労政審議会、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入求める報告書をまとめる

厚生労働省の労働政策審議会が、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入を求める報告書をまとめる。

いよいよ来年の通常国会に法案が提出されることになります。サラリーマン諸氏、いま黙っていたら、残業代が一生もらえないことになりますよ!

労働時間規制を撤廃、残業代なしの導入を 労政審分科会(中国新聞)
「全く知らない」73% 厚労省検討の労働規制緩和(北海道新聞)

「管理監督者の一歩手前」などというと、管理監督者と同じように労働時間規制はなくてもいいかなと思ってしまいますが、「一歩手前」というのは、要するに管理監督者ではないということ。ホントに重要な権限と責任をもち、使用者から具体的な指示を受けないのであれば「管理監督者」(つまり課長など)にすればよいのであって、結局、「管理監督者」でもない人を対象にしていることは明白。

しかも、日本の場合、仕事については、課題や目標、期日などは指示されても、それ以上、細かい指示はないのが一般的。だから、「使用者から具体的な支持を受けない」と言い出したら、ほとんどみんな当てはまってしまうのではないでしょうか。

労働時間規制を撤廃、残業代なしの導入を 労政審分科会
[中国新聞 2006/12/28]

 厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会分科会は二十七日、労働時間規制を撤廃するホワイトカラー・エグゼンプション(適用除外)導入を求める報告書をまとめた。
 管理監督者の一歩手前で、それにふさわしい年収などが対象者の要件。厚労省は年収八百万?九百万円程度以上を想定している。働く時間の裁量が広がる一方、残業代が支払われなくなる。
 分科会は、労働者側委員の「長時間労働を助長する」との反対を押し切る形で結論を出した。報告を受け厚労省は、労働基準法の改正案を来年の通常国会に提出する方針。ただ与党内で世論の反発を懸念する声も出ており、今後の調整が難航する可能性もある。
 報告書は「ホワイトカラー労働者の増加など就業形態が多様化し、企業では高付加価値で創造的な仕事の比重が高まり、自由度の高い働き方がみられる」と指摘。それにふさわしい制度としてエグゼンプションの導入を認めるべきとした。
 対象者の要件として(1)労働時間で成果を評価できない業務(2)重要な権限と責任を伴う地位(3)年収が相当程度高い(4)使用者から具体的な指示を受けない?を設定。年収は管理職一般の平均的な水準を勘案し、政省令で定めるとした。
 健康確保のため週二日分以上の休日確保を企業に義務付け、違反した場合は罰則を科すとした。
 導入の際には労使委員会を設置し、対象者の範囲や賃金、対象者の同意を得ることなどを決議し、行政に届けるとした。
 またエグゼンプションの対象にならない一般労働者の長時間労働を抑制するため、残業代の割増率引き上げも求めた。
 企画立案部門の労働者を対象にした「企画型裁量労働制」について、中小企業に限って条件を緩和することも要請した。

「全く知らない」73% 厚労省検討の労働規制緩和
[北海道新聞 2006/12/18 08:54]

 厚生労働省が検討している労働時間規制の緩和策について、20?40代の会社員の73%が全く知らないと答えていることが18日、インターネットを使った連合のアンケートで分かった。
 厚労省は、一定の年収などを条件に「1日8時間、週40時間」の労働時間規制を撤廃するホワイトカラー・エグゼンプション(適用除外)の導入を検討中。来年の通常国会での法改正を目指しているが、制度が一般には浸透していないことが浮き彫りになった。
 アンケートは10月、全国の正社員の男女約1000人を対象に実施。「ホワイトカラー・エグゼンプションについて知っていますか」との設問に「内容まで知っていた」は9%、「名前は聞いたことがある」は18%、「全く知らない」が73%だった。

「まったく知らない」という回答がこんなに多い背景には、労働基準法の「1日8時間、週40時間」という労働時間規制が、いまの日本の企業社会で、実際にはほとんど守られていない、ということがあるのではないでしょうか。だから、労働時間規制の撤廃といわれても社会問題化しない。「どっちみち、俺たち、残業代でてないから、関係ないや」ということです。

