法令遵守を迫られたキヤノン、「偽装請負」の是正に着手

労働基準監督署からくり返し指導を受けていたキヤノンが、「外部要員管理適正化委員会」を設置。年内をめどに請負業者との契約を見直し、派遣への切り替えをすすめる予定だと「朝日新聞」夕刊が報道。

キヤノン、偽装請負一掃へ 数百人を正社員に(朝日新聞)

「外部要員管理適正化」とは、要するに違法な「偽装請負」をなすくというもの。請負の場合、キヤノンが直接仕事上の指示を与えることはできないにもかかわらず、実際には、請負労働者に直接仕事の指示を出していたという訳です。2004年以来、くりかえし労働基準監督署からの指導を受けており、ようやく全社的に是正されることになりました。

キヤノン、偽装請負一掃へ 数百人を正社員に
[asahi.com 2006年07月31日17時33分]

 キヤノンは、年内をめどに請負業者との契約を見直して派遣に切り替えるなど、偽装請負の完全解消をめざした対策に取り組む。8月1日付で内田恒二社長を委員長とする「外部要員管理適正化委員会」を設置する。また、グループ全体で2万人以上いる請負や派遣労働者のうち、数百人を正社員に採用する方針だ。
 御手洗冨士夫会長は日本経団連会長を務める。財界トップ企業の偽装請負解消へ向けた取り組みは、他社にも影響を与えそうだ。
 キヤノングループでは、請負労働者が約1万5000人、派遣労働者は約7500人いる。合計すると、キヤノン本社の正社員約2万2000人に匹敵する規模だ。子会社の大分キヤノン(大分県国東市)では、約千人の正社員に対し、約4000人の請負労働者が働いている。
 グループでは偽装請負が相次いで発覚。子会社のキヤノンファインテック(茨城県常総市)やキヤノン化成(茨城県つくば市)、大分キヤノンなどが、04年以降、労働局から指導を受けた。本体でも昨年10月に文書指導を受け、法令順守の徹底が求められていた。
 新設する委員会では、請負業者に任せることが可能な生産工程と、正社員の指揮命令が必要なものとを生産ラインごとに厳密に区分する。「偽装」の懸念が残る場合には、指揮命令が可能な派遣に切り替えたり、正社員の仕事を増やしたりして対応する。取り組み状況は、本社が監視する。
 また、請負や派遣労働者の正社員採用を本格的に実施する。1、2年のうちに数百人を採用する予定だ。全体のごく一部にとどまるが、大手製造業が偽装請負解消に向け、請負・派遣労働者を正社員として受け入れる事例は珍しい。
 山崎啓二郎・キヤノン人事本部長は「モノづくりを優先するあまり、偽装請負が残ってしまった。法令順守を徹底するとともに、請負や派遣労働者を正社員にすることで、現場の技術力向上にもつなげたい」という。
 他社では偽装請負を指摘されていたコマツ子会社の「コマツゼノア」(埼玉県)が、2年間で約70人の派遣労働者を正社員に採用している。ただ、このような事例は少なく、正社員化の流れが広がるかどうかは不透明だ。

「朝日新聞」は、今日の朝刊で、「偽装請負」の実態を大きく取り上げています。紙面では「キヤノンや日立でも」という見出しが目を引きます。

「偽装請負」労働が製造業で横行 実質派遣、簡単にクビ(朝日新聞)

「偽装請負」労働が製造業で横行 実質派遣、簡単にクビ
[asahi.com 2006年07月31日06時07分]

 大手製造業の工場で「偽装請負」と呼ばれる違法な労働形態が広がっている。この3年で労働局から違法と認定された企業の中には、キヤノン、日立製作所など日本を代表する企業の名もある。メーカーにとっては、外部から受け入れた労働者を低賃金で、安全責任もあいまいなまま使えるうえ、要らなくなったら簡単にクビを切れる好都合な仕組みだ。「労働力の使い捨て」ともいえる実態がものづくりの現場に大規模に定着した。

