厚労省、自律的労働時間制度、来年通常国会提案へ

日本経団連などが要求している「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を実現するために、厚生労働省が来年の通常国会に法案を提出する方向で労働政策審議会に具体案を提示するもよう。

「自律的労働時間制度」とか「多様な働き方を可能にする」というと、なんだか素晴らしいもののように思えてきますが、つまるところ、賃金を労働時間の長さに比例させるという大原則を取っ払ってしまい、いくら長時間働いても残業代は一円も出ないようにしてしまおうというもの。現在の「成果主義賃金」や「年棒制」は、個々の労働者の同意がなければ実施できないが、「自律的労働時間制度」が実現したら、個々の同意がなくても、「残業代なし」の新制度が導入できるようになります。だいたい今の日本の職場で、労働者が自由に労働時間を決められる職場があるでしょうか? いまでも30代男性の3分の1は週60時間も働かされ、サービス残業はなくなりません。そんな状況で、「自律的労働時間制度」によって、企業側に労働時間管理の義務がなくなり、残業代不要になったら、いったいどうなるか。簡単に想像がつくはずです。

自由度高い労働時間制、健康管理強化など条件 厚労省が導入案 労政審に提示へ(日経新聞)
残業代11.6兆円失う(神戸新聞)
労働時間規制の緩和、「導入しないで」 過労死遺族ら(朝日新聞)

自由度高い労働時間制、健康管理強化など条件 厚労省が導入案 労政審に提示へ
[日本経済新聞 2006年11月9日付朝刊]

 厚生労働省は10日に開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で、労働時間規制を大幅に緩和する「自律的労働時間制度」について健康管理強化などを条件に導入する案を提示する。「労働強化につながる」とする労働組合側にも配慮しながら、多様な働き方に対応できる制度をつくるのが狙い。厚労省は来年の通常国会で関連法案を提出する方向で調整する。「労働強化につながる」とする労働組合側にも配慮しながら、多様な働き方に対応できる制度をつくるのが狙い。厚労省は来年の通常国会で関連法案を提出する方向で調整する。
 今回、厚労省は論点整理という形で自律的労働時間制度などを導入する案を示す。新制度導入を目指すのは、IT(情報技術)化の進展などを背景に労働時間とそうでない時間の境界があいまいな働き方が増えていることが背景。労働時間の上限などを定め、時間に比例して賃金を支払うことが前提の現行の労働基準法の原則を変更し、多様な働き方に柔軟に対応できる仕組みを目指す。
 ただ、新制度の下で「労働時間が際限なく延長される」との指摘もあることから、厚労省は条件を付けて労働側などが受け入れやすいようにする。
 具体的には<1>新制度を導入する企業に対しては週休二日制相当の休日を義務付ける<2>企業が社員に休日を取らせるよう労働基準監督署が企業の監視を強化する――といった内容。新制度の対象となる社員については日本経団連などの「年収四百万円以上」よりも厳しく設定することを基本に、労使の協議に委ねる方向だ。新制度導入されればホワイトカラーなどが仕事の繁閑に応じて労働時間を変えられる。賃金も労働時間に比例するのではなく、仕事の成果に応じて支払われる方式に移行する公算が大きい。
 厚労省は雇用ルールの改革を今年度の重要課題と位置付け、労政審で議論する段取りだった。ところが、自律的労働時間制度の導入などを巡る労使の対立は激しく、六月に信義が一時中断に追い込まれた。

▼自律的労働時間制度 労働時間の長さに比例して賃金を決める従来の考え方とは異なり、労働時間とは関わりなく仕事の成果を賃金に反映させる制度。米国などの「ホワイトカラー・イグゼンプション」制度がモデル。仕事の繁閑を見極めながら働く時間を自由に決められることにメリットがあるとの声がある一方、労働組合などは「際限ない労働強化につながる」と反発している。

全労連系の労働運動総合研究所は、ホワイトカラー・イグゼンプション制度の導入で、年間11.6兆円、労働者1人あたりでは平均114万円の残業代が消えてしまうと指摘。また、過労死・過労自殺で肉親を失った人たちが「『自発的に働く』ことを強制されるだけ」と訴えているが、こちらの方がリアルな状況でしょう。

「残業代11.6兆円失う」
[神戸新聞 2006/11/08 19:06]

 全労連系の「労働運動総合研究所」(労働総研)は8日、厚生労働省が導入を検討しているホワイトカラー・イグゼンプション(労働時間規制の適用除外)が実現した場合、対象になる労働者が失う残業代は年間総額が11兆6000億円で、1人当たり114万円に上るとの試算を発表した。
 労働総研は「巨額の賃金横取りである上、過労死を急増させる」として導入に反対している。
 厚労省は来年の通常国会での法案提出を目指している。適用除外は一定以上の年収などを条件に「1日8時間、週40時間」の労働時間規制を撤廃し、自らの裁量で労働時間を決める制度。残業代は支払われなくなる。日本経団連は年収400万円以上を対象とするよう提言している。
 労働総研は国の統計などを基に、年収400万円以上のホワイトカラー労働者(管理職を除く)を1013万人と算出。その年間給与総額から時間当たりの賃金を割り出し、平均残業時間である13時間をかけると4兆6000億円(1人当たり45万円)になる。
 加えて賃金の支払われないサービス残業が月平均20時間あり、総額は7兆円に上るという。労働総研は「適用除外導入によってサービス残業が合法化され、労働者は請求権を失う」として、これも損失に当たるとした。

労働時間規制の緩和、「導入しないで」 過労死遺族ら
[朝日新聞 2006年10月24日(火)21:06]

 過労で心身を壊し労災認定を受けた人や亡くなった人の遺族らが24日、厚生労働省を訪れ、来年の法改正に向けて同省が労働時間の規制緩和策として検討している「自律的な労働制度」を導入しないよう要請した。遺族らは「労働時間規制がなければ過労死・過労自殺に拍車がかかるのは明らか。犠牲をこれ以上出さないでほしい」と、規制の厳格化や企業への罰則強化を求めた。
 この制度は、一定の年収以上の労働者を対象に1日8時間などの労働時間の規制を外す仕組み。ゼネコンに勤務していた9年前に心疾患で倒れ1級身体障害者となった千葉市の秋山光夫さん(56)は、倒れる前の残業が月160時間を超え休みは年4日だけだったという。「成果主義で働く側は『自発的に働く』ことを強制されているのが実態だ」と訴えた。
 遺族らはこれに先立ち連合本部に高木剛会長を訪ね、制度導入阻止を訴えた。高木氏は「時間外労働を放置したまま適用除外の対象を増やせというのは全く筋が通らない」と応じた。

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