自衛隊の市民監視に、地方紙は怒る!!!

自衛隊による市民活動の監視・情報収集がおこなわれていたことにたいして、今日、地方紙がいっせいに社説をかかげています。

隠しの社説をざっと眺めてみると、この問題の基本的な性格がわかってきます。

  1. 何よりも、「イラク派兵反対」の宣伝・集会などを「反自衛隊活動」と決めつけていること、そして、久間防衛大臣が、自衛隊が「反自衛隊」情報を収集するのは当然だ開き直ったことにたいする批判。「政治的に中立でなければならない自衛隊が、守るべき一線を踏み越えている」(北海道新聞)、「多様な議論や主張を認めず、一方的に敵と決めつけ、多数の市民を監視するのは、常軌を逸している」(河北新報)。
  2. 当然のことながら、各紙とも共通して、政府にたいして、情報保全隊の活動を調査し、国民の前に明らかにすべきだと要求している。「防衛省と自衛隊は、まず今回の文書の目的、根拠、運用の状況を明らかにして、人権の尊重を確認してもらいたい」(東京新聞)、「政府は早急に情報保全隊の活動実態を調べ、国民に詳細を説明すべきだ」(神戸新聞)、「防衛省は、自衛隊の情報活動の在り方と法的権限についてきちんと説明し、国民の理解を得る必要があろう」(西日本新聞)。
  3. そうした論調の根本には、この問題がシビリアン・コントロール、自衛隊の政治的中立という憲法上の根本原則に違反しているという本質的な批判があることもわかる。「戦後の国防の根幹である『文民統制』が揺らぎかねない」(中国新聞)、「自衛隊は、文民統制(シビリアンコントロール)の原則を順守し、自らは政治的に中立であるべきだ」(西日本新聞)
  4. もう1つは、記者などの取材や自衛隊との懇談でのやり取りまで、収集すべき対象とされていることにたいする批判。「新聞記者が隊員の派遣状況を取材する……、いずれも普通のことなのに、これらは『反自衛隊活動』の項目に挙げられている。強い違和感を覚える」(高知新聞)など。
  5. また、この間、自衛隊員の私物パソコンからファイル交換ソフトなどによる情報漏えい事件が起きていることを引き合いに出して、情報保全隊としてやるべきことが違っているのではないかと、批判しているものも多い。

社説:自衛隊*市民監視まで、に慄然
[北海道新聞 2007年6月8日]

 戦争に反対し、平和を求める市民の活動が自衛隊に監視されていた。
 その事実を示すという内部文書を共産党が入手し、公表した。
 文書によると、陸上自衛隊のイラク派遣に反対する全国各地の市民集会やデモなどのほか、報道機関の取材活動も調べられていた。情報収集したのは自衛隊の情報保全隊という組織だ。
 派遣部隊第一陣が送り出された北海道でも当時、さまざまな市民活動が繰り広げられた。それらが知らない間に監視されていたことに慄然(りつぜん)とする。
 憲法が保障する集会・結社の自由や表現の自由、プライバシー権を脅かす許しがたい行為だ。市民活動を委縮させることにもなりかねない。
 久間章生防衛相は「自衛隊として当然の情報収集だ」と述べ、監視していたことを認めた。だが「3週間で破棄することになっている文書だから(内容については)調べようがない」と、詳しい説明を拒否している。
 ことの重大さが分かっていないのではないか。政府はすみやかに事実関係を調査し、国民に開示すべきだ。
 文書に記された監視期間は2003年11月からイラク派遣が始まった翌年2月にかけて。集会やデモの日時、場所、参加者数、個人の発言内容などが記載され、一部には写真も添えられている。
 登場する名前は全国289団体・個人、このうち道内関係は63団体・個人にのぼる。
 見過ごせないのは、こうした集会やデモを「反自衛隊活動」と色分けし、集会での声を「(イラク派遣を)誹謗(ひぼう)する発言」と断じたりしていることだ。
 政治的に中立でなければならない自衛隊が、守るべき一線を踏み越えているといわざるを得ない。
 自衛隊は制度上、厳格なシビリアンコントロール(文民統制)のもとに置かれている。日本には戦前・戦中、軍部を暴走させてしまった苦い体験があるからだ。
 自衛隊にこんな勝手を許せば、文民統制まで危うくなる。
 情報保全隊の本来の任務は、自衛隊の秘密を探ろうという外部の動きや襲撃から自衛隊を守るための情報収集であり、市民監視ではない。
 塩崎恭久官房長官は、防衛省設置法が定める「必要な情報の収集整理」を根拠に今回の監視活動を正当化したが、この規定も国土防衛や警備を第一に想定したものであるはずだ。
 02年には防衛庁が、情報開示請求者の個人情報のリストを作っていたことが発覚し、大きな問題になった。
 国民を守るはずの自衛隊が、国民を監視する。なし崩しのうちに組織がひとり歩きを始める。
 政府がそれを放っておくのなら、歯止め役は国会だ。その責任は重い。

