(南日本新聞 4/26)
米軍再編・政府は国民不在姿勢改めよ(琉球新報 4/25)
グアム移転費 負担の根拠が分からない(信濃毎日新聞 4/25)
米軍移転費負担  結局は「言い値」通りだ(京都新聞 4/25)
グアム移転費*疑問ばかり募る合意だ(北海道新聞 4/25)

↓3兆円の日本負担にかんする社説。

3兆円負担 政府は説明責任果たせ
[中国新聞 06/4/29]

 在日米軍再編の経費に関連して「日本側負担は3兆円規模」と、ローレス米国防副次官が会見で見通しを明らかにした。日米交渉の密室でやりとりしてきた中身が1方的に暴露された形だが、国民1人当たり約2万3000円にも相当する膨大な額である。どういう費用で、なぜ負担しなければならないのか。政府はきちんと、国民に対する説明責任を果たすべきだ。
 米軍再編の経費分担は、沖縄駐留米海兵隊のグアム移転コストのうち、日本側負担について59%で決着したばかり。米側は75%を主張していたが、ラムズフェルド・額賀福志郎両長官の会談で、米が譲歩したと政府は胸を張った。
 ところが、再編全体の費用については、3兆円近い日本側負担が前提になっていた。交渉の米側責任者であるローレス副次官が「大まかで控えめな試算」として明かしたのが今回の内容である。
 2010年までを目標とする再編の経費全体が約3百億ドル。うち日本側負担は普天間飛行場移設経費など国内の約2百億ドル、沖縄海兵部隊のグアム移転経費61億ドルを合わせ、少なくとも計260億ドル(約2兆9800億円)になるという。
 だが、実はこのうち2兆円は、初めて明らかになった数字ではない。守屋武昌防衛事務次官がローレス発言に先立つ24日の講演で、グアムへの移転を除く経費負担は年平均2000億円、今後10年で2兆円という試算を語っている。これに、グアム移転分を加えれば2兆7000億円。ローレス副次官は米国内向けに、日本の負担を多めに語ったとみられる。
 グアム移転経費の日本側負担について、共同通信社の世論調査では、51%の人が「全く負担すべきでない」「あまり負担すべきでない」と消極的だ。国民の反発を恐れ、2兆円分をあまり積極的に説明してこなかったとすれば、日本政府の手法にも問題が残る。
 2兆円の中には、キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)の沿岸部にV字型滑走路の新ヘリ基地を建設する費用や、再編に伴う移転に反発する自治体を説得するための交付金も含まれているようだ。
 政府内で、防衛予算に組み入れるのか、別枠かといった根回しも十分されているようには見えない。米側が1方的に発表した数字に、日本側が振り回されるのは好ましくない。民主党は国会での集中審議を求める方針だ。まずは経費の詳細な検証から始めたい。

[米軍再編日本負担]何かおかしくはないか
[沖縄タイムス 2006年4月29日朝刊]

