経団連が「2007年度規制改革要望」を発表

6月29日付で、日本経団連が、2007年度の「規制改革要望」を発表。

またもや、言いたい放題好き放題の要求が並んでいます。

日本経団連:2007年度日本経団連規制改革要望 2007-06-29

重点項目(ホームページ上では太字になっている部分)だけを拾ってみても、「雇用・労働分野」では、次のような項目が並んでいます。

  • 派遣禁止業務の解禁
  • 派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止の撤廃
  • いわゆる26業務における派遣労働者への雇用契約申込義務の廃止
  • いわゆる自由化業務における派遣労働者への雇用契約申込義務の廃止
  • いわゆる自由化業務における派遣期間制限の撤廃
  • 労働時間規制の適用除外制度の拡充
  • 企画業務型裁量労働制に関する手続きの簡素化

派遣労働者への「雇用契約申込義務」というのは、派遣が3年以上になったときには「正社員として雇用します」と申し入れなければならない、という義務です。これは、派遣というのはあくまで臨時的、一時的なものだ、という考え方にもとづいています。だから、もし3年も続けて派遣を受け入れるようなら、ちゃんと正式に雇用しなさい、ということです。

で、この申し入れ義務を避けるために、実態は派遣であるにもかかわらず、請負であるかのように見せかける「偽装請負」が続発しています。経団連会長の御手洗さんが会長を務めるキヤノンも例に漏れません。法令遵守の先頭に立たなければ行けない御手洗さんは、それにもかかわらず、「偽装請負」が生まれるのは「雇用契約申込義務」を定めた派遣法が悪い!!と逆ギレして、「規制緩和」と称して、撤廃を求めているのです。なんというワガママ!!

最後から2番目の「労働時間規制の適用除外制度の拡充」は、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を実現したいのに、政府がさっさと「断念」しちゃったもんだから、正面から実現をめざすのはやめて、実質的に「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を実現しようとして、持ち出したものです。

経団連の「規制改革要望」というのは、こんなワガママなものなのです。

それから、6/19には、こんなものも発表しています。↓

日本経団連:豊かな生活の実現に向けた経済政策のあり方 (2007-06-19)

読んでみると、こちらはなかなか難しい統計分析も含んでいるので、専門家の方の研究をお願いしたいのですが、1の部分では、日本は国民1人当たりの所得、資産の水準は高く、格差はそんなに広がっていないということを強調。

そういう中で、2では「将来にわたり懸念される事項」として、次の3点を指摘。<2>ではニート問題などを取り上げ、<3>では高齢者世帯や単身世帯の増加、生活保護世帯の増加などを取り上げています。

  1. 成長力の低下
  2. 若・中年者の不安定就業化・無業化の影響
  3. 構造的な生活困窮者の増加

それに対応して、3「今後の経済政策のあり方とセーフティネットの整備の方向性」では打開の方向を提起。

  1. 成長力の強化
  2. 不安定就業化・無業化している若・中年者の就業能力向上・就業促進
  3. 所得再分配政策の効率化・重点化――真に必要なセーフティネットの整備――

しかし、

  • <2>で提起しているのは、「労働市場における需給調整機能の強化」とか「、職業紹介事業の民間開放の拡大」「労働者派遣に係る規制改革」「職業訓練機関の活用促進」「公共職業訓練の民間委託拡大」など、規制緩和、民間委託拡大を除けば、ごく一般的なもの。あとは、「企業の自主的な取り組み」というだけ。
  • <3>についても、「被保護者の経済的自立を促す施策をさらに充実」させるというだけで、主張の力点は「公的年金・医療・介護など、国民生活のセーフティネットである社会保障給付を、経済の身の丈にあったものにしていくことで、さらなる国民負担率の上昇を回避していくことが重要」というところにおかれている。
  • それにくらべると、<1>の「成長率の強化」はやたら詳しい。結局、これがホンネだということです。

ところで、この文書中に、次のようなグラフが出ていました。

図表第31 所得のジニ係数の推移(日本経団連「豊かな生活の実現に向けた経済政策のあり方」)

で、まあこのグラフを見ると、税・社会保障による調整前は格差が広がっているのに対して、税・社会保障調整後は格差はあんまし広がってないじゃん、ということになるのだけれども、それはともかくとして、次のことに気がつきます。

  1. 税・社会保障調整後でも、ジニ係数は、過去最高になっていること。つまり、当初所得の格差が急速に拡大しているのに比べると、格差の拡大テンポは小さいものの、税・社会保障調整後の所得についてみても、格差は着実に広がっている、ということ。
  2. しかも、90年代後半からは、税による調整効果が著しく小さくなっていること。これは、明らかに高額所得にたいする所得減税によるもので、租税による所得再配分機能はほとんどなくなっている。つまり、累進課税の意味が非常に薄れてしまっている、ということ。
  3. そんななかで、社会保障による所得再配分機能は拡大しているが、これについては、分析的にみる必要がある。すなわち、高齢化の進展とともに高齢者の割合が増えているので、当然、年金給付などが増えており、それによる見かけ上の再配分効果の拡大があるのではないか、ということ。そうした見かけ上の効果を差し引いたときに、社会保障による所得再配分効果がはたして拡大しているかどうか。

このあたりは、統計学的な知識も求められるので、僕には断定することはできませんが、とくに3については、もう少し詳しく調べる必要がありそうです。

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