安倍人脈をめぐる2つの記事

安倍晋三官房長官の動きについて、今日、「朝日新聞」と「毎日新聞」に内容の共通した記事が出ている。朝日の記事は、靖国問題をめぐって、こういう動きがあったと報道している。

 今年5月の大型連休すぎ。首相官邸の官房長官室にいた安倍晋三官房長官のところへブレーンの一人が現われ、一通の文書を手渡した。
 「靖国神社の遊就館の展示は問題がある。神社本体から分離すべきだ」
 文書にはそうあった。関係者によると、このころから安倍氏は遊就館について「何カ所かおかしいところがある」と漏らすようになったという。

記事では、この文書を書いたのが誰か触れていない。また、それをもってきたブレーンが誰なのかも書いていないが、同記事で、「安倍氏の外交ブレーン」とされた岡崎久彦氏が「産経新聞」24日付「正論」欄で、遊就館の展示の反米史観を批判したことはここでも紹介したとおりで、確かめようはないが、同じ線の上での話として、十分ありうることだと思う。

ちなみに、「遊就館を神社本体から切り離すべきだ」との主張は、A級戦犯として獄死した東郷茂徳元外相のお孫さんにあたる東郷和彦氏が「朝日新聞」にそのような意見を書かれていたが、だからといって、その文書を書いたのが東郷和彦氏かどうかは分からない。

さて、「朝日」では、6月末、安倍氏のブレーンとして、中西輝政・京都大教授、八木秀次・高崎経済大教授(元「新しい歴史教科書をつくる会」会長)、西岡力・東京基督教大教授(「救う会」常任副会長)らが集まったとしている。「毎日」では、6月30日、東京・赤坂の全日空ホテルに4人の学者・有識者が集まったとして、伊藤哲夫・日本政策研究センター所長、島田洋一・福井県立大教授(「救う会」副会長)、西岡氏、八木氏の名前があがっていて、中西氏は欠席したとされている。

ところで、この「毎日」の記事でも、その場で出席者の1人が、ルーズベルト米大統領が日本を追いつめて開戦に踏み切らせ、開戦によってアメリカ経済は完全に復興したという遊就館の展示について「事実関係に問題がある」と指摘し、「協議した結果、神社側にパイプのあるメンバーを通じ、見直しを働きかけることにした」そうだ。

29日には、総裁選で安倍氏を応援する民間団体(「『立ち上がれ!日本』ネットワーク」)がシンポジウムを開くそうだが、その呼びかけ人も伊藤、中西、西岡、八木の4氏(「毎日」)。ここらあたりが、安倍ブレーン「有識者グループ」というところか。

他方、「朝日」記事では、6月末の会合では、米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』への安倍氏の寄稿論文の草稿なるものがもちだされ、あれこれ検討したようだ。閣僚の経験がほとんどなく、海外ではまったくの無名である安倍氏の外交姿勢をアピールするつもりだったらしい。結局、この論文はブレーンがあれこれ知恵を出したということが外部に漏れたため取りやめになったとのことだが、公表されていたら、それなりに検討に値したかも知れない。

全体として、「朝日」の記事は、「米に配慮、『靖国』見直し/首相の座へ 脱タカ派像」という見出しにあるとおり、安倍氏の“ソフトへの転換”路線を指摘するのにたいし、「毎日」は、ブッシュ米大統領の選挙手法である「グラスルーツ・コンサバティブ(草の根の保守)」をまねて、保守派の結集をはかっていることを強調している。

6月30日の会合をめぐって、ほとんど同じネタを「朝日」と「毎日」がそれぞれ独自に手に入れたということは考えにくい。むしろ、「朝日」には“ソフト転換”のイメージを、「毎日」には“しっかりとした保守派”のイメージを伝えさせるために、意図的にリークされた、ということも十分考えられるだろう。

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