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規制改革会議の意見書は財界のワガママ言い放題だ

2007年5月22日 at 23:08:04

首相の諮問会議である「規制改革会議」の再チャレンジ・ワーキンググループが意見書を発表ということで、新聞各紙は、「最低賃金引き上げは失業を増加させる」といって同会議が反対であることを報道しています。

しかし、規制改革会議の意見書を読んでみたら、そんな生やさしいものではありません。

「最低賃金上げは失業増もたらす」 規制改革会議が意見書(東京新聞)
規制改革会議、最低賃金引き上げ「慎重に」(NIKKEI NET)

脱格差と活力をもたらす労働市場へ――労働法制の抜本的見直しを(規制改革会議 5/21)←pdfファイ 28KB が開きます。

意見書は、まず「具体的には、以下に掲げる課題に取り組むことが急務である」として、次の3つを上げています。

  1. 解雇権濫用法理の見直し
  2. 労働者派遣法の見直し
  3. 労働政策の立案の在り方について

1の「解雇権濫用法理の見直し」というのは、いわゆる整理解雇の4要件(<1>倒産を避けるためなどには人員削減しかないという必要性の大きさ、<2>解雇回避の措置を十分とったかどうか、<3>解雇対象者の選定方法に不当な差別や恣意性がないか、<4>解雇にいたる手続き、とくに労働者との話し合いが十分おこわれたかどうか――これら4つの要件のどれか1つでも欠けた場合は、その解雇は無効であるとする裁判所の判例)など、解雇規制を抜本的に見直して、あらかじめこういう場合には解雇できる、ということを明確にしてしまおうということ。しかもそれを「当事者の自由な意思を尊重した合意」で決めようというのだから、実際には、企業側が圧倒的に有利になって、要するに、企業の側が解雇したいときにはいつでも自由に解雇できる、そういう「合意」を押し付けられることになるのは明らか。

さらに「解雇の金銭的解決」まで持ち込もうとしているのだから、その「当事者の自由な意思を尊重した合意」に反する場合でも、カネを払って解雇しますよ、ということ。こうなったら、企業が自由に解雇できないケースというのは存在しなくなることは確実です。

2の「労働者派遣法の見直し」というのは、偽装請負の摘発にたいして、財界側が以前から持ち出してきている要求。現在の派遣法では、ある企業が、同じ派遣労働者を3年以上受け入れ続けたら、その労働者に「あなたを直接雇用したいのですが、いかがですか」という申し入れをしなければならないという義務が発生することになっています。これは、考えてみれば当たり前の話で、3年も派遣を入れないといけない仕事ということは、その仕事は一時的・臨時的なものではないということです。だったら、その仕事をする従業員は、きちんと直接雇用しなさい、ということです。

ところが、大企業・財界にとっては、これがイヤなのです。で、直接雇用義務の発生しない請負業者に仕事をさせようと思ったら、業務請負の場合は、大もとの企業が、請負の労働者に直接仕事上の指示をしてはいけない(これも当たり前の話で、請負会社が丸ごと仕事を請け負ったのだから、その仕事をどうすすめるかは、請負会社と請負労働者の間で決めること。請け負った仕事をどんなふうにすすめたらよいのか、決められないような会社が、業務請負をするというのは理屈に合いません)。そこで、いろんな「偽装請負」(形の上では、業務請負に見せかけておいて、実際には、大もとの企業が、直接仕事の指示を出す)が横行している訳です。

で、厚生労働省が「偽装請負」への規制強化にのりだしたら、財界が唱えだしたのは、この労働者派遣法の見直し。1つは、3年での雇用申し入れ義務をなくしてしまえ、というもの。そうすれば、いつまででも派遣のまま働かせ続けられるのだから、企業にとってはこんなありがたい話はありません。もう1つは、業務請負の場合に、企業から直接、請負労働者に仕事上の指示が出せるようにしよう、というもの。これらが実現したら、派遣はいつまでたっても派遣だし、「偽装請負」をなくせ、という要求もできなくなります。

3つめの「労働政策の立案の在り方について」検討すべきだというのは、現在の労働政策審議会が、使用者側委員、労働側委員、中立委員によって構成されているため、企業側の要求がそのままでは通らない。それで、労働側委員をなくしてしまえ、というもの。さすがに、労働側委員だけなくせといったら、露骨なので、こういう利害代表のやり方そのものをやめろ、と言ってますが、利害代表のやり方をやめても、財界・大企業の要求はちゃんと政府に反映させられるのだから、排除されるのは、労働者側の意見だけ、ということになります。

ということで、以上3つの要求は、つまるところ、企業の解雇は自由、派遣はいつまでたっても派遣のまま、請負についても「偽装請負だ」といって取り締まることができなくしてしまおう、そして、国の労働政策決定システムから労働者の声を排除しよう、という、実に虫のいい要求で、早い話が、働くルールはなくしてしまえ、といっているのに等しいもの。

