アメリカ、緊急利下げ

アメリカ連邦準備会(FRB)が、急遽、公定歩合を0.5%引き下げ。

米株式相場は7営業日ぶりに大幅反発=17日、NY証券取引所〔AP〕
写真:米株式相場は7営業日ぶりに大幅反発=17日、NY証券取引所〔AP〕

それだけ株安が深刻だと言うこと。当面は、NY株は大幅に反発したけれど、はたして、これからどうなりますやら…。

米FRB、公定歩合を緊急引き下げ・0.5%下げ5.75%に(NIKKEI NET)
NYダウ、急反発・上げ幅一時300ドル超す(NIKKEI NET)
東証大引け・大幅に3日続落――ITバブル崩壊時以来の下げ幅(NIKKEI NET)

米FRB、公定歩合を緊急引き下げ・0.5%下げ5.75%に
[NIKKEI NET 2007/08/17 22:22]

 【ワシントン=小竹洋之】米連邦準備理事会(FRB)は17日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、FRBが民間金融機関に資金を貸し出す際の金利である公定歩合を緊急に0.5%引き下げ、年5.75%とすることを全会一致で決定した。9月18日に予定されている次回FOMCを待たずに公定歩合を引き下げ、サブプライム問題に端を発した金融・株式市場の動揺や信用収縮に歯止めをかける強い意志を示した。
 公定歩合の引き下げは即日実施した。短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標は年5.25%に据え置いた。
 FOMC終了後に発表した声明は、9日以降の金融・株式市場の動揺によって「景気下振れのリスクがかなり高まった」と指摘。「必要に応じて行動する用意がある」と述べ、今後の経済動向次第ではFF金利も引き下げる構えを見せた。

NYダウ、急反発・上げ幅一時300ドル超す
[NIKKEI NET 2007/08/17 22:51]

 【ニューヨーク=発田真人】17日午前のニューヨーク株式相場は7日ぶりに急反発。ダウ工業株30種平均は寄付直後から急伸し、上げ幅は一時300ドルを超えた。朝方、米連邦準備理事会(FRB)が公定歩合の引き下げを発表したのを受け、信用収縮への懸念や米景気への先行き不安が薄れ、ほぼ全面高となった。ダウ平均は午前9時40分(日本時間午後10時40分)現在、前日比315ドル32セント高の1万3161ドル10セント。

東証大引け・大幅に3日続落――ITバブル崩壊時以来の下げ幅
[NIKKEI NET 2007/08/17 15:35]

 17日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に3日続落。大引けは前日比874円81銭(5.42%)安の1万5273円68銭だった。3日連続で年初来安値を更新。下げ幅はIT(情報技術)バブル崩壊時の2000年4月17日以来の大きな下げとなった。東証一部の時価総額は約9カ月ぶりに500兆円を割り込んだ。外国為替市場で円相場が1ドル=112円台半ばまで上昇し、輸出関連株が大きく下げたほか、企業業績の上方修正期待がはげ落ちたとの見方から幅広い銘柄が売られた。東証株価指数(TOPIX)も大幅に続落し、06年7月19日以来、約1年1カ月ぶりに1500を割り込んだ。
 朝方から100円を超えて下げ、その後も下げ幅は拡大した。市場では海外のヘッジファンドが解約の申し込みを受けて換金売りを進めた、との見方が出ていたほか、株式相場が大きく急落したことにより信用取引の追加証拠金(追い証)が必要になった個人投資家の売りも誘った。また商品市況の下落を嫌気し、これまで相場をけん引した商社株や海運株も大きく下げた。
 業種別TOPIX(全33業種)はパルプ・紙を除き全ての業種が下げた。特に海運業や鉄鋼、鉱業の下げが目立った。
 東証1部の売買代金は概算で4兆2391億円。売買高は概算で29億4247万株。値下がり銘柄数は1620で、全体の9割を超えた。値上がりは87、変わらずは17だった。(以下略)〔NQN〕

