「防衛省」誕生で、地方紙の社説を読む

「防衛省」誕生で、地方紙の社説を眺めてみました。法案の衆院通過の段階で社説を掲げた新聞もあります。いずれにせよ、「軍拡につなげてはならない」「専守防衛を逸脱するな」「歯止めが緩まないか」など、懸念を表明するものが大勢を占めています。

[防衛庁「省」昇格]危ぶまれる「専守防衛」
[沖縄タイムス 2006年12月16日]

 防衛庁「省」昇格関連法が参院本会議で、与党や民主党などの賛成多数で成立した。
 防衛庁は、来年一月九日から防衛省に格上げされ、防衛庁長官は「防衛大臣」となり、予算要求など権限が強化される。
 さらに、現行の自衛隊法で「付随的任務」とされている国連平和維持活動(PKO)や周辺事態法に基づく後方地域支援などの海外活動が国土防衛と同等の「本来任務」に格上げされる。
 談合事件で問題となった防衛施設庁は二〇〇七年度に廃止し、機能を防衛省に統合する。
 省昇格で、なお懸念が払拭されないのは防衛政策の基本原則である専守防衛や文民統制(シビリアンコントロール)、非核三原則などが今後変更されはしないかという点だ。
 久間章生防衛庁長官は「防衛政策の基本は変更しない。軍事大国とはならない」と言い切った。
 野党共闘を重視してきた民主党も、文民統制の徹底などを盛り込んだ付帯決議が採択されたことで賛成に回った。
 しかし、問題は今後、自衛隊の活動がどこまで憲法の枠内にとどまることができるのか、ということだ。これについての政府の明確な説明はない。
 むしろ、安倍晋三首相は歴代内閣が「憲法で行使が禁じられている」と解釈してきた集団的自衛権の見直しを研究する方針だ。
 具体例として、日本が導入を進めているミサイル防衛(MD)システムで、米国に向けて発射されたミサイルを迎撃する可能性を挙げている。
 政府はさらに、自衛隊の海外派遣が本来任務となるのに伴い、随時派遣が可能となる「恒久法」制定にも弾みをつけたい考えだ。
 恒久法の制定は、米軍再編で米軍と一体化した自衛隊の海外での武器使用基準の緩和にもつながりかねない。
 防衛省の誕生は、専守防衛や文民統制の在り方を大きく転換させるものであり、引き続き国会や国民の幅広い論議が必要だ。

防衛省昇格 この先にあるものは
[東京新聞 2006年12月15日]

 防衛庁を「省」に昇格させる法案がきょう成立する見通しだ。単なる看板の掛け替えとは違う。「専守防衛」という自衛隊の性格そのものが変わる可能性がある。その先にあるものは。
 防衛庁は一九五四年の発足以来、ずっと「省」ではなく「庁」だった。軍事より経済に重きを置いてきた戦後日本の姿勢を象徴してきたともいえる。政府は省になっても実質的な違いはないと説明するが、本当にそうだろうか。
 省昇格と同時に、自衛隊の海外活動が「付随的任務」から「本来任務」に格上げされる。これを弾みに、安倍政権は海外派遣を随時可能にする「恒久法」の制定や、憲法で禁じられた集団的自衛権行使の研究を加速させるとの見方が強い。
 安倍晋三首相は恒久法の制定に積極的な姿勢を示してきた。自民党の防衛政策検討小委員会はすでに、国連決議や国際機関の要請がない場合でも自衛隊の派遣を可能にする法案の骨格をまとめている。
 自衛隊のイラク派遣などは特別措置法で実施されてきた。随時可能にするのなら、まず、どんな場合に限って派遣するのか十分な吟味が必要だ。しかし、自民党案は国会の事前承認さえあれば、いつでもどこでも出せるものだ。歯止めがない。
 恒久法の制定に合わせ、自分自身や管理下にある国際機関職員らを守ることに限定して認められている自衛隊員の武器使用の基準を緩和する動きもある。外国部隊を助けるために武器を使用することを認めれば、海外での武力行使を禁じた憲法九条との整合性が問われる。
 首相は政府解釈で憲法上、禁じられた集団的自衛権の行使について、具体例を研究する考えを表明している。米国に向けたミサイルの迎撃や、外国部隊の救出などを認めようとしているようだ。
 少しでも解禁すれば、自衛隊と米軍との一体化がなし崩し的に進み、自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性が増す。憲法九条は空文化しかねない。改憲の先取りだ。
 懸念が現実になる準備も進んでいる。海外活動の「本来任務」化は二年前、防衛大綱に明記された。海外派遣の司令塔となる陸上自衛隊・中央即応集団の新設や、その司令部が米統合作戦司令部と同じキャンプ座間(神奈川県)に併設されることがすでに決まっている。
 防衛「省」昇格と併せて、参院本会議で「国を愛する態度」などを教育目標に盛り込んだ教育基本法改正案も成立する見通しだ。安倍政権の地金が見えてきた。

