あのアーミテージ氏が「靖国史観」を批判

産経新聞が、小泉首相の靖国参拝問題で、アーミテージ全米国務副長官のインタビューを掲載。

アーミテージ氏の立場は、中国を敵視して、首相の靖国参拝問題での中国の抗議を、不当な内政干渉であるかのように述べて、中国の圧力に屈するべきではないとするものです。しかし、興味深いのは、そういうアーミテージ氏にしても、靖国神社の遊就館の展示については「米国人や中国人の感情を傷つける」と批判。「そこにある記述があまりに不適切なことは日本側でも再考されるべきだ」と主張していることです。

先の戦争を「自衛の戦争」「アジア解放のための戦争」とする靖国史観は、あのアーミテージ氏の目から見ても、「不適切」「再考されるべき」ものだということです。

アーミテージ前米国務副長官に聞く 対中外交、日米で防御戦略を(産経新聞)

アーミテージ前米国務副長官に聞く 対中外交、日米で防御戦略を
[Sankei Web 2006/07/20 02:08]

【ワシントン=古森義久】リチャード・アーミテージ前米国務副長官は産経新聞と会見し、米国の視点から日中関係の現状や靖国問題について語り、中国政府が日本の首相に靖国参拝の中止を指示することは不当であり、米国も靖国問題にはかかわるべきではないとの見解を表明した。
ブッシュ政権一期目に国務副長官を務めたアーミテージ氏は「ブッシュ大統領が『日中関係は単なる神社への参拝よりずっと複雑だ』と述べたように、靖国論議は日中関係を難しくした原因ではなく、難しい状態があることの症候(つまり結果)だ」と語り、日本の一部にある「首相の靖国参拝が日中関係を悪化させた」という主張を排した。日中関係の改善についても「日本よりまず中国が何をすべきかを考えるべきだ」と強調した。
日中関係悪化の主要因としては、「歴史上、初めてほぼ同じパワーの両国が北東アジアという同じスペースを同時に占めるようになったため、安保や領土など多くの問題が起きてきたことだ」とし、過去の歴史では日本と中国のいずれかが総合国力で他方よりもずっと優位にあったのが対等な位置で競合するようになったことが現在の摩擦を引き起こしているとの地政学的な見方を示した。
首相の靖国参拝について、<1>米国社会で犯罪者も丁重に埋葬されるように、A級戦犯も含めて戦没者などの先人をどう追悼するかは日本自身が決めることで、とくに死者の価値判断は現世の人間には簡単に下せない<2>中国は日本への圧力の手段として靖国問題を使っているため、日本側が譲歩して首相の参拝をやめたとしても、必ず別の難題を日本にぶつけてくるだろう<3>小泉首相は公人ではなく私人として参拝することを強調したが、中国側はその「譲歩」を全く認めず、靖国だけを問題にしているのではないことを印象づけた?などという点を指摘した。
アーミテージ氏はさらに「中国政府は日本の首相に靖国神社に参拝するなと指示や要求をすべきではない」と中国の対日要求を不当だと断じ、とくに「民主的に選出された一国の政府の長が非民主的な国からの圧力に屈してはならない。小泉首相には中国が靖国参拝反対を主張している限り、参拝をやめるという選択はない」と強調した。
ただし、靖国境内にある軍事博物館の遊就館については「戦争に関する一部展示の説明文は日本で一般に受け入れられた歴史の事実とも異なり、米国人や中国人の感情を傷つける」と述べた。
同氏は米国の対応についても、「米国政府が靖国や他の戦没者追悼の方法に関して小泉首相やその後継首相にあれこれ求めるべきではない。助言や意見を非公式に述べることは構わないだろう」と非関与を提唱した。

