アラ還のオッサンがマルクスの勉強やらコンサートの感想やらを書き込んでいます

浜林正夫『ナショナリズムと民主主義』

2006年12月19日 at 21:54:43

浜林正夫『ナショナリズムと民主主義』(大月書店)

浜林正夫先生の新著『ナショナリズムと民主主義』を早速読み終えました。

本書は、イギリス(正確にはブリテン)史にそって、ナショナリズム(同じ国家に帰属しているという意識)がどのように成立、展開してきたかをたどったものです。

しかし、私たちがいまイギリスと呼んでいる国は、正確にはブリテン王国(もっと正確に言うと、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」ですが)で、歴史を遡ると、イングランドがスコットランドとウェールズを併合してでき上がった国です。だから、同じブリテン王国に帰属しているという意識、ナショナリズムは、ブリテン王国の成立後にでき上がってきたということになります。そこに、宗教改革(国教会の成立)とか、ピューリタン革命や名誉革命といった市民革命が重なっていて、そういう政治過程のなかでは、革命勢力の側がナショナリズムの旗印をかかげたこともあって、ナショナリズム=国家主義、「国家への忠誠」といった単純なかたちでは話はすすまなかったというのが、面白いところです。

浜林先生は、ここから、ナショナリズムの悪用を防ぐメカニズムとして民主主義が大事だと強調されるわけです。では、どうしてイギリスでは、そのような民主主義の発展が可能だったのか。それは、農奴制が解体してから、賃労働制が成立するまでの中間期(過渡期)に、自由な農民層が広範に成立したからだといいます。これは、『資本論』でマルクスが、「労働者が自分の生産手段を私的に所有していることが小経営の基礎であり、小経営は、社会的生産と労働者自身の自由な個性との発展のための1つの必要条件である」(『資本論』第1巻第24章第7節、新日本新書版、第4分冊、1303ページ)と指摘した問題です。

こう結論を書いてしまうと、話は単純にみえるかも知れませんが、そういうイギリスのナショナリズムの形成過程が、豊かな実例で生きいきと具体的に描かれていて、さすが浜林先生ならでは、の一冊です。ただ、19世紀以降のナショナリズムがどうなったかというところが、最終章での文字通りのスケッチになってしまったのが惜しまれます。

ナショナリズムの問題について考えさせてくれる貴重な一冊であるとともに、イギリス市民革命史や宗教史、あるいは社会史の本としても、楽しく興味深く読めます。

【書誌情報】書名:ナショナリズムと民主主義/著者:浜林正夫/出版社:大月書店/出版年:2006年12月/定価:本体2200円+税/ISBN4-272-51008-8

Similar Articles:

Tags: ,

Print This Post Print This Post

人気ブログランキングに参加しています。よかったらクリックしてください。

Trackback This Post

http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2006/12/19215443/trackback/

Leave a Reply