軍拡につなげてはならぬ 防衛省昇格
[2006/12/16付 西日本新聞朝刊]

 「防衛省」が来年1月に発足する。
 防衛庁を内閣府の外局から独立させ、省に格上げする関連法が成立した。
 「防衛相」は他の閣僚と同格の権限を得る。2007年度には防衛施設庁を統合し、名実ともに外国の国防機関に引けを取らない組織となる。
 省になれば、内閣府を通していた国防関連法案の閣議提案や財務省への予算要求を、防衛相が直接できるようになる。
 もちろん自衛隊の最高責任者が首相であることはこれまで通りだ。政府は「省になっても、自衛隊の活動内容や規模は実質的には変わらない」と説明する。
 外国への見栄えや、自衛隊員の士気向上といった効果はあろうが、今すぐ昇格が必要という理由にはならない。
 1954年の防衛庁発足以来、省昇格を求める声は根強くあった。あえて「庁」にとどまっていたのは、太平洋戦争の経験と反省から、国民が軍事に厳しい目を向けてきたからだ。
 悲惨な戦争は繰り返さないという国民の総意が、自衛隊を「普通の軍隊」にしない安全弁として機能してきたのだ。専守防衛に徹し、侵略戦争はしないというアジア諸国へのメッセージでもあった。
 しかし、東西冷戦終結後、自衛隊に求められる役割も変わってきた。
 大規模災害救援活動や国連平和維持活動(PKO)で海外に派遣される機会が増え、国際貢献に取り組む自衛隊への評価は肯定的になった。北朝鮮の核開発の脅威は、国民の危機感を募らせた。
 こうした「追い風」が、防衛庁の悲願達成に有利に働いたのだろう。
 だが、組織の格上げは機能の強化や活動範囲の拡大に向かうのではないか。自衛隊が「軍隊」へと変質する第一歩にならないか、との危惧(きぐ)はぬぐい切れない。
 実際、省昇格と併せて、自衛隊の海外活動が、これまでの「付随的任務」から「本来任務」に格上げされた。
 自衛隊が海外で米軍などと行動をともにする機会が増えれば、集団的自衛権の行使に至る事態も生じかねない。
 さらに、政府与党には、海外派遣のたびに特別措置法を定める現行の方式を、随時派遣が可能な恒久法に変えようという動きがある。
 閣僚からは、核保有論議が必要だという声が上がり、集団的自衛権や憲法9条の見直しも取りざたされている。
 NHKの直近の世論調査では、防衛省昇格に「反対」は31%で、「賛成」の25%を上回った。国民は近ごろの安全保障論議につきまとう「きな臭さ」を感じ取っているのだ。
 だが、国会の審議は、防衛施設庁の官製談合問題に多くの時間を費やし、省昇格の必然性や安全保障の在り方についての論議は極めて不十分だった。
 「省」という立派な衣の下に、「軍事大国化」という鎧(よろい)が隠れていないか。国民が注視していかなければならない。

社説:防衛庁昇格法案 専守防衛を逸脱するな
[秋田魁新報 2006/12/15 09:23 更新]