 いったい米国は何を考えているのだろうか。
 在日米軍再編にかかる経費についてローレス米国防副次官が、日本側が負担するのは計260億ドル(約2兆9800億円)になるとの見通しを明らかにしたという。
 普天間飛行場移設経費など国内の約2百億ドルと在沖米海兵隊のグアム移転経費の60億9000万ドル(約7100億円)を合わせた経費というのである。
 沖縄の基地負担の軽減は喫緊の課題だというのは言うまでもない。それに伴うある程度の負担は確かに必要だろう。
 だが、それにしてもグアム移転費として当初求めた75%負担案といい、今回の2012年までの総額が約3百億ドルだから260億ドルを出せ、というのは冗談にもほどがある。
 沖縄からグアムへの移転は、米国領土内への移転ではないか。しかも在日米軍の削減自体が米国の世界戦略における米軍再編計画の1環であったはずだ。
 であれば、移転先のグアム島に建設する海兵隊宿舎や隊舎、学校、米軍住宅、電力・下水道施設まで日本側が負担する理由はどこにもない。
 それ以前に、米国内の基地に移転させる費用を国民の税金で賄うこと自体異様なのであり、政府はどう国民に説明し説得しようというのだろうか。
 日米地位協定では駐留米軍・兵士のための施設の提供や経費の負担を規定している。が、撤退費用まで負担するという規定はどこにもない。
 このため、海兵隊の国外移転を可能にする新法などを検討するという。
 多くの県や地方自治体が財政難で苦しんでいるときに、泥縄式の法律で巨額の税金を投入していいものか。国会でしっかり論議するべきだ。
 グアムでの費用について米政府内には「将来の日本(自衛隊)のためのものだ」とする声もあるという。これはグアムの基地を米軍と自衛隊の共同訓練に用い、自衛隊を米軍の後方支援体制の中に組み込む動きといっていい。
 米軍はこれまでも「リスクとコスト」というバランス論で私たちに理解を求め、「応分の負担」として巨額の拠出を求めてきた。それが?思いやり予算?として機能してきたことも忘れてはなるまい。
 今回の日本負担分についてローレス副次官は「大まかで控えめな試算」としているが、裏を返せば「経費はまだ膨らむ」ということを暗に示したということもできる。国民の理解が得られない負担は日米同盟をも危うくすることを米政府は肝に銘ずるべきだろう。

社説:日本負担3兆円 数字を独り歩きさせるな
[毎日新聞 2006年4月28日 東京朝刊]

 在日米軍再編に関連してローレス米国防副次官が記者会見で再編に伴う経費の日本側負担が約260億ドル(2兆9900億円)に上ると見通しを語ったことが波紋を呼んでいる。
 沖縄の米海兵隊司令部のグアム移転の日本側の経費分担が総額の59%、60.9億ドル(約7100億円)でようやく決着したばかりだけに、「新たになぜ日本がそんな大金を負担する必要があるのか」との疑問を抱いた国民も少なくないはずだ。
 今度は在日米軍再編の全体の経費として3兆円を払えというようにも聞こえる。実は防衛庁の守屋武昌事務次官も講演で再編の経費を「グアム移転費を除き8年間で2兆円と試算している」と述べた。合計では2兆7100億円だ。ローレス副次官はそれを上回る金額を提示した。米国内向けの発言とみられるが、上積みを押しつけられたようで釈然としない。
 その積算根拠も明らかにしないまま言い値を突きつけるやり方は、グアム移転経費を一方的に提示した時と同じだ。
 そもそも在日米軍の再編は米軍の世界的なトランスフォーメーション(変革・再編)の一環だ。在日米軍再編も米国が描く世界戦略の中に位置づけているはずだ。同時に在日米軍は日米安保条約に基づき日本の防衛の一端を担っている。在日米軍再編の機会に日本が基地負担の軽減を米側に働きかけたのも事実だ。
 だとしたら経費分担もお互いの事情を勘案してきちんと割り出すのが筋だ。事務レベルの日米審議官級協議には最終段階で経理担当者も同席した。再編協議がほぼ決着し、経費分担も日米で大筋合意したのなら双方が了解したうえできちんと発表すべきだ。積算根拠も含め国民が納得できる内容でなければならない。
 安倍晋三官房長官がローレス副次官の「日本側負担3兆円」発言に対し当初、「印象としては途方もない金額なのでコメントを差し控える」と述べたのも不可解だ。後の会見で米側に説明を求める意向を示したが、政府内で十分検討していたかどうか疑問だ。
 日本側の負担をめぐって経費を防衛予算に組み入れるのか、別枠扱いにするのかで政府内で不協和音が表面化しているという。
 すでに負担金額が決着したことを前提にした動きに見えるが、まずは経費の詳細を点検し、その負担額が妥当かどうかをあらゆる角度から検討すべきではないか。
 日本国内の基地の移転費用の見積もりは、日本側が責任を持って行うべきであり、米側が勝手に発表すべきではない。数字が独り歩きすることで日米間がぎくしゃくすることは得策でないはずだ。
 在日米軍再編によって日米同盟が新たな段階を迎える。ミサイル防衛システムの導入などで自衛隊と在日米軍の役割分担や連携のあり方は大きく変化する。
 在日米軍再編の日米協議は詰めを残すだけだ。経費負担については疑念を残さぬよう国民にきちんと説明しなければならない。