しかし、いま残業しても残業代が出ないというのは違法行為です。だから、労働基準監督署などに告発すれば、残業代を支払わせることが可能です。あるいは、長時間労働の結果、過労死したとか鬱になったといえば、労災で補償も出ます。しかし、労働時間規制が撤廃されたら、そういうことが全部合法化されるのです。だから、残業代が出ないといって訴えることもできないし、過労死しても、「それは、本人が労働時間を自己管理できなかったからだ」といわれてお終いです(財界は、こういう問題で、労働基準監督署は勧告・指導をおこなうな、とも主張しています)。

同様のことは、いまでも、たとえば裁量労働制などでやられていますが、裁量労働制であっても、労働基準法の規定は生きているので、残業代や休日出勤手当、あるいは過労による労災などは認められます。それに、裁量労働制の導入には、本人の同意が必要ですが、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」は、「こんど、うちの会社は、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入します」ということになれば、本人の同意は不要です。人事から、「じゃあ、こんどから君は『管理監督者』に準ずるということにするから、がんばってね」といわれたら、課長などの肩書きが全然つかないのに、もう残業代ゼロです。

企業のために日夜奮闘しているエリートサラリーマンのみなさん、経済のためには「規制緩和だよ」と思っている一流企業の社員のみなさん、いまが考え時ですよ。

以下は、労働組合など関係団体の談話、コメントなど。まずは、連合と全労連のコメント。

2006年12月27日

労働条件分科会「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」に関する談話

日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明
  1.  本日12月27日、労働政策審議会労働条件分科会(分科会長:西村健一郎・京都大学教授)は、「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」〔建議〕をとりまとめた。その主な内容は、労働契約法を新たに制定すること、ならびに、いわゆる「日本版イグゼンプション」(自由度の高い働き方にふさわしい制度)の創設を中心とする労働時間法制の改正である。
  2.  労働契約法では、[1]労働契約の対等合意原則や安全配慮義務などの労働契約の原則、[2]労働契約の成立と変更、[3]出向、転籍、懲戒のルール、[4]解雇(現行労働基準法第18条の2項(解雇権の濫用)の移行)、[5]有期労働契約についてのルール、などが法制化されることとなった。連合は、増加する個別労働紛争の予防や解決を可能とする、民法の特別法としての労働契約法を長年にわたり求めてきた。しかし、使用者が一方的に作成・変更する就業規則を労働契約の成立や変更の中心手段とする「報告」の考え方は、民法における契約原理には到底なじむものでなく、拙速な結論であった。さらに、「均等待遇」が盛り込まれず、労働契約法の対象範囲に「経済的従属関係にある労働者」が含まれなかったことは、雇用就業形態が多様化する時代のルールとしてはあまりに不十分である。
  3.  労働時間法制の改正点は、[1]一定時間を超えた時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ、[2]いわゆる「日本版イグゼンプション」の創設、[3]企画業務型裁量労働制の緩和、[4]管理監督者の明確化、などであり、労働時間の規制緩和が中心である。労働時間に関する最大の問題は、長時間労働による過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調など労働者の健康被害や、ワーク・ライフ・バランスの欠如である。にもかかわらず、労働時間規制を適用除外し時間外割増賃金を支払わない制度や企画業務型裁量労働制の業務制限緩和という、長時間労働を助長する法改正を行うことは認められない。長時間労働抑制のためには、時間外割増賃金率を50%に引き上げる必要がある。
  4.  今後、労働条件分科会では、この「報告」に基づいて作成される法案要綱が審議される。とりわけ就業規則の変更による労働条件変更については、報告に記述されている「判例法理に沿って、明らかにする」のとおり法案要綱が作成されるよう、注視する。連合は審議会委員と連携して、すべての働く者のためのワークルール実現に向けて取り組みを強める。
以上
2006年12月27日

