制御棒の4分の1が抜け落ちていた… 東電・福島第1原発

東京電力の福島第1原発で、1998年の定期検査中に、制御棒の約4分の1が一度に抜け落ちる事故があったことが明らかに。

この間判明した制御棒脱落事故は、全部、沸騰水型原発で起こっていますが、これには構造的な理由があるそうです。軽水炉原発には、加圧水型と沸騰水型の2タイプがありますが、加圧水型の場合、制御棒は上からつるしていて、何か事故が起こって制御棒のコントロールができなくなった場合には、自重で下に落ちる――つまり、制御棒がささった状態になるようになっています。それにたいし、沸騰水型の場合、原子炉の構造上、制御棒は下から上に差し込むかっこうにならざるをえません。そのため、何かトラブルがあると、制御棒が下に抜けてしまう危険性がある訳です。

この事故では臨界に至らなかったとはいえ、全部で137本の制御棒のうち約4分の1にあたる34本が同時に抜け落ちたというところが非常に恐ろしいですね。

制御棒一時34本抜ける 福島第一原発(朝日新聞)
原発「不適切な事例」、97件 東電含め電力7社(朝日新聞)

制御棒一時34本抜ける 福島第一原発
[asahi.com 2007年03月30日13時07分]

 福島県にある東京電力福島第一原発4号機(沸騰水型、出力78.4万キロワット)で、98年の定期検査中、原子炉の核分裂を抑える制御棒34本が一気に15センチほど抜ける事例があったことが分かった。一時的で、臨界には至らず、保安規定や報告義務の違反はなかったが、大量の制御棒が一緒に脱落したことから構造上の問題につながる可能性がある。東電は30日午後、経済産業省原子力安全・保安院に報告する。

 関係者によると、同原発には制御棒は137本あり、このうち34本が抜け落ちた。直後に運転員が気づき、すぐに元の位置に戻したという。
 圧力容器の圧力を抜くための安全弁が開いたのが原因で、これまでに発覚した一連の制御棒脱落の原因とは違うという。
 原子炉につながる配管の弁を閉じたままにするため電源を切っていたが、同系統の別の弁を閉めようと電源を入れた際にこの弁が開いてしまった。このため、原子炉内の圧力が抜けて制御棒を抜く力が働いた。
 制御棒は、原子炉内で核分裂に不可欠な中性子を吸収し、核反応を抑える働きがある。同型炉では、手順書の間違いなどで水圧を調整する弁の操作ミスをした結果、制御棒が脱落していた事例が相次いで発覚。北陸電力志賀原発1号機では臨界事故につながっている。想定外に複数の制御棒が落ちる事態は、構造上の問題として防止策の検討が迫られるものだ。
 制御棒の脱落では、ほかに、同じ下から挿入するタイプだが少し構造が違う改良型沸騰水型炉でも、柏崎刈羽原発6号機で96年に電気的な操作ミスで、制御棒が4本抜けた例があったという。
 また、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県敦賀市、加圧水型、出力116万キロワット)では、97年に原子炉格納容器の密閉性を確認する試験の際に、国の検査官の目をごまかして不正に合格していたこともわかった。
 原子炉格納容器は、原子炉圧力容器を囲む巨大な鋼鉄製の容器。重大な事故が起きても放射能が漏れないよう、高い密閉性が求められている。
 調査によると、圧力を調整する弁に不具合が見つかり、漏れが大きくなった。このため、板を張ってふたをして一時的に漏れないように処置し、立ち会った国の検査官の目をごまかして試験に合格していた。不具合があった弁は、この2日後に交換した。
 密閉性を確認する試験をめぐっては、東京電力の福島第一原発1号機で、91、92年の2回の定期検査の際に、漏れた場所が分からないのに別の場所からガスを入れ続けて漏れがないように装っていたことが、02年に発覚。保安院は当時発覚したトラブル隠しの中でも極めて悪質だとして、同機を原子炉等規制法に基づく1年間の運転停止処分にしている。
 今回の敦賀原発のケースについて、保安院原子力発電検査課は「国が定めた技術基準上の不適合管理にあたる可能性があるが、漏れの原因が分からないまま隠したわけではないので悪質ではない」とみている。
 保安院は発電施設でトラブル隠しが相次いだため、電力12社に調査を指示しており、東電と原電を除く10社も同時に報告書を提出する。また、保安院は30日、原子炉メーカーの日立と東芝に、一連の制御棒脱落について報告書を提出するよう求めた。

沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の構造については、原子力百科事典ATOMICA/原子力図書館げんしろうを参照してください。

大項目一覧(原子力百科事典 ATOMICA)

沸騰水型原子炉 BWR(原子力百科事典 ATOMICA)
加圧水型原子炉 PWR(原子力百科事典 ATOMICA)

安全だったらよいという訳ではないが、万が一の事故のときに、重力にしたがって制御棒が挿入される加圧式型にたいして、事故が起こると制御棒が抜けてしまうかも知れない、という沸騰水型は、設計思想の上でそもそも問題があるような気がしてならない。

原発「不適切な事例」、97件 東電含め電力7社
[asahi.com 2007年03月30日21時25分]

 全国の12電力会社は30日、発電所におけるデータ改ざんやトラブル隠しに関する調査報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出し、不適切事例4518件を報告した。うち原発関連は7社で97件あった。東京電力は福島第一原発3号機(福島県)で78年に起きた制御棒脱落は臨界事故に至っており、それを隠していたと断定。同2号機で84年に起きた原子炉緊急停止も隠していたと報告した。
 調査対象は原子力、火力、水力の約1400発電所。不適切事例の内訳は原子力97件、火力148件、水力4273件。看板設置などで河川法に基づく届け出を怠った事例約3500件を含めた東電が突出するなど、集計の基準などが一様でないため、件数は会社により大きく違っている。
 福島第一原発3号機の78年の事故は、運転員が制御棒の脱落に気づかず、臨界状態と判断できないまま7時間半も放置した末に、記録を改ざん、事故を隠していた。しかし、原子炉メーカーの東芝に残されていた手書きのメモなどを分析した結果、臨界に達していたと断定した。
 福島第一原発2号機では84年10月、原子炉起動時に緊急停止装置が働いたが、運転員が記録を改ざんして国や地元に報告せず、原子炉等規制法違反の疑いがある。
 運転員の想定より速く核分裂反応が進み、数秒間臨界状態になった。当時、原子炉格納容器内では約100人が作業していた。基準を上回る被曝(ひばく)はなかったが、東電は「格納容器内で作業中なのに、臨界に達してしまったのは不適切だった」としている。
 北陸電力は、志賀原発1号機(石川県)の臨界事故隠しは当時の発電所長の指示だったとした。2カ月後に迫っていた志賀2号機着工への悪影響を恐れたという。本店は関与しておらず、同時に二つの点検作業をしたのが原因の一つだったとした。
 制御棒脱落は志賀原発1号機をはじめ、東電、東北電力や中部電力など計10基の原発で起きていたことが判明。最初の福島第一原発3号機の臨界事故で情報が共有されていれば、続発は防げた可能性がある。
 日本原電は敦賀原発(福井県)2号機で97年の原子炉格納容器の気密試験で国の検査をごまかした問題について、不正の実行者や指示者は判明しなかったと報告、調査の限界を示した。
 一連の不祥事を受け、東電は同日、勝俣恒久社長ら64人を減給などとする処分を発表した。勝俣社長と田村滋美会長が3カ月間10分の3の減給、林喬副社長ら3人が3カ月間100分の15の減給など。

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  1. 関係性 - trackback on 2007/04/04 at 13:53:55

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