これだけでも相当虫がいいと思うのに、同意見書はさらに、「個別課題」として、こんな要求を並べています。

  • 有期労働契約に対する制約の撤廃――現在は、たとえ1年という期限つきのパート・アルバイトでも、何度か延長しながら雇われていれば、実質的に「期限を決めない雇用」つまり普通の雇用と同じだとして、「来月でクビね」というふうに、突然解雇(これを「雇い止め」といいます)はできないことになっています。そういう規制をなくしてしまおう、ということ。
  • 若者トライアル雇用の実施期間の延長――いまは3カ月ですが、それをもっと延長して、「トライアル雇用」だといって、安い給料でこき使って、いつでもクビを切れるようにしようというもの。
  • 紹介予定派遣等の受入期間の延長――ある期間、派遣で働いてみて、よかったら正社員で雇用しますという条件付きで労働者を派遣することを「紹介予定派遣」といいます。現在、これは6カ月以内に限られています。6カ月も仕事をすれば、その仕事にふさわしいかどうか分かるだろうからですが、この期限をもっと大幅に伸ばそうというのです。そうなれば、いつまでも「文句言わずに働いてれば、いつか正社員にしてもいいよ」というエサをちらつかせて、サービス残業させ放題、セクハラも何でもあり、ということが可能になります。
  • 紹介予定派遣以外の労働者派遣における事前面接の解禁――現在は、「これこれの仕事ができる人を派遣してほしい」という企業の求めにたいして、派遣会社の側で、この派遣労働者にはその仕事をする能力があるかどうかを判断して、そうして労働者を派遣しています。ところが、事前面接が解禁になったら、企業側が、派遣を選べることになるわけです。つまり、派遣会社は、まるっきりの口入れ屋、ただ人を集めてくればいいだけになってしまいます。人材派遣会社というのは、仕事のスキルをもった人材を集める能力をもっているから、人材派遣事業を営むことができるはず。それを企業側が選別するということになれば、人材派遣事業という産業そのものを自己否定するだけです。あるいは、「派遣はカワイ子ちゃんがいいなぁ」などというセクハラオヤジが、事前面接をして、女の子を選別することも可能になります。

ということで、なにか現在の労働法制(「働くルール」)で、労働者の既得権が守られすぎているかのように言っていますが、中味は、あべこべ。企業側の権利をそっくりそのまま労働者に押しつけようというもの、大企業のワガママ以外の何ものでもありません。

こんな身勝手な要求を許したら、大変なことになります。正社員も、パート・アルバイトも、フリーターも、派遣の女性たちも、請負で働くワーキング・プアの青年労働者も、みんなでこんなワガママは絶対にやめさせましょう。

「最低賃金上げは失業増もたらす」 規制改革会議が意見書
[東京新聞 2007年5月22日 09時00分]

 政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は21日、格差問題の解決に向けた労働法制の見直しを求める意見書をまとめた。意見書は、安倍政権が検討している最低賃金の引き上げについて「不用意に引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらす」と慎重な姿勢を示した。
 同日、記者会見した規制改革会議の福井秀夫委員(政策研究大学院大学教授)は最低賃金引き上げについて「雇用が継続された労働者の生活が向上するメリットがある一方、上げ幅に見合った生産性を達成できない労働者に失業をもたらす副作用があることに配慮すべきだ」と述べた。
 政府は今国会に違反企業への罰則強化を盛り込んだ最低賃金法の改正案を提出。また、2月に策定した「成長力底上げ戦略」基本構想に基づき、中小企業の生産性向上などを通じて、中長期的な最低賃金の引き上げを目指す方策を6月の「骨太の方針」に盛り込むよう検討している。規制改革会議は政府の議論に注文を付けた格好だ。
 これに関し、塩崎恭久官房長官は21日午後の記者会見で「生産性の向上を無視して最低賃金だけを引き上げるのはいかがなものかということで、引き上げ自体に反対しているわけではない」との認識を示した。その上で「成長力底上げ戦略は中小企業の生産性向上を図ると同時に、最低賃金の引き上げを考えていくべきだ。意見書はこのほか、「労働者保護の色彩が強い現在の労働法制が企業に正規雇用を敬遠させている」と指摘。人員削減の必要性など厳しい要件が課せられた現行解雇規制を雇用実態に即して見直すよう要請した。

規制改革会議、最低賃金引き上げ「慎重に」
[NIKKEI NET 2007/05/21 23:35]

 規制改革会議(議長、草刈隆郎日本郵船会長)は21日、労働法制の抜本的な見直しを求める提言を発表した。安倍晋三首相が検討する方針を示している最低賃金の引き上げについて「不用意な引き上げはその賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらす」と慎重な対応を求めた。
 同会議は月内にまとめる1次報告に提言を盛り込み、今後3年の任期中に実現する構え。同日記者会見した福井秀夫政策研究大学院大教授は「首相の考えと相いれないものではない。引き上げれば必ず副作用が出るので、利点と悪影響を考慮して判断すべきだ」と指摘した。
 提言は労働市場の規制について「当事者の意思を最大限尊重する観点から見直す」と強調。そのうえで(1)解雇規制の緩和と解雇の金銭的解決の試験的導入(2)派遣労働の業種制限を完全撤廃(3)労働政策審議会の抜本的見直しによる公正な政策決定の実現――などを盛り込んでいる。

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2 Responses to “規制改革会議の意見書は財界のワガママ言い放題だ”

  1. 規制改革会議は、労働者保護法制を徹底的に攻撃し、労働者に対す…

     内閣府の規制改革会議が意見書「脱格差と活力をもたらす労働市場へ~労働法制の抜本的見直しを~(平成19年5月21日)」(再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォース (more…)

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