財界人からの直言(2)

『論座』7月号には、西村正雄氏とともに、経済同友会終身幹事の品川正治氏も登場し、「平和憲法にそった国の再構築を」と論じられています。

品川氏の主張は、非常に明快。アメリカは「戦争」を前提とした国家、それに対し、日本は「平和憲法」に立脚した国家であり、「アメリカと日本では根本的に立つ価値観が大きく異なっている」というもの。それにもかかわらず、日米で価値観を共有しているというからおかしなことになる、というわけです。

 ……はっきりさせておきたいのは、アメリカと日本では根本に立つ価値観が大きく異なっているということである。
 両者の違いは、端的に言えば、米国は「戦争」を前提とした国家であり、日本は「平和憲法」に立脚した国家である、ということだ。この違いは明確であるにもかかわらず、「日米で価値を共有」しているとみなし、「アメリカの国益は日本の国益」「アメリカの敵は日本の敵」という枠から出られないでいるところに、今日の大きな問題が潜んでいるのではないか。これはマスコミの論調もしかり、である。

で、戦後、「修正資本主義」を国家目標として、「資本家のための経済大国ではなく、国民全体の底上げを目指した」が、小泉改革によって、「戦後の修正資本主義」は「変更」された。しかし、小泉首相らが重視する「市場」は、「生産のため」の市場から、「利回りと値上がりを期待する投機資本で形成」されるものに「変質している」。「自由主義」は「本来は『権力』からの自由を意味する」ものだったが、「今の規制緩和は、大企業に自由=権力を付与するためのものに思えて仕方ない」と批判されています。

だからこそ、アメリカの価値観に組み込まれる道ではなく、日本としてのあり方をとことん追求すべきだと主張されています。

 やはりいま、日本人が真に考えるべきことは、アメリカの価値観に組み込まれてアメリカ式へと国の形を変えることではなく、日本としてのあり方をとことん追求することではないだろうか。ポスト小泉政権がいきなり路線転換をはかるのは、仮に民主党が政権をとったとしても非常にむずかしいだろう。しかし、私は共産党や社民党ではなく、むしろ保守政党にこそ「本当の資本主義とは何か」を真剣に考えてほしいと考えている。「本当にそれでいいのか」と。

かつて、共産党こそ「本当の資本主義政党だ」と言った人がいましたが、保守政党にこそいまの小泉構造改革路線への批判を期待したいというのは、経済同友会の元副代表幹事ならではの苦言というべきでしょう。そのとき、最優先すべきは平和憲法です。

 その際、最優先に検討すべきは、冒頭に述べたように平和憲法を持っている国としての生き方であると考える。経済運営しかり、外交運営しかり。平和に立脚した国家のありようという、21世紀の世界的な課題に日本として率先して答えることが、われわれに課せられた仕事だと思うのである。

しかるに、今の日本の外交は、平和主義国家にとって「相当危機的な状態にある」と言われます。

 一つには、アメリカとの従属関係が強まるにつれ、国内にある種のナショナリズムが台頭しているのだが、なぜかその矛先はアメリカに向かわず、中国や韓国に向けられるという「ねじれ現象」が起きていることである。相手をののしる、という類の汚い言葉が横行する言論誌など、目を覆いたくなる状況である。「日米が同じ価値観」という呪縛が、ここに一番はっきりと姿をあらわしている。

保守の立場からの直言として、傾聴に値するご発言です。

ところで、品川氏は、いま流行の藤原正彦氏の『国家の品格』について、最後にこうコメントされています。

 ただし、私が主張する「独自路線」は、藤原正彦氏の『国家の品格』とはまったく異なるものである。武士道やモノのあわれ、といったもので日本の「違い」を主張し、不満の受け皿としての「日本とは」を鼓舞しようとすれば、再びリビジョニストたちによる「日本異質論」を招き、偏狭なナショナリズムに利用されるだけだ。

僕自身は、藤原正彦氏の『国家の品格』は「偏狭なナショナリズムに利用される」危険があるのではなく、それ自体が「偏狭なナショナリズム」だと思うのですが、それを除けば、まったく同感です。

※引用は、すべて『論座』2006年7月号から。

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