福田首相が所信表明演説

福田首相が所信表明演説。新聞各紙の解説・論評を見ると、共通しているのは、「野党との『話し合い』路線を鮮明にしたのが特徴」(日経)という指摘。同時に、消費税増税を含む税制改革や、高齢者医療費負担や障害者自立支援法の凍結問題について「具体論は依然見えない」(東京)、「あいまいなまま」(朝日)と指摘されている。

福田首相、所信表明「野党と協調」前面に…格差解消へ意欲(読売新聞)
福田首相、初の所信表明演説 話し合い路線重視(中日新聞)
福田首相所信表明、野党へ誠意強調 消費増税あいまい(朝日新聞)

小泉改革を継承するのかどうかについては、「格差是正に重点」(毎日)、「格差解消へ意欲」(読売)などの見出しが躍るが、実態は、読売がいうように「小泉、安倍両政権が掲げた構造改革路線を維持する基本姿勢を示し」たというのが正確なところ。財界や「改革」推進勢力からすれば、「小泉改革を引き継ぐのか、そのひずみの是正に努めるのか。最も基本的な部分でどこに軸足を置くのか、あいまいなままだ」(日経)というのが正直なところ。

毎日は、「演説からは『美しい国』『戦後レジームからの脱却』をうたった安倍氏の改憲路線は完全に姿を消した」と指摘している。

朝日は「『自立と共生』の考え方をちりばめ、『福田カラー』もにじませた」と論評するが、「福田カラー見えず」(読売)、あるいは、日経の「あえて官僚の作文の寄せ集めのような構成にすることで、実務型を標榜する福田内閣の姿勢を示す狙いか、と勘ぐりたくなるほど無味乾燥な表現が多かった」という皮肉な評も。

福田首相、所信表明「野党と協調」前面に…格差解消へ意欲
[2007年10月1日14時4分 読売新聞]

 福田首相は1日午後の衆院本会議で、就任後初めての所信表明演説を行った。
 参院で与野党の議席数が逆転する中、野党に歩み寄る姿勢を前面に出したのが最大の特徴だ。また、「構造改革の方向性は変えず、生じた問題には処方せんを講じる」とし、改革を継続する一方、都市と地方の格差などの問題に具体的な解決策を示す考えを表明した。日朝関係については、拉致被害者の帰国を目指し、国交正常化の意義についても言及した。
 9月10日に所信表明演説を行った安倍前首相が2日後に辞任表明したことによって休会状態となっていた臨時国会は、後任の福田首相が改めて所信を表明する異常事態の中、約3週間ぶりに再開した。
 首相はこうした状況を踏まえ、演説の冒頭で、「自民党総裁選の実施に伴い、国会運営にご迷惑をおかけしたことをおわびし、今後、誠実な国会対応に努める」と述べ、政治空白について謝罪した。続けて、「野党と重要な政策課題について誠意をもって話し合いながら国政を進めたい」と野党に協議を呼びかけた。
 個別の政策では最初に政治とカネの問題に言及。政治資金規正法改正に関し、全支出に領収書添付を義務づけ、第三者機関だけに公開する与党案を軸に野党と議論する考えを示した。
 「改革と安定した経済成長は車の両輪だ」と構造改革の継続を訴える一方、格差の存在も認め、「地方再生への構造改革を進める」と地方対策などに力を入れる姿勢を表明した。
 社会保障政策では、安定的な財源確保に向け、「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組む」とする方針を掲げたが、実現の時期は明示しなかった。また、年金記録漏れ問題の解決を約束すると同時に、「高齢者医療制度のあり方の検討を含め、きめ細かな対応に努める」とし、高齢者医療費の窓口負担の引き上げ凍結などを進める方針を明確にした。
 内政面では、「犠牲者ゼロ」を目指した災害対策の充実や「200年住宅」など環境に配慮した持続可能社会への転換も打ち出した。
 外交面では、海上自衛隊のインド洋での支援活動の継続と北朝鮮問題の解決を「喫緊の課題」と位置づけた。海自活動継続については、今国会への新法案提出などの具体的対応には触れなかった。
 日朝関係では、安倍政権が「拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ない」としていたのに対し、今回は「すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、『不幸な過去』を清算して国交正常化を図るべく、最大限努力する」とし、正常化の意義にも言及した。
 また、「日米同盟の強化とアジア外交の推進の共鳴」としてアジア外交に力を入れる姿勢を示し、特に中国との戦略的互恵関係や韓国との未来志向の関係の強化を表明した。

福田首相、初の所信表明演説 話し合い路線重視
[中日新聞 2007年10月1日 夕刊]