米軍再編 日本負担 3兆円とは途方もない
[徳島新聞 2006年4月28日]

 日米両政府が進める在日米軍再編にかかる日本側の負担は、少なくとも260億ドル(約2兆9800億円)にも上るという。ローレス米国防副次官が国防総省で行った記者会見で「大まかで控えめな試算」として見通しを示した。
 「印象としては途方もない金額だ」。安倍晋3官房長官が記者会見で感想を求められ、口にした言葉は率直であった。日本側には衝撃的な金額であり、多くの国民が官房長官の言葉に「同感だ」との思いを抱いたことであろう。
 財政悪化が深刻な日本が、なぜこれほど多額の経費を国民の税金で賄わなければならないのか。政府には、その積算根拠を明確にするとともに、十分な情報開示と丁寧な説明を行うよう求めたい。
 ローレス副次官によると、在日米軍の再編にかかわる経費の総額は300億ドル(約3兆4300億円)である。このうち米国側が負担するのは、沖縄海兵隊のグアム島への移転費のうちの約40億ドルにとどまるという。
 米軍普天間飛行場移設などの日本国内の再編・移転費は、2012年までの実施を目標に、今後6、7年間で約200億ドルとなる。日米安保条約に基づき、日本に駐留する米軍の地位や基地の管理運用などを定めた日米地位協定により、日本が負担することとされている。
 しかし、この上に先の日米防衛首脳会談で合意した海兵隊のグアム移転費の59%の約61億ドルが加わる。「途方もない金額」になるのも無理はない。
 3兆円となると、来年度から年間5千億円程度が必要になる。また、これ以外にも日本は「思いやり予算」として、地位協定では必要とされていない訓練移転費用や光熱水料などで毎年、2000億円を超える予算を支出している。
 日本にある米軍基地の75%が集中する沖縄の過重な負担は軽減しなければならない。そのための出費なら、惜しんではいられない。
 だが、米軍再編は日本側の意向だけで進められているのではない。米国の世界戦略の1環であるのは間違いないのに、日本の負担がどうしてこう重いのか。
 政府は米軍再編での日本側の負担を2兆円程度と試算していたが、3兆円になれば厳しい財政を一層圧迫する。中身についても、特に海兵隊のグアム移転費の負担については疑問点が多い。
 なぜ米国の領土にある米軍基地のために日本の税金が使われるのか。8000人の海兵隊員の移転費用として102億7000万ドル(約1兆2000億円)は高額過ぎないか。日本の負担割合の59%の根拠も不明で、交渉が国民に説明のないまま進められたことも納得できない。
 関係する地元自治体の理解が得られていないのも問題だ。先の岩国、沖縄両市長選で、有権者は政府の進める米軍再編に「ノー」の選挙結果を出した。
 政府は米軍再編に必要とされる経費を独自に積算して国民に示すとともに、国会での法案、予算案の審議を通じて、さまざまな疑問に答えるべきだ。頭越しの交渉でないがしろにしていた地元への説明にも誠実に取り組む必要がある。
 在日米軍再編で日米両政府が目指すのは、日米安保体制を有効に機能させ、同盟関係を強化することだろう。しかし、地元自治体をはじめ幅広い国民の理解と支持を得られなければ、狙い通りの成果が得られないのは言うまでもない。

在日米軍再編/負担経費があまりにも巨額
[河北新報 2006年04月27日木曜日]

