伊東光晴氏、関志雄『中国を動かす経済学者たち』を評す

日曜日(9/2)の「毎日新聞」の書評欄で、伊東光晴氏が関志雄『中国を動かす経済学者たち』の書評を書かれていましたが、なかなか的確な書評だと思いました。

で、この書評で、伊東光晴氏は、「理解できない」「わからない」を連発されています。たとえば

 理解できないのは、シカゴ大学の企業論のコースの影響が大きいことである。それが企業の私有化論を基礎づけ、ハイエクの考え――一切の政府の経済への介入は悪――と結び、体制批判論となっている。著者はこうしたグループを新制度経済学派と名づけているが、この用法もわからない。

さらに伊東氏は、中国の「改革」について「これに対して、新左派と言われる人は、不平等の拡大と、民営化された企業の経営者によるMBO――経営者が資金を借りて自己企業を買収――によって、国民の財産が流出しているなど、改革のひずみをついている。共産党員の資本化〔ママ〕である」と指摘したうえで、次のように疑問を呈されています。

対する新自由主義者はそれらは改革の不十分さゆえだとする。なぜかわからない。

さらに、

ソビエトに留学し、その計画経済の誤りに気づき、改革を進めようととした劉国光(リュウコクコウ)が、改革の現実に危機感を持つのもよくわかる。ただし、本書のマルクス理解はやや未熟である。ハイエク的イデオロギーの中心が北京天則経済研究所であること――この民間の研究所は何が支えているのか、本書からはわからない。

そこから、本書で描かれた中国の経済学の動向について、次のように述べられています。

 彼らを含め改革を進める経済学者の理想とする経済がアメリカであり、西欧福祉社会が視野にないことは歪みの最たるものである。それが医療、教育、年金など〔中国に――引用者〕山積みする福祉政策の設計と、徴税能力の欠如の現実に目を向けさせていない。アメリカの経済学から何を学んだのか。大部分の人が資源配分論と自由主義のイデオロギーだけであるのには、失望せざるを得ない。

これが、伊東氏の結論。これは、関志雄氏の本書にたいする結論であり、また中国経済学の動向に対する批判でもありますが、なかなか的確だと思います。

しかし、そんななかで、伊東氏は、「現実の政治に影響を与えている経済学者は本書から、とくに3人が浮かび上がってくる」として、呉敬璉(ゴケイレン)、林毅夫(リンイーフ)、樊綱(ファンガン)の名前をあげ、次のように書いています。

 かれらの政策提言は常識的な発展戦略である。まず比較優位の産業を市場化、私有化で発展させ、ついで後発性の利益を発揮してゆくというものである。前者は労働集約的な産業、後者は先端技術の導入による工業化である。日本の歩んだ道でもある。資源配分は市場メカニズムで、政府による調整は財政政策、金融政策、所得再配分政策というのが呉敬璉の協調改革論である。これは理解できる。

で、この3人のことが書かれているのが本書の第5章、第8章、第10章の3つの章。なるほど、ここをカナメにして読めばいいわけね。かれらの発展戦略が「常識的な」ものだというのも大事なポイントのようです。伊東光晴先生、的確な書評ありがとうございました。m(_’_)m

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