 防衛庁の「省」昇格関連法案が参院外交防衛委員会で可決された。15日の参院本会議で可決、成立する見通しであり、成立すれば防衛庁は来年1月にも内閣府の外局から独立して防衛省に移行し、防衛庁長官は防衛大臣となる。現在の国際情勢、特に東アジアの現況をみれば安全保障体制の強化は重要だが、省への昇格がなし崩し的な防衛政策の変更、シビリアンコントロール(文民統制)の弱体化などにつながってはならない。
 省への昇格に伴い、自衛隊の付随的任務だった国連平和維持活動(PKO)、周辺事態法に基づく後方支援などが本来任務に格上げされる。防衛大臣は重要案件や法案について閣議開催を求めることができ、予算の直接請求も可能となる。政府の安全保障会議の諮問事項にはPKO活動、周辺事態への対処が追加される。防衛施設庁は廃止され、防衛省に統合される。
 北朝鮮によるミサイル発射、核実験強行など東アジア情勢が不安定感を増している中、効果的な安全保障体制の構築と危機への迅速な対応がこれまで以上に重要になったことは論をまたない。その意味では、防衛庁を省に昇格させ、体制整備を強化する意図は理解できる。
 ただし、確認しておかなければならないことが幾つかある。一つは基本姿勢である「専守防衛」を逸脱しないことだ。自衛隊の海外活動はおおむね高く評価されているが、その背景には平和主義を厳守する日本への信頼感がある。省に昇格しても政府は対外的に、従来の防衛政策は変更しないことをきちんと説明する必要がある。
 北朝鮮が核実験を行った際、自民党幹部や閣僚から日本の核保有を含む核論議を促す発言があったが、非常に分かりにくい論理展開だった。日本は非核三原則を守り、核拡散防止条約に調印している。近く再開される6カ国協議では北朝鮮に核の放棄を迫る立場にある。核武装の可能性を探るとなれば、それらをほごにしなければならない。膨大なコスト、日米同盟の見直しが必要なほか、原子力発電にも影響が及ぶなど、とても現実的ではない。極めて重要な事柄を現状を十分に理解せず安易に口にするのは、防衛政策を深慮していないためではないか。
 参院外交防衛委での久間章生防衛庁長官の発言も噴飯もの。翌日には訂正したが、イラク戦争支持は小泉純一郎前首相の個人的見解と言ったのである。防衛大臣となる閣僚が、防衛政策を大転換させた政府方針を誤解していたとは信じ難い。
 そうした政治家が発言力を持つのでは将来が危うい。一方で自衛隊の存在意義が増せば、文民統制は一層重要となる。大多数の国民は、献身的な災害救助活動なども積み重ねてきた自衛隊に理解を示している。防衛庁は省昇格を機に、国民の理解と支持を深めるため、自衛隊の活動について積極的に説明する責任を負うことになろう。
 政府は自衛隊の海外派遣を本来任務とすることで、随時派遣が可能な恒久法制定を目指すとみられるが、恒久法は省昇格とは異なり防衛政策の根本的な転換につながる。議論を深めずに先を急ぐことは許されない。

国会閉幕へ/首相は説明を尽くしたか
[神戸新聞 2006/12/17]

 安倍首相にとって初の本格論戦の舞台となった臨時国会が、実質的に終わった。会期末になって、内閣不信任決議案などを提出した野党に、与党は会期を四日間延長して対抗し、押し切った形である。
 これにより、安倍内閣の最重要課題になっていた教育基本法改正案と、防衛庁「省」昇格関連法案が成立した。
 いずれも、戦後政治で大きな節目を画するものである。「戦後体制からの脱却」を掲げた首相には達成感があるだろう。しかし、そんな重要法案を抱えながら、首相が考えを明確にし、突っ込んだ国会論戦を交わしたという印象はあまりない。
 教育基本法の改正には、確かに長い審議時間が費やされた。だが、首相が「新世紀にふさわしい日本の枠組みを」と訴えたにもかかわらず、めざす教育の在り方が見えたとはいい難い。いじめ問題などには「対応に必要な理念、原則は政府案に書いてある」としたが、解決につながるのか。
 画一的な教育が押し付けられたり、国の関与が強まったりしないか。そうした疑問や不安に対し、どこまで自分の言葉で説明し、理解を得ようとしただろう。
 防衛庁の省昇格も同様だ。問題は名称変更や危機管理の強化にとどまらず、防衛の基本にかかわるのに、肝心の論点で議論が尽くされたとは思えない。重要法案の扱いがこれでは、禍根を残しかねない。
 国会の開会後、北朝鮮の核実験があり、政府は対応に追われた。衆院補選や沖縄県知事選など、重要な選挙が続き、自民党内では郵政造反組の復党という難しい問題も抱えていた。
 一方で大きな動きが相次いだとはいえ、首相として初の舞台で国民に対する説明責任を十分に果たせたのかどうか。あらためて振り返ってみるべきだろう。
 野党の責任も大きい。問題に切り込んで政府に迫るどころか、タウンミーティングのやらせ問題など、攻勢の糸口を生かしきれなかった感がある。
 安倍首相は、憲法改正を政治日程にのせる考えを、くり返し表明している。
 今回の教基法改正案の成立を受け、その意欲を強めたかもしれないが、憲法はまさに国の根幹にかかわる。拙速な取り組みは決して許されないものだ。そうした意味でも、生煮えの印象が残る国会審議から、早く脱してもらわなければならない。
 来月になれば、安倍首相の真価が問われる通常国会が始まる。国民の前で議論を深める努力が、もっと必要だ。首相はもとより、与野党とも肝に銘じてほしい。