 「こんなに金がかかるのか」
 在日米軍再編で明らかになった巨額の経費負担に対し、国民は驚きを超えてあきれているのではないか。
 米側の交渉責任者のローレス国防副次官によれば、2012年までの実施を目標として6―7年間で全体で約300億ドルに上り、日本側の負担は少なくとも260億ドル(約2兆9800億円)になる。しかもこれは「控えめな試算」だという。
 これまで、部隊の移動や施設の移転・返還など再編の中身についての議論が先行し、経費は後回しにされてきた。しかしそれにしても巨額にすぎる。
 国も地方も膨大な借金を抱え、財政再建に向けて徹底した歳出削減に取り組んでいる日本にとって、これほどの負担に応じる余力があるのだろうか。
 経費の中身を精査し、徹底して切りつめることが必要だ。日本が負担しなければならない経費なのかどうかも十分検討すべきだ。何よりも政府は国民に丁寧な説明をする責任がある。
 それを抜きにして、米の要求に沿って負担に応じたり、財源確保のために臨時増税を検討したりするのでは、国民の納得は到底得られない。
 再編経費で大きな焦点となったのは、沖縄米海兵隊のグアム移転に伴う負担問題だった。
 先日の日米防衛首脳会談で合意した負担比率は、移転経費102億7000万ドルのうち日本が59%(60億9000万ドル=約7100億円)、米が41%だ。
 再編全体での米の負担はグアム移転の約40億ドルだけ。日本国内の再編経費は、日米地位協定に基づいてすべて日本の負担となる。
 政府はこれまで再編に伴う経費として、グアム移転経費を除いて今後10年間で約2兆円と試算していた。これは関係自治体に対する新たな交付金制度なども含めての数字だ。米側の試算では、政府の見込みを大きく上回る負担が生じる。
 米軍の駐留に伴う日本の費用負担は年間6000億円を超す。再編でさらに年間数千億円が上乗せされることになる。
 日本にとって今回の再編の最大の狙いは、国内の米軍施設の75%が集中している沖縄の負担を軽減することにある。
 だが、米にとっても世界戦略の1環として重要な意味を持つ。決して日本側の都合だけによる再編ではない。
 グアム移転経費を負担することには大きな問題点があることも指摘したい。
 米海兵隊8000人のグアム移転は、グアムの軍事拠点としての強化につながる。米領土内の米軍施設強化に、日本が費用負担することにほかならない。担当分野を日米で振り分けることも決まったが、内容を詳細に検討すべきだろう。
 日米両政府は5月初めにも再編の最終合意を目指しているが、関係する自治体・住民には依然反対姿勢が強い。国内調整はまだまだ進んでいないのが現状だ。経費問題をあいまいにしたまま最終合意したのでは、国内の合意形成がさらに困難になると言わざるを得ない。

↓日本政府関係者が、すでに3月時点で「3兆円」という数字を上げていたとあらためて報道する日経新聞。

再編負担、与野党に不満・あいまい「3兆円」表面化で混乱
[NIKKEI NET 2006/04/28 07:02]

 在日米軍再編を巡り米政府が示した総額260億ドル(約3兆円)の日本側の経費負担が波紋を広げている。2012年までの6年とした再編の完了目標とともに、根拠が不明なまま表面化した印象があるためだ。経費総額は日本側も内々承知していた形跡があるが「日米合意」といえるかは微妙で、米国への不満もある。在日米軍再編推進法案の国会提出や地元調整を控え、野党は追及を強める構えだ。
 「今後、防衛庁、財務省など関係省庁で協議していくことになる。国内で協議したうえで米側と細部を詰める」。安倍晋三官房長官は27日の記者会見で、ローレス米国防副次官が試算した約3兆円の日本側経費負担の積算根拠を聞かれ、「今後」を強調した。ただ、政府関係者は3月の時点で既に「日本側が負担する経費総額は3兆円程度かかる」と明かしていた。

↓グアム移転経費負担にかんする社説。

米海兵隊移転/「応分の負担」といえるか
[神戸新聞 2006/04/26]

