『週刊エコノミスト』1/30号が「労働ビッグバン」特集

『週刊エコノミスト』1月30日号(毎日新聞社)

毎日新聞社の『週刊エコノミスト』1月30日号(現在発売中)が「本当の労働ビッグバン」と題して、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」を含む「労働ビッグバン」の特集を組んでいます。こんどの通常国会への「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」法案の提出見送りとなった段階で、さらに問題を深める格好の素材になっていると思います。

たとえば政策研究大学大学院の濱口桂一郎教授は、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」の本家と言われるアメリカの実態について次のように指摘しています。

 日本や欧州と違い、そもそも米国には労働時間規制がない。あるのは、残業代規制だけだ。米国の公正労働基準法は、週労働時間が40時間を超えたら5割増しの賃金を払えと書いてあるに過ぎない。だから、本家米国に「労働時間規制の適用除外」があるわけがない。あるのは、「残業代の適用除外」だ。
 そうしたことを考慮せず、間違った制度設計をしてしまうと、労働時間規制が糸の切れた凧のようになってしまう。何時間、いつ働いているのか、誰も把握できなくなる。労働組合がホワイトカラー・エグゼンプション制度を「過労死の温床になる」と批判するのは至極当然だ。(「空論に振り回される政策決定過程」、同誌21ページ)

また注目されるのは、「立案者が証言する『歪められた規制緩和』」と題する、「労働者派遣法の生みの親」である高梨昌氏(元・中央職業安定審議会会長、信州大学名誉教授)へのインタビュー。

高梨氏は、派遣は元々「専門的知識を前提とする業務限定」(「ポジティブリスト」方式)だったのが、財界の要求で、99年に、除外業務以外は原則自由とする「ネガティブリスト」方式に変更されたことが問題の根源だと指摘。「原点に返って、ネガティブリストをやめ、ポジティブリストに戻すべき」と提唱しています。偽装請負についても、「機械設備を持たない構内下請は請負と認めない」という1952年の職業安定法施行規則改正前の状態に戻すべきだと指摘しています。

なおアメリカの「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」の実態については、池添弘邦氏の「米国の適用除外制度も『拡大』には労組が大反発」(34ページ?)でも紹介されています。同論文でも、アメリカでは、「使用者は、1.5倍の時間外手当を支払いさえすれば、40時間を超えていくらでも労働者を働かせることができる」と指摘されています。また、年間賃金総額10万ドル以上の場合の適用条件が紹介されていますが、それによれば、「管理職」の場合は、<1>企業または部署の管理、<2>通常2人以上の労働者を指揮監督、<3>労働者を採用・解雇する権限がある、または採用・解雇などの処遇条件変更についての意見に特別の比重が与えられている、という条件のいずれかを満たしていること。「運営職」の場合は、主たる業務が「使用者もしくは顧客の管理、または事業運営全般に直接関連するオフィス業務もしくは非肉体的労働を行うこと」、または「重要な事項に関する自由裁量および独立した判断を行うこと」。等々、というように、これ自体、相当厳しいものがありますが、それでも、新たに600万人の時間外手当が支払われなくなるとして、労働組合からは大きな反発があったとしています。

また、ロンドン大学のドナルド・ドーア氏が、「労働ビッグバン」を推進しようとする経済財政諮問会議民間議員について、次のようにコメントしているのも注目されます。

 ビッグバンを唱える民間議員が諮問会議に提出したペーパーは「複線型でフェアな働き方」と題していたが、何がフェアかを論ずる時、以上のような現実〔中小企業の給与が大幅に低下したり、日本の貧困率が2006年には米国に次ぐ第2位になっていたことなどを指す――引用者注〕を無視できるのは、さすが新古典派経済学者である。フェアの次元は別としても、彼らは、供給面のミクロ的「効率性」にこだわるあまり、賃金圧縮・個人消費の停滞が、需要面で景気回復の足かせとなっているマクロ的効果を無視している。成長率向上を最大善とする人たちとしては、近視眼的見方の至りである。(37ページ)

「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」については、通常国会への法案提出は見送られたものの、その他の「労働ビッグバン」は引き続き立法化がねらわれています。それだけに、タイムリーな特集だと思いました。

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