「防衛省」法案 専守防衛を揺るがせてはならぬ
[愛媛新聞 2006/12/06]

 防衛庁の「省」昇格関連法案が衆院を通過、参院に送付された。今国会中に成立し、防衛庁は来年一月から防衛省となる見通しだ。
 省昇格は防衛庁発足の一九五四年以来、半世紀にわたる悲願だった。今回、実現の見通しとなったのは、国連平和維持活動(PKO)参加や災害派遣の積み重ねで国民の自衛隊への理解が深まったためだ。さらに北朝鮮の核実験や中国軍の近代化など東アジア情勢の不安定化、国際テロの活発化も背景にある。
 政府が省昇格の目的に「危機管理態勢の充実強化」と「国際社会の平和の実現」を挙げるのは、こうした内外情勢の変化を踏まえてのことだ。
 とはいえ、単なる看板の掛け替えではない。戦後日本の安全保障政策や自衛隊の在り方の転換につながる法案だ。その意味から懸念や問題点は多い。
 最大の変更は自衛隊法で「付随的任務」の海外活動を「本来任務」に格上げすることだ。
 大災害での国際緊急援助活動は積極的に推進するとしても、問題は海外紛争にからむ自衛隊派遣だ。近年は特別措置法を制定してイラクやインド洋に派遣してきた。政府は「すでに海外活動は本来任務だ」として法律を実態に合わせるだけと言う。
 しかし、海外派遣には従来から強い反対があったことを忘れてはならない。隊員の生命が危険にさらされる上、他国の軍隊と行動を共にするため憲法が禁じる集団的自衛権の行使につながりかねないからだ。
 さらには省昇格を機に、随時派遣が可能となる「恒久法」の制定や武器使用基準の緩和を求める声が高まる恐れもある。何より安倍晋三首相自身がこれらに前向きなことが気がかりだ。
 今年二月の内閣府の世論調査でも、海外派遣には54%が「現状維持」を求め、「積極的に派遣」の31%を大幅に上回った。恒久法制定にはまだ国民的合意はできていない。省昇格と安易に結び付けてはならない。
 シビリアンコントロール(文民統制)の問題も大きい。これまで内閣府の外局の「庁」としていたのは戦前の軍部独走を許した教訓からだ。省昇格で隊員の士気は上がろうが、逆に文民統制は弱まるのではないか。
 確かに防衛省になっても自衛隊の最高指揮監督権は首相にある。軍事大国化への懸念に対しても防衛庁側は「国会の歯止めは利いている。旧日本軍のようにはならない」と反論する。
 だが、安倍首相自らが集団的自衛権の見直しを主張し、自民党幹部や閣僚が「核保有論議が必要だ」などと言い出すようでは安心できない。周辺諸国からも警戒感が強まろう。また憲法九条の改正論議も加速する恐れがある。
 憲法が定める「専守防衛の原則」を揺るがせてはならない。政府、国会の責任は重い。
 こんな重要法案をわずか十四時間余りの審議で衆院可決したことも問題だ。民主党が最終的にあっさりと賛成に回ったのが原因だ。参院の審議ではしっかりと懸念にクギを刺すべきだ。

防衛庁が「省」へ・「文民統制」に不安が残る
[琉球新報 12/1 9:48]