社説:市民監視 自衛隊の信用にかかわる
[信濃毎日新聞 2007年6月8日]

 情報保全隊――。自衛隊にこんな部隊があることを知っていた人はそう多くないのではないか。
 陸上自衛隊の情報保全隊が、自衛隊活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向を調べ、内部文書にしていたことが明らかになった。
 一定の情報収集はともかく、市民を監視するようなやり方が、本来の任務に当たるのかどうか、大いに疑わしい。
 保全隊の主な任務は、自衛隊が持つ秘密情報を守ることである。内部の情報漏れに目を光らせるのが役割だ。にもかかわらず、外部の市民に監視の網を広げていたわけで、黙って見過ごすことはできない。
 そこをわきまえずに一線を越えるようでは、市民の信頼は得られない。自衛隊に対する警戒心さえ生んでしまう。
 市民にはプライバシーの権利もある。情報収集を無制限に進めるのは許されない。自衛隊以外の官公庁や企業も同じことである。
 共産党が入手し、公表した2種類の内部文書は、期間が2003年11月?04年2月の分である。長野県内では04年1、2月に、松本市の松本駅前で行われた街頭活動2件が含まれていた。
 イラクへの自衛隊派遣に反対する集会やデモなどに限ってみても、41都道府県の289団体・個人に上る。高校生も対象だった。
 いずれも日時や場所、団体名、内容、勢力などが詳しく記述されていた。個人名も出てくる。
 情報保全隊は、防衛相直轄の部隊で、陸海空の3自衛隊にそれぞれ編成されている。合わせて約900人が、隊員と外部の不審者との接触などを監視している。
 さらに、自衛隊施設への襲撃や業務の妨害などを防ぐための情報収集も行うという。
 こうした原則に従えば、例えばイラク派遣に反対する集会やデモが対象になるかは疑問だ。憲法が保障する集会や表現の自由に圧力をかけている、と受け取られかねない。
 久間章生防衛相は「自衛隊の情報収集活動は当然」と、問題ないとの認識を示している。
 果たしてそうか。放置していると、情報収集の範囲も内容も拡大する心配はないのか。トップがきちんとした問題意識を持たなければ、現場には到底届かない。
 情報保全隊について分からないことが多い。秘密を多く抱えるほど自衛隊は国民から遠い存在になる。防衛相は部隊の行きすぎた活動をまずストップさせ、実態を把握し、国民に分かりやすく説明すべきだ。

社説:陸自の「市民監視」 文民統制への懸念募る
[中国新聞 2007/6/8]