実質は派遣、簡単にクビ 労働局が調査強化

 全国の労働局が2年ほど前から立ち入り調査を強化。昨年度だけでも、メーカーなど請負を発注した660社のうち、半分以上の358社で偽装請負に絡む問題が発覚し、文書指導した。05年度までの3年間を見れば指導件数は年々倍増しており、「いたるところで見つかる状態」。指導事例は、氷山の一角だ。
 偽装請負の現場で働く労働者は不利な立場にある。担い手は20?30代半ば。ボーナスや昇給はほとんどなく、給料は正社員の半分以下だ。社会保険の加入さえ徹底されず、契約が打ち切られれば、すぐさま失業の危機にさらされる。
 請負労働者が働いているのは、ハイテク商品を扱う最新鋭工場が多い。
 大分市郊外にあるキヤノンの子会社「大分キヤノン」の大工場。作業台に沿って、若い男女が立ち並ぶ。視線は手先に集中し、黙々と人気商品のデジタルカメラを組み立てる。多くは、請負会社から送り込まれた。県内のもう一つの工場と合わせると約4000人で、正社員の3倍以上の人数だ。
 大分キヤノンは昨夏、偽装請負があったとして大分労働局から改善指導を受けた。だが1年たった今も、違法状態は完全には解消できていない。
 これまで偽装の実態が知られなかったのは、労働局が指導先の企業名を公表してこなかったからだ。朝日新聞が独自に調べたところ、この2、3年の違反例だけでも、日本を代表するメーカーが次々と見つかった。
 キヤノンは子会社だけでなく、宇都宮市の本体工場も昨秋に指導を受けた。このほか、ニコン、松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」や東芝系の情報システム会社「ITサービス」、富士重工業やトヨタ自動車グループの部品会社「光洋シーリングテクノ」と「トヨタ車体精工」、いすゞ自動車系の「自動車部品工業」、今治造船、コマツの子会社「コマツゼノア」で偽装請負があった。
 偽装請負の現場では、重大な労災事故も起きている。日立製作所の茨城県日立市の工場では04年9月、請負会社の作業員2人が発電機の検査中に感電し、死傷する事故が発生した。日立は安全対策を怠ったとして労働安全衛生法違反容疑で書類送検されたほか、偽装請負についても茨城労働局から改善するよう口頭で指導を受けた。
 監督官庁がないため、請負会社で働く人の数はつかみにくい。厚生労働省の推計だと製造業だけでも04年8月時点で87万人に上るというが、働く人たちの多くが自分たちを派遣労働者と思い込んでいる。
 メーカーの認識不足も著しい。関東各県の労働局が昨年製造業約9000社を対象にしたアンケートでは、回答企業1876社のうち「派遣と請負の区分を十分理解している」と答えたのは34%。多くが違法性を認識しないまま偽装請負を続けているのは間違いない。

労働者派遣法などに抵触 偽装請負とは?(朝日新聞)

労働者派遣法などに抵触 偽装請負とは?
[asahi.com 2006年07月31日06時12分]

 <偽装請負とは?> メーカーなどの企業が、人材会社から事実上、労働者の派遣を受けているのに、形式的に「請負」と偽って、労働者の使用に伴うさまざまな責任を免れようとする行為。職業安定法や労働者派遣法に抵触する。職業安定法には懲役刑もあるが、適用されたことはほとんどない。
 製造業への労働者派遣は04年3月に解禁された。これ以降、メーカーが他社の労働者を指揮命令して使うには、労働者派遣法に基づいて使用者責任や労働安全上の義務を負う派遣契約を結ぶ必要があるが、こうした責任・義務を負わずに済む請負契約で請負労働者を使う「偽装」の事例が後を絶たない。
 本来の請負は、請負会社がメーカーから独立して仕事をする。自前のノウハウや設備を持ち、そこで生産した商品を発注元に納めるのが典型だ。しかし、偽装請負では、請負会社は労働者をメーカー側の工場に送り込むだけで、仕事の管理はメーカー側に任せている。メーカー側はこうした立場を利用し、自社の社員や派遣労働者と同じように仕事を指図したり、勤務状況を管理したりしている。
 厚生労働省は製造業への派遣が解禁された04年以降、メーカーに対し、「偽装請負」から「派遣」への切り替えを促してきた。しかし、派遣にすると、一定期間経過後には直接雇用を申し込む義務がメーカー側に発生する。人件費アップを避けたい企業は、派遣への切り替えに消極的で、請負契約を続けたい意向が今も強い。

仕事の指図をするのであれば、当然、その指示に従って働いて労災などにあえば、指示した会社が補償の責任を負わなければなりません。だから、派遣の場合は、派遣先の企業が指示を出す代わり委、派遣労働者の勤務状況も管理しています。これにたいし請負の場合、業務をまるごと請け負う訳だから、請け負わせた側の企業は、労災が起こっても、責任はありません。そのかわり、その業務をすすめるにあたっての指示は請負業者が出すのであって、業務を請け負わせた側の企業は一切タッチできない、という関係になっているはずなのです。

ところが、請負の形をとっておきながら、実際には、現場で請け負わせた側の企業が直接仕事の指示を出す。これが「偽装請負」です。仕事は自分のところで管理しながら、労災などの責任は請負業者に押しつける。こんな“おいしいとこ取り”は許さないという訳で、「偽装請負」は違法行為とされているのです。

好況、置き去りの世代 「偽装請負」担う20?30代半ば(朝日新聞)

好況、置き去りの世代 「偽装請負」担う20?30代半ば
[asahi.com 2006年07月31日]

 一時の海外移転から、国内回帰の動きもみられる大手メーカーの工場。「ものづくり日本の復活」と歓迎される一方で、華やかさとは無縁の労働者の一群がいる。低賃金でクビを切りやすい請負労働者たちだ。バブル経済崩壊後の「失われた10年」に、時には法令違反のかたちで生産体制に組み込まれた。その中心は20?30代半ばの「ロストジェネレーション(失われた世代)」。景気回復の恩恵にあずかる今の新卒世代と違い、かれらは正社員になることもままならない。