他方で、↓こういうニュースが流れていたりする。アメリカのサブプライムローンの不安は、まだまだ続きそうです。

米住宅ローン最大手、1兆3000億円の信用枠全額を使い資金調達へ(AFPBB News)

米住宅ローン最大手、1兆3000億円の信用枠全額を使い資金調達へ
[2007年08月17日 21:33 発信地:ニューヨーク/米国]

【8月17日 AFP】米国の住宅ローン最大手、カントリーワイド・ファイナンシャル(Countrywide Financial Corporation)は16日、世界の大手銀行40社から供与されている115億ドル(約1兆3000億円)の信用枠全額を使い、資金調達することを発表した。
 発表を受け、米信用市場の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s Investors Service)は直ちに同社を格下げ。債務格付けを投資適格級からジャンク(投機的)等級の1ノッチ上、Baa3に引き下げた。その他の格付けについても、今後さらに引き下げる可能性があるとしている。
 サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付き問題で揺れるNYダウは16日、国内住宅ローン最大手の資金調達発表を受け急落。カントリーワイドの株価も10.99%安の18.95ドルとなった。15日のメリル・リンチ(Merrill Lynch)による投資判断の引き下げ受けた12.96%安から続落している。
 アナリストらは、カントリーワイドの資金調達発表により、「信用収縮により流動性の低下が一層進む」との懸念がさらに高まるとの見方をしている。 ムーディーズは、カントリーワイドの信用枠全額利用の理由として、「流動性が低下している証拠」としている。

ちなみに、今回の事態全体については、とりあえずこちらを参照。

サブプライム危機 世界同時株安 カネ余り、忘れたリスク(FujiSankei Business i.)

サブプライム危機 世界同時株安 カネ余り、忘れたリスク
[FujiSankei Business i. 2007/8/11]

■一転して信用収縮懸念

 今回の世界同時株安は、資金が必要なところに流れなくなる「信用収縮」への懸念が世界中に一気に広がったことが原因だ。世界的なカネ余りを背景にリスクを無視してジャブジャブと株式市場に流れ込んでいた資金が、サブプライム問題で欧米金融機関に多額の損失が発生したのを契機に、忘れていたリスクを思いだし、あわてて安全な国債へと逃げ込み、時計の針が逆回転を始めた。
 リスクに過剰反応し銀行が資金を回収したり、市場を通じた資金供給が縮小すれば、実体経済にも深刻な影響が及ぶ。世界的な資金の流れの変調を前に、日米欧の金融当局もついに動かざるを得なくなった。
 資金供給で日米欧が協調するのは米中枢同時テロが発生した2001年9月以来だ。もっとも、各国の金融当局は、これまでサブプライム問題を突き放してきた。
 「現段階では健全な調整といえる」(欧州中欧銀行のトリシェ総裁)
 「影響は一部にとどまっており、市場全体に大きな影響は及ぼしていない」(日銀の福井俊彦総裁)
 金融当局者にとっては、リスクを無視した資金による株高がバブル化することへの警戒感が強く、サブプライム問題による株安をむしろ、「市場規律が機能した健全な市場に戻る絶好の好機」と位置づけていた節さえうかがえる。
 しかし、9日には米投資銀行大手ゴールドマン・サックス傘下のヘッジファンド2社が運用に失敗し、多額の損失が発生していることが判明。仏BNPパリバ銀行傘下のファンドも営業停止に追い込まれ、欧州に飛び火した。
 日本でも、あおぞら銀行が10日に、サブプライム関連で07年4?6月期に44億8000万円の評価損が発生したと発表。すでに野村ホールディングスが同1?6月期に約720億円、新生銀行も同期に34億円の損失が発生するなど、影響が徐々に広がり始めている。
 山本有二金融担当相は10日の閣議後会見で、「断定は避けるが、現段階で国内金融機関に深刻な影響が懸念される状況にはない」と述べ、信用不安の沈静化に躍起となっている。
 サブライムローン債権は小口に証券化され、広く金融商品として販売されていることが、損失拡大の原因となっている。もっとも、一部のヘッジファンドを除けば損失額は小規模で、「金融システムが揺らぐような事態にはならない」(日銀筋)との見方が多い。
 それでも、これまで野放図に拡張してきた資金が過剰反応を示し、必要以上に萎縮(いしゅく)する懸念はぬぐえない。日米欧当局が重い腰を上げたのもこのためだ。
 第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「これまでの対応とは、手のひらを返したような印象がある。いま動けば、不安をあおる懸念もあるが、あとあと火がついたときに後手に回るよりはマシという判断があったのではないか。事実認識の重大さが透けて見える」と指摘する。
 資金の流れが変わり、実体面では好調を持続する世界経済にも影響が波及するのか。サブプライム問題の深刻度は一段と増している。(赤堀正卓)

