政府税調、企業減税を答申

政府税調が、2007年度税制改正を答申。

しかし、いまさら企業減税でもないでしょう。庶民には、定率減税廃止、保険料引き上げなど負担を押しつけておきながら。東京新聞は、「サラリーマンは10万円増税になっても、給与が30万円以上上がれば豊かになる」と指摘。もちろん、給与が30万円以上上がるなんて考えられませんが。西日本新聞や信濃毎日新聞が社説で批判しています。

企業の税負担軽減、07年度税制改正を答申…政府税調(読売新聞)
“上げ潮”給与 遠く 「格差」解消ならず(東京新聞)
社説:企業減税偏重でいいのか 来年度税制改正(西日本新聞)
政府税調答申 企業減税に潜む危うさ(信濃毎日新聞)

企業の税負担軽減、07年度税制改正を答申…政府税調
[2006年12月1日22時19分 読売新聞]

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は1日、首相官邸で総会を開き、2007年度税制改正に向けた答申を安倍首相に提出した。減価償却制度の償却限度額をなくし企業の税負担を軽減することや、ベンチャー企業への投資促進税制拡充など、安倍政権が掲げる成長戦略に沿った企業税制整備が中心となった。今後、与党税制調査会が具体的内容を審議し、14日をめどに税制改正大綱としてまとめる。
 答申では、経済界が強く求めている法人課税の実効税率引き下げについて、「今後の検討課題」と方向性を明確にしない表現にとどめた。本間正明・政府税調会長(大阪大大学院教授)は会見で「委員は引き下げの方向で合意した」とし、年明け以降に本格審議する意向を示した。上場株式などの譲渡(売買)益と配当の税率を軽減している証券優遇税制は、07年度中の期限限りで廃止すべきだとした。廃止が株式市場の無用の変動要因とならない工夫も求めた。
 一方、消費税や所得課税の抜本改革は記述せず、「社会経済構造の変化に対応した各税目のあり方を検討していく」と抽象的な表現にとどめた。政府税調は来年以降、消費税率引き上げの検討を始める方向だ。
 与党内には、証券優遇税制について、株式市場活性化のため優遇を延長すべきだとしている。このため、何らかの経過措置が取られる可能性が高い。

“上げ潮”給与 遠く 「格差」解消ならず
[東京新聞 2006年12月1日]

 政府税制調査会(首相の諮問機関)が1日、答申した来年度税制改正は、安倍晋三首相が掲げる「成長なくして財政再建なし」に沿って、企業減税色の濃い内容になった。答申は「企業部門の活性化が、付加価値の分配を通じて家計部門に波及する」と個人にもプラスになると主張するものの「風が吹けば桶屋(おけや)がもうかる」とは限らない。本当にわれわれの暮らしはよくなるのだろうか――。(経済部・金森篤史)

■理想像

 「『成長なくして財政再建なし』の理念の下、経済活性化にかかわる税制を中心に議論し、まとめていただいた」。安倍首相は政府税調の総会で、答申を受け取ると満足げにこうあいさつした。
 答申は「経済活性化を目指して」という副題が示すように、経済成長を促す企業税制が中心。法人税の減価償却制度の見直し、ベンチャー企業の資金調達を助けるエンゼル税制の拡充などを真っ先に挙げた。
 さらに、昨年の答申では「引き下げる状況にはない」と明記した法人税の実効税率についても、「引き下げの問題が提起された」と減税の方向性を打ち出した。
 来年から定率減税が全廃されるなか、個人向け税制を隅に追いやり、企業を手厚くした答申。政府税調の本間正明会長や経済を活性化して税収増を促す「上げ潮派」の政権幹部は「企業減税や経済成長→企業収益向上→賃金上昇→消費増→さらなる景気拡大」と目いっぱいの理想像を描く。