 額賀防衛庁長官が「直談判」するとして米国に乗り込み、ラムズフェルド国防長官と向かい合った会談は三時間に及び、三度も中断したという。
 沖縄に駐留する米海兵隊のグアム移転に伴う費用負担をめぐる日米の主張は、それほど開きがあった。それでも折り合ったのは、来月初めをめどに調整を続けている在日米軍再編の最終合意を、これ以上遅らせることはできないという思いが日本政府にあったからだ。
 今回の合意で、沖縄の海兵隊は司令部要員約八千人がグアムに移転する。米側試算による移転費用の総額百二億七千万ドル(約一兆二千億円)のうち、59%の六十億九千万ドル、約七千百億円を日本が拠出する。
 当初、米国が要求していたのは総額の75%、約八千七百億円で、それからすると金額も負担割合も、たしかに抑えられてはいる。しかし、これまでの協議で日本がのめる線として主張していた三十億ドルの倍以上である。麻生外相が「50%は切りたい」としていた割合でも上回った。
 これほどの巨額の負担を、どういう根拠で受け入れ、合意したのか、果たして適正な負担といえるのか、政府は協議の過程も含めて詳細に説明する責任がある。
 海兵隊の移転については、沖縄の負担を少しでも軽くすることにつながる。日本が繰り返し要請していたことでもある。そういう意味で、わたしたちも何らかの負担はやむを得ないと考えてきた。
 だが、この合意を「応分の負担」とするには疑問が多すぎる。
 まず第一に、百億ドルを超える移転費の積算根拠がはっきりしない。
 二つ目には、日本の負担のうち、国庫からの財政支出二十八億ドルを除く三十二億九千万ドルは国際協力銀行などを利用した融資と、民間事業体への出資の形を取り、いずれも将来回収されるというが、その保証があるのだろうか。
 さらには、軍再編は米国の世界戦略の一環であり、グアムはアジア太平洋地域の拠点という位置付けにある。米国にとって戦略上重要な移転であり、その費用負担の割合として妥当だろうか。
 日本はこれまで駐留米軍の維持に年間約六千億円を負担してきているが、米軍再編に伴って普天間飛行場など国内関連費約二兆円やグアム移転費の巨額負担がのしかかる。財政支出には新たな立法が必要で政府は国会審議で説明することになるが、よほどていねいで納得のいく内容でなければ、国民の理解は得にくいだろう。

【米軍移転経費】こんなに巨額の負担は納得できない
[南日本新聞 2006年4月26日 朝刊]

 在日米軍再編の柱の一つである在沖縄米海兵隊のグアム移転経費問題で日米が合意した。米側が示した総額102億7000万ドル(約1兆2000億円)のうち、日本は59%の60億9000万ドル(約7100億円)を負担する。
 負担割合をめぐって難航していた交渉が、額賀福志郎防衛庁長官とラムズフェルド米国防長官の会談で急転直下、決着した背景には、在日米軍再編の最終報告の取りまとめが来週初めに迫っているうえ、6月の小泉純一郎首相の公式訪米までに再編問題を解決しておきたい政府の思惑が透けてみえる。
 在沖縄米海兵隊員1万数千人のうち約8000人の隊員とその家族をグアムに移すためには、隊舎以外に家族の住宅や学校建設、道路や下水道整備などにも膨大(ぼうだい)な費用がかかるというのが米の主張だ。
 在日米軍基地の75%が集中する沖縄の負担を軽くするのは、沖縄県民のみならず日本全体の願いでもある。負担軽減のためには応分の負担はやむを得まい。
 そうだとしても、米領土内に新たに設ける基地の建設費や関連経費の半分以上を日本が受け持つという例はこれまでにない。米側にとっても海外駐留米軍の米国内への移転費用を駐留先の国に負担させたことはないはずだ。
 今回のグアム移転に際して、果たしてこれだけ巨額の負担をする必要があるのか、不当な金額を押しつけられたのではとの疑問が残る。そもそも102億7000万ドルの総額の根拠が一切示されていないのでは国民の理解は得られまい。
 在日米軍の再編はもともと、全世界的な米軍再編の一環として計画されているものだ。在沖縄海兵隊のグアム移転も、在欧米軍や在韓米軍の一部撤退と同様に世界的再編の中で米側にとって必要な措置の一つとみるべきだろう。
 グアム移転要求が日本側だけの理由でないとすれば、普天間飛行場移設、岩国基地への米空母艦載機移転など、すべてをワンセットで受け入れることを条件に移転をしぶしぶ容認したとの米側の主張は筋が通らない。巨額の移転経費を要求する根拠も薄れてくる。
 ただでさえ日本は安全保障を米軍に委ねる代わりに、巨額の「思いやり予算」を負担している。政府は、60億9000万ドルというさらなる負担の必要性と妥当性を国民に説明する義務がある。
 今後、基地の負担軽減と引き換えに経費の「6割負担」という流れが定着する恐れもある。国会で、米への負担のあり方を徹底的に論議しなければならない。