世界連鎖株安が発する教訓 (NBonline)

世界連鎖株安が発する教訓 米住宅ローン証券化が助長した無責任体質
[NBonline 2007年8月7日 火曜日 ニューヨーク支局 山川龍雄・木瀬武]

 世界の金融・資本市場が波乱含みの展開をしている。7月末の米株式相場の連日の下落で、世界連鎖株安への不安が高まった。日本は参院選の影響もあり、不透明感が一層広がっている。
 米株安は、「サブプライム」と呼ばれる信用力の低い人を対象にした高金利型住宅ローンの焦げつき問題に端を発している。ここへきて世界中で住宅がらみの損失の話題が続いたからだ。
 まず、米国内で証券大手ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンド2社が巨額損失を出した。ベアー・スターンズがファンドに実施する融資額は最大で32億ドル(約3800億円)。これは1998年に米ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻に際して米金融界が行った融資額約36億ドルに次ぐ規模だ。
 豪州や欧州のファンドでも損失が相次いで発覚。「世界のどこにリスクが潜んでいるか見えにくい。サブプライム問題は、不透明感を空間的に広めている」(三菱東京UFJ銀行の鈴木敏之シニアエコノミスト)。
 今回の連鎖株安で浮き彫りになったのは、米住宅ブームの背後で金融システムの規律が緩んでいたことだ。サブプライム問題では、米住宅ローンの借り手の中に明らかに返済能力に問題がある人がいたにもかかわらず、それを排除する力が働かなかった。世界的な過剰流動性で行き場を失ったマネーが米住宅へ注がれる過程で、モラルが緩んでいたのである。

ブローカー任せの融資に甘さ

 先頃、それを象徴する金融機関の動きがあった。連鎖株安が始まった7月26日、米銀大手のウェルズ・ファーゴが住宅ローンブローカーを介するサブプライムの業務から実質的に手を引く方針を打ち出した。ウェルズ・ファーゴはトリプルAの格付けを持ち、住宅融資でも比較的厳格な審査を貫く銀行として知られる。その同行ですら、ブローカーに依存した住宅融資を続けていたことが明るみに出た。
 米国には住宅ローンの借り入れノウハウを提供し、本人に代わって金融機関と交渉するブローカーが存在する。報酬は成約ごとに金融機関から支払われるが、どんなにリスクの高い住宅ローンを組んでも、原則として焦げつきに対する責任は負わない。その結果、信用度の低い層にも無理な住宅ローンを勧める行為が横行していた。
 ブローカーの存在が第1のモラルハザード(倫理の欠如)だとすれば、第2のモラルハザードは貸し手である金融機関の意識の中にあったと言える。
 米住宅ブームを後押ししてきたのは、銀行がローン債権を証券化して投資家に売却する仕組みだ。MBS(不動産ローン担保証券)は、米国では国債と並ぶ大きな市場。サブプライムを含む各種債務で構成されたCDO(債務担保証券)は高利回りで信用格付けも高く、ヘッジファンドや保険会社に人気がある。市場規模はサブプライムが8000億ドル余り。MBSは6兆ドル、CDOは1兆ドルと見られている。
 過剰流動性が続く世界の金融市場では、証券化の買い手が容易につく。その結果、「信用度の低い層に融資してもリスクを自ら負う必要がない」という慢心が金融機関に芽生え、過度な住宅ローンの融資合戦につながった。