■波及効果

 「いざなぎ景気」を抜いて戦後最長となった今回の景気拡大。経済指標を見ると、確かに企業は2002年度から利益が前年度比プラスに転じ、それ以降、順調に推移している。しかし、従業員の給与はその間、下がり続け、わずかながら05年にようやく水面に顔を出した程度。
 一方、役員賞与は01年度の0.6兆円から05年度には1.5兆円へと増大。極端にいえば「従業員の“犠牲”の上に企業と役員が潤った」といえる。格差の拡大も指摘される。
 こうした状況で、企業減税が一般国民の生活水準の向上につながるのか。企業の利益が従業員の賃金に回った割合を示す「労働分配率」は、02年の71%から06年には65%へと、むしろ下がっており、企業が利益を抱え込む傾向がみえる。
 第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストは「企業減税をしても、賃金上昇がはかばかしくなく、家計には波及しない」と分析する。今回の減税ですぐに個人が恩恵に浴することはなさそうだ。

■地ならし

 政府税調の答申に続いて、自民、公明両党の与党税制協議会が今月14日、07年度改正の具体策をまとめる。税制改正の本番はそこだ。
 与党は政府税調とややスタンスを異にする。1日の自民党税調の幹部会でも、株式の譲渡益と配当への優遇税制を維持すべきだという意見が多数を占めた。公明党も「格差問題」を改正の重要なポイントに挙げている。
 一般国民への配慮もみせる与党の税調。だがそれも来年の消費税増税の論議に向けた地ならしにすぎない。政治的な日程を考えれば、来夏の参院選が終わり、しばらく国政選挙が予定されていない来年後半しか、政府・与党が消費税増税を打ち出す機会はないからだ。
 企業に甘く個人に厳しい税制改正。それでも、企業減税などが功を奏し経済がさらに拡大すれば、例えば年間10万円増税されても、給料が30万円増えれば計算上豊かになる。ただ、本間会長は企業業績の向上が、従業員の給料に直接反映していないことを認めた上で、賃金上昇は「経営者に勇気ある対応を求めたい」と言うだけ。他力任せでは賃金上昇シナリオも心もとない。

社説:企業減税偏重でいいのか 来年度税制改正
[2006/12/02付 西日本新聞朝刊]

 政府税制調査会は2007年度税制改正答申を安倍晋三首相に提出した。企業の設備取得費の非課税処理を認める減価償却制度で、現在95%の償却限度額を撤廃し、全額償却を認めることなどを盛り込んでいる。
 減価償却の対象が拡大されると、企業は非課税扱いの費用を多く計上できる。それに伴って利益は圧縮され、法人税負担を軽減できる。
 欧米諸国や韓国は全額償却を認めている。企業の国際競争力を高めるためには、当然の措置と言えるだろう。企業の設備投資を促す結果、企業体質は強化され、雇用が増える効果も期待できる。
 答申を貫いているのが「企業は経済成長のエンジン」(本間正明会長)との考え方だ。財政健全化のために公共投資など官の役割が期待できないことを考えれば、うなずける。
 答申が法人税の実効税率引き下げを今後の検討課題としたのもこの延長線上にある。
 本間会長は現在約40%である法人実効税率を欧州主要国並みの35%に引き下げたい意向を度々示してきた。
 だが、対象は限られる。中小企業は軽減措置があり、既に実効税率は欧州以下だ。国内では企業の3分の2程度が法人税を払わない赤字法人である。
 本間会長は黒字の大企業は投資意欲が強く、雇用力もあるため、国内経済のけん引役にふさわしいと指摘する。
 しかし、もうかっている大企業の税金を減らすことが国民の理解を得られるか疑問だ。米国カリフォルニア州など日本並みの実効税率も少なくない。時間をかけた議論が必要だろう。
 政府税調が描いているのは、企業主導の成長は家計に所得増をもたらし、低迷する個人消費を押し上げるとの景気拡大シナリオである。
 ただ、企業は正社員をパート従業員に置き換えるなどして人件費を抑制し続けている。政府税調のメンバーからも「業績好調な企業が増えれば給与が増えるとの確信はない」との声が聞かれる。
 個人の所得税は05年度から2年間で定率減税が廃止され、家計全体では3兆円以上の負担増となっている。さらに、個人住民税の引き上げの必要性も答申は指摘している。
 収入が増えず、実質増税が続くようでは家計の財布のひもは締まるばかりだ。企業ばかりではなく、正規雇用促進策などを含めて家計に対する配慮も必要ではないか。
 今回の答申は安倍首相の経済成長戦略を後押しする内容になっている。だが、消費税率見直しや道路特定財源の一般財源化問題への具体的な提言は見当たらず財政再建策として一方分とは言えない。
 政府税調は政権の意向にかかわらず、税制のあるべき姿を示すことが自らの役割であることを忘れてはなるまい。

