歴博に行ってきました

国立歴史民族博物館 特別企画展「佐倉連隊にみる戦争の時代」

国立歴史民俗博物館でやっている特別企画展「佐倉連隊にみる戦争の時代」を見るため、昨日、佐倉まで行ってきました。

歴博のある佐倉城趾には、終戦まで、明治7年に創設された陸軍佐倉連隊が置かれていました。今回の企画展は、その佐倉連隊にかかわる資料に即するかたちで、戦争というものが人々の暮らしにどんな影響を与えたかを具体的に見ていこうというもの。派遣先から送られてきた手紙や、戦争に行った兵士が持っていた軍隊手帳なども多数展示されています。

展示は、「I、佐倉城から佐倉連隊兵営へ」「II、佐倉連隊の兵営生活」「III、佐倉連隊と地域」「IV、佐倉連隊と戦争」の4つのコーナーに分かれていますが、一番見応えがあったのは、やっぱり「IV、佐倉連隊と戦争」のコーナー。佐倉にいた連隊は、西南戦争、日清・日露戦争に参加(歩兵第2連隊)。昭和に入ると、2・26事件の鎮圧部隊に加わったほか、「満州」に派遣され、ノモンハン事件にも出動。1944年には南方へ転出し、グアム戦・レイテ戦に参加し大きな犠牲を出しています。

展示で注目されたのは、1つは日清戦争のときの陣中日記。いわゆる「旅順虐殺事件」について、死傷した日本兵にたいする清国兵の残虐行為にたいし、師団長が、成年男子の皆殺しを指令していたことが記録されています。この事件は、日本にとって本格的に国際法を学ぶきっかけとなったものですが、師団長の命令があったことが資料的に裏づけられたのは初めてではないでしょうか。
2つめは、日露戦争について記録した『歩兵第二連隊史』。これは結局活字にはならなかったもののようですが、日露戦争で乃木希典の指揮する第3軍に組み入れられた第2連隊は、旅順要塞突撃に参加しますが、それについて、『連隊史』は、「守兵の志気旺盛なる要塞に向ては強襲的企図は殆ど成功の望なし」(第1回総攻撃)、「数回勇猛果敢なる突撃を決行したりしも、約7千の戦闘員を喪失して全く失敗に了れり。而して此方面の状況は吾人をして仮令幾回突撃を履行するも到底成功せざるべしとの観念を抱かしめたり」(第3回総攻撃)と、リアルに書かれています。ここには、その後の日本軍からは失われた一種のリアリズム、合理主義があったことが分かります(ただし、この『連隊史』は実際には刊行されなかったようで、その意味では、その当時から、こういうマイナス面をリアルにみるという合理主義はおさえつけられていたのかも知れませんが)。

展示の中には、山本薩夫監督の映画「真空地帯」の一部もありました。この映画の撮影に、残っていた佐倉の兵舎が使われたのだそうです。(展示の中では、このビデオの前が一番盛り上がっていたのかも知れません。出演している俳優を指さして、これが西村晃、これが木村功と、大盛り上がり。同時に、上級兵による“しごき”の場面では「本当はこんなものじゃなかった」の声もありました)

当日は、午後から歴博講演会が開かれ、歴博前館長である宮地正人氏による講演「佐倉連隊と日清・日露戦争」がおこなわるということもあったためでしょうが、会場は年輩の方を中心にたくさんのお客さんが来られていました。

宮地氏の講演は、佐倉連隊の創設から日清・日露までの歴史をふりかえったもの。会場の講堂が一杯で、別の会場で中継を見るのがやっとでしたが、そこもイス席はすでに満杯。壁際までお客さんでいっぱいという、本当に盛況でした。講演のなかで、宮地氏は、戦争が部隊にあたえた犠牲の大きさや、20歳で徴兵された現役兵部隊はもちろん、徴兵を終えて地域に帰り、結婚し家族をもっていた後備兵らが動員され、死傷せざるを得なかったことの“重み”を強調されていました。

講談を聞くかのような熱のこもった宮地先生の講演に、最後は大きな拍手が送られていましたが、それをみながら、やっぱり戦争の犠牲ということについては、まだまだたくさん語られるべきことがある、戦争というものは抽象的なものではなく、具体的な痛み、犠牲をともなうものなんだということを、もっともっとリアルに明らかにしていくことが必要なんだな、と感じました。

ところで今回の展示は、佐倉連隊に即してというか、佐倉連隊の動きに限定するかたちで組み立てられています。日清・日露、満州事変、日中戦争、太平洋戦争という戦争の全体像についてはあえて省略されたもののようです。僕などは戦争全体がどういうものだったかある程度知った上で見ているので、侵略的な意図のもとにおこされた戦争で強いられた犠牲に目がいくわけですが、そういう知識が全くない人がこの展示を見たら、いったいどう感じるだろうかというのが、一番気になったところ。企画全体として、佐倉連隊の武勇を誇るといったところは全くありませんし、軍隊がどのように兵士をつくっていくか、という問題もきちんと取り上げられていて、大変よく工夫されているなと思いましたが、はたしてどう受け止められるのか、若い人たちにも見てもらって、ぜひ感想を聞きたいと思いました。

【博覧会情報】
特別企画:「佐倉連隊にみる戦争の時代」
期間:2006年7月4日?9月3日 (月曜休館)
主催:国立歴史民俗博物館

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