 任務の枠組みを大きく逸脱しているのではないか。そんな疑念がぬぐえない。陸上自衛隊の情報保全隊が、2003年11月から翌年2月にかけ、イラクへの自衛隊派遣に反対する団体や個人の情報を収集。「内部文書」にまとめていたことが分かった。
 情報収集の対象は、市民団体をはじめ、労働組合や政党、宗教団体、地方議会、報道機関など広範囲に及ぶ。高校生のグループも含まれていたというから驚きだ。全国41都道府県の計289団体・個人の活動状況がつぶさに記録されていた。共産党の志位和夫委員長が、自衛隊関係者から文書を入手したとして記者会見で明らかにした。防衛省側も情報収集の事実を認めている。
 公表された内部文書によると、イラク派遣の基本計画が閣議決定される直前から陸自の主力部隊がサマワに到着する時期の抗議行動などを1週間ごとに調査。集会やデモの報告には参加者の写真が添えられ、個人が送ったはがきの内容まで記録の対象になっていた。
 久間章生防衛相や塩崎恭久官房長官は、こうした活動について当然のことで問題はないとしている。しかし、集会、結社など一切の表現の自由の保障と検閲の禁止を明記した憲法21条に背く行為ではないと言い切れるのか。大いに疑問がある。
 岩手駐屯地からの派遣人数や時期についての電話確認、青森駐屯地の正門前で退庁する隊員に対して行われた取材も「反自衛隊活動」に識別されていた。あっけにとられる思いだ。思想、信条や表現の自由が奪われ、救いのない戦争へと突き進んでいった暗い過去が連想され、ぞっとする。
 情報保全隊は小泉政権下の03年3月、海上自衛隊幹部によるロシアへの機密漏えい事件などを受け、それまでの調査隊を再編・強化する形で発足。民間の情報収集対象については、防衛庁長官(当時)が「防衛秘密を取り扱う者として指定した関係者に限定している」と国会で明言していた。
 自衛隊のイラク派遣を決めた小泉政権からバトンを引き継いだ安倍政権の政治姿勢も厳しく問われよう。沖縄のキャンプ・シュワブ沖の環境調査に海自隊の掃海母艦を派遣したことも含め、自衛隊が市民団体を直接監視する動きが目にあまるのではないか。戦後の国防の根幹である「文民統制」が揺らぎかねない。国会は事態を軽視してはならない。

社説:自衛隊の内部文書/自由の国で気味が悪い
[河北新報 2007年06月08日金曜日]

 なんとも薄気味悪く、背筋がぞっとした。今時こんなことが、組織的に、日常的に行われていたのか。
 陸上自衛隊が、自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか、政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」の存在が判明した。共産党が自衛隊関係者から入手したとして公表し、防衛省が資料作成について認めた。
 文書はA44判、166ページで、(1)陸自東北方面情報保全隊が収集した「情報資料」(2004年1―2月)(2)情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(03年11月―04年2月)の2種類ある。
 文書には、自衛隊の活動に反対するデモや集会、ビラ配りについて、日時や場所、団体名、個人名、内容などを記載。写真も添付されていた。派遣反対の集会やデモの関連だけで全国41都道府県の289団体・個人に上り、高校生も含まれている。
 さらに、国会議員の発言、新聞記者の取材活動や、派遣反対運動とはおよそ関係がないとみられる年金制度や消費税に関する集会なども記録されていた。
 情報収集は、イラク派遣の基本計画閣議決定を控えた直前から、陸上自衛隊本隊の主力部隊がイラク・サマワに到着した時期に当たる。イラク派遣について、国内で賛否が渦巻き、反対運動も高まっており、自衛隊が神経質になっていたことは間違いない。
 情報保全隊の任務は自衛隊施行令に基づく各自衛隊の訓令で規定されており、隊員と外部の不審者との接触などを監視。自衛隊施設に対する襲撃や業務の妨害などを防ぐための情報収集も含まれるが、民間の情報収集対象については、極めて限定されている。
 政府は「法律をもとにした調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」(塩崎恭久官房長官)と、今回の自衛隊の対応について、許容範囲との認識を示しているが、果たしてそうだろうか。
 多様な議論や主張を認めず、一方的に敵と決めつけ、多数の市民を監視するのは、常軌を逸しているとしか思えない。何かしらざわっとするし、憤りも覚える。
 個々人の行動や正常な職業活動が、本人が知らぬ間に、権力からチェックを受けるとすれば、プレッシャーを感じ、息苦しい社会になる。
 言論、集会、結社の自由が保障され、個人のプライバシーが守られることが、自由、民主主義の根幹であることは確認しておきたい。
 防衛省は、自衛隊の内部文書を明らかにし、調査の意図や方法などについて説明する必要があろう。
 自衛隊は、国内はもとより海外での大規模災害救助活動などで実績を積み上げ、信頼を勝ち得てきた。国土の防衛を担ってもらうことについても、国民の間でほぼ合意に達している。
 市民の監視は、国民の信頼に水を差し、道を逆行しているのではないか。