米軍再編・政府は国民不在姿勢改めよ
[琉球新報 2006-4-25 9:56:00]

 おかしな話だ。日本は米側に総額100億ドルから圧縮を求めていたのに、102億ドルに増えた。しかもそれを受け入れ、約61億ドルの日本側負担で合意してしまった。在沖米海兵隊のグアム移転費用のことである。交渉過程の詳細が国民に知らされず、これまでの経過が不透明のまま「合意」が伝えられた。国民に「理解を」と求めるのは無理というものだ。
 一方、23日に投開票された沖縄市長選、岩国市長選で、共に米軍再編による基地強化に反対する候補者が当選した。政府の進める米軍再編に逆風が吹いている。この上、不透明のまま移転費用負担額を決めてしまっては、いっそう逆風が強まることになろう。
 海兵隊のグアム移転は、普天間飛行場移設とともに米軍再編の根幹をなす。県民から見れば、海兵隊の移転が普天間移設とセットになっているのはおかしいし、移転費用を日本が負担することについてもしかりだ。米軍が自国領土内に移転するのに、なぜ日本が巨額の資金を支出しなければならないのか。財政難の折、納税者は納得しないだろう。
 この問題には疑問点がある。まず102億ドルという数字。確かな根拠に基づくものなのか。日本政府は精査したのか。財務省から「一つ一つ積み上げたものなのか」と懸念する声が上がるくらいだから、どうも合意を急ぐあまり詳細は後回しにされた感がぬぐえない。
 もう一点。日本が負担する約61億ドルのうち「融資・出資方式」で拠出される約33億ドルについても釈然としない。政府関係者によると、民間事業主体に政府が15億ドル出資し、50年間で元本の返済を受ける仕組みが中心となるが、50年間のうちに出資金が目減りし、結果として国民の負担につながってしまう。
 さらに米が移転経費を102億ドルに増額したために、日本の負担割合が60%を切って59%となった。いかにも国民の批判をかわすために、負担を少なく見せる数字の“マジック”に思えてならない。
 日米政府が昨年10月、米軍再編中間報告に合意した際、移転先の自治体は一斉に「地元の頭越し」と反発した。今に至っても移転に猛烈に反対する自治体は多く、沖縄市長選、岩国市長選の結果は、今後の米軍再編が暗礁に乗り上げる可能性もあることを示した。
 今回の移転費用負担合意と、米軍再編中間報告には共通する政府の姿勢がある。「まず米国ありき」「国民不在」ということだ。すべてを決めてしまった後に説明行動に移る。国民にとっては、納得できないし、不満が鬱積(うっせき)する。
 日本は米国の属国ではないはずだ。対等な立場での外交努力を強く、求めたい。

社説=グアム移転費 負担の根拠が分からない
[信濃毎日新聞 4月25日(火)]

