学力テストの結果、何が分かったか、何が報道されていないか

文部科学省が実施した全国一斉学力テストの分析結果が公表された。

メディアでは、いろんなことが報道されているが、一番肝心なのは報道されていない“あれ”、つまり、“うちの学校は、全国ランキングの何位なのか”という一番競争原理な問題。文科省は学校ごとの結果は公表しないとしているが、もちろん各学校には通知。テレビのニュースでも、結果が届いた学校の先生方がまっさきに確かめたのは自分の学校が何位だったということ。「これで、先生方がほっと安心しているうちはいいが、学校ごとの結果が公表されれば、アホな「競争」が始まり、足立区のような事態になることは必至。

親の経済格差が子どもの学力に影響(TBS News-i)
全国学力テスト結果公表、基本知識あるも応用力に課題(読売新聞)
全国学力調査、「活用力」に課題 文科省が結果公表 (朝日新聞)

親の経済格差が子どもの学力に影響
[TBS News-i 最終更新:2007年10月24日(水) 18時29分]

 400ページにも及ぶ分厚い冊子は、文部科学省が43年ぶりに実施した全国学力テストの分析結果です。ここから浮かび上がったものの1つは、親の経済格差が子どもの学力に影響を与えている実態でした。
 今年4月、全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に行われた学力テスト。その結果を地域別に見ると、大都市や中核市の平均正答率よりも僻地の正答率が、小学校、中学校とも低く、科目によっては最大5%程度の開きがあることがわかりました。
 また、就学援助を受けている子どもが多い学校の方が正答率が低い傾向があることもわかり、親の経済力の格差が子どもの学力に影響を与えている実態も浮き彫りになりました。
 「教育における格差というものが出ないよう努力していくというのが私の立場でもあり、また、文科省も頑張っていかなければいけないだろうと」(渡海文科相)
 「小泉・安倍の急進的競争主義改革。そういうものが生み出した、まさに“格差社会”ですよね。その中で生きていくことに、大人も子どもも苦しんでいるわけです。そこが表れている」(評論家・元高校教諭 佐高 信 さん)
 文部科学省は、学校の決まりや規則を守る規範意識の高い子どもの方が正答率が高かったことをポイントの1つとして強調しています。規範意識という言葉にこだわった安倍総理は退陣しましたが、在任中に行われた学力テストの結果は、子どもたちの教育の指針となる学習指導要領を改訂する上で大きな材料になります。(24日17:58)

↓応用力に課題があるといった傾向を知るだけなら、すべての小中学校で一斉に学力テストをやる必要はありません。サンプル調査というと語感が悪いですが、いくつかの(と言っても、全国では相当数になるでしょうが)学校での抽出テストで十分分かることです。にもかかわらず、なぜすべての学校で、すべての生徒を一斉学力テストに参加させたのか? そこに、この学力テストのメディアでは絶対に報道されない問題が存在するわけです。

全国学力テスト結果公表、基本知識あるも応用力に課題
[2007年10月24日22時15分 読売新聞]

 文部科学省は24日、小学6年生と中学3年生を対象に今春実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。
 全員参加を前提としたテストとしては43年ぶりで、漢字の読み書きや計算などの基本的知識は身についていたものの、応用力に課題があることが浮き彫りになった。
 都道府県別の結果では、ほとんどの自治体が全国平均に近い成績を収め、大きな格差は見られなかったが、学校ごとに見ると成績に開きが生じている実態も明らかになった。
 今回のテストは、学力低下の指摘を受け、自治体や学校、児童生徒の課題を明確にし、改善に役立てるため、4月24日に実施された。
 愛知県犬山市の14校を除くすべての国公立と、私立の約6割の小中学校の計約222万人が参加。国語と算数・数学について、それぞれ主に知識を問うA問題と、知識を実生活で生かす力や課題解決のための力を試すB問題に挑んだ。
 全問題中、何問正解したかを示す平均正答率を教科別に見ると、小学校の国語A、算数Aはともに82%だったのに対し、国語Bは63%、算数Bは64%にとどまった。
 中学校でも、国語Aの82%、数学Aの73%に比べ、国語Bは72%、数学Bは61%だった。表現力や思考力を十分身につけていない子供が多い実情が明確になり、経済協力開発機構(OECD)の「国際学習到達度調査(PISA)」などと同じ傾向が出た。
 1960年代の学力テストでは、都道府県別の結果に開きが生じ、自治体間の競争が過熱する一因となったが、今回は、小学校の国語Aで各都道府県の平均正答率が全国平均の5ポイント前後の範囲に収まるなど、自治体ごとの差は小さかった。
 だが、中学校になると差が開き始め、数学Aでは、最も平均正答率が高かった福井県(80.3%)と低かった沖縄県(57.2%)で20ポイント以上の差が生じていた。
 学校単位で見ると、出来不出来でかなりばらつきが見られ、例えば、中学校の数学Bでは、参加した約1万校のうち、978校が正答率5割未満だったのに対し、8割以上の正答率だった学校も299校あった。
 一方、文科省は、テストと同時に児童生徒の意識調査も行い、生活環境や生活習慣と学力との関係を調べた。経済的な理由で国や自治体などから学用品代や修学旅行費などの就学援助を受けている児童生徒の割合の高い学校の方が、低い学校より平均正答率が低い傾向が見られた。
 結果は、都道府県のほか、市区町村や学校にも24日中に届けられ、近く児童・生徒個人の結果も一人一人に手渡される。ただ、学校の序列化や過度の競争を防ぐため、都道府県は学校別や市区町村別の結果については公表しない方針だ。