社説:自衛隊 市民の自由を尊重せよ
[東京新聞 2007年6月8日]

 陸上自衛隊の情報保全隊が、イラクへの部隊派遣に反対する市民活動を監視していた。言論や思想信条の自由に対する圧力と受け取られても仕方ない。政治的中立の立場に徹すべきだ。
 自由な意見を表明する市民らの行動が、これほど詳細に自衛隊に監視されていたのかと驚かされる。
 高校生らが「イラク派兵おかしいよ」と題して2003年11月、東京都新宿区で開催した集会も、同じころ愛知県の航空自衛隊小牧基地に派遣中止の申し入れ書を届けた9人の訪問も、大規模デモと並べて記録されていた。
 共産党が入手した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」という文書には、街頭行動などの主催団体、実施日、場所、参加者数、発言内容といった情報が細かく整理されている。抗議行動の参加者に丸印をつけた記録写真や、運動の形態や規模などで分類した集計も添付されている。編集に関与した組織として情報保全隊などの名があり、自衛隊の内部文書だとされる。
 集会に参加した市民らが閲覧すれば無言の圧力を感じるだろう。「自衛隊が情報を収集して分析することは悪いことではない」という久間章生防衛相の説明は、表現の自由や人権に対する配慮が欠如している。
 文書によると、自衛隊は市民団体のほか報道機関や労働組合、政治家などを幅広く監視していた。自衛隊のイラク派遣に反対すればただちに“反自衛隊”と警戒して情報収集していたのなら、あまりに短絡的だ。その多くは、平和憲法下の自衛隊の役割を理解したうえで派遣に反対した行動、意見表明だったからだ。
 実力組織の自衛隊は政治的中立を厳守すべきであり、特定の人物や団体を色眼鏡で監視すれば立場や権限の逸脱につながる。思想の自由が保障されなかった時代に軍部が市民活動を抑圧した記憶も刺激される。
 かつて自衛隊への接近を企てたオウム真理教のような危険団体を警戒するというのなら、市民と社会の安全を守る任務として理解も得られよう。しかし、小さな集会まで監視する活動は、自衛隊が何から何を守ろうとしているのか、市民らに疑いを抱かせかねない。イージス艦の能力に関する秘密が流出していた事件などをみると、市民より隊内を先に監視すべきだとさえ思える。
 防衛省と自衛隊は、まず今回の文書の目的、根拠、運用の状況を明らかにして、人権の尊重を確認してもらいたい。過剰な監視活動については組織内の責任を検証し、再発防止策を講じねばならない。

社説:「監視」ならばやり過ぎだ 自衛隊情報活動
[2007/06/08付 西日本新聞朝刊 2007年06月08日00時27分]