 福田康夫首相は一日午後、衆参両院の本会議で首相就任後初の所信表明演説を行った。演説で首相は、国会運営に関し、重要政策については野党との話し合い路線を前面に打ち出し、政治、行政に対する信頼回復を「喫緊の課題」と位置付けた。安倍晋三前首相の突然の辞任表明後、国会論戦が約二十日間もストップしたことについては「議員、国民におわび申し上げる」と陳謝。これにより、ねじれ国会の論戦が再開した。
 首相は、参院で野党が過半数を占める現状について「衆院と参院で議決が異なる場合、国として新しい政策を進めていくことが困難」と厳しい認識を示した。その上で「野党と重要な政策課題について誠意を持って話し合う」と述べた。
 「政治とカネ」問題については、閣僚らに「政治資金の厳正な管理と、問題が指摘された場合は説明責任を尽くすよう徹底した」と説明。首相本人が代表を務める自民党選挙区支部の領収書のあて名書き換えなどが発覚したことを念頭に「特に自らについては厳しく戒める」と釈明した。
 十一月一日で期限が切れる海上自衛隊によるインド洋での給油活動については「国益に資する」と位置付け、「活動継続の必要性を国民や国会によく説明し理解を頂くよう全力を尽くす」と述べた。ただ、新法案の提出など具体的な対応には言及しなかった。
 年金問題では、制度設計に関する与野党協議を提案。格差是正に関しては「改革の方向性は変えずに、生じた問題にきちんと処方せんを講じていく」と強調した。
 消費税を含めた税体系の抜本改革は、安倍前内閣同様に結論時期を明示せず、憲法改正にも言及しなかった。

福田首相所信表明、野党へ誠意強調 消費増税あいまい
[asahi.com 2007年10月01日13時29分]

 福田首相は1日午後、衆参両院の本会議で就任後初の所信表明演説を行った。参院の与野党逆転をふまえ、重要政策をめぐる野党側との話し合いに「誠意」をもって臨む姿勢を繰り返すなど、低姿勢ぶりを強調。総裁選以来掲げる「自立と共生」の考え方をちりばめ、「福田カラー」もにじませた。だが与党内や与野党の調整を前に、高齢者医療の負担増凍結の具体案には触れず、消費税など税制改革の目標期限もあいまいなままだ。

 ●姿勢は低く

 演説は、安倍前首相の辞意表明と自民党総裁選による国会審議中断に対する、議員や国民への「おわび」から始まった。
 首相は続けて「誠実な国会対応に努める」と宣言。「衆院と参院で議決が異なる場合、国として新しい政策を進めていくことが困難になる」とし、野党側に「重要な政策課題について、誠意をもって話し合う」と呼びかけた。
 また「国民の信頼なくして、どのような政策も必要な改革も実現は不可能」と表明。参院選惨敗の一因となった「政治とカネ」の問題では、政治資金の透明性を高めるため、ここでも野党側と「十分に議論」する姿勢を示した。
 さらに首相は、政治資金の問題が指摘された場合は「説明責任」を尽くすよう閣僚に徹底したことを紹介。先に福田事務所の領収書書き換え問題が明らかになったことを念頭に、「特に自らについては厳しく戒める」とも強調した。

 ●福田カラーは

 低姿勢に徹しつつ、首相が独自色を見せるキーワードは、総裁選以来掲げている「自立と共生」「希望と安心」だ。
 社会保障や地方分権、教育のほか、地球環境や貧困への支援でも、この考えをちりばめ、「自助努力を基本としながらも互いに尊重し、支え、助け合うことが必要」として「温(ぬく)もりのある政治」をうたった。
 得意分野の外交面では「世界平和に貢献する外交」を旗印に掲げ、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続と、北朝鮮問題の解決を「直面する喫緊の課題」に据えた。
 ミャンマーの反政府デモにからむ邦人死亡については「誠に遺憾」と述べた。さらに「日米同盟の強化とアジア外交の推進の共鳴」を打ち出し、「すべてのアジア諸国で安定と成長が根付くよう、積極的アジア外交を進める」と表明した。
 一方、安倍政権の看板だった温暖化対策「美しい星50」や「徳育」「攻めの農政」などは残したが、前首相が強い意欲を持っていた憲法改正には触れなかった。野党との対立の火種になりかねないと判断したとみられる。

 ●あいまいな表現

 政府が公約した基礎的財政収支の11年度の黒字化について、首相は「確実に達成する」と明言した。だが、政府が「07年度をメド」としてきた消費税を含む税体系の抜本的改革は「今後、早急に国民的な合意を目指して本格的な議論を進める」と述べるにとどめた。
 首相は総裁選で、消費税引き上げの可能性をにじませた。所信表明でも社会保障や少子化に伴う負担増に対して「安定的な財源の確保」に言及したものの、消費税率の維持を掲げる民主党との協議を前に、あいまいな表現に後退させた形だ。
 また自民、公明両党の連立政権合意には高齢者医療費の自己負担増の凍結が盛り込まれたが、首相は「障害を持つ人やお年寄りなどの状況に十分配慮しながら、きめ細かな対応に努める」と述べるにとどめ、負担増凍結の具体案や財源には触れなかった。

で、実際、「構造改革」路線はどうなっているかというと、これはしっかり生き残っていることを見ておくが大事だと思います。所信表明演説でも、「日本の将来を見据えた改革を進めていかなければなりません」「改革と安定した経済成長は…ともに進めてまいります」「改革の方向性は変えずに」「地方税財政の改革に取り組みます」「道州制の実現に向け、検討を加速します」「将来のあるべき日本の姿を見据え……改革を続行してまいります」「自助努力を基本としながら……」などなど。「構造改革」路線を継承することは明確です。

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