歴史認識―メディアも勉強してほしい

安倍首相の歴史認識が、国会論戦でも大きな問題になっているが、それを取り上げるメディアの側の不勉強ぶりも気になるところ。

たとえば、6日の日本共産党志位委員長の追及は、「戦後50周年国会議員連盟」の文書という動かぬ証拠を突きつけられて、安倍首相は「覚えてない」としか答えられなかった訳だし、従軍慰安婦にかんする河野談話を受け継ぐと言いながら、「河野談話の前提は崩れた」(前提が崩れたら、談話は成り立たないということになるはず)という過去の発言を否定しない、など矛盾と破綻を見せているのだが、そこを突っ込んで追及する記事が、ほとんどといっていいほど見受けられない。

たとえば、「毎日新聞」7日付では、志位委員長の質問は、まったく紙面に取り上げられていない。野党の追及ぶりをとりあげた記事(5面)では、民主党・枝野幸男、社民党・阿部知子、国民新党・亀井久興、民主党・岡田克也、田中真紀子各氏の質問を取り上げているが、志位和夫は名前さえ出てこない。同じ紙面の「予算委からポイント収録」にも志位和夫の名前はなく、共産党は存在しないかのような扱。小政党だからというのは、社民党や国民新党の質問を取り上げているのだから、理由にならない。まったく異常な事態である。

「朝日新聞」の「焦点再録・予算委員会」には、さすがに志位委員長の質問も採録しているが、ベタで載っているだけ。歴史認識問題での国会論戦をふり返るような記事は、どこにもない。

ところが、今日の「朝日新聞」をみると、こんな記事が出ている。

過去の発言は「個人の見解」 首相の歴史認識で答弁書
[asahi.com 2006年10月11日02時09分]

 政府は10日に閣議決定した歴史認識などに関する答弁書で、安倍首相の過去の発言をただす質問に対し、「政府として答える立場にない」との回答を乱発した。戦後50年の「村山首相談話」など、首相が継承を表明したもの以外はノーコメントを通した。
 社民党の辻元清美衆院議員の質問に答えた。辻元氏は、雑誌などから「自虐史観に侵された偏向した歴史教育」といった首相就任前の発言を引用。「政治家として歴史認識を示すべきではないというのなら、何を根拠に『歴史教科書が問題だ』と発言してきたのか」とかみついた。
 答弁書は「首相就任前に政治家個人として記したもの」と大半をかわしたが、靖国参拝では「国のために戦った方々に尊崇の念を表するため」と答弁。回答基準のあいまいさも目立った。

こういう記事を載せたこと自体はいいのだが、首相就任前の発言を取り上げて安倍首相を追及したのは、別に、辻元清美氏が初めてではない。あちらを見逃し、こちらはこんなに大きく扱う(なにせ3段見出しだからね)。朝日の記者が志位委員長の質問を聞いてなかったか、それとも別な魂胆があるのか。

なんにせよ、歴史認識問題は、侵略戦争と認めるか否かとか、A級戦犯は戦争犯罪人かどうかとか、メディアではとかく結論だけが取り上げられるが、大事なことは、事実に基づいて議論をつめていくこと。その点で、「政治家は自らの歴史観を語ることに謙虚でなければならない」という安倍首相の態度が、首相になる前には言いたい放題、好き勝手に発言して、少しも謙虚でなかった事実と矛盾していることを追及する、というのは非常に大事な論点。また、「国策を誤って」植民地支配や侵略をおこなったとする村山談話を認めるというなら、「国策の誤り」とは具体的に何なのか、植民地支配や侵略とは何をさしているのか、事実に基づいて問いたださないとダメだ。

一般論として、侵略は認めるが、個々に聞かれると「分からない」「判断しない」「後世の歴史家に任せる」等々いうのは、まったく逃げの答弁にすぎない。個々には侵略の事実は一つも存在しないのに、全体としては侵略だった、などという珍妙な論理は通用しない。この点を追及するためには、取材する記者の側も、侵略の事実についてよく勉強しないといけない。メディア諸氏の奮闘を期待したい。

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