 来年1月にも防衛庁が内閣府の外局から「防衛省」に昇格する。現在は形式上、主管大臣の首相を経ている法案提出や防衛出動の承認を得る閣議の要求が直接できるようになる。
 これは防衛庁の「省」昇格関連法案が30日の衆院安全保障委員会で自民、公明、民主党などの賛成多数で可決され、引き続き開かれた衆院本会議でも可決され、参院に送付、今国会での成立が確実になったためだ。
 このところ集団的自衛権、非核三原則など安全保障をめぐり、政府、自民党内で論議の足並みが乱れ、こうもばらばらではシビリアンコントロール(文民統制)は「大丈夫か」と不安にかられる。7月には現職閣僚から「敵基地攻撃」論が飛び出しただけに不安は募るばかりだ。
 民主党は、文民統制の徹底などを盛り込んだ付帯決議が採択されたことで賛成に回ったが、それでもまだ不安が残る。
 法案では、これまでの自衛隊法で「付随的任務」とされてきた国際緊急援助活動、国連平和維持活動(PKO)、周辺事態法に基づく後方地域支援などを「本来任務」と位置付けた。
 「現状のままでも国際協力活動は可能。自衛隊は専守防衛に徹するべきだ」との批判には、「付随的任務のままではしっかりした体制整備ができない」「海外活動が任務の付け足しでいいのか」などと反論しているが、自衛隊の海外派遣が随時可能となる「恒久法」制定を検討しているともいわれるだけに、不安もついて回る。
 不安を解消するためにも、省昇格が防衛政策のなし崩し的な変更、ましてや「専守防衛」の逸脱につながることがあってはならない。
 また、近隣諸国にあらぬ警戒心、不安を与えることにもなりかねないことを懸念する。省昇格が専守防衛の変更でないことを中国、韓国をはじめ各国に丁寧に説明することが重要だ。
 そして、安倍首相をはじめ閣僚、与党の要職にある者は発言にも十分配慮してもらいたい。
 それにしても気掛かりなのは、スタートのときから防衛省ではなく、なぜ防衛庁だったのだろうか。警察予備隊から自衛隊に衣替えしたが、なぜ「軍」にはしなかったのか。そこには去る大戦や戦前の反省を踏まえたものがあったのだろうが、その反省をもう乗り越えたのだろうか。
 戦争を体験した県民の中には、まだわだかまりを持つ人も多いだろう。
 戦後60年を過ぎた現在でも基地が集中、基地被害に苦しんでいる沖縄。省昇格で、米軍と自衛隊との連携が強化され、基地の重圧がさらに強くならないのか不安は尽きない。

「防衛省」昇格 歯止め緩む恐れないか
[中国新聞 2006/12/1]

 防衛庁を「省」に昇格させる。合わせて自衛隊の海外活動も「本来任務」に格上げする。そうした一連の法改正案が衆院本会議で可決された。
 参院でも可決の見通しで今国会での成立は確実な状況になった。しかし法案には大きな違和感を覚える。
 政府・与党は、省への格上げによって(1)各国の「省」と対等に交渉できる(2)大臣が重要問題について閣議開催を求めることができる―などのメリットをあげる。
 自衛隊の海外活動については、今では国際平和維持活動(PKO)などが大きな柱になっていることから、雑則による付随任務でなく本来任務として扱うべきだ、と説明する。
 しかしこれが法改正を急ぐ理由になるだろうか。むしろその背後に感じるのは、自衛隊を国家機構の中で認知し、存在感を高めようとする自民党の狙いだ。
 一九五〇年に警察予備隊として誕生した自衛隊は、憲法九条の制約のもとで「日陰者」の時代が長かった。しかし政府・自民党は、憲法の拡大解釈によって実質的な軍備の増強を続けてきた。
 今では世界でも有数の装備を持ち、米国の求めで事実上の戦地、イラクにも派遣されるほど。そうした既成事実に合わせて国の仕組みを変えようとしている。違和感はその強引さに根ざす。
 もう一つ見逃せないのが、本来任務の拡大だ。単なる「仕分けの変更」ではあるまい。
 現行の自衛隊法では、本来任務は「直接・間接の侵略からのわが国の防衛」に限られている。海外までも正式な守備範囲と認めれば、自衛権を超える海外「派兵」に道を開くことにならないだろうか。そうなればもちろん憲法違反である。
 政府側はこれまでの「文民統制」「専守防衛」「海外派兵せず」などの原則は変わらないとする。しかし衆院特別委員会に参考人で招かれた軍事評論家の前田哲男さんは「法改正によるミニ改憲」となる恐れを訴え「なぜもっと論議を尽くさないのか」と問うた。
 今国会での法案審議はわずか六日という短さだった。民主党の抵抗が少なかったこともあって、国民の目には見えず、教育基本法改正の陰に隠れたかのようにするすると衆院を通過した印象がある。
 参院では、問題をきちんと掘り下げ、自衛隊をコントロールする歯止めを考える必要がある。

防衛省案が衆院通過 文民統制の原則を貫け
[岩手日報 2006/12/01]

 現在の防衛庁を防衛省に昇格させる関連法案は30日、与党と民主党の賛成多数で衆院を通過した。これで今国会中に成立の見通しとなった。しかし、国民の間で議論が深まった結果とは言えない。軍事大国化への警戒感も生まれており、政府は文民統制の徹底などで国内外の不安を払しょくする責任がある。
 安倍晋三首相は、防衛庁設置法改正案など関連法案成立を今国会の重要課題に掲げていた。野党の抵抗で難しい局面が予想されたが、先の沖縄知事選で自民、公明両党が勝利を収めたことを弾みとして防衛庁の悲願実現に向けて前進させた。
 防衛省昇格の意義については久間章生防衛庁長官が11月の衆院安全保障委員会で「自衛隊が海外に行く機会が増えている。政策官庁として、省として機能するのが妥当だ」と答弁している。今の内閣府の外局から防衛省に衣替えすることで、今後は首相の手を経ないで予算や法案の提案ができ、防衛出動の承認を得る閣議も直接要求できるようになることを指す。
 安全保障面で迅速な対応が可能となるほか、閣内での発言力もぐんと増すことになる。