【事務局長談話】労働契約法制の創設と労働時間法制の見直しによる労働者保護法制の破壊に断固、抗議する

全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和
  1. 12月27日の第72回労働条件分科会において、厚生労働省は「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」をとりまとめた。その内容は、現行の労働法制と判例法理の蓄積を根底から崩し、労働者の雇用と暮らしのありように甚大な悪影響を及ぼしかねないものである。秋以降、事務局の提案文書は、使用者側委員の主張を易々と受け入れ、労働者保護に係る部分は大幅に削ってきた。労働者側委員が、各論点について認められないとするのは当然であるが、本日の分科会では、使用者側委員の一部からも「とりまとめに反対」との見解がだされた。つまり、労使の意見は鋭く対立し、さらに労側の全員と使側の一部が『報告』の内容に反対しているのである。にもかかわらず、反対意見を押し切り、『報告』をもって厚生労働大臣に答申することを決めた厚生労働省ならびに西村分科会長に対し、全労連は断固抗議し、『報告』撤回を要求するものである。
  2. 労働時間法制を審議する目的として、厚労省は、「過労死防止や少子化対策の観点から、長時間労働の抑制を図ること」をあげてきた。ところが、『報告』は、労働時間の上限規制の強化、残業割増の引上げ、平均5割未満の有給休暇の取得向上など、当然手がけるべき課題については、せいぜい労使努力を促がす程度で、まともに取り上げていない。他方で、労働時間規制を解体する提案は、重層的に用意している。
     「自由度の高い働き方にふさわしい制度」は、課長補佐・係長クラスを労働時間規制からはずし、残業代を払わず、一ヶ月近く連日24時間働かせることも可能(4週4日以上かつ年104日以上の休暇確保が要件)な制度である。「管理監督者の見直し(スタッフ職追加)」提案は、ライン部門を支援する業務として最近増えている「スタッフ」労働者を労働時間規制の適用除外にするものである。いずれも、不払い残業を合法化するだけでなく、業務量をコントロールする権限のない管理職手前の労働者に、山のような仕事を押し付けながら、時間規制は外してしまう。長時間労働の深刻化をもたらすことは必至であり、「過労死促進法」そのものである。しかも、過労死しても労働者に時間管理の責任が負わされ、労災認定すら、されなくなる可能性がある。
     加えて『報告』は、一般職労働者の労働時間規制も崩そうとしている。「企画業務型裁量労働制」の対象業務や導入手続き要件を緩和し、一般職労働者の多くに適用できるよう改悪することを狙っている。長時間労働の解決どころか、事態をいっそう深刻化させる提案が目白押しであり、いずれの制度についても絶対に認めることはできない。
  3. 新設が狙われる労働契約法制の内容も認めがたい。まず、使用者が一方的に決めることができる就業規則をもって、労働条件の変更を可能にするためのルールづくりをする提案は、そもそも契約原則を踏み外したものといわねばならない。『報告』では、就業規則の変更が合理的なものであるかどうかの判断要素について、「判例法理に沿って、明らかにする」としている。しかし、これまでに厚生労働省が示してきた文書からみて、判例法理の到達水準を引き下げる意向が強いと考えざるをえない。法案づくりにあたっては、おそらく労使委員会の決定や過半数労働組合の合意、労使協議の状況などといった形式的手続きをもって、合理性判断の要素としたり、個人同意を「推定」する仕組みを持ち出してくることが予想される。これらは結局、使用者に対し、一方的な労働条件不利益変更権を認めるに等しく、労働契約が「労働者および使用者の合意」であるとする原則を、自ら壊すものである。
  4. 反対意見の強い不当解雇の金銭解決制度について、「引き続き検討することが適当」として、いまだに記載していることも許しがたい。金さえあれば不当な解雇が可能であるとのメッセージを広め、解雇権濫用を誘発するような制度の創設は、即時断念するべきである。
     悪法目白押しの一方で、労働者側委員や労働組合が強く求めてきた制度改正については、きわめて冷淡であることも『報告』の特徴である。労働者性の範囲の検討、有期労働契約の規制、均等待遇原則・同一労働同一賃金原則の明示、安全配慮義務、整理解雇「4要件」の実定法化、就労請求権の確立など、今の日本の社会・経済実態からみて、最も重視すべき課題については、まともに検討せずに放置されている。
  5. 以上より、今回の『報告』は、財界代表の短期的利益指向の要求に強く影響され、労働者保護法制の緩和・撤廃を意図するものであるといわざるをえない。この法律が施行されれば、結果として、労働者を無権利・困窮に追い込み、企業活力を喪失させ、日本経済全体に深刻な打撃を与える可能性がある。社会不安醸成に加担しかねない悪法づくりに、こともあろうに厚生労働省が加わることに対し、猛省を促すものである。
     全労連は、全国の労働者に法案の危険性を広く知らせ、年明けからの審議会ならびに国会審議の場をとおして、今回の悪法を断固粉砕するべく、全力で戦いにのぞむ決意を表明するものである。
以上

以下は、日本労働弁護団の意見書

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