ククーシュカ ラップランドの妖精

ククーシュカ ラップランドの妖精

土曜日、町田でケーテ・コルビッツ展を見たあと、渋谷で映画「ククーシュカ ラップランドの妖精」を見てきました。(今年6本目)

舞台は、第2次世界大戦末期のラップランド。ドイツと同盟を結んだフィンランド軍はソ連軍と戦っていたが、戦況不利で撤退を余儀なくされる。しかし、狙撃兵ヴェイッコは、ドイツ軍服を着せられ、鉄鎖で大岩につながれて置き去りにされる。そこにソ連軍がやってくるが、大尉イワンは秘密警察に逮捕され、軍法会議へと連行されるが、途中で車がソ連軍機の誤爆を受け、彼だけがからくも生き延びる。サーミ族の女性アンニは、そんなイワンを見つけ自宅に連れ帰り介抱する。そこに、鎖をはずすのに成功したヴェイッコがやってくるが、ヴェイッコとイワンとアンニはたがいに言葉がまったく通じなかった…。

というわけで、ヴェイッコが、ようやく意識を回復したイワンに名前を尋ねても、ドイツ兵の軍服を着たヴェイッコをファシストだと思い込んで、「くそったれ!」としか言わないので、ヴェイッコはイワンの名前を「くそったれ(もちろんロシア語で)」と思い込むとか、アンニがようやく運んできた丸太を、ヴェイッコが「手伝うよ」といって、またどこかへ持って行ってしまうとか、ともかくやりとりがとんちんかんです。また、ヴェイッコをドイツ兵だと思い込んでいるイワンは、くり返し、彼を殺そうとするなど、はたして言葉の通じない3人の共同生活はどうなるのだろう?と思わせます。そこが、この映画の面白さでもあり、ねらいでもあります。

しかし、それより何より、ラップランドの自然が超きれいです。こんなきれいなところで戦争がやられている、というのが不思議なくらいです。季節は夏なのですが、高緯度地帯特有の低くたれ込めた雲と、ちょっと眠たげな空。山と森林と川が広がる風景のなかに、アンニの暮らす家がぽつんとあったりします。

ところで、東京では今週末(12日)で公開終了ですが、この映画を見るときには、第2次世界大戦におけるフィンランドとソ連との関係を頭に入れておいた方がよいかも知れません。

――1939年第2次世界大戦が始まったとき、ソ連は、というよりスターリンは、レニングラードの防衛のためという理由で、カレリア地峡の割譲を要求。フィンランドはこれを拒否しましたが、ソ連は50万の大軍で侵攻。結局、フィンランドはカレリア地峡の割譲を余儀なくされます(ソ連・フィンランド戦争)。その後、41年になって、独ソ戦が始まると、フィンランドはドイツ軍に協力し、ソ連に宣戦布告。しかし、戦局が不利になり、44年にソ連と休戦条約を結び、戦線離脱を余儀なくされます。映画は、ちょうどこのころの出来事になっています。

こういう訳なので、フィンランド側からすると、戦争は領土回復の自衛戦争ということになります。だから、平和主義者ヴェイッコは“裏切り者”。ドイツ軍服を着せられたのは、もちろん、ソ連軍がドイツ兵と勘違いして、ヴェイッコを殺すであろうと考えてのこと。もちろん、ソ連軍到着前に、ヴェイッコが逃げ出せればそれはそれでよし、という訳です。

で、ヴェイッコは、わずかに残された眼鏡と水と、まわりに生えている植物を使って、硬く打ち込まれた鉄杭を抜くことに成功するのですが、このあたりは、彼の頭の良さに感心させられました。

それから、「サーミ」というのはラップ人の自称。サーミ人は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアに数万人います。アンニは、夫がフィンランド政府に兵士としてとられ4年たっても戻ってこないという設定です。夫が戦死したとは明示されないけれど、寡婦だという設定で、4年間男がいなかったのに、突然男が2人も現われた…といって、にんまりするあたり、たくましく魅力的です。(^_^;)

あと、「ラップランドの妖精」というサブタイトルについて。まあ、アンニのことをさしているのでしょうが、「妖精」などという言葉からメルヘンチックな映画を考えたら、まったくの見当外れ。ということで、僕は余計なサブタイトルだと思ったんですが…。

→公式サイト:ククーシュカ

【作品情報】監督:アレクサンドル・ロゴシュキン/出演:アンニ=クリスティーナ・ユーソ(アンニ) ビッレ・ハーパサロ(ヴェイッコ)、ビクトル・ビチコフ(イワン)/2002年、ロシア

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