 軍事大国化を不安視

 関連法案のなかには自衛隊法改正案も含まれている。現在は雑則で「付随的任務」と規定されている国際緊急援助活動、国連平和維持活動(PKO)、周辺事態法に基づく後方地域支援などが「本来任務」に格上げされる。自衛隊の国際平和協力活動が明確に位置付けられる。
 一連の防衛省昇格論議の背景には、世界情勢の緊迫化と国防論の高まりという歩みがある。
 終戦直後、日本政府は軍備を持たない非武装の理念を掲げて再出発を誓った。しかし、1950年6月に朝鮮戦争が始まると連合国の指令で警察予備隊が設置され、その後、保安庁を経て54年7月に自衛隊が発足した。この自衛隊を管理運営し、国の安全を守るために同時期に設けられたのが防衛庁だった。
 さらに21世紀に入って世界各地で武力紛争が相次ぎ、防衛省昇格の論議を加速させることになった。
 だが、その一方では省昇格に伴う突出した防衛装備拡張の可能性も懸念され始めている。久間防衛庁長官は「限られた予算のなかで装備していくので軍事大国にはならない」と強調し、徴兵制についても「憲法からいって不可能で、全く考えられない」と不安解消に懸命。当然の発言だが、国民を納得させるには至っていない。政府は重く受け止めるべきだ。

 亀裂生じた野党共闘

 今回の関連法案採決が野党の結束にひびを生じさせたことも見逃せない。民主党は当初、防衛施設庁の談合事件追及などを柱に共産、社民両党と共闘を組み関連法案反対の立場を貫いていた。
 しかし、条件付きで賛成に回る道を選択。防衛省昇格にあくまで反対する共産、社民両党との距離が開いた。民主党は来夏の参院選の与野党逆転を最大課題として野党連結を呼びかけてきたが、厳しい試練に立たされたと言える。
 日本の安全保障をめぐっては予断を許さない状況が続くだろう。集団的自衛権をめぐる論議が待ち構える。麻生太郎外相らの核保有論議容認発言は決着を見ていない。近隣諸国に対して脅威を与えない配慮も必要だ。
 今のこの時期を「戦前」とさせてはならない。来年1月には防衛省が誕生するだろうが、そのとき重要なのは文民統制の堅持だ。憲法第六六条は国務大臣は文民でなければならないと規定し、制服組の暴走を戒めている。この憲法の精神を貫くためにも、一人一人が監視を強め議論に参加していきたい。

防衛省昇格  丁寧に説明責任果たせ
[京都新聞 2006年12月02日掲載]

 来年一月にも防衛庁が「防衛省」に衣替えする。
 省昇格関連法案が与党と野党第一党の民主党の賛成多数で衆院を通過、今国会での成立が確実になった。
 昇格と併せて国連平和維持活動(PKO)など海外活動が本来任務と位置づけられ、法的に自衛隊の活動領域と性格が変化する。
 これまで以上に責任が重大になると同時に、昇格論議を通じて浮き彫りにされた国民の不安を解消するため丁寧に説明責任を果たさねばならない。
 防衛庁が省になって何が変わるのか。現在は内閣府の外局で、防衛庁長官は形式上、予算や法案を内閣府の長である首相を通じて提出することになっている。今後は外務、財務など他省と同等の立場と権限を持つ。自衛隊の最高指揮監督権などは今後も首相権限だ。
 実務的には以前から「省」と変わらなかったが、いわば格下扱いで肩身の狭い思いをしてきた。体裁が整い隊員の士気が高まる効果が大きいという。
 自衛隊のあり方としては海外活動の本来任務格上げが重要な意味を持つ。
 自衛隊法の雑則を適用してきた付随的任務の国際緊急援助活動やPKO、周辺事態法に基づく後方地域支援、テロ対策やイラク復興支援特措法の海外活動なども国土防衛と同じく本来任務とした。海外活動の拡充へ輸送体制の整備や隊員教育の充実などを図る方針だ。
 省昇格は一九五四年の防衛庁発足から半世紀を超える悲願だった。
 災害出動や海外派遣の積み重ねを通じて、自衛隊に対する国民意識の変化、北朝鮮情勢など安全保障環境の変化などが追い風になったのは間違いない。本来は国防組織を「省」に位置づけるのは国家としてむしろ自然なことだろう。
 にもかかわらず国民の間になお省昇格に根強い反対があることの意味は重い。そうした意見は「庁」に込められた軍事大国化しない平和国家としての政治的メッセージ性を重視する。
 海外活動を本来任務にすることが、なし崩し的な海外派遣を助長し、専守防衛に徹してきた安保政策の変更につながりはしないかという内外の疑念やシビリアンコントロール(文民統制)が緩むことへの心配が指摘される。
 政府や自民党内で相次ぐ核保有や集団的自衛権、海外派遣の恒久法などをめぐる不規則な発言は、こうした懸念を増幅する。国会でもイラク派遣をめぐる小泉純一郎前首相の乱暴な答弁のように国民の不安を解消する丁寧な説明があったとはいえない。安保政策の国会審議はもっと中身の濃いものにすべきだ。
 さらに防衛庁の体質が問題である。官製談合事件を起こした防衛施設庁は廃止する方針だが、責任の取り方も含めて処理に不満は多い。機密漏えいなど国民の信頼を損なう不祥事も後を絶たない。根絶への取り組み強化が必要だ。庁全体の閉鎖体質も打破したい。