社説=政府税調答申 企業減税に潜む危うさ
[信濃毎日新聞 2006年12月3日]

 予想どおり、企業向けの減税メニューが並ぶ中身となった。政府税制調査会が、安倍首相に手渡した2007年度の税制改正の答申である。
 来年から所得・住民税の定率減税が全廃される。個人は増税の一方で、企業減税ばかりを先行させた印象はぬぐい切れない。
 目玉は減価償却制度の拡充だ。機械設備などの資産については、企業は耐用年数にわたって、必要経費として分割して計上できる。これが減価償却の仕組みである。
 いまの制度では、必要経費の累計は95%までしか認められない。答申は限度額を撤廃する。
 さらに液晶プラズマ、半導体など先端機器の生産設備は、法定の耐用年数を短縮し、前倒しで償却できるようにする。いずれも企業の設備投資を活発にし、競争力を高める狙いがある。
 減価償却制度の見直しは、自民党の税制調査会も同様の方向だ。来年度の改正で実現する可能性が高い。
 このほか、同族会社の内部留保金への課税を見直し、資金調達が困難な企業が資本蓄積をしやすくする。ベンチャー企業への投資を優遇するエンゼル税制も使いやすくするなども盛り込んだ。
 答申を貫く考え方は、減税によって企業活動を支援し、景気を引っ張ろうというものだ。増税路線を打ち出していた小泉政権下の政府税調から、企業を中心とする減税路線に転換した、とみることができる。
 法人税の実効税率の引き下げについては、「検討課題の1つとして、問題提起された」と書き込み、政府税調内に特別部会を設け、年明けから調査・研究を始める。本間正明会長が引き下げ論者だけに、引き下げ論議が活発になりそうだ。
 政府税調の方針には、2つ疑問がある。1つは、個人の負担増だ。定率減税の廃止で、例えば、年収700万円の夫婦・子ども2人の家庭で約4万1000円の増税になる。参院選以降は消費税率の引き上げ論議も避けられない。個人は増税というのに、企業は減税では、公平さを欠く。
 もう1つは、企業減税を推し進めても、期待できるような景気拡大を維持できるか、不透明なことだ。
 長期の景気拡大にもかかわらず、賃金は伸びていない。非正社員が増え、所得格差が広がっている。個人消費が落ち込み、景気失速の懸念すらある。これでは企業減税をしても国民の利益になるか、疑わしい。
 政府税調が消費税率引き上げに触れていない点もふに落ちない。参院選に向け、税制の在り方を重要な争点にしていく必要がある。

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  1. 政府税調は来年度税制で、法人実効税率の引き下げを検討するという。(2日付「しんぶん赤旗」)

    本間正明・税調会長は、「自然増収の一部を財源に減税していく」と語っている。

    国際競争力強化の名の下に、大企業減税の理屈はなんとでもつける。

    庶民には過酷な増税と負担増を押し付けながら、大企業には業績が悪ければ税金投入に減税、業績がよければ税収は大企業に還元。

    「大企業減税ありき」の連中には、厚顔無恥な理屈付けなど朝飯前、というわけだ。

    先の石なる会長もそうだったが、本間なる人物も御用学者ぶりをさっそくにしめしてくれた。

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