 沖縄からグアムへの米海兵隊移転費用負担問題が日米防衛首脳会談で合意した。総額の59%、7000億円余(60億9000万ドル)を日本がもつ。
 移転に伴い米国が自国で進める基地の整備費用である。「なぜ日本が」の疑問への説明も後回しだ。容認しがたい。
 沖縄に駐留する海兵隊の司令部機能をグアムに移し、隊員約8000人が移転する費用である。米側は必要経費の総額を100億ドル余りとし、その75%を日本側に求めていた。
 沖縄を含め日本全体の負担軽減のためには「応分の負担が必要」というのが、日本政府の立場だ。1日も早い海兵隊移転が実現するよう、カネを出すのだと言う。
 これだけなら「ある程度の負担はやむを得ない」と受け止められる余地がないとは言えない。ところが、この問題には根本的な疑問が幾つもある。
 1つは、米国が国外に置いた基地の移転費用を、駐留国側が負担した例がこれまでにないことだ。むろん、日米安保条約や地位協定の枠外の事態である。費用負担を可能にする法整備などを、政府が検討するのもそのためだ。
 戦争や軍事にかかわって政府が巨額の負担をした例としては、1991年の湾岸戦争で拠出した多国籍軍支援の1兆円がある。2003年にはイラク戦争後の復興支援で5000億円余を支出している。
 ただどちらも「国際協調」のためである。今回は日本国外の米軍への軍事的支出だ。グアムの戦略拠点化が、世界規模の米軍再編の中で進んでいることも見落とせない。政府がいくら「沖縄の負担軽減」を強調しても、問題を残す。
 疑問の2点目は、米側がはじいた100億ドルを超える移転費用が妥当かどうかだ。海兵隊司令部庁舎や隊舎、学校を建設する。家族住宅を建て、電力、下水道も整備する。総額はグアムの域内総生産の3年分にもなる。1つ1つ積み上げた根拠ある数字なのか、疑問が残る。
 3つ目は、不透明な交渉の進め方だ。費用負担の是非も比率も、国民は置き去りだった。合意してから、負担の必要性をしっかり説明し、理解を求めると言われても、うなずけるものでない。
 今回の交渉は6月の小泉首相訪米を控えていた。はじめに合意ありきの交渉では、納得のいく結論を導くのは難しい。
 在日米軍再編をめぐっては、沖縄市や山口県岩国市で反対を訴える候補が当選している。国民が基地再編に向ける目は厳しい。強引に進めるのは許されない。

米軍移転費負担  結局は「言い値」通りだ
[京都新聞 2006年04月25日掲載]

 結局は米国の「言い値」が通ったということだ。
 在日米軍再編で日米間の懸案となっていた、在沖縄米海兵隊のグアム移転経費の負担問題が決着した。日本が59%を負担する。とても納得できるものではない。
 日米交渉は高級事務レベルで難航していたが、最後は額賀福志郎防衛庁長官が訪米してラムズフェルド米国防長官と政治決着する格好をとった。
 合意内容は、総額百二億七千万ドル(約一兆二千億円)のうち日本が59%、六十億九千万ドル(約七千百億円)を負担するというものだ。米国は75%負担を求めていたが、粘り強い交渉で米側も譲歩したというのが言い訳になっている。
 大変な税金投入だが、額賀長官は「沖縄県、日本の負担軽減のため応分の資金的負担をしなければならない」と、米軍基地の負担軽減を大義名分にする。小泉純一郎首相も早い段階から「応分の負担は当然」との姿勢だった。始めから日本の負担ありきだったわけだ。
 これを見越したように米軍は「日本のための移転」を前面に出し、これ幸いと法外な経費を吹っかけてきた節もある。最初提示した移転費は百億ドルだった。米関係筋が「数字は30億ドルから最大百億ドルまであった」と漏らしたように、便乗してグアム基地全体の再整備を進める思惑もあったのではないか。
 グアム基地は北東アジアから中東に至る「不安定の弧」をにらむ「有事の前線基地」として、ますます重要な位置付けにある。世界的な米軍再編における戦略拠点になっているのだ。その意味において海兵隊の移転は米軍内の兵力再配置にすぎないともいえよう。
 そもそも海外に駐留する外国軍が自国内に軍隊を移転するために、基地を提供している国側が費用負担すること自体、世界的にみても極めて異例だ。日本は初めてのことで、なぜ負担しなければならないか、説得力が乏しい。
 それに加えて移転費の積算と要求根拠が不明だ。麻生太郎外相は百億ドルと75%負担要求について「言い値」といみじくも指摘、あまり根拠のあるものではないとの認識を示し、政府全体が似たような受け止め方をしていた。
 日本は最初30%負担を提示している。それが次には最低ラインが50%になり、最後は59%では、まるで「バナナのたたき売り」ではないか。それもいつの間にか総額が膨らんで、見せ掛けは負担率60%を切った形にするまやかしをみれば、いかにいいかげんな数字だったかということを証明している。米国にいいように押し切られた結果は歴然だ。
 政府が決着を急いだ背景に、小泉首相の六月訪米と九月退陣という事情もあろう。まだ説明責任を果たしていないが、移転費負担の実現は新たな法的根拠を整える必要がある。国会審議でどこまで国民が納得する説明ができるか、苦しい対応を強いられるに違いない。

