数学する遺伝子――数学はパターンの科学

キース・デブリン『数学する遺伝子』(早川書房)

もう大分前に読み終わっているのですが、いろいろ面白かったので、ちょっとメモっておきます。

一番興味深かったのは、「数学は、秩序、パターン、構造、および論理的関係性の科学である」(101ページ)というところ。
パターンという中には、結び目のパターンや花の対象性のパターンなど、数と関係のないものもあるが、こういう抽象的なパターンを研究するのが数学。あからさまには目に見えないパターンも、数学を使うと、目に見えるようになる、云々。

たとえば、正多角形はいくつでもあるが、正多面体は5種類しかない。壁紙を、固定したパターンを際限なくくり返すことによって覆い尽くすとしたら、それは17通りしかない(らしい)。

で、著者は、群も、パターンの1つだと言っている(らしい)。群をパターンとしてとらえるというのは、新鮮な発想だと思いました。(僕は、群を習ったとき、群というのは、非常に人為的な、無理矢理込み入った想定をしてつくった“こしらえもの”というイメージを持っていたので)

他にもいろいろ。数の感覚ということと、数を数えるということとの違いというのも面白い話でした。

低年齢児の数の能力についてのピアジェの研究の批判。(46ページ)
ピアジェは、生後10カ月以下の子どもは、物体を存続するという適切な感覚を持っていない、としたが、赤ん坊が布に隠した物体を取れないのは、手と腕の協調が十分に発達していないために、隠された物体にうまく手を伸ばせないだけ。
数の保存にかんするテストでも、ピアジェが4歳児、5歳児を対象にやったのと同じテストを、2歳児、3歳児を対象に実施すると、子どもたちは正しく答える。これは、子どもが4歳、5歳になると、他の人の思考過程を推論する能力が発達し始めるかららしい。(48ページ)

それどころか、生後数日の赤ん坊でも、2つと3つの違いが分かるらしい。1972年には、生後4カ月の赤ん坊でも簡単な足し算と引き算ができるという研究が発表されたらしい。1990年には、赤ん坊にとって、物理的世界の特徴のなかでは数が最も重要であるらしいという研究も出たそうだ。2つの人形が2つのボールに変化しても驚かないが、ボールが1つになると困惑するらしい。これは、ピアジェの想定に反して、物体の保存の観念がある、ということを意味するらしい。

しかし、赤ん坊が計算できるのは、1、2、3まで。1歳未満の赤ん坊は、4つの物体を5つや6つとは識別できないらしい。

この「3つまで」というのはキーワードらしい。

著者は、人間は、3つ以下の集合は、「瞬時」に直感的に分かる、と言っている。(61ページ)
4つ以上の場合は、ものの数を把握するメカニズムが異なる。3つ以上のものの数については、人間は、「数える」ことが必要になる。動物も数の観念を持っているが、3よりもはるか先まで数の間隔を拡大できる能力は人間だけのもの。
生得的な数の感覚から、3を超える数の世界にすすむために必要なことは何か。1つは、数える(カウンティング)能力。2つめは、任意の記号を使って数を表わし、その記号を操作することによって数を操作する能力。カウンティングと象徴的表象の能力は、人間が20万年前から7万5000万年前の間に獲得した能力である。(64ページ)
ものがいくつあるかということを理解することと、それらのものを1つ、2つ……と数えること(カウンティング)とは、別のことである。(65ページ)

ただし、ここに出てくる、「たとえば英語では、fourから先は、数詞に接尾辞のthをくわえて、順序をあらわす形容詞にする」ということから、「これらはみなthreeがかつては最大の数詞であったことを示している」というのは、たとえば日本語はどうなるの、という問題があるけれども。(66ページ)

この本は、こういうことを少し説明したあとは、ひたすら統語の問題、チョムスキーの生成文法の話を取り上げている。そして、普遍的な統語能力を、人類の進化とむすびつけて紹介していく。それから、言語の役割として、「オフラインで思考する能力」という問題を取り上げている。(273ページ)。「シンボルのためのシンボル」(264ページ)。

で、数学はパターンや論理的関係性の科学だということは、こういう統語能力と数学の能力とは同じもの、同一だというのが、著者の言わんとする「数学の遺伝子」という話の中身。

ということで、「数学」というものに、あらためて興味を持ちました。

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