検定調査審議会の実態が明らかに

「琉球新報」に、高校歴史教科書検定の「審議会」の「日本史小委員会」の委員の証言が載っています。それによれば、「小委員会」での委員による審議の場に、文部科学省の職員である教科書審査官が出席・発言しているとのことですが、それはたんに質問に答えて発言するというようなレベルでなく、実態として、委員だけによる審議はおこなわれていない、というのです。

ということは、「検定調査審議会」なるものは、独立の機関でもなんでもないということ。また、審査官が意見を言って、沖縄戦「集団自決」記述が削除されたのだから、これこそ「政治の介入」そのものだ、ということです。

文科省調査官が介入、波多野委員が初明言 教科書検定審議
[琉球新報 2007-10-11 9:40:00 ]

 【東京】文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)の日本軍強制の記述が削除・修正された問題で、教科書出版社の申請本の合否や検定意見を決定する「教科用図書検定調査審議会」の審議に、文科省の教科書調査官が具体的に関与していることが10日、分かった。
 琉球新報社の取材に対し、同審議会の日本史小委員会委員の波多野澄雄筑波大教授が明らかにした。同教授は「集団自決」検定での教科書調査官の検定意見についても「違和感はあった」と指摘した。政府は審議会を「中立公平、第3者機関」と位置付けているが、検定意見の原案を作成する調査官が、審議過程にまで介入している実態が浮かび上がった。
 検定過程では、審議会の下部組織に当たる小委員会が実質審議する。2008年度から使用される教科書について、日本史小委員会は06年10月、11月の2回、都内のビルで会合を開いた。文科省側は調査官4人を含めて10人程度、大学教授や高校教師ら専門家側は10人程度が出席した。
 会合では、調査官が自身が作成した検定意見の原案となる「調査意見書」を読み上げる。審議内容について波多野教授は「調査官はもちろん議論に入ってくる。いろいろなことを意見交換する。全く委員だけで話すことはない」と話し、調査官を交えて議論すると説明。審議会の位置付けについては「文科省から独立した(第3者的)機関ではない」と明言した。
 ただ、沖縄戦の「集団自決」について「議論はなかった」としている。
 波多野教授は審議会の在り方について「沖縄戦の専門家がいなかったのは事実だ。専門家に意見を聞く機会があっていい。透明性という点でも不十分だ」と問題点を指摘した。
 「集団自決」に関する記述に初めて検定意見が付いたことに「学術的に、沖縄戦の集団自決をめぐる大きな変化があるかと言えばそうではない。わざわざ意見を付けることにやや違和感があった」と述べた。
 伊吹文明前文科相は今年4月に「公正な第3者の審議会の意見」と発言。渡海紀三朗文科相も10日の衆院予算委員会で「審議会は専門的、学術的立場から中立公平に審議するものだ」と答弁している。だが、調査官の具体的な議論への関与を許す審議会の公正・中立性は確保されていないと批判が高まりそうだ。(与那嶺路代)

「強制」削除 文科省ぐるみ 沖縄戦「集団自決」 の検定意見、専門的検討なし/衆院予算委 赤嶺議員 撤回迫る
[しんぶん赤旗 2007年10月12日]

 高校日本史の教科書検定で、沖縄戦での「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述を削除する発端となった「調査意見書」が、文科省ぐるみで作成され、専門家によるまともなチェックさえなかった――11日の衆院予算委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員の質問で明らかになりました。赤嶺氏は「文科省が勝手につくった検定意見に固執することこそ『政治介入』だ」と批判し、検定意見の撤回と記述の回復を要求。気迫の追及に、第1委員室は静まり返りました。

 教科書検定では、発行者の申請を受け、文科省職員の教科書調査官が「調査意見書」を作成。教科用図書検定調査審議会で審議し、検定意見がつくられることになっています。
 赤嶺氏は、これまで20年間、意見がついたことのなかった記述を削除した発端は、この調査意見書にあると指摘。同意見書には、「集団自決」が軍の強制であった記述について「誤解するおそれのある表現」と意見をつけ、担当局長ら7人の決裁印も押されています。文科省の金森越哉初等中等教育局長は「(同意見書は)検定意見の原案」と述べ、発端であることを認めました。
 赤嶺氏が、同意見書の作成にあたり、審議することになっている教科用図書検定調査審議会の委員から「集団自決」に関する意見はあったのかとただしたのに対し、金森局長は「意見は出されていない」と答弁。渡海紀三朗文科相は同意見書について審議会でも「意見はそれほどなかった」と認めました。さらに、審議会メンバーに沖縄戦の専門家がいなかったことも認めました。
 赤嶺氏は、今回の検定意見は結局、文科省のいう「専門的、学術的観点」どころか、「文科省の一職員が自分の考えでつくった」にすぎないと強調。しかも、調査官が意見の根拠とした文献の著者である関東学院大学の林博史教授も怒りの声をあげていることを紹介し、「検定意見の撤回、記述回復を求めるのは『政治介入』ではない。真実を回復してくれというやむにやまれぬ県民の要求だ」と迫りました。
 渡海文科相は、赤嶺氏の具体的な追及に対しても「(検定意見の撤回は)政治介入になる」との立場に固執し、福田康夫首相は「(沖縄県民の)思いを重く受け止める」と述べつつも、「文科大臣にしっかり対応させる」と述べました。

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教科書検定のしくみ

 教科書会社が提出した申請本を文部科学省の常勤職員である教科書調査官が調べ、検定意見の原案である調査意見書を作成。初等中等教育局長らの決裁を受け、教科用図書検定調査審議会に提出します。
 審議会には委員のほか、臨時委員、専門委員がいます。いずれも文部科学相が任命し、各教科ごとに10の部会に分かれています。
 高校日本史教科書の場合、審議会では第2部会の日本史小委員会がまず審議。その結果を第2部会がさらに審議します。調査官の出した調査意見書に異論が出なければ、それがそのまま検定意見になります。
 今回の沖縄戦をめぐる記述の場合、審議会で実質的な議論もないまま検定意見が決められており、日本軍の強制についての記述削除、書きかえは文科省の“自作自演”と問題になっています。

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