「防衛省」法案*そして、次には改憲か
[北海道新聞 2006/12/01 11:28]

 防衛庁を省に昇格させる関連法案が、衆院を通過した。今国会で成立する見込みで、内閣府の外局が来年一月から独立した防衛省になる。
 これは単なる組織の名称変更ではない。その危うさを考えれば、やはり承服できない。
 大きな問題点は二つある。
 第一に、自衛隊法で付随的任務とされている自衛隊の海外活動を本来任務に格上げすることだ。
 カンボジアでの国連平和維持活動(PKO)、いまも続くインド洋やイラクへの派遣など、自衛隊は着々と海外で実績を重ねてきた。すでに国民から一定の理解と評価を得ていることは否定しない。
 しかし、その都度、強い反対の声があったことも忘れてはいけない。
 武器を手に他国の軍隊と行動を共にすることは、憲法が禁じる集団的自衛権の行使につながりかねないからだ。憲法の専守防衛の原則からはみだすとの指摘もある。
 政府はこうした反対論を押さえ込んで、なし崩しに海外活動を拡大してきた。既成事実を積み上げて、それを当たり前のものにする。自衛隊法の改正が目指すのはそういうことだろう。
 安倍晋三政権は引き続き、海外派遣の恒久法制定や海外での武器使用基準の緩和も目指している。自衛隊を名実共に一人前の軍隊にしようという意図があらわではないか。
 二つ目の問題は、シビリアンコントロール(文民統制)が崩れる恐れがあることだ。
 確かに、自衛隊の最高指揮官が首相であることは変わらない。政府は「国会の歯止めが利いている。旧日本軍のようなことにはならない」ともいう。
 一方で、安倍首相自ら集団的自衛権の解釈見直しを口にし、自民党の幹部や閣僚は核保有論議が必要だと物騒なことを言い出す。
 そんな政府のもとで、どれほどの歯止めが期待できるのだろう。
 防衛予算が膨張していくことはないのか。アジア諸国をはじめとする国際社会が、日本の軍事大国化への警戒を強めはしないか。防衛省への懸念はいくらでも出てくる。
 憲法九条の見直し論議が勢いづくことも心配だ。防衛省の誕生を改憲への踏み台にする。法案には、政府・自民党のそんな思惑が見え隠れする。
 衆院安保委での法案審議はわずか十四時間余しか行われなかった。
 民主党も結局は賛成に回った。もともと法案にあまり抵抗がないのだから、本気で阻止するつもりもなかった。
 平和国家たる決意を世界に示してきた戦後体制の大転換につながる法案が、かくもおざなりな議論で成立してしまう。これも怖いことだ。審議に入る参院の責任はきわめて重い。

防衛省法案 まだ疑問点が残っている
[熊本日日新聞 2006/12/01]