 陸上自衛隊が、イラク派遣など自衛隊の活動に批判的な市民団体の行動や報道の情報を収集、分析していた。
 共産党が自衛隊関係者から入手したとして発表した「内部文書」には、全国の289の団体や個人の活動状況が記録されていた。
 情報収集の対象は市民団体や労組、政党、地方議会、報道機関などで、高校生のグループも含まれていた。文書には、“反自衛隊的”とみなされた議員や記者、ジャーナリストらの実名もあった。反対デモや集会への参加者の写真も撮影していたという。
 市民団体などは「自衛隊による国民監視だ」と反発を強めている。
 太平洋戦争を経験した世代は、戦争遂行の邪魔になる言論や活動を弾圧した「憲兵」や「特高警察」という言葉を思い浮かべたかもしれない。
 情報収集を担当したのは、情報保全隊という部署で、自衛隊の機密情報が漏れるのを防ぐことが主な仕事だ。海上自衛隊幹部によるロシアへの機密漏えい事件をきっかけに、2003年、前身の調査隊を強化して発足した。
 防衛省は、外部の不審者と隊員との接触の監視や、自衛隊活動の妨害や施設への襲撃を防止するために必要な情報収集も、情報保全隊の任務としている。
 これを踏まえ、今回明らかになった情報収集も「所掌事務の遂行に必要な調査・研究だった」(守屋武昌事務次官)と正当性を主張している。
 だが、自衛隊に批判的な活動や言論を個別に調査し、「反自衛隊」だとか、特定の政党の系列とかに色分けするのは、やり過ぎではないか。
 調査対象がイラク派遣問題にとどまらず、消費税や医療費負担増に反対する活動にまで及んでいるのも問題だ。本来の任務から逸脱していると言われても仕方がない。
 何より、自衛隊は強大な軍事力を持つ組織である。その内部文書に、自分の名が“反抗分子”扱いで記録されるのを歓迎する人はいまい。市民運動や言論にとって大きな圧力となり得る。
 イラクへの自衛隊派遣は、世論の反対を押し切る形で行われた、極めて政治的な判断だった。だからこそ、実行組織である自衛隊は、文民統制(シビリアンコントロール)の原則を順守し、自らは政治的に中立であるべきだ。
 自衛隊は、平和憲法の理念に忠実であったから、多くの国民の信任を得てきた。憲兵や特高を想起させる振る舞いは期待を裏切るものだ。
 国会では、航空自衛隊のイラク派遣を2年延長するイラク復興支援特措法改正案の審議が大詰めを迎えている。
 派遣延長が決まる前に、防衛省は、自衛隊の情報活動の在り方と法的権限についてきちんと説明し、国民の理解を得る必要があろう。

社説:自衛隊の国民監視 矛先の向かう先が違う
[琉球新報 2007-6-8 9:49:38]

 いつから自衛隊は国民に矛先を向けるようになったのだろうか。陸上自衛隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体や政党、労組、ジャーナリストなどの動向を調査した内部文書の存在が6日、明らかになった。国民を守るべき自衛隊が、自衛隊を守るために国民を監視する。本末転倒だ。
 共産党が入手・公表した自衛隊の「内部文書」は2種。「イラク派遣に対する国内情勢の反対動向」(2003年11月―04年2月)と「一般情勢」(04年1―2月)で、いずれも陸上自衛隊の情報保全隊が作成したものだ。
 文書にはイラク派遣に反対する集会やデモ、ビラ配布などを行った289の団体・個人の動きが詳細に記録されている。
 県内でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなど15団体、5個人の活動が「監視対象」となっていた。
 7日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、「監視活動」が陸上自衛隊に限らず、海上、航空自衛隊でも行われていた可能性を認めている。
 反対集会への参加者の撮影も行われていた。「撮影は違法」との野党の指摘に久間防衛相は、マスコミ取材を例に「取材が良くて自衛隊が駄目だという法律の根拠はない」と反論している。マスコミの取材と自衛隊の監視を同列に並べる感覚も、いかがなものか。
 自衛隊による「国民監視」の事実を内部文書で暴露された防衛省は「部隊の保全のために必要な情報活動」「情報収集はイラク派遣時に限ったこと」と釈明している。
 これに対し野党は「個人のプライバシーに対する侵害行為で、憲法違反」(共産党)「シビリアンコントロール(文民統制)が全く効いていない」(民主党)「税金を使った憲法違反の行為で言語道断」(社民党)と批判している。
 戦前、戦中は特高警察が国民を監視し、発言によっては逮捕・拘留し、反戦の声を抑えた。加えて、負け戦すら勝ち戦にすり替える軍の「大本営発表」で情報操作し、国民を戦争に駆り立て、多くの国民を死に追いやった歴史がある。
 自衛隊による「国民監視」に、市民からは「戦前の特高警察の復活を思わせる」「戦前回帰に身震いする」などの声が上がっている。
 自衛隊は、存在自体が憲法違反との意見もある。改憲論争の焦点の1つに「9条改正」による自衛隊の“軍隊化”もある。
 国の平和と独立を守り、直接・間接侵略に対処するのが自衛隊の主任務のはずだ。しかし実態が、戦前の特高警察を想起させる国民の監視機関だとするならば、やがて矛先を国民に向ける軍隊に変わりかねない。そんな自衛隊なら、民主国家・日本には不要だ。