全国学力調査、「活用力」に課題 文科省が結果公表
[asahi.com 2007年10月24日19時04分]

 文部科学省は24日、小学6年生と中学3年生合わせて約222万人が4月24日に受けた全国学力調査の結果を公表した。平均正答率は、主に「知識」を問うA問題が70?80%台だったのに対し、知識を「活用」できるかを主に問うB問題が60?70%台と10?20ポイント低かった。また、都道府県別の平均正答率で一部に開きがあったほか、就学援助を受けている子どもの割合や地域の規模と正答率との相関関係もみられ、「教育の格差」が一部に表れた。
 文科省は「知識については相当数の児童・生徒がおおむね理解しているが、活用は課題がある」と分析。今後、教職員の加配(定数を上回る追加配置)などによって、正答率が低かった自治体の教育委員会を支援する方針だ。
 国による、特定学年全員を対象とした調査は中学校が43年ぶり、小学校は初めて。「学力低下」と言われたことが調査の一つのきっかけとなったが、近年の類似データがないため、単純に判断することは難しい。ただ、漢字の読み書きや計算問題など、過去の調査と同様の問題では正答率が上がっているものが多い。
 都道府県別では、各科目で41?47の都道府県が公立校の全国平均からプラスマイナス5ポイントの範囲内に収まった。しかし、沖縄県が全科目で47位で、北海道や大阪府、高知県も低い科目が多かった。一方、小学校の全科目で秋田県が最も高く、中学校は国語Aで富山県、その他の3科目で福井県が1位だった。ただし、都道府県別の平均正答率には私立、国立校は含まれていない。
 1960年代の学力調査で格差が問題になった都市部と地方を比較すると、大きな差はなかった。しかし、活用問題は大都市(東京23区と政令指定市)がへき地よりも平均正答率が高く、小6は国数ともに5ポイント、中3数学が3ポイントの開きがあった。
 就学援助を受けている子どもが多い学校は、少ない学校より平均正答率が低かった。ただ、就学援助を受けている子どもが5割を超える学校は小中ともにばらつきが大きかった。
 国公私立で比べると、全科目を通じて国立、私立が公立より平均正答率が約10?20ポイント高かった。私立は約4割が参加しなかった。
 国際調査で日本の子どもの課題と指摘されている、記述式問題の無解答率は全21問中、11問で10%未満だった。だが、中学数学Bでは無解答率が7問中4問で20%以上の高さだった。
 文科省は調査結果を学習指導要領改訂の参考にするほか、都道府県、市町村の教育委員会と学校に対して、それぞれに関する詳細なデータを提供し、今後の学習指導計画に活用してもらう方針。都道府県と政令指定市に検証改善委員会を設置してもらい、学校支援のプランを作成させる。
 市町村、学校ごとの結果公表はそれぞれに委ねられている。調査を受けた子どもたち一人ひとりが、問題ごとに正答したかどうかなどを記した個票は既に作成、配送しており、学校を通じて手渡される。

【追記】

学力テスト:学力向上 見えぬ具体策(毎日新聞)

学力テスト:学力向上 見えぬ具体策
[毎日新聞 2007年10月25日 1時56分]

 43年ぶりに今春実施された全国学力・学習状況調査の結果が24日公表された。渡海紀三朗・文部科学相は「一定の成果を得た」と意義を強調するが、学力向上にどう生かしていくのか、その具体策は見えてこない。全校全員参加のテストは、学校の序列化につながりかねないとの懸念は依然として残る。文科省はテストを継続していく方針だが、今後の教育施策に具体的な成果をもたらすことができるかが問われている。【高山純二、永井大介、市川明代】