格付け機関への批判高まる

 さらに、ここへきてサブプライムの責任の一端を問われ始めたのが格付け機関だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月から、サブプライム絡みの証券の大量格下げに走っているが、市場関係者からは「対応が遅過ぎる」との批判が出ている。「構造の複雑な商品が相次いで登場し、格付け機関は参考にするデータも人材も不足する中で、審査しているのが実態」と三井住友銀行の森谷亨ニューヨーク駐在エコノミストは指摘する。
 証券化は本来、リスクを小口・加工することで管理を容易にし、世界中の投資家がシェアできるところに利点がある。証券化の普及が金融市場のリスク吸収力を高め、世界同時株高の理論的裏づけにもなっていた。しかし、現実にはリスクを広く薄く分配する仕組みが、かえって関係者の当事者意識を希薄にしてしまい、モラルハザードを助長していた点は注視すべきだ。そこにサブプライム問題の本質がある。
 この不透明感は当面、解消しそうにない。米国でサブプライム向けの融資が最も盛んに行われたのは2005年から2006年にかけて。通常、その融資内容は契約から2?3年後に大幅な金利改定を迎えるものが多い。米抵当銀行協会(MBA)によると、サブプライムの延滞率は13.77%と4年半ぶりの高水準となったが、2008年までは延滞率が改善するとは考えにくい。

サブプライムの次は「オルトA」

 最近、関係者の間では、「サブプライムの次は、『オルトA(Alt-A)ローン』が問題になる」とささやかれている。「オルトA」とは、住宅ローンのうち、信用度がサブプライム層より高く、プライム層より劣る層に貸し付けられたものを指す。このオルトAの延滞率が現在、じわじわと上昇している。
 市場関係者は、サブプライム問題がほかのリスク債権市場に波及することも懸念している。「サブプライムで損が出た分をほかの含み益を使って埋め合わせようとする投資家が増えることも予想される」(みずほ総合研究所の矢野和彦ニューヨーク事務所長)からだ。
 米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長は先頃、サブプライム関連の損失が1000億ドルに達する可能性を示した。専門家は、「大手金融機関を揺るがす規模ではない」と見ているが、これはあくまでもサブプライムに限定した数字だ。信用リスクへの懸念がサブプライムの枠を超えて広がれば、その数字は意味を持たなくなる。

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実体経済への影響懸念も

 米国のサブプライムローンの焦げつきを巡る問題は、日米の株価下落や、為替市場でのドル下落圧力の原因とされる。だが、市場関係者が最も懸念しているのはサブプライムの問題そのものよりも、その余波が実体経済に影を落とす事態だ。
 国内の地方銀行向けに利回りの高い金融商品を販売する業者の営業担当者は「サブプライムがらみの金融商品の運用成績が低下しても、投資全体のごく一部なので、それほど影響はない。ただ、米国の景気減速が起きれば厳しい事態になる」と指摘する。
 サブプライムが危ないという認識が広がって、こうした金融商品の買い手がいなくなると、価格は実態以上に暴落しやすい。
 2005年8月からサブプライム関連商品を手がけてきた野村ホールディングスは、米国で住宅ローン会社からローン債権を買い取って投資商品に組み替えて販売してきた。2007年第1四半期決算(4?6月期)の税引き後利益が前年同期比3.8倍となった一方、今年1?6月のサブプライムがらみで726億円の損失を発表した。「野村は損失を早く確定させただけ。同様の住宅債権を持っている日本の大手金融機関はほかにもある」(大手都市銀行のニューヨーク駐在員)との声もある。
 とりわけヘッジファンドは、少ない元手で高いリターンを上げるため、調達資金をまず債券に投資し、その債券を担保に資金を借りて別の投資に充てていたりする。投資対象に組み入れたサブプライム関連商品が暴落すると、資金手当てのため売りが膨らみやすい。それが金融市場の信用不安に火をつけるような事態になれば、日本経済への影響も無視できなくなる。
 実際に米国では、リスクの高い投資への警戒感が高まり、市場への資金流入が停滞。米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントはダイムラークライスラーの北米クライスラー部門を買収する資金の調達を延期せざるを得なくなった。
 市場関係者の間には「従来のファンドへの資金流入が異常で、健全化の流れにある」という見方もある。とはいえサブプライムの直接的な影響は限定的であっても、資金の流れの変調が広がれば、実体経済に悪影響を及ぼす恐れは否定できない。こうした懸念を払拭するには、まだしばらく時間がかかると見られている。(大豆生田 崇志)