≪リチャード・アーミテージ前米国務副長官が産経新聞に語った日中関係や靖国問題に関する見解の詳細≫
一、靖国問題は日中間の他の諸問題の症候だと思う。小泉首相の靖国参拝は日中関係を難しくした理由や原因ではない。ブッシュ大統領の「日中関係は単なる神社への参拝よりずっと複雑だ」という言明のとおりだ。中国は靖国を日本への圧力に使っているため、日本がもしこれまでに靖国で譲歩をしたとしても、必ずまた別の難題を持ち出し、非難の口実にしただろう。現に小泉首相は前回の参拝は平服にして、公人ではなく私人であることを強調したが、中国側はその譲歩を全く認めなかった。
一、歴史上、初めて北東アジアでは日本と中国の両国がほぼ同じパワーを有し、同じスペースを同時に占めるようになった。このため安保や領土など多くの問題が起きてきた。そのことが日中関係を難しい状態にするようになったのだ。それ以前の歴史では両国のいずれかが総合国力で他方よりずっと優位にあったのだが、最近は対等な位置で競合するようになり、それが摩擦を引き起こしている。靖国問題はその症候なのだ。
一、米国社会では殺人者のような犯罪人までキリスト教などの教えに従い埋葬される。同様に日本でも祖先、とくに戦没者をどう追悼するかは日本自身が決めることだ。その対象にはA級戦犯も含まれる。死者の価値判断は現世の人間には簡単には下せない。中国は日本の首相に靖国参拝中止の指示や要求をすべきではない。米国政府も日本の首相に戦没者追悼の方法についてあれこれ求めるべきではない。見解や助言を伝え、協議することはできるだろう。だがとくに日中関係でいえば、民主的に選出された一国の政府の長である日本の首相が中国のような非民主的な国からの圧力に屈し、頭を下げるようなことは決してあってはならない。
一、小泉首相には中国から靖国参拝を反対されている限り、その要求に従って参拝をやめるという選択はないだろう。中国は日本の現首相、次期首相の参拝中止が表明されない限り、日本との首脳会談には応じないとして、自らを袋小路に追い込んでしまった。だが次期首相にその条件がそのまま適用されるかどうか。安倍晋三氏はもし首相になっても靖国に参拝するかどうかはわからないままにしている。米国は日中関係に対しては決して中立者ではない。日本は同盟国であり、中国はそうではないからだ。だから米国は靖国の論議の段階では中立を保つかもしれないが、日本が本当に小突き回されれば、日本を支援する。
一、日本の首相の靖国参拝には問題がなくても、靖国境内にある遊就館の一部展示の説明文は米国人や中国人の感情を傷つける。太平洋戦争の起源などについて日本の一般の歴史認識にも反する記述がある。日本が自国の戦争を記録するための軍事博物館を持つことは大切だが、そこにある記述があまりに不適切なことは日本側でも再考されるべきだ。
一、日中関係の改善について日本側ではよくそのために日本が何をすべきかという問いかけが出るが、まず中国が何をすべきかということをもっと考えるべきだ。ダンスを踊るには2人の人間が必要なのだ。中国自身が長期の利害関係を考えて、日本を含む隣人諸国ともっと仲よくしようと決めれば、靖国を含め、いろいろな手段がとれる。中国は日本への姿勢を今年3月ごろからいくらか柔軟にし、対決を避けるという方向へ動き始めたかにもみえる。日中外相会談の開催もその一つの兆しだ。
一、中国は民主化の方向へ動く気配もあるが、なお基本的に一党独裁は変わらず、国内の矛盾や格差も激しくなる一方だ。秘密に包まれたままの軍事体制での軍拡もなお続いている。このまま軍事力を中心とする国力を強めた末、覇権を求める野心的なパワーとなるのか、それとも既存の国際秩序の保持に加わるステークホルダー(利害保有者)となるのか、自分たちもまだわからないのではないか。日米両国は同盟パートナーとして、そのどちらのケースにも備えるヘッジ(防御)戦略を協力して構築する必要がある。

リチャード・アーミテージ氏の略歴 1967年、米海軍兵学校卒、海軍軍人としてベトナム勤務。73年に退役し、国防総省勤務、上院議員補佐官を経て83年にレーガン政権の国防次官補。2001年から04年末まで国務副長官。現在はコンサルタント企業「アーミテージ・アソシエイツ」代表。

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  1. おもちゃのちゃちゃちゃ☆ - trackback on 2006/09/01 at 07:40:16

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