 防衛庁「省」昇格関連法案が三十日、衆院で可決された。今国会で成立するのはほぼ確実で、わが国の防衛政策は大きな節目を迎えることになる。
 省昇格問題は、防衛庁が一九五四年に創立されて以来、同庁内外で浮かんでは消えてきた懸案事項だった。省昇格を許さなかった主な理由は、先の大戦の反省に立った平和主義にあったと言える。
 戦後六十年が過ぎ、省昇格がなされようとする背景には、冷戦の終結により国際環境が大きく変わったことが挙げられる。各国の責任で安全保障を構築する時代となったため、格下の防衛庁を諸外国並みの「省」に位置付けようということだろう。
 しかし、防衛省になっても、自衛隊が普通の軍隊になるわけではない。憲法九条や専守防衛、非核三原則の枠があり、平和主義はそのまま生きている。政府も「新たな機能を追加するものではない」と説明している。こうした基本姿勢については、シビリアンコントロール(文民統制)の徹底も含めあらためて確認しておきたい。
 関連法案は約七十に及んでいる。懸念されるのは「省」昇格そのものよりむしろ、国際平和協力活動を自衛隊の「本来任務」とする自衛隊法の一部改正だ。
 国連平和維持活動(PKO)や周辺事態法に基づく後方地域支援などは従来、自衛隊の「付随的任務」とされてきた。本来任務への格上げについて政府は、国際テロリズムの激化や大規模災害への対応などを理由に挙げている。
 しかし、イラクへの自衛隊派遣について、国論を二分する論議が行われたのは記憶に新しいところだ。何をもって国際平和協力活動とするのか、原則もないままに本来任務とするのは危険である。なし崩し的な活動拡大や、自衛隊をいつでも海外へ派遣できるようにする「恒久法」の制定へとつながる恐れもある。
 衆院の採決では、共産、社民両党は反対し、民主党はシビリアンコントロールの徹底などを盛り込んだ付帯決議の採決を条件に賛成した。同関連法案に対して民主党をはじめ野党側は当初、防衛施設庁をめぐる談合事件の真相究明が先決として、審議を拒否した経緯がある。衆院安保委での法案審議時間は、別テーマの集中審議を除くとわずか十四時間しかない。
 改正案にはまだ、疑問点が多く残っている。周辺諸国に無用な不安を抱かせないためにも法案の中身を十分に説明し、参院で審議を尽くす必要がある。

[防衛省昇格] 専守防衛維持が前提だ
[南日本新聞 2006/12/5]

 防衛庁の「省」昇格関連法案が衆院を通過、今国会中に成立する見通しとなった。これにより、防衛庁は来年1月にも内閣府の外局から防衛省に衣替えする。
 防衛省に昇格すると、現在は主管大臣の首相を経ている法案提出や、防衛出動の承認を得る閣議の要求などが直接できるようになる。さらに、自衛隊法の雑則で「付随的任務」と規定している国連平和維持活動(PKO)や、周辺事態法に基づく後方地域支援などの海外活動が「本来任務」に格上げされる。
 警察予備隊を経て1954年の防衛庁設置とともに発足した自衛隊は、災害救助活動などを積み重ねてきた実績も評価され、今や国民の多数が認知している。北東アジア情勢が不透明感を増している現在、効果的な安全保障戦略の構築と、迅速な危機対応に当たる体制整備が必要なことは言うまでもない。その意味で、防衛庁の省昇格は理解できる。
 一方で、「文民統制が弱まり、防衛政策の変更や防衛予算拡大の恐れがある」との指摘や、近隣諸国の警戒感を招くことを懸念する声もある。防衛政策のなし崩し的な変更や「専守防衛」の逸脱につながるようなことは許されない。
 自衛隊による海外での活動は、国際的にもおおむね高く評価されている。その背景には、戦後日本が平和主義に徹してきたことに対する受け入れ国側の信頼があることは間違いない。省昇格が専守防衛の変更でないことを対外的にもよく説明することが重要だ。
 政府は法案審議のなかで「位置づけを変えるだけで防衛政策を変えるものではない」と説明している。だが、安倍晋三首相は歴代内閣が「憲法で行使が禁じられている」と解釈してきた集団的自衛権の研究を進める考えを示している。
 具体例として、日本が導入を進めているミサイル防衛(MD)システムで、米国に向けて発射されたミサイルを迎撃する可能性を挙げている。
 政府はさらに、自衛隊の海外派遣が本来任務となることに伴い、随時派遣が可能となる「恒久法」の制定にも弾みをつけたい考えだ。
 だが、こうした動きは、省昇格とは根本的に異なり、戦後日本の防衛政策の転換に通じかねない。国民的な合意が得られているとはとてもいえないばかりか、与党内にも慎重論がある。今後十分に議論を尽くしていく必要があり、結論を急ぐべきではない。

Similar Articles:

Leave a Comment

NOTE - You can use these HTML tags and attributes:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">