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深刻化の様相、サブプライム問題:Money Globe – from NY:矢野 和彦(NBonline)

深刻化の様相、サブプライム問題 ローンの質的劣化は当面続く可能性が大
[NBonline 2007年7月27日 金曜日 矢野 和彦]

 米国のサブプライム住宅ローン(信用力の低い顧客層向けの住宅ローン)問題に対する懸念が急激に再燃してきた。6月下旬には、サブプライム住宅ローンを担保とする証券(RMBS)を組み入れた債務担保証券(CDO)に投資を行ってきた一部ヘッジファンドの大規模な損失が明らかになった。さらに7月に入ると、格付け機関がそれらRMBSやCDOの格付け見直しや引き下げに踏み切ったことを受けて、市場に動揺が広がった。
 今回は、今後この問題が信用市場全般の収縮(クレジットクランチ)へと発展するリスクをどう読むべきか考えてみたい。

問題は2つ、手元流動性の悪化とローンの質劣化

 問題の所在は大きく2つに分けられる。
 第1は、過度なレバレッジ(少ない資金を元に借り入れを行い、借り入れを使って投資した商品を担保にしてさらに借り入れと投資を繰り返し、投資額を増やしていく手法)をかけて、サブプライム関連の証券化商品に投資していた一部のファンドが、サブプライムローン市場の悪化を受けて直面した、手元流動性の枯渇と損失の表面化という問題である。
 すなわち、これと同様の、あるいはさらに大規模なファンドの破綻が今後相次いで表面化し、そのショックが市場全体の信用収縮を誘発するリスクは大きいのかどうかという点だ。これは、1998年にヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻によって生じた信用不安と類似した性格のものだ。
 第2は、より本質的な、サブプライム住宅ローン自体の質的劣化の問題である。すなわち、住宅市場の調整やサブプライム住宅ローンのデフォルト(債務不履行)がさらに深刻化することで、関連する証券化商品の格下げが相次ぎ、それが投資家のリスク回避姿勢の強まりと他の債券市場などを含めた広範囲の信用収縮へと広がっていくリスクはあるのか、という点だ。
 この点は、LTCM問題よりも、むしろ1990年代初頭の不動産不況を背景に生じた、貯蓄組合(S&L)をはじめとする金融機関の連鎖破綻や信用収縮と同様の性格を持っている。

問題を抱えたヘッジファンドは数多くはない?

 1点目のリスクは、ヘッジファンドなどの投資実態が分からないだけに読みにくいが、市場では、今回損失が明らかになったベアスターンズ傘下のヘッジファンドほどの規模でレバレッジをかけ、サブプライム関連のリスクを抱え込んでいるファンドは少ないとの見方が多い。実際、もし破綻に瀕した大規模なファンドが数多くあるならば、既に現時点で明らかになっているだろう。
 また、同ヘッジファンドにしても、運用資産規模はLTCMの6分の1程度だったとされる。ロシアのデフォルトによって引き起こされた1998年のLTCMショックは、前年のアジア通貨危機など、グローバル市場全体が流動性不安を抱える中で生じたものだった。しかし現在はグローバル経済の堅調さと金余りが続いており、市場環境は当時とは大きく異なる。今後、今回のようなファンドの破綻が再発することは十分にあり得るが、それが散発的なものにとどまればショックの吸収は可能だろう。