グアム移転費*疑問ばかり募る合意だ
[北海道新聞 4月25日]

 在日米軍再編の焦点の一つだった沖縄の米海兵隊のグアム移転費用をめぐる日米交渉が決着した。
 国民に満足な説明がないまま、政府間の合意という既成事実が積み上げられていく。米軍再編協議の秘密主義と結果の押し付けが、また繰り返された。
 米側が示した費用総額は百二億七千万ドル。このうち日本が財政支出と融資で59%(六十億九千万ドル=約七千億円)を負担する。
 米国の領土につくる米軍基地の建設費をなぜ日本が出さなければならないのか。なぜ百億ドルもかかるのか。なぜ59%なのか。疑問ばかりが募る。
 財政再建のため日々の暮らしでさまざまな負担増に耐えている国民は、とても納得できないだろう。
 米海兵隊のグアム移転は、沖縄の基地負担軽減の目玉として、昨年十月に日米両政府がまとめた米軍再編の中間報告に盛り込まれた。海兵隊員八千人と家族を合わせ計一万七千人を移す計画だ。移転費用の日本負担はその後、米国が突然言い出してきた。
 「グアム移転は日本の要求だ。米国は日本の安全保障に責任を負っている。日本が費用を負担するのは当然だ」。これが米国の主張である。
 しかし、その言い分にどこまで合理的説明がつくのだろうか。
 確かに日本は沖縄の基地負担軽減を求めたが、それはグアムをアジア・太平洋地域の戦略拠点の一つとして位置づけようとする米国の都合とも合致するものだ。
 しかも移転するのは海兵隊の司令部だけで、日常的に訓練を行う実戦部隊は残るため、負担軽減効果はそれほど大きくないともいわれる。
 日本が在日米軍にカネを出し渋っているわけではない。
 本来米国が負担すべき分を日本が持つ「思いやり予算」をはじめとする駐留経費の拠出総額は、年間六千億円に上る。米国が駐留する国々の中では破格の額である。
 そうした気前のよさに乗じるかのように、米国は当初八十億ドルとしていた移転費用総額を、百億ドルにつり上げてきた。日本に要求していた75%という負担率も根拠はあいまいだった。
 日本は総額の圧縮と負担率の引き下げを求め、米国が譲歩した形を取って合意した。しかし、総額は減るどころかわずかながら増え、日本の負担額も政府の最初の想定を大きく上回った。事実上、米国に押し切られたと言わざるを得ない。
 米軍再編は、日米安保体制のあり方を問い直す機会だ。日本の巨額な費用負担の妥当性を含め、しっかりと議論する必要がある。
 日米両政府は五月初めにも最終報告をまとめる方針だが、このままでは後世に禍根を残すことになりかねない。

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