原因に触れないままでは解決になりません

政府の『労働経済白書』2007年版が発表に。

伸びる企業業績 給与は頭打ち 「勤労者への配分増を」労働経済白書(東京新聞)
【関連】規制緩和の影響触れず 労働経済白書 政策の功罪検証必要(東京新聞)

で、↓こちらが『労働経済白書』の本文および要約版。

厚生労働省:2007年版労働経済の分析(本文版)
厚生労働省:2007年版労働経済の分析(要約版)

伸びる企業業績 給与は頭打ち 「勤労者への配分増を」労働経済白書
[東京新聞 2007年8月3日 夕刊]

主要国の労働分配率(「東京新聞」2007年8月3日夕刊)

 厚生労働省は3日、2007年版労働経済白書を発表した。今回の景気回復局面では企業業績が改善していながら、賃上げや労働時間短縮に結び付いていないと分析。株主配当金が増える一方、人件費の割合を示す労働分配率は低下しており、経済成長の持続のためにも勤労者の配分を増やすことが重要と訴えた。
 白書は、大企業を中心に売上高に占める営業利益の割合が上昇するなど業績は改善していると指摘。こうした利益の配分先を調べると、特に大企業で株主などへの配当金が大きく増加、役員賞与も増えているとした。
 一方、企業が生みだした付加価値を人件費に回した割合を示す「労働分配率」は、01年に74.5%に達して以降は低下傾向が続いており、04年は71.4%。過去の景気回復期と比べて、賃金の伸びは抑えられているとした。この結果、国際的にみて高かった日本の労働分配率は、英国や米国など主要国に近いレベルまでに低下。円安の影響もあるが、製造業の時間あたり賃金も主要国より低い水準となった。
 雇用形態の違いによる賃金格差も依然大きい。06年の年収をみると、アルバイトは50万?149万円が過半数、派遣社員や契約社員・嘱託も200万?299万円が3割程度を占め、正社員と比べ低水準となった。
 また、人口減少時代に生産性を向上させ就業機会を増やすためには、仕事と生活を調和させる「ワークライフバランス」が重要と提言。長時間労働など働き過ぎを解消し、育児支援など女性が働きやすい環境づくりが課題とした。

【関連】規制緩和の影響触れず 労働経済白書 政策の功罪検証必要
[東京新聞 2007年8月3日 夕刊]

<解説> 長時間労働や賃金抑制、不安定な雇用?。景気回復の恩恵を感じられない労働者は多い。2007年版労働経済白書は、原因を企業が利益を賃金などに十分回していないためと分析した。しかし、政府が進めた雇用分野の規制緩和の影響に十分に触れていない。政策の検証が不十分なままでは説得力に乏しい。
 1999年と2004年の改正労働者派遣法施行で、人材派遣の対象業務が拡大し非正規労働者の増加につながった。企業は、低コストで人員調整しやすい新たな労働力の登場を歓迎。非正規労働者は全体の3分の1を占めるまでになった。
 白書は、非正規労働者の賃金が正規労働者に比べ低い実態を認める。景気回復にもかかわらず、賃金が伸びない背景に非正規労働者の増加があるのは確実。企業に賃上げを求めるだけでなく、自ら行った規制緩和の功罪を検証する必要がある。
 白書は、減少する労働力を有効に活用し、働く意欲を引き出すために「ワークライフバランス」が重要と説く。しかし、雇用形態や地域による格差を放置したままでは、実現は困難だ。過去の政策を踏まえ、今後は何が必要なのか。政府の姿勢が問われている。(新井秀信)

『労働経済白書』を読むと、現状について、「はじめに」で次のように書かれています。

雇用情勢は厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。完全失業率はなお高水準にあるものの、ゆるやかな低下傾向にあり、有効求人倍率は改善しているが、正社員の有効求人倍率は低い水準にとどまっている。また、新規学卒者の就職率の改善等に伴って、フリーターなどの若年の不安定就業者も減少している。しかし、年長フリーターには滞留傾向がみられ、年長フリーターの正規雇用化に向けた取組みの推進が求められる。また、雇用情勢の改善の動きが弱い地域もあり、雇用創出に向けた地域の主体的な活動を支援していくことも課題である。一方、賃金については、小規模事業所の不振や、非正規雇用割合の上昇などによって、所定内給与の伸びが抑制されている。労働時間については、所定外労働時間の増加が続き、労働時間の短縮の動きは滞っている。さらに、勤労者家計については、消費は全体として力強さを欠き、教育、住居などの支出項目で所得階層別の格差も拡大している。

これ自体は正しい指摘だし、「がんばれば報われる」などという無内容なスローガンでごまかせない雇用と所得の劣悪化、格差と貧困の拡大を政府自身も認めたものといえます。

しかし、なぜこんなことになったのか、その分析がありません。原因に触れないままでは、問題が解決できるはずもないことは明らかです。そこが一番の問題なのです。

ちなみに、↓これは、『労働経済白書』にのっているグラフ。縦軸が現金給与総額で、横軸が企業の経常利益、それを景気の谷を100として、景気回復過程で企業の利益と労働者の給与がどんなふうに変化したかをグラフ化したもの。

第1?(2)?9図 景気回復局面における経常利益(人員1人あたり)と賃金(1人あたり現金給与総額)の推移の比較

これを見ると、今回の「景気回復」局面では、次の点が特徴的。

  1. まったく現金給与総額が増えておらず、むしろ景気回復の過程で引き下がっていること、そして景気が回復したと言われる現在になっても、給与水準は景気の谷よりもマイナスのままであること。
  2. その一方で、企業の経常益は約1.9倍と非常に大きく伸びていること。

つまり、企業はめちゃくちゃ儲かっているにもかかわらず、給与水準はいっこうに回復しない、もっと言えば、給与水準を引き下げることで企業は過去最高のもうけを上げている、ということが分かります。

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