質的劣化は当面続く可能性が大

 問題は2点目のリスクをどう見るかである。サブプライム住宅ローンの質的な劣化が、今後当面続くことはほぼ間違いない。というのも、2004年以降に実行されたサブプライム住宅ローンで、今後、当初の返済軽減期間が終了し、負担急増に直面するものが、なお相当に残っていると見られるためだ。2005年後半から2006年にかけて実行されたサブプライムローンの多くは、返済リセット時期がこれから到来することになる。
 これらのローンの質的劣化がさらに進むことで、そうしたローンを担保に含む証券化商品の格下げが、最優良のトリプルエー(AAA)格の部分にまで及ぶことになれば、事態は極めて深刻なことになり得る。AAA格に投資対象を限定している大部分の機関投資家が、格下げを受けて売却を余儀なくされるとともに、それによる損失をカバーするために社債など他の債券の売却に踏み切ることになりかねないためだ。それは広範囲の債券市場における価格下落のスパイラルや、信用市場全般の収縮をもたらすことにつながり得る。

最大の焦点はカリフォルニアの住宅市場

 今後、サブプライム住宅ローンの質的劣化はどこまで進むのか。そして、最上級のAAA格を与えられているサブプライム関連の証券化商品が格下げに見舞われるリスクはどの程度大きいのか。この点について、今後注視しなければならないのは、カリフォルニア州の住宅市場動向ではないかと思われる。
 というのも、サブプライム住宅ローン全体の中で圧倒的なシェアを占めているのがカリフォルニア州で実行されたものだからだ。2005年に実行されたサブプライム住宅ローンのうち、実に3分の1は、カリフォルニア州によって占められていると見られる(下の図参照)。
 今後、カリフォルニア州の住宅市場の調整が深刻化し、住宅価格が急落した場合、多くのサブプライム住宅ローンで担保割れが生じ、借り換えが困難になるだろう。十分な担保価値が残っている場合と、担保割れに陥っている場合とでは、借り換えに対する金融機関の姿勢も大きく異なってくるはずだからだ。このため返済リセット時期の到来とともにデフォルトや担保物件の差し押さえが急増することになる。それがやがてはAAA格の証券の格付けを脅かすことにもつながり得る。

カリフォルニアの住宅価格下落スピードを注視する必要

 格付け機関のスタンダード・アンド・プア?ズ(S&P)は、7月10日の投資家向けのカンファレンスコールで、このリスクに関して言及した。S&Pは、住宅ローンの証券化商品の格付けを行う際、各種のリスク要因を考慮して、証券の元本支払いに影響が生じるかどうかのシミュレーションを行う、ストレステストを実施している。
 S&Pは、「最悪ケースとして、カリフォルニアなど東西両岸州の住宅価格が30%下落し、その他内陸州の価格が10%下落した場合を想定したストレステストの結果、AAA格の証券には深刻な影響は生じないと判断された」としている。これは、かなり心強い安心材料ではある。
 もっとも、今後カリフォルニアの住宅価格が10%、20%と下落し、返済リセットに伴うサブプライムローンの返済遅延率の上昇が続けば、AAA格の格下げリスクもまた徐々に高まってくることになるだけに、楽観はできない。
 実際、昨年9月22日付の本欄で指摘したように、個人的には、カリフォルニア州ではピーク比で約3割弱の価格下落リスクを抱えており、全米レベルでも1割弱の価格下落リスクがあると考えている。これはS&Pが最悪ケースとして想定した規模に近い。既にカリフォルニア州の住宅価格は下落に転じているが、直近2007年第1四半期時点でも25%近く割高となっており、今後の調整余地はなお大きい(下の図参照)。
 カリフォルニアの住宅価格の調整が、これから数年をかけてゆっくりと進むのか、あるいは返済リセットの問題が集中する今後1年から1年半の間に、予想以上に早いスピードで価格下落が進むことになるのかによって、展開は大きく異なってくると思われる。
 価格調整が緩やかに進み、返済リセットの問題を何とか乗り切ることができれば、2008年後半には、問題はおおむね収束に向かうことになるだろう。しかし今後価格の急落が進む場合は、返済リセット問題とともに予想以上に事態が悪化する可能性もある。個人的には前者の展開を予想してはいるが、現段階ではあまり楽観的な見方に固執するのは危険だと感じている。

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