社説:情報保全隊/「本来任務」といえるのか
[神戸新聞 2007年6月8日]

 7年前、防衛研究所勤務の海上自衛隊三佐が在日ロシア大使館駐在武官に機密文書を渡していた事件が起きた。これをひとつのきっかけにして、従来の調査隊を改組して誕生したのが、自衛隊の情報保全隊だ。
 陸海空3自衛隊に置かれ、任務は訓令で「自衛隊の情報保全のための資料や情報の収集」と定められている。部隊を外部からの働きかけから守り、機密情報の漏洩(ろうえい)を防ぐための情報収集活動が主な仕事だが、それを大きく踏み越えたと思えるような活動が明らかになった。
 活動内容を記録した内部文書を共産党が入手し、公表した。文書は、陸上自衛隊の東北方面情報保全隊がまとめた「一般情勢」などと、情報保全隊本部が作成した「イラク派遣に対する国内勢力の反対動向」の2種類ある。
 2003年から04年にかけてのもので、イラクへの陸上自衛隊派遣に反対する集会やデモに関連するものだけで289団体・個人の活動内容が細かく記述されていた。
 「イラク派兵反対 殺すも殺されるのもいやですよ あなたは?」といった集会参加者のゼッケンやビラの内容、参加人数などのほか、講演会での発言要旨もある。範囲は兵庫県を含め41都道府県にまたがっている。当時、陸自のイラク派遣をめぐって世論が2分される状況にあり、自衛隊としては派遣反対の声に敏感に反応したということかもしれない。
 久間防衛相は文書の信ぴょう性については「既に廃棄されており、確認のしようがない」としているものの、集会の写真撮影などの活動は認めた上で、違法性はないという認識を示した。塩崎官房長官も「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は受け入れられるべきだ」としている。任務の範囲内という主張だ。
 しかし、この内部文書から医療費や年金に関する運動、春闘までもが調査対象だったことがわかる。暮らしにかかわる国民の活動も、広く「監視」していたと受け止められても仕方がないだろう。こうした活動が事実とすれば、市民活動を委縮させかねないし、政治に絡む活動は文民統制の原則を曲げる恐れも出てくる。
 政府は早急に情報保全隊の活動実態を調べ、国民に詳細を説明すべきだ。
 自衛隊では、イージス艦の中枢情報が海自隊内に広く流出する事件が起きている。本来任務にぬかりが生じる一方で、市民活動に目を光らせていたなら、本末転倒というほかない。

社説:[陸自市民監視]この人権感覚は問題だ
[沖縄タイムス 2007年6月8日朝刊]

 共産党の志位和夫委員長は、陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」を入手した。
 調査リストには自衛隊のイラク派遣に反対する集会やデモなどの関連だけで41都道府県の289団体・個人に上り、高校生も含まれている。
 県内ではイラク戦争に反対した市民団体ら13団体のデモ行進やビラ配りなど15件も入っていた。
 そもそも自衛隊のイラク派遣に反対する市民運動は、監視が必要な異常な行為なのか。政府批判、自衛隊批判は「言論の自由」「報道の自由」によって保障された人権の1つではないか。
 今回リストアップされた個人や団体のメンバーらはさぞ驚き、自衛隊への不信感を募らせたことだろう。
 文書は166ページ。陸自東北方面情報保全隊がまとめた「情報資料」(2004年1―2月)と、情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(03年11月―04年2月)の2種類。
 志位氏は「個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と鈴木政二官房副長官に中止を要請したが、塩崎恭久官房長官は記者会見で「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」と述べ、許容範囲との認識を示した。
 久間章生防衛相は「自衛隊が情報収集活動をするのは当然」とした。防衛省の守屋武昌事務次官は、反対集会などの情報を集めていたことを認めた上で「自衛隊法に基づく調査研究で違法性はない」と説明している。
 しかし、自衛隊の調査・情報収集に何の限定も加えない発言はおかしい。「自衛」の名目であれば何をしても許されるというわけでもあるまい。調査にもおのずから限界があるはずだ。
 集会の自由、デモ行進の自由などを含む「表現の自由」は、民主主義社会では最も尊重されるべき人権である。写真撮影などで市民のプライバシーを脅かし、市民運動を委縮させるようなことがあってはならない。
 シビリアン・コントロール(文民統制)の原則を忘れるべきではない。このような調査は自衛隊による民の統制につながる本末転倒の発想で、自衛隊の市民監視と批判されるゆえんだ。
 特に沖縄は広大な基地を抱え、歴史的体験を踏まえればイラク派遣への反対運動が起きるのも当然ではないか。
 約5年前、自衛隊で情報公開請求者の個人情報リストを作成していたことが問題になったが、プライバシーを軽視する自衛隊の人権感覚はおかしい。

