第2次アーミテージ報告を読んでみた

第2次アーミテージ報告の翻訳が、憲法改悪反対共同センターの「憲法をめぐる動き」コーナーに【翻訳資料】として紹介されています。

URLは以下のとおり。

http://www.kyodo-center.jp/ugoki/kiji/070216armitage.htm

で、あらためて読んでみて気がついたのだけれども、「アーミテージ報告」というのは、日本のために出されたものではなく、あくまでアメリカの利益をめざして、そのために日米同盟をどうしたらよいかという立場から書かれている、ということ。

たとえば、冒頭からこう書かれている。

 世界規模の不確実性と移行の時代において、米国の揺るぎない利益のために求められるのは、これからの挑戦と現われつつある世界秩序をベストの形に仕上げる潜在的なチャンスを把握するための地平の先を見る明敏な認識だ。

また、タイトルの「2002年に向けてアジアを正しく方向付ける」という意味を説明して、こうも言っている。

 この点で、アジアを正しく方向付けるとは、米国の価値をこの地域で押し付けることを意味しない。そうではなくむしろ、地域の指導者たちが自らの国の成功を米国の政治的、経済的目標と一致するように定義するような環境を整えることである。

つまり、アメリカの価値観――それは「市場原理、自由で啓かれた貿易、知的所有権の保護、労働基本権、環境を基礎とした経済的繁栄」と説明されている――を押し付けるのではなく、アジア諸国の指導者たちに「これは自分たちの目標と同じだ」と思いこませて、その方向に引っ張ってゆけるような「環境」をつくることだというのだ。

他にも、アジアにおいて「米国の利益に沿った地域の構造をつくること」という文言も登場する。つまり、この報告は、2020年においてもアメリカがアジアで優位な地位を占める体制をどうやって続けるか、そのために日米同盟をどうしたいかをあからさまに語ったもので、徹頭徹尾、アメリカの利益という立場が貫かれている。

だから、この報告をありがたがって、日本としてもぜひこの方向でやらなければならないもののように受け取る必要はまったくない。仮に、日米同盟を是とする立場であっても、この報告にたいして、日本の利益という立場から、日本はこういうふうに考える、という同盟戦略があって当然なのだが、政府はもちろん、自民党、公明党、民主党などにも、そして日本のマスメディアにも、そういう考え方は存在しないようである。

面白いのは、この報告を読んでいると、たとえば韓国にたいしては、はっきりと「韓国との相違」をどう処理するかという問題が取り上げられていること。アメリカから見ても、韓国は、少なくとも「アメリカ言いなり」の国ではない、と見なされており、したがって、韓国との立場の違いを前提に、どうやって対応していくか、ということが考えられている。オーストラリアも同じ。オーストラリアは、イギリスに次ぐアメリカの同盟国といってもよいはずだが、報告では「この同盟の強さを維持するためには熟達した政治的運営が求められる」「オーストラリアは地域的利益と世界規模の利益とのバランスを保とうとしているという、将来展望の違い」があると、はっきり書かれている。

同盟国といっても、これが世界の常識。しかし、残念ながら、日本にはそういう意味での独自性、自立性さえ微塵もない。この報告からは、そういう日本の対米従属が見えてくる。

もう1つ、注目されるのは、日本の、いわゆる「歴史認識」問題への言及。地域統合の問題の1つとして、「北東アジアでは歴史はまだ終わっていない」として、はっきりと「歴史」の問題が取り上げられている。そして、その原因は、もっぱら日本にあるとも書かれている。

過去5年以上にわたって、歴史をめぐる議論の多くは、小泉純一郎首相による靖国神社参拝をめぐっておこなわれた。

さらに、靖国神社の問題については、非常に婉曲な形ではあるが、適切に処理するよう日本に要求している。

東京では、靖国神社の将来と、1978年に祭られた戦争中の東条英機首相を含む14人のA級戦犯の将来をめぐって激しい政治的党議がおこなわれている。日本の世論調査では、問題の民主的な解決に向けたコンセンサスが形成されつつあることを示唆している。

この問題での世論調査の多数は、A級戦犯が合祀された靖国神社への首相の参拝は好ましくない、A級戦犯を分祀するか非宗教的な別施設をつくるべきだ、というもの。その方向での解決を、御主人様はお望みなのだ。

歴史認識問題全般については、「われわれは、日本が民主国家として、自らの過去に取り組み、近隣諸国と強力的な未来を形作る力を持っていると確信している」という書き方で、もっと露骨に歴史認識問題の解決を求めている。しかし、この書き方は、まるで飼い犬のテストをしているみたいな言い方ではないか? 「お前はこれを取ってくる能力を持っていると確信しているぞ」といいながら、棒っきれを投げる飼い主のようなもの。バカ犬であることが明らかになれば、見捨てられるかもしれない。日米同盟と言ってみても、アメリカから見れば、その程度なのだろう。

報告の中では、日本が「御しがたく、厄介で、最悪の場合には国家主義的な国になるかもしれない」という懸念まで書かれている。

この報告では、アメリカの戦略ははっきりしている。アジアにおいて、アメリカと中国が利益を共同管理する体制というのは考えられない。また、米日vs中国という2極対立も避けなければならない(そうなれば、アジアの多くの国は、「厳格な中立」か「中国との同盟」を選択するだろう、というのがこの報告の予測)。だから、「東アジアの安定」のためには、「米国は日本と緊密に同盟」しながらも、「3国」(つまり、米国、中国、日本)の「良好な関係」を維持するのにつとめるべきだ、というのである。

こういう長期の戦略的な展望があるからこそ、アメリカは、「歴史問題をめぐっての日本と中国、日本と韓国間の当面の緊張を指摘」しているのだ。従軍慰安婦にたいする強制はなかったという安倍首相の発言にたいするアメリカ国内での反発と批判は、こういう戦略的展望にもとづいて出されていると考えるべきだろう。靖国派が描きたがっているような、中国の謀略、韓国の工作というような次元の問題ではないということを記銘すべきだろう。

さて、本当なら、このあと、この報告が、憲法問題や自衛隊海外派兵でどんな要求を持ち出しているかを論ずる必要があるのだけれども、長くなってしまったので、今日はとりあえずここまで。

ともかく第2次アーミテージ報告が全文翻訳されているのだから、ぜひ御自分で読んでほしい。

なお、共同センターのページでは印刷して読むのに不便なので、pdfファイル化しました。ご参考まで。

第2次アーミテージ報告(pdfファイル)

ちなみに、英文はこちらから。
The U.S.-Japan Alliance:Getting Asia Right through 2020(pdf)

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