◇教科への活用課題

 「全国のデータが集まり、個々の学校が改善に生かすことができる」。約77億円の巨費を投じ全員対象のテストを行った成果について、文科省の担当者は、19日にあった事前記者会見でこう述べた。ただ、記者からの「具体的な成果は?」との問いには、「個々の学校で改善に生かしてほしい」と話すだけで言葉を濁した。
 テスト実施の目的は、学習指導要領の改定など今後の教育施策への反映だ。文科省は結果を受けて、▽都道府県の申請に基づき結果の悪かった学校に教員を多く配置する▽学習方法の改善などの実践研究を行う??などに取り組む方針だ。しかし、幹部は「個々の児童・生徒の不得意分野の克服に役立てたい」と話すだけで、具体的な方法などは見えない。
 中央教育審議会は既に、主要教科と体育の授業時間数を10%増やし、各教科の中で知識の活用力を育成する方向性を打ち出している。今回のテスト結果の分析で「活用力に課題がある」と出たことについて、文科省は「中教審の議論を裏付けている」と評価。こうした状況から、テスト結果が授業時間数を増やす根拠に使われるだけで終わる可能性さえ指摘されるほどだ。
 実際、24日に東京都内で開かれた中教審の初等中等教育分科会では、結果の報告を受けた委員から「教科の中でどう活用していくかが重要」「『うちの学校はよかった』『悪かった』で終わってはダメ。健康診断と一緒でどこが悪いのかを見るための情報提供に過ぎない」といった注文もついた。
 一方、加藤幸次・上智大名誉教授(学校教育学)が「全員対象ならば、『序列化』になるのは目に見えている」と話すように、実施決定当時から指摘されている懸念は依然としてぬぐい切れない。全員参加のテストについて、文科省は「一人一人の学力を把握し、改善につなげるため」と説明するが、東京都足立区の小学校が区などのテストで不正をしていたことを考えると、学校現場が過度の競争に走る可能性は否定できない。抽出テストで十分との考えには説得力がある。
 また、記述式を取り入れたとはいえ、実施から公表までに半年を要する点は、教育面での効果を期待するには長すぎるとの声もある。約221万人が参加した大規模なテストで、採点や集計に時間がかかったことや、政権交代という特殊事情があったとはいえ、そもそも約5カ月後の発表を予定していたというのも遅すぎるとの見方だ。
 文科省は「継続的なデータ集約をする必要がある」と来年度以降も全国学力テストを続ける考えだ。しかし、対象の児童や生徒、科目を多くするのかなども含めて「何も決まっていない。白紙状態だ」としている。

◇成績公表で対応割れる

 文科省が「序列につながらないよう配慮を」と呼びかけたため、多くの市区町村は今回のテストの成績を公表しない方針に傾くとみられる。だが、保護者の「学校や子供のレベルを知りたい」との声は多く、広島県三次市や新潟市、さいたま市などは「説明責任がある」などとして公表を決めている。保護者らの期待に応えたい自治体の対応は割れている。
 43年前まで行われていたテストは、自治体や都道府県間の競争が激しくなり廃止された経緯がある。このため文科省は今回、都道府県ごとの成績は公表したが、市区町村や学校別の成績は公表しなかった。
 ただ、市町村教委や学校は平均正答率などそれぞれの裁量の範囲で結果を発表したり、保護者に子供個人の成績を説明できる。
 平均正答率の公表を決めたのは、▽広島市▽さいたま市▽新潟市▽東京都荒川区??などだ。その理由を新潟市は「市のレベルなどがわかれば、学校も個々の児童・生徒への学習指導がしやすくなる」。荒川区は「区民に説明責任がある」としている。
 県と市の学力テストの成績を学校ごとに発表してきた三次市では、今回も教科ごとの平均正答率の公表を決めた。同市民でつくる「学力テストの公開を憂う親の会」は「成績公表は学校への刺激になるが、校長や教員への締め付けが起きる。『先生は努力しているのか』と教員が中傷の対象になることもあり、現場に混乱を招く」と批判している。
 一方、区の学力テストで不正が起きた東京都足立区をはじめ、大阪市や千葉市など多くの市区町村は「序列につながる数値は出さない」として成績を公表しない。

◇渡海文科相「格差解消に努力」

 全国学力テスト結果について、渡海紀三朗文科相は「ほとんどの都道府県がそれほどばらついていない傾向だったので、(義務教育としての)公教育は保障されているという感想だ。日本全国を見れば、まだ差のあるところがあると思うので、今後もできるだけ教育の格差が出ないよう努力する」と述べた。

 ▽耳塚寛明・お茶の水女子大大学院教授(教育社会学)の話 これまで文科省は、現状を分析し教育施策に生かしてこなかった。それだけに学力調査には意義がある。都道府県や学校間の格差は看過できない。最低限の学力に達していない要支援校に対し、どんな施策を講じていくか分析が必要だ。分析力がなければ宝の持ち腐れに終わる。格差の原因を探るなど、目的を特化した調査に組み立て直すべきだ。

 ▽苅谷剛彦・東大大学院教授(教育社会学)の話 今回のテストは問題の質や多様性、公表方法などどれをとっても今後の教育に利用するには課題が残る。学校を序列化して学校を自由に選べる学校選択制につなげようという政治的もくろみがあったのだろうが、その動きにブレーキがかかったため、分析などを含め中途半端になった印象を受ける。全員参加については再考すべきだ。

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