社説:【情報保全隊】 どこを見ているのか
[高知新聞 2007年06月08日08時34分]

 国民を守ることを仕事とする自衛隊が、国民の日常活動に逐一目を光らせている。これではかえって、国民の信頼を損なうのではないか。共産党が入手、発表した陸上自衛隊の情報保全隊作成とされる文書を見て、率直にそう思う。
 文書は、2003年から04年にかけて、イラクへの自衛隊派遣などに反対する市民団体や政党、労組などの動向を、入念に調査、一覧表にして詳しく記している。全国約290もの団体・個人の記述があり、本県の2団体も含まれる。
 イラクへの自衛隊派遣は国会でも意見が大きく分かれた問題で、国民の間でも賛否両論あるのは当然だ。反対の集会やデモもごく一般的な活動であり、それをいちいち監視する必要がどこにあるのだろう。
 新聞記者が隊員の派遣状況を取材する、国会議員が派兵に反対を表明する、一般住民が「ヘリ騒音」の苦情電話をかける。いずれも普通のことなのに、これらは「反自衛隊活動」の項目に挙げられている。強い違和感を覚える。
 情報保全隊は、陸海空3自衛隊合わせて900人に上るが、その成り立ちを考えると、彼らの「本来任務」が何であるかが分かる。
 2000年9月、海上自衛隊三佐が在日ロシア大使館駐在武官に内部文書を渡し、機密を漏らしたとして自衛隊法の守秘義務違反で逮捕された。大きな問題になり、情報漏れに目を光らせる調査隊を再編・強化した情報保全隊が発足した。
 つまり、身内からの情報流出の監視が本来業務である。防衛機密を盗もうと、隊員に接触してくる外部の人間は限られるはずだ。監視対象を一般国民の日常活動にまで広げるというのなら、拡大解釈が過ぎる。
 法整備の面では、01年10月の自衛隊法改正で、秘密漏えいの処罰対象が隊員以外にも広げられ、新聞記者や作家、ジャーナリストらが漏えいを「共謀、教唆」したとして罰せられる危険性も出てきた。今回の文書にも、「こんなことまで」と思わせる作家やジャーナリストに関する記述がある。まさか機密漏えいに備えて、というのではあるまい。
 こうした中でもイージス艦の機密情報は漏れ、情報保全隊はそれを防げなかった。900人もいて、目のつけどころが違うのではないか。こうした疑問にも、久間防衛相らは「何が問題なのか」と言わんばかりだ。国民を疑いのまなざしで見る組織を、国民が信頼するとは思えない。

シビリアンコントロールというのは、自衛隊の最高指揮官が総理大臣でありさえすればいい、ということではなく、主権者である国民のコントロールのもとに置かれなければならない、ということです。だとすれば、その自衛隊が、特定の団体や個人を、「反自衛隊」であるとして監視・調査するなどということは、あってはならないこと。「イラク派兵反対」が世論の多数となって、引き上げ命令がでるかも知れない。そうなったときに、「これは反自衛隊活動だ」などといって従わない、あるいは自衛隊みずからがそうした政府の決定を覆そうとする、そんなことが許されるはずがありません。

そういう意味で、こんかいの問題は、まさにシビリアンコントロールの原則にかかわる大問題なのです。地方紙の社説を読んで、そういう問題なんだ、ということがよくわかりました。

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