ウォルフレン『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』

カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり』(徳間書店)

『日本/権力構造の謎』で有名になったオランダ出身のジャーナリストカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の最新著。目次を眺めると、ホントにストレートに「アメリカの世界支配は終わった」という主張がずらりと並んでいます。

第1章 アメリカの覇権は終わった
第2章 テロリズムは脅威ではない
第3章 グローバリゼーションは崩壊した
第4章 貧困撲滅という虚構
第5章 地殻変動を起こす地球経済
第6章 新しい現実の中での欧州連合
第7章 中国は信頼できるか?
第8章 虚構にとって代わる真実

しかし一番面白いのは、そうした話の頭で、ウォルフレン氏が「再び支持され、復権しつつあるマルキシズム」を強調していることです。曰く――

「カール・マルクスに対する支持がふたたび広がっている」
「いまマルクスは再び、多くの人々が直面する現実を理解するための指針となっている」
「彼の思想は『資本論』にとどまらぬおびただしい著作に展開されており、その視点は世界を認識する上でいまなお優れている」
「マルクスは、その優れた知性と、社会の変化と変化しない部分の力学を見通す能力によって、いまなお、社会経済構造にひそむ陰謀を見極める際には、無限の価値ある導き手であり続ける。彼の盲点を非難するばかりで、その洞察力からの恩恵を拒絶することは、莫大な知的豊かさをみすみす失うに等しい行為だ」
「かつてマルクスが述べた状況が現代でも相変わらず存在していることがよくわかる。そしてグローバリゼーションがさらにその状況を悪化させたことは明らかである」

このようにマルクスを引き合いに出すことによって、ウォルフレン氏は、「テロとのたたかい」というアメリカの主張こそ「物語」であり、それを支えるサミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』とフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』こそが「物語」「大きな幻想」だと批判しています。

各章でのアメリカの軍事戦略やグローバリゼーションにたいする批判は、ジャーナリスティックな部分もありますが、なかなか鋭いものがあります。第5章「地殻変動を起こす地球経済」では、ベネズエラを初めとするラテンアメリカの動きに注目して、そこから世界的な変化を読み取っています。

【書誌情報】
著者:カレル・ヴァン・ウォルフレン/訳者:井上実/書名:日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり/出版社:徳間書店/刊行年:2007年7月/定価:1800円+税/ISBN978-4-19-862362-3

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  1. クリップボードから来たのですが、、、

    タイトルが、“日本人しか知らないアメリの「世界支配」”になっています^_^;

    私は、てっきり、フランスの恋愛映画『アメリ』に隠れバージョンがあり、そのことについて書かれているのかと思って見に来たのですが(ファンなので)、「アメリカ」の事だったのですね(^_^)

    『アメリ』ってテンパな女の子で、見方によっては、周囲を自分の世界に引きずり込むようなジコチューな部分があり、それを「世界支配」と言えばそうともとれるし、日本人だけがあれをお洒落な恋愛映画と思っているようだが、実は……というようなオチを期待していました。

    でも、マルクスだったのですね。

    私もマルクスにはほんのちょっぴり恋した時期もありましたので(今でも概念的なものは好きなので)、良い意味で見直されればいいなぁと思います。

    まったく関係のない、アホーなコメントですみません。

    でも、私の中では、めちゃくちゃウケてしまったので、思わずカキコしてしまいました。

    タイトル、直しておいて下さいね。。

  2. 優月まりさん、初めまして。

    しょうもないタイプミスで、ばかウケさせてしまって申し訳ありませんでした。m(_’_)m

    映画「アメリ」をみて、「アメリ」と単語登録したばっかりに、これまで何度同じようなタイプミス、誤変換をしでかしたことか…。IMEの方はしっかり学習するのに、人間の方はさっぱり学習しません。

    と言うことで、さっそくタイトルを訂正させていただきました。ありがとうございます。m(_’_)m

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