◆労働コスト圧縮の柱 国内回帰、ハイテク工場

 「もう当たり前のビジネスモデル。今の新工場っていうのは、大量の請負労働者を使うことを前提に設計しているんです」
 ある大手請負会社幹部が自慢げに説明した。実際、ここ数年で立ち上がったデジタルカメラ、薄型テレビなどの最新鋭工場では、請負労働者が正社員より圧倒的に多い。
 労働政策研究・研修機構の藤本真研究員は「工場で請負の活用が急速に進んだのは90年代後半」と指摘する。中国、韓国をはじめ、製品の安さを武器にしたアジア勢が台頭し、日本メーカーは世界的な競争に巻き込まれた。コスト高の日本で生産していては勝ち残れず、海外に生産拠点を移す動きが加速した。
 しかし、技術流出を避けたい企業は、ハイテク商品の生産では国内回帰の道を選んだ。その際に徹底したのが、労働コストの圧縮だ。正社員の採用を極力抑え、工場での労働力は「アウトソーシング(外部委託)」方式にして、安く調達した。「これなら急な減産時には、いつでも簡単に人員調整できます」(大手メーカー幹部)

◆細く器用な指 需要 地方から地方の工場へ

 外部委託の最たる例が請負労働だ。とくに「偽装請負」という仕組みは、メーカー側が彼らを直接、指揮命令できるという点で好都合だった。「品質を保つには指示も必要で、工場の生産ラインの大半は偽装請負にならざるを得ない」とメーカー関係者は明かす。
 請負の活用は、電機業界の採用を機に爆発的に増えた。自動車などよりも海外との競争が激しい上、製品の寿命も短い。ころころ変わる現場の仕事に順応しやすい請負労働者が大量に必要になった。とくに、細くてよく動く指をもつ若い女性や、重いモノの運搬に耐えられる若い男性をメーカーは欲しがった。
 その要求通り、請負会社は、東北、九州など求人の少ない地方から大量の若者を集めた。地方から都会に出る出稼ぎと違い、彼らの多くは地方から地方へと送り込まれた。そこに最新鋭工場がつくられたからだ。

◆変わる顔、途絶えぬ求人 会社に意見→解雇通告

 象徴的な出来事がある。トヨタ自動車系の部品メーカー、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)の請負労働者約80人に昨年末、請負会社から事実上のクビ切りにあたる「雇用契約終了通知」が突然送られた。一部が組合をつくって雇用形態が偽装請負であることを指摘し、光洋に正社員として雇うよう申し入れた直後だった。
 労組の中心メンバー、矢部浩史さん(41)は「正社員の半分以下の給料で頑張ってきたのに、問題を追及したら切り捨てられた」と憤る。労働局の指導もあって別の請負会社に移籍し、失業は免れたが、光洋側は正社員登用を拒否したままだ。
 請負労働者の職場では、夜勤や残業に耐えきれず、辞める若者が多い。ある請負会社幹部は「同じ工場に同じ人数を送り込んでいるが、顔ぶれは1年で5?6回入れ替わっている」という。請負会社の求人が途絶えることはない。

◆年収200万円程度、結婚もままならず 揺らぐ社会基盤

 請負労働者の時給は1000円程度。昇給やボーナスは基本的になく、年収は200万円程度だ。
 ある試算によると、子どもを1人育て上げるのに2000万円かかる。ところが非正規雇用者(請負、派遣、パートなど)の生涯賃金は6000万円程度で、正社員の3分の1。
 子育てどころか結婚さえあきらめている人も多い。
 旧UFJ総合研究所が昨春発表した調査では、25?39歳の非正規雇用者が正社員になれないことで婚姻数は年間5.8万?11.6万組減り、毎年生まれる子供の数は13万?26万人も減少する。
 今年の経済白書は、15?34歳の非正規雇用者約360万人が、正社員でないことで失う所得は年6.2兆円と試算した。国内総生産(GDP)の1.2%にあたり、今後も年約1%分ずつ失い続ける。
 請負労働者は、非製造業も含めると、200万人を超えるともいわれる。「おそらくこの人たちは、一生浮かび上がれないまま固定化する」と労働局の幹部さえ言う。
 このままだと、社会の基盤さえ揺らぎかねない。

◆キーワード

〈ロストジェネレーション〉 90年代の就職難の時期に、正社員になれないまま、不安定な生き方を余儀なくされた若者たちを指す。もともとは、青年期に第1次世界大戦の悲惨な現実を目の当たりにしたことで、従来の価値観に幻滅し、生きる意味を見失った米国の若者世代のこと。ヘミングウェーなど20?30年代に活躍した作家らが代表的。

という訳で、日本経団連の会長となった御手洗さんの会社が、こんな違法行為をしているという訳にいかなくなったからかどうか分かりませんが、これをきっかけに、まず大企業から「偽装